日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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114 巻, 1 号
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原著
  • 蓼沼 知之, 伊藤 悠城, 古目谷 暢, 伊藤 悠亮, 村岡 研太郎, 蓮見 壽史, 林 成彦, 槙山 和秀
    2023 年 114 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    (目的)当院における腎盂尿管移行部通過障害(UPJO)に対するロボット支援腹腔鏡下腎盂形成術(Robot-assisted laparoscopic pyeloplasty:RALP)RALPの初期成績を検討した.

    (対象と方法)2008年4月から2021年10月までに当院で施行した腹腔鏡下腎盂形成術(LP)118例とRALP 22例のうち,再手術症例を除外し,dismembered法で再建したLP 104例,RALP 18例を対象とした.手術成績について後方視的に解析した.また,手術の各行程の所要時間を症例毎に検討した.

    (結果)手術時間の中央値は,RALP群で141分で,LP群に比べて有意に短い結果であった.RALP群ではgrade 3以上の合併症は認めなかった.全例で症状の改善を認めた.RALPの縫合時間の中央値は38分であった.LPの直近20例と比較して,腎盂周囲の剥離時間,腎盂切開の時間,縫合時間でRALP群が有意に短かった.また,導入初期からコンソール時間,縫合時間は安定していた.水腎症のgradeが高い症例において,LPでは腎盂周囲の剥離と縫合時間でばらつきが大きかったが,RALPではばらつきが小さい結果であった.

    (結語)当院でのUPJOに対するRALPは,安全に導入されていると考えられる.今後,長期的な成績を検討し,その有効性を検証する必要がある.

  • 村田 雅樹, 田﨑 正行, 池田 正博, 齋藤 和英, 冨田 善彦
    2023 年 114 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    (目的)当院における腎移植後妊娠の予後と周産期管理法につき検討する.

    (対象と方法)2007年から2021年に妊娠した腎移植患者のうち,データ解析が可能であった9例について後方視的に検討を行った.

    (結果)全例が計画妊娠でカルシニュリン阻害薬とステロイドは継続し,代謝拮抗薬はアザチオプリンに変更した.出産時平均年齢は33±3.8歳,腎移植から分娩まで平均6.5±3.5年,帝王切開5名(55.5%),正常分娩4名(44.5%)であった.分娩週数は平均35±3.0週,出生時の胎児体重は2,336±565.4gであり,胎児奇形は認めなかった.早期分娩の理由は,腎機能悪化が6名(66.7%)と最も多かった.妊娠前の平均血清クレアチニン値は1.11±0.23mg/dL,妊娠中は最大で1.59±0.37mg/dLまで増悪したが,出産後は1.14±0.40mg/dLと改善した.1例は妊娠前に抗ドナーHLA抗体(donor specific antibody;DSA)が陽性で,抗体関連型拒絶反応により腎機能悪化を認めた.1例でde novo DSAが妊娠後に陽性となった.

    (結論)当院における腎移植後妊娠患者において,周産期管理,出産後の移植腎機能は比較的安定していた.ただし,妊娠中はカルシニュリン阻害薬投与量の調節が必要であり,DSAの出現に注意を払う必要があると考えられた.

症例報告
  • 喜多 秀仁, 山川 真季, 河野 玲奈, 宗宮 快, 安宅 祐一朗, 中西 茂雄, 柳原 豊, 二宮 郁, 岡本 賢二郎, 山師 定, 菅 ...
    2023 年 114 巻 1 号 p. 16-20
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    症例は47歳女性.MRIで膀胱筋層に境界明瞭な腫瘤を指摘,内分泌学的検査では有意な上昇はなかったが,123I-MIBGシンチグラフィーでの集積から膀胱傍神経節腫と診断した.腫瘤は隆起しておらず,色調変化もなかったため,詳細な位置は不明であった.MRI(尿管ステント・尿道カテーテル留置)で腫瘍が三角部にあると特定,操作性や視認性を重視し,開腹膀胱内手術を選択した.術中,腫瘤圧迫による一過性の血圧上昇を認めたが,尿管口や内尿道口を損傷することなく,腫瘤を一塊に切除することができた.病理では傍神経節腫と診断された.

    MRI(尿管ステント・尿道カテーテル留置)および開腹膀胱内手術は,本症例のような同定困難な非隆起性膀胱傍神経節腫の部位特定と切除に有用であった.

  • 山師 定, 岡本 賢二郎, 菅 政治, 毛利 晨佑, 宗宮 快, 瀬戸 太介, 安宅 祐一朗, 中西 茂雄, 柳原 豊, 二宮 郁, 藤方 ...
    2023 年 114 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    愛媛県立中央病院では2003年から腹腔鏡下ドナー腎採取術を開始し2016年には200例を超え標準術式になっていた.2016年に馬蹄鉄腎からの腹腔鏡下ドナー腎採取術を経験した.症例は50歳代女性で,造影CTで馬蹄鉄腎であることが判明したが併存症はなかった.腎レノグラムに左右差はなく,腎動静脈がシンプルな左腎採取を行うことにした.尿管の走行と峡部が直視できると判断し経腹膜到達法を選択した.峡部左側動脈支配領域と左腎動脈支配領域の境界を離断部位と決め無阻血で峡部離断を行った後,尿管及び腎動静脈を切離し,左傍腹直筋切開創より摘出した.Bench surgeryで採取腎の開放した腎杯を縫合閉鎖しレシピエントに移植した.術後はドナー,レシピエントとも経過良好である.

  • 谷口 明久, 平川 和志, 間山 郁美
    2023 年 114 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    5年前に膀胱癌に対し膀胱全摘・回腸代用膀胱造設した78才男性.既往は糖尿病.2年前のCTでは右水腎・拡張した代用膀胱・高度の動脈硬化が大動脈に見られた.2022年5月上旬から発熱あり,近医内科を受診し尿路感染症として,5月7日他院内科に入院した.尿培養で大腸菌が検出されたがほぼ全ての抗生剤に感受性があった.CTで,両側水腎症および拡張した代用膀胱,尿路にガスを認めた.抗生剤を4種類使用したが解熱せず,3週後のCTで大動脈周囲リンパ節腫大が出現したため,膀胱癌の再発も疑われ,6月6日当院転院となった.同日のCTで大動脈周囲にガスを伴う軟部組織の肥厚があり,また動脈壁石灰化の断裂も見られ進行した感染性大動脈炎と考えられた.水腎症は軽減していたが代用膀胱の拡張を認めた.また管理不十分の糖尿病があった.抗生剤の変更・尿道カテーテル留置によるドレナージ・血糖コントロールの強化を開始した.翌日にはほぼ解熱.しかし,入院2日目に意識低下と腹部膨満が出現.CTで後腹膜右側に血種を認めた.徐脈・呼吸停止となり,人工呼吸器管理・輸血等を行い,一時的に軽快したがその2日後死亡した.代用膀胱で慢性尿閉により尿路感染を来し,管理不十分な糖尿病により悪化し,元来高度な動脈硬化もあり感染性大動脈炎を発症.大動脈から後腹膜に出血し死亡した.

  • 谷口 明久, 平川 和志, 間山 郁美
    2023 年 114 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    骨盤内動静脈奇形(AVM)を有する前立腺癌に対し経カテーテル動脈塞栓術(TAE)せずにロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術(RARP)を行った.出血量は250mlで,TAE後のRARPした症例の報告に比較しても少なかった.また非AVM側のリンパ節郭清を追加してのロボット操作時間は2時間40分,総手術時間3時間2分で終了した.ロボット手術操作そのもの・膀胱頚部切断前に前立腺に流入する内腸骨動脈の分枝の結紮切断・deep dorsal vein complexの集簇結紮・AVMと連続する血管束の処理を前立腺精囊摘出の最後に行ったことが 出血少なく手術を安全に行えた要因である.また,病理結果では切除断端は陰性で癌の治療として問題なかった.また術後3カ月のPSAは0.006ng/ml.その時点のCTでは骨盤内AVMは著変なく,血腫などの合併症は無かった.骨盤内AVMを有する前立腺癌のRARPはTAE無しで安全に施行でき,かつ癌の治療としても有効である.

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