視覚による性的刺激 (visual sexsual stimulation: VSS) による生理的な勃起及びプロスタグランディンE
1 (PGE
1) の陰茎海綿体注射による勃起時の陰茎海綿体血流量の変化を
133Xeクリアランス法より求め, 陰茎血流動態の検討と血管系からみたインポテンスの原因の診断を試みた.
VSS負荷による完全勃起はインポテンスの12例と射精障害の4例の計16例で得られた. PGE
1の陰茎海綿体注射をインポテンスの102例に施行して69例に完全勃起が得られた.
VSS負荷の16症例の陰茎海綿体血流量は, 負荷前1.95±1.35 (ml/100g/min) 負荷後10.71±3.96 (ml/100g/min) と勃起により著明に増加した. PGE
1負荷の102症例中完全勃起の得られた69例の血流量は, 負荷前2.00±2.45 (ml/100g/min) 負荷後6.28±2.43 (ml/100g/min) と, VSS負荷症例ほどの増加は認められず, PGE
1の陰茎海綿体注射による勃起と生理的勃起とは機序が異なることが示唆された.
血管系の病変を高頻度に有すると考えられる糖尿病症例及び60歳以上の高齢症例の群と脳脊髄疾患の症例の群について比較したところ前者においてPGE
1負荷前の血流量が低値であり, 動脈系の病変の影響が示唆された.
また, 負荷後の血流の増加が充分であるにもかかわらず有効な勃起の得られない症例があり, このような症例では, 陰茎海綿体の血液保持能力の低下, すなわち静脈性インポテンスの存在が疑われた.
133Xeクリアランス法によりPGE
1の陰茎海綿体注射による勃起時の陰茎海綿体血流量を測定することにより, インポテンス症例の血管病変の診断が可能であると思われた.
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