日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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83 巻, 7 号
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  • 奥山 明彦
    1992 年 83 巻 7 号 p. 1027-1035
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
  • 骨シンチグラフィーによる検討
    田中 方士, 秋元 晋, 正井 基之, 島崎 淳, 村上 信乃
    1992 年 83 巻 7 号 p. 1036-1042
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    骨転移を有する前立腺癌患者128例について, 骨シンチグラフィーの所見を Soloway らに従い分類した. 全例内分泌療法を施行し, その近接効果と予後との関係を検討した. EOD1では, 骨転移部位は主に骨盤骨および腰椎に認められたが, EODが大きくなるにつれて胸椎, 肋骨や頭蓋骨に広く転移を認めるようになった. 生存率は, EODが大きくなるにつれて悪くなった. EOD2と3では, 生存率に差を認めなかったので組織学的分化度を加味したところ, 中分化腺癌の方が低分化腺癌よりより良い予後を示した. 内分泌療法施行後6ヵ月での骨の近接効果では, EODが大きくなるにつれて近接効果も悪くなる傾向を示した. 前立腺原発巣およびPAPの近接効果は, 予後と良い関連を示したが, 骨シンチグラフィーは関連が少なかった. このことは骨病変の変化の把握の不確実さを示していた.
  • 竹内 信一
    1992 年 83 巻 7 号 p. 1043-1051
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ラット精巣導管系-精巣網, 輸出小管, 精巣上体管-の分化・成熟を知る目的で3日齢から12週齢の Wistar rat の同部の連続切片を作製し, 上皮・構造の変化を形態的に観察し,γ-GTPの染色性の違いをその指標とした.
    精巣網の上皮および構造の形態的変化は2週齢~3週齢の間に起こり, 6週齢頃完成し, この時期にのみγ-GTPの活性が認められた.
    一方, 輸出小管および精巣上体管の上皮の形態的変化, 成熟は4週齢で完成し,γ-GTP活性は終始著明に認められた.
    その結果, 精巣網における形態的変化の開始, 完了する時期が報告されているセルトリ細胞のそれとほぼ一致することから, 精巣網上皮の発生および機能がセルトリ細胞に極めて類似していることが推定された. また, 輸出小管および精巣上体管については両者の発生が相同であり, 互いに近い機能を有していることが想定された.
  • 表在性膀胱腫瘍に対する再発防止の意義
    平野 敦之
    1992 年 83 巻 7 号 p. 1052-1061
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    マウス実験膀胱癌 (MBT-2) を用いて,本邦で入手可能な Tokyo 172 strain BCG の効果を検討し, この結果に基づき, 表在性膀胱腫瘍に対するBCGの再発予防効果について臨床的検討を行った. 基礎的検討では, BCGは腫瘍局所に投与することにより, 全身的投与よりも優れた抗腫瘍効果が認められたが, 全身投与と局所投与との併用効果は得られなかった. また, BCGの投与はできる限り腫瘍が小さい時期に開始することが, 重要であると考えられた. さらに腫瘍細胞を接種する前にBCGの投与を行ってもある程度の効果がみとめられた. この結果より, 表在性膀胱腫瘍の再発予防を目的としてTUR後にBCGの膀胱内注入療法を施行した. 初発膀胱腫瘍症例145例に対するBCG膀胱内注入療法の成績について, TUR後ある種の抗癌剤による膀胱内化学療法が行われている症例 (他剤注入群) 50例および膀胱内注入療法が施行されていない症例 (無注入群) 38例を対照群として再発率の比較を行ったところ, BCG注入群では, 両対照群に比較して有意な再発予防効果が認められた. また, 再発症例36例については, BCG注入療法施行前後の腫瘍の再発率を比較したところ, 本療法施行後には有意に再発率が減少した. 本療法の副作用は膀胱刺激症状などの軽微なものが大部分であった. 以上の結果より, BCG膀胱内注入療法は, 表在性膀胱腫瘍の再発を防止する上で非常に有効な治療法であると考えられた.
  • 柏木 明, 永森 聡, 野々村 克也, 豊田 健一, 小柳 知彦, 野島 孝之, 井上 和秋
    1992 年 83 巻 7 号 p. 1062-1070
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    成人精巣腫瘍の各組織型 (セミノーマおよび非セミノーマ) に対し, その核DNA量およびDNA heterogeneity の有無についてパラフィン包埋標本を用いて flow cytometry による解析を行い, 臨床病期分類および組織型との関係について検討した.
    1) 組織型にかかわらず成人精巣腫瘍の96%の症例がDNA aneuploid を示した.
    2) 臨床病期とDNA index (DI) との関係についてみると, 日本泌尿器科学会臨床病期分類によれぼ特に有意の関係は見られなかったものの, Indiana University staging system に従えば, いまだ予後不良とされる advanced extent 症例はそれ以外の症例に比べ median DI値は小さい値を示した.
    3) 組織型別のDI値は, 臨床的な悪性度がより高いと考えられる非セミノーマが比較的悪性度の低いと考えられるセミノーマに比べ有意に小さかった (p<0.01).
    4) 精巣胚細胞性腫瘍ではDNA heterogeneity が証明される頻度はセミノーマを含めた全体で15%, 組織学的に heterogeneous な複合組織型に限っても21%と他の固形腫瘍に比べ低かった.
    5) 精巣腫瘍のDNA ploidy pattern は他の固形腫瘍とはやや異なる特徴を有し, 今後DNA flow cytometry は胚細胞性腫瘍の病理発生を知る上でも有益な知見をもたらすものと期待された.
  • 丸茂 健, 田崎 寛, 金子 茂男, 岡本 重禮, 貫井 文彦, 簑和田 滋, 北原 研, 長谷川 潤, 荒井 陽一, 板谷 宏彬, 吉田 ...
    1992 年 83 巻 7 号 p. 1071-1077
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1988年4月より1990年8月までの間に, 34例の器質的インポテンス患者に硬直機構内蔵式のノン・インフレータブル陰茎プロステーシスである OmniPhase 陰茎プロステー・シスの挿入を行った. 患者の年齢は37歳から79歳, 平均54.2歳であった. インポテンスの原因としては, 骨盤腔内の悪性腫瘍に対する根治的手術が17例, 糖尿病が7例, 血管の異常が3例, 脊髄損傷が2例, 陰茎の異常が2例, その他の器質的疾患が3例であった. 陰茎プロステーシスの挿入は脊椎麻酔または全身麻酔下に, 亀頭冠下部切開によって行った. 術後12週間において臨床評価を行ったところ, 32例 (94.1%) が性交可能であった. 患者の満足度は18例 (52.9%) が非常に満足, 14例 (41.2%) が満足, 1例 (2.9%) が改善なし, 1例 (2.9%) が悪化と回答した. 重篤な合併症は認められなかったが, 1例において挿入したプロステーシスの脱出のため, これを抜去したほか, 10日間以上持続する疼痛を3例 (8.8%) に, 陰茎の浮腫を11例 (32.4%) に, 急性副睾丸炎を1例に認めた. 得られた結果から, 器質的インポテンスの治療として, OmniPhase 陰茎プロステーシスの挿入は安全で有効な治療法であると結論された.
  • 第1報: 外尿道括約筋活動電位特性と排尿反射および蓄尿反射について
    柿崎 秀宏
    1992 年 83 巻 7 号 p. 1078-1084
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    正常ネコ (N群, 28頭), 術後短期 (1~3週, 4頭) および長期 (10~24週, 9頭) の仙髄神経根切断ネコ (それぞれSR群, LR群) を対象として, 膀胱空虚時の外尿道括約筋活動電位の頻度, 活動電位の持続時間を測定するとともに, 排尿反射 (膀胱-尿道弛緩反射, 膀胱-膀胱収縮反射) および蓄尿反射 (膀胱-尿道収縮反射, 尿道-尿道収縮反射) について検討した. N群, SR群, LR群の外尿道括約筋活動電位の頻度は平均でそれぞれ1.8, 16.4, 8.9spikes/sec であり, SR群およびLR群の活動電位の頻度はN群より有意に高く, またSR群はLR群より有意に活動電位の頻度が高かった. SR群およびLR群の自発性外尿道括約筋活動電位は神経筋接合部遮断薬投与後も残存した. 活動電位の持続時間はN群, SR群, LR群において平均でそれぞれ3.34, 1.71, 1.72msであり, SR群, LR群の活動電位の持続時間はN群の約50%であった. 排尿反射はSR群, LR群とも陰性であった. 蓄尿反射はSR群および仙髄後根も切断したLR群では陰性であったが, 後根を温存したLR群ではN群に比し軽微ながら陽性となった. 球海綿体反射はSR群, LR群とも陰性であった. 以上より, 仙髄神経根切断後早期には外尿道括約筋は高頻度の fibrillation を呈するが, 慢性期に入ると fibrillation が鎮静化して行くことが示された. また後根を温存した慢性仙髄前根切断ネコでは新たな蓄尿反射が形成され, これには遠心性交感神経の関与が推測された.
  • 第2報: 下腹神経刺激に対する外尿道括約筋の反応
    柿崎 秀宏
    1992 年 83 巻 7 号 p. 1085-1093
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    正常ネコ (N群, 28頭), 術後短期 (1~3週, 4頭) および長期 (10~24週, 9頭) の仙髄神経根切断ネコ (それぞれSR群, LR群) を対象として, 下腹神経刺激に対する外尿道括約筋の反応を検討した. 1Hzの下腹神経刺激により, N群およびLR群において外尿道括約筋に誘発電位が記録された. 誘発電位の潜時, 刺激閾値は両群間に有意差はなかったが, 誘発電位の大きさはLR群で有意に大きかった. N群, LR群とも誘発電位はプラゾシン, アトロピンに抵抗性で, ヘキサメソニウムおよびパンクロニウム投与により消失した. N群では10~20Hzの下腹神経頻回刺激により外尿道括約筋活動か増強した. この反応はプラゾシンにより抑制され, また膀胱を充満させ膀胱-尿道弛緩反射により外尿道括約筋が弛緩した状態下では下腹神経に頻回刺激を加えても外尿道括約筋活動電位は記録されなかった. 以上の結果より, 1) 下腹神経刺激により外尿道括約筋に記録される誘発電位は下腹神経内の交感神経節前線維から下部尿路に分布する副交感神経節後ニューロンへのシナプスを介して発現する, 2) 慢性仙髄神経根切断ネコでは, 体性神経を除神経された外尿道括約筋運動終板のニコチン受容体と副交感神経節後線維との間により機能的な関係が形成される, 3) 正常ネコにおいて, 下腹神経刺激は尿道平滑筋の収縮を介して尿道からの求心性出力を増加させることにより外尿道括約筋活動を増強させる, ことが示唆された.
  • 菅谷 公男, 西沢 理, 能登 宏光, 塚田 大星, 小浜 丈夫, 下田 直威, 若山 由紀子, 土田 正義
    1992 年 83 巻 7 号 p. 1094-1100
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膿尿がなく下部尿路不定愁訴のあるいわゆる尿道症候群49例, 無症候性三角部炎16例と正常膀胱15例の計80例の女性を対象として, 膀胱炎の経腹壁的超音波所見と内診所見を検討した. 下部尿路不定愁訴の有無に関わらず膀胱三角部から膀胱頸部に炎症性変化のある例の膀胱超音波所見は, 膀胱頸部周囲に比較的限局した膀胱粘膜下の低エコー帯の拡大と粘膜面の不整像であった. 縦断面像で計測した膀胱頸部から2cm以内の膀胱粘膜表面から筋層表面までの厚さは, 尿道症候群4±1mm (平均±標準偏差), 無症候性三角部炎4±1mm, 正常膀胱3±1mmであり, 炎症のある例では正常膀胱より有意 (p<0.01) に膀胱頸部粘膜が肥厚していた. 内診では尿道症候群の11例中10例 (91%), 無症候性三角部炎の8例中2例 (25%) と正常膀胱の9例中1例 (11%) で膣前壁の上部に圧痛があり, 炎症の程度と膣前壁の圧痛の有無には有意 (p<0.005) な関係があった. 以上から, 膀胱頸部周囲の炎症の有無とその程度は経腹壁的超音波検査による同部位の粘膜肥厚と膣前壁の圧痛の有無で捉えることができ, これら2つの方法による経時的観察は尿道症候群の治療効果の客観的評価に利用できると考えられた. また, これらの結果と文献から, 尿道症候群は尿道腺の不顕性炎症から始まり, 尿道から膀胱頸部周囲へ炎症が拡大し, 炎症性線維化が起こることにより発症するという印象を受けた.
  • 田口 勝行, 桑原 正明, 神部 広一, 庵谷 尚正, 斎藤 敏典, 白井 修一, 折笠 精一, 水梨 一利, 古川 洋太郎
    1992 年 83 巻 7 号 p. 1101-1109
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    Ca含有結石患者21名を正常Ca尿症 (NH群) 8名, 腸管吸収型高Ca尿症 (AH群) 8名, 腎漏出型高Ca尿症 (RH群) 5名に分類した後, ヒト副甲状腺ホルモン (h-PTH) を静注し, その反応性から高Ca尿症の病態について検討した. 対照として正常者 (NO群) 5名にも施行した.
    尿中Ca排泄量と尿中Na排泄量は, h-PTH負荷前, 負荷後の増加率でAH群のみ強い正の相関を示し, AH群における高Ca尿症の一因として尿中Na排泄量は無視できないと考えられた. また, h-PTH負荷前の%TRPと負荷後の尿中P排泄量の増加率ではNO群, NH群で有意の相関を認めた. しかし, 高Ca尿症では明らかな関係を認めずPのh-PTH反応性に障害があると考えられた. 加えて, AH群では, h-PTH負荷前の血中Pが低値を, 血漿1,25(OH)2Dが高値を, N-c-AMPが低値を示すことから, 一方RH群でも, 負荷前の血中Pと%TRPが低値を示すことから高Ca尿症における一次的なPの漏出が考えられた. しかし, RH群では同時にCaの漏出があるため, AH群に比べ1,25(OH)2Dが高値を示さず, N-c-AMPが低値を示さなかったと考えられる.
    すなわち高Ca尿症の原因として, 一次的なPの漏出がありCa漏出の程度によりAH群からRH群まで連続的な病態が存在していると考えられた.
  • 中島 淳, 橘 政昭, 馬場 志郎, 出口 修宏, 実川 正道, 畠 亮, 田崎 寛
    1992 年 83 巻 7 号 p. 1110-1117
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌患者13例および健常者5例より分離した末梢血単核球 (PBMC) をOK432および macrophage-colony stimulating factor (M-CSF) 刺激下に培養し, その上清中の tumor necrosis factor (TNF) 活性をL929細胞に対する殺細胞効果によって, また interferon-γ (IFN-γ) 活性を50%細胞変性効果阻止法によって, それぞれ経時的に測定した. PBMCを0.05KE/ml濃度のOK432にて刺激した時, 最も高い, TNF活性が誘導されたが, 0.01KE/ml~0.5KE/mlのOK432の各濃度によって誘導されたIFN-γ活性について, それぞれ明らかな差を認めなかった. TNF活性は培養開始後12時間で最高値に達し以後漸減傾向を示したが, IFN-γ活性は培養時間とともに上昇する傾向が認められた. PBMCをM-CSF単独刺激下に培養した時, 培養上清中にTNF活性は誘導されなかったが, 培養開始後48時間と72時間において, 100U/mlのM-CSFと0.05KE/mlのOK432を併用することにより, OK432単独刺激に比べ有意に高いTNF活性が誘導された. 5例の腎細胞癌患者に, OK432を週3回, 8週間投与したところ, 3例において血清中TNF活性の増加が認められた. 以上OK432によりTNFやIFN-γの産生が誘導されることが示唆され, biological response modifier による内因性サイトカインを介した制癌療法の意義が示された.
  • 高橋 悟, 杉本 雅幸, 篠原 充, 木下 健二
    1992 年 83 巻 7 号 p. 1118-1123
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1975年より1989年の15年間に当科を受診した膀胱癌321例のうち多臓器多重癌を認めた43例 (13.4%) と膀胱癌単独例 (278例: 86.6%) の臨床像, 病理学的特徴を比較検討した. 膀胱癌診断時年齢 (mean±S. D.) は多重癌例68.9±8.9歳, 膀胱癌単独例65.7±12.3歳と多重癌例が高い傾向を認めた. 男女比は多重癌例3.8:1, 膀胱癌単独例2.6:1で多重癌は男性が多い傾向を示した. 多重癌発生臓器は, 肺, 胃, 直腸などの癌好発臓器が多く, 前立腺癌は12例中8例が膀胱全摘除時の偶発癌であった. 多重癌の診断時期は, 肺, 胃, 直腸癌は, 膀胱癌診断時前後に比較的均等な分布を認めた. 前立腺癌は同時性が多く, 子宮癌は膀胱癌よりも先行する傾向を認めた. また先発癌の治療が, 後発癌発生に影響を及ぼした可能性の高い症例を2例認めた. 多重癌例と膀胱癌単独例間で膀胱癌の腫瘍数, 腫瘍形態, 組織像, 異型度, 浸達度, リンパ節転移, 遠隔転移, 再発の有無を比較したが, 両群間に明らかな差異を見い出せなかった. 膀胱癌治療開始時からの5年生存率は多重癌例48.8%, 膀胱癌単独例64.9%で多重癌例が有意に予後不良であった. 多重癌例の死因は他癌死が36%と最も多かった.
    以上, 膀胱癌に, 多重癌は高頻度に発生し予後に大きく影響していたことより, 膀胱癌例においては他臓器多重癌の発生を念頭におき, 注意深い経過観察が必要であると考えられた.
  • 原 靖, 郡 健二郎, 高田 昌彦, 児玉 光正, 石川 泰章, 栗田 孝
    1992 年 83 巻 7 号 p. 1124-1129
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    近畿大学医学部泌尿器科において, 1988年9月から1990年10月までに950例の上部尿路結石に対してESWL治療を施行した. 2回以上ESWLを要した症例 (以下難渋群と記す) は110例であった. また, 1回のみのESWL治療で完全排石を見た症例のうち無作為に抽出した97症例を対照群とし, 2群間を比較し2回以上ESWLを要した原因を統計学的に検討した.
    その結果, 難渋群で有意を持って高かったものは, ESWL以前の自然排石歴 (3回以上), 水腎症の程度の違い, サンゴ状結石の頻度, 中下部尿管結石の頻度であった. また, 有意差がないものの両群間において差がみられたものは, 難渋群においての結石介在期間が長くPNLの既往が多いことであった.
    以上のことより, 上記のような状態にある結石で, 1回目のESWL治療で砕石が不良であった症例に対しては, ESWL単独治療には限界があると思われ, 併用処置や, 他の治療法も適時行う治療方針が必要であると考えられた.
  • 東原 英二, 田中 良典, 堀江 重郎, 有賀 誠司, 奴田原 紀久雄, 本間 之夫, 簑和田 滋, 阿曽 佳郎
    1992 年 83 巻 7 号 p. 1130-1133
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡による左副腎摘除術を47歳の原発性アルドステロン症の男性患者に対して行った. 皮下鋼線吊り上げ方式を併用することで, 大腹圧の低下を計り, 肺大体塞栓の予防に役立つと考えられた. 横隔膜結腸靱帯を切断し, 横行結腸と下行結腸を剥離翻転することで左副腎を露出することができた. 本法は, 従来の開創手術に比して皮膚, 筋肉, 肋骨の切開を必要とせず早期の退院も可能であり, 侵襲も少ない将来性のある術式であると考えられた.
  • 山田 陽司, 木宮 公一, 山口 秋人, 鷺山 和幸, 原 三信, 金城 満
    1992 年 83 巻 7 号 p. 1134-1137
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺小室乳頭腫症の1例を報告した. 無症候性肉眼的血尿を主訴に来院した50歳男性を精査したところ, 前立腺小室内に乳頭状の腫瘍がみられた. 経尿道的に切除したところ, 腫瘍は数層の立方上皮に被われた無数の小絨毛構造からなり, 浸潤や異型はなく, 良性の乳頭腫症と考えられた.
    前立腺小室乳頭腫症は非常にまれで, われわれが検索した過去5年以内では, 類似症例の報告が, 欧米文献で1例みられるのみであった. 本症の臨床像および病理組織像について報告し, 若干の考察を行った.
  • 野村 照久, 坂本 文和
    1992 年 83 巻 7 号 p. 1138-1141
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は63歳, 男性. 1967年より糖尿病を指摘され, 1983年6月より糖尿病性腎症, 慢性腎不全のため血液透析を開始, このときすでに神経症, 網膜症を伴っていた. 1990年6月中旬より亀頭部痛出現し, 3ヵ月後には亀頭全体が黒くミイラ状に変性し, 壊死に陥ったため1990年10月9日, 陰茎部分切断術を施行した. 病理組織学的所見では糖尿病による血管病変を主体とする内腔閉塞, 血栓形成等が広汎に認められた. 陰茎壊死を合併した糖尿病症例の報告は極めて少なく, 本症例は本邦では2例目, 欧米を含めても5例目に相当する.
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