日本泌尿器科学会雑誌
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95 巻, 7 号
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  • 篠島 利明, 中島 洋介, 北野 光秀, 佐藤 通洋, 吉井 宏
    2004 年 95 巻 7 号 p. 783-791
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 日本外傷学会腎損傷分類の有用性を, 鈍的腎外傷に関して検討する.
    (対象, 方法) 鈍的腎外傷115例 (1982年6月~1999年2月) を対象とした. 実質損傷 (type) と腎周囲血腫 (H factor) ならびに type と尿溢流 (U factor) の相関性を検討した. type, H factor, U factor ごとの治療法, 腎喪失率を検討し, この3因子のなかで受傷腎の転帰に関して有意な影響を及ぼすものを求めた.
    (結果) type I からIIIcまでと H factor の間, ならびに type IIIa からIIIcまでと U factor の間に有意な相関性を認めた. 29例 (25%) に即時手術が施行され, 最終的に全症例の17%, 重度損傷 (type III, IVa (M), IVb) の35%が腎喪失 (腎摘出) となった. 腎温存群と喪失群の間には, type とH factor の重症度に関して有意差を認めた. また type, H factor, U factor の3因子のなかで, 受傷腎の転帰に影響を及ぼす独立した有意な因子は type であることが多変量解析により示された.
    (結論) 鈍的腎外傷において治療方針の決定, 治療成績の比較のためには, 日本外傷学会による腎実質損傷分類の細分化は有用であるが, 腎周囲血腫と尿溢流の程度の評価に関しては, 実質損傷の重症度を検討する際に活用するにとどめるべきと考えられた.
  • 岡村 菊夫, 小澤 秀夫, 絹川 常郎, 今村 正明, 斉藤 史郎, 寺井 章人, 武井 実根雄, 長谷川 友紀
    2004 年 95 巻 7 号 p. 792-799
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 経尿道的前立腺切除術 (TURP) の共通クリニカルパスの意義を明らかとする.
    (対象と方法) 7つの病院においてTURPを受けた平成13年度の310症例と平成14年度の298例を対象とした. 平成13年度は各病院個別の方法で周術期管理を行い, 平成14年度は共通パスを用いて管理した.
    (結果) 共通パス施行により, 術前・術後入院期間, ベッド上安静期間, 抗生剤投与期間, カテーテル留置期間が短縮し, 標準偏差も縮小した. 入院費総額は515,439円から491,935円に減少した. 7つの病院におけるアウトカムにはかなりの差が認められた. 多変量解析を用いた太検討から, 1) TURP以外の検査, 手術が同入院時に必要な症例, 2) ADL障害, 認知障害, 既往歴, 合併症が術後の回復に影響があると考えられる症例, 3) 術直前にカテーテル留置を受けている症例, 4) 術前に尿路感染症がある症例を除外基準と定めた. 平成13, 14年度のデータから除外条件を満たす122例, 129例を除くことにより, 術前・術後入院期間の短縮, 入院費総額の減少と標準偏差の縮小が認められた.
    (結論) 共通クリニカルパスは複数病院の術前・術後入院期間を短縮するのに有用である. 一般病院にも一部出来高払いを含む日本式定額支払い制度 (DPC) が導入されようとしている状況下では, 泌尿器科専門医の立場から標準的な周術期管理を確立していくことが急務である.
  • 岡村 菊夫, 小澤 秀夫, 絹川 常郎, 今村 正明, 斉藤 史郎, 寺井 章人, 武井 実根雄, 長谷川 友紀
    2004 年 95 巻 7 号 p. 800-808
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 経尿道的前立腺切除術 (TURP) を受け, 共通クリニカルパスにより入院管理をされた患者による評価を検討するために, アンケート調査を実施した.
    (対象と方法) 平成14年度にTURPを受けた298例の退院時にアンケート用紙を配布した. 共通パスでは, 手術前日入院, 術後7日目に退院を目標とした.
    (結果) アンケートの回収率は80.5% (240/298) であった. 術前入院期間に関する質問に回答のあった212人のうち, 58人 (27.4%) が1日を, 85人 (40.1%) が2日を, 46人 (21.7%) が3日を望ましいと考えていた. 術後入院期間に対する質問に解答した206人のうち, 54人 (26.2%) は7日目に, 28人 (13.6%) が8日目に, 60人 (29.1%) は9~10目に退院するのが望ましいと考えていた. 240人中229人 (95.4%) は患者用パスを受け取り, 234人 (97.5%) は治療法についてよく理解ができ, 229人 (95.4%) は入院中の予定について理解できていたことが明らかとなった. 予定通りに, 236人 (98.3%) は食事が開始となり, 218人 (90.8%) は歩行を開始したと答えた. また, 持続点滴は予定通りに219例 (91.3%) で終了となり, 留置カテーテルは215例 (89.6%) で予定通りに抜去された.
    (結論) この研究によりTURPを受ける症例のおよそ70%は手術の1~2日前に入院し, 術後は7~10日間入院していたいと望んでいることがわかった. クリニカルパスを用いて管理を行う際には, 希望より短い入院期間を受け入れてもらうために, 患者が治療の内容, 合併症, 入院中のスケジュール, 退院の目安を理解できるようにすることが重要である.
  • 多武保 光宏, 藤本 清秀, 井上 剛志, 田中 基幹, 平山 暁秀, 植村 天受, 吉田 克法, 平尾 佳彦, 市島 国雄
    2004 年 95 巻 7 号 p. 809-812
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    61歳, 男性. 横行結腸癌の術前画像診断で, 膀胱後方に径8.5cmの無症候性骨盤内腫瘍を指摘されていた. 右半結腸切除術後1年目の時点でも腫瘍サイズに変化はなかったが, 画像上, 比較的大きな腫瘍で右精嚢との癒着部には造影所見を伴うことから悪性腫瘍の疑いもあり, 後腹膜アプローチによる腫瘍および右精嚢摘除を行った. 病理組織学診断は神経節神経腫であった. 骨盤内での発生がまれな後腹膜原発神経節神経腫の1例を報告し, 過去の報告例とともに文献的考察を加えた.
  • 井手 広樹, 中島 洋介, 堀永 実, 篠島 利明, 小津 兆一郎, 畠山 直樹, 木口 英子
    2004 年 95 巻 7 号 p. 813-816
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱癌の転移は, リンパ節, 肝, 肺に多く, 時に腫瘍の直接浸潤による腹膜播種をきたす. 今回筆者らは, 局所再発を伴わず, 直接浸潤以外の経路で腹膜播種をきたした膀胱癌の1例を経験したので報告する. 症例は76歳女性. 膀胱左壁の乳頭状広基性腫瘍に対してTURBT (TCC G3, pT1a) が施行され外来で経過観察中, 膀胱内の再発は認めなかったが, 術後9ヵ月で下腹部に腫瘤を触知しCTで巨大な骨盤内腫瘤を認めたため, 卵巣腫瘍の疑いで婦人科にて手術が施行された. 腫瘤は腫瘍が播種した大網であり, 組織学的にTCCで膀胱癌の腹膜播種と診断された. その後M-VAC療法を計4コーズ施行したが, 1年2ヵ月後に癌死した. 剖検所見によると, 腹腔内には播種性の転移を多数認めたが, 膀胱内・膀胱周囲には再発腫瘍を認めず, 腹膜播種の転移経路としては直接浸潤以外の経路, 即ちリンパ行性又は血行性転移が示唆された.
  • 松下 真史, 川崎 芳英, 岡田 康弘
    2004 年 95 巻 7 号 p. 817-819
    発行日: 2004/11/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    77歳男性. 2001年9月19日初診, 右尿管膀胱癌の診断で術前化学療法としてMVAC療法を3コース施行し同年12月12日に右腎尿管膀胱全摘除術 (ileal-neobladder) を施行した. 病理診断はTCC, G3, pT3N0M0であった. 外来 follow 中食欲不振を訴え2003年4月30日に入院. 胸腹部CT, 骨シンチで明らかな転移は認めなかった. その後, 全身筋力低下, 頚部硬直が出現, 頭部CT, MRIで水頭症を認めたため癌性髄膜炎が疑われ髄液検査を施行した. 髄液検査では髄液圧の上昇, 糖の低下, 蛋白の上昇, 細胞診で class V (urothelial carcinoma) が認められた. 癌性髄膜炎の診断6日後に死亡した. 尿路上皮癌 (移行上皮癌) の癌性髄膜炎は本邦8例目であった.
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