日本泌尿器科学会雑誌
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81 巻, 5 号
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  • 阿曽 佳郎
    1990 年 81 巻 5 号 p. 661-671
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    In adrenal surgery, of note are increase of the incidence of incidentaloma because of a rapid advance of various image diagnostic procedures, change of the approach of choice due to the more accurate preoperative localization of the adrenal lesions, and the treatment of bilateral lesions. Additionally, the treatments of adrenocortical carcinoma and malignant pheochromocytoma and the method of cortisol withdrawal in Cushing's syndrome were reviewed and discussed. It is important for urologists to perform adrenal surgery appropriately by preoperatively elucidating the full picture of adrenal disorder.
  • 松崎 章
    1990 年 81 巻 5 号 p. 672-679
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    除脳ネコを使用して, 橋における蓄尿機構の解明を目的として実験を行った. 吻側部橋に微小電気刺激を行い, 外尿道括約筋の活動のみが増強する部位を検索した. 続いて, その部位に対する持続的電気刺激と carbachol, noradrenaline, enkephalin および抑制性アミノ酸の γ-amiobutyric-acid (GABA) の微量注入による化学的刺激が, 生理的食塩水の膀胱内注入により誘発した反射性排尿に及ぼす効果を検討した. 組織学的には, 電気的および化学的刺激した部位は青斑下核であった. 膀胱空虚時に青斑下核を電気刺激すると, 外尿道括約筋の活動が増強し, 持続電気刺激では, 膀胱収縮の出現が抑制され, 膀胱容量が増加した. 一方, この部位に carbachol, noradrenaline および enkephalin を微量注入すると膀胱容量が増加し, GABAでは膀胱容量が減少した. 以上から青斑下核には choline, noradrenaline, enkephalin およびGABA受容性細胞などが存在し, 青斑下核の興奮は外尿道括約筋を収縮させるだけでなく, 膀胱容量を増加させることにより蓄尿機構に関与していると考えられた.
  • 棚橋 豊子, 難波 克一, 村尾 烈
    1990 年 81 巻 5 号 p. 680-685
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    再燃前立腺癌に対する治療の反応性を検討する目的で, 前立腺癌患者の内分泌療法前, 及び内分泌療法に抵抗性となった時点での前立腺組織について, 病理組織学的分化度, 細胞形態, 前立腺のマーカーとされているPAP, PAγ-Sm, Leu-7の陽性率を検索し, 臨床経過との相関を検討した.
    1981年から1988年までに当科を受診し, 内分泌療法前及び内分泌に抵抗性となった時点での組織学的検討がなされた9例の前立腺癌患者を対象とした.
    結果は, Group I (細胞形態が変り, マーカー陽性率の低下するもの) は内分泌療法感受性期間が短く, 化学療法に対する反応性が乏しく, 早期に死亡する群, Group II (細胞形態は変らず, マーカー陽性率の低下するもの) は内分泌療法感受性期間が長く, ゆっくりと進行してゆく群, Group III (細胞形態は変らず・マーカー陽性率も変らないもの) は内分泌療法非感受性となった時点で化学療法あるいは放射線療法に反応する群と分類され, 細胞形態, マーカー陽性率の変化による分類により再燃前立腺癌に対する治療法の選択, 予後の予測が可能であることが示唆された.
  • 小林 幹男, 松尾 康滋, 戸塚 芳宏, 岡村 桂吾, 田村 芳美, 山中 英寿
    1990 年 81 巻 5 号 p. 686-693
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1961年~1988年までに群馬大学泌尿器科で入院治療を行った150例の腎細胞癌を対象として, 診断の契機に関する臨床的検討を試みた.
    方法としては超音波検査 (US) とCTスキャン (CT) が導入される以前の1961年~1979年までの前期 (63例) と導入以後の1980~1988年までの後期 (87例) に分けて比較を行った.
    患者数は年度別推移で増加を認めた.
    症状別分類では, 前期63例のうち有臨床症状例 (suspected case) は62例で, 残りの1例 (1.6%) が偶然発見例 (incidental case) であったが, その診断は排泄性腎盂撮影 (IVP) によるものであった. 後期87例では偶然発見例が29例 (33.3%) と増加を認めたが, それらの診断は19例がUS, 6例がCTによるものであった.
    予後に関しては前期と後期での比較で統計学的に有意に後期の予後が良好であった.
    また, 後期における有臨床症状例 (58例) と偶然発見例 (29例) での病期進展度, 予後に関する検討でも, 後者において統計学的に有意に low stage の症例が多く, また予後も良好な成績を得た.
    腎細胞癌に対するUS, CTの診断への応用は予後を改善する一因となっているものと考えられた.
  • マウスの頭頂部皮下移植系による治療実験モデル
    西嶋 由貴子, 根本 良介, 小磯 謙吉
    1990 年 81 巻 5 号 p. 694-700
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    マウスの膀胱癌 (MBT-2) を用いて, 骨転移の治療実験のための新しい動物モデルを確立した. 皮下移植腫瘍を摘出して細胞浮遊液を作成し, マウスの頭頂骨の骨膜を擦過した後その0.2mlを頭部皮下に接種した. 約3週間後, 腫瘍塊と共に頭頂骨を摘出し, X線写真と病理組織検査で観察した. その結果, 摘出頭頂骨のX線所見は広範な破骨性変化を示し, 病理組織所見では破骨細胞を伴う溶骨性変化が主で一部に骨硬化性の像を認めた. この変化は bisphosphonate の一種であるAPD (3,10mg/kg)を連日投与することにより阻止することができた.
  • 一条 貞敏, 小関 清夫, 坂上 善成, 白岩 康夫
    1990 年 81 巻 5 号 p. 701-706
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌の治療効果を細胞学的に判定する目的で, 内分泌療法施行前立腺癌31例について細胞診所見を検討した. 細胞診は独自に開発した前立腺液細胞診法で, 既に発表ずみのものである.
    いずれの内分泌治療であれ, 前立腺液内癌細胞はまず膨化円形化, ついで偏平上皮と化し, 細胞質内には黄褐色の顆粒が出現する. この変化は投与約2週間で既に現れ, ついには角化落屑した細胞片のみとなり, 癌細胞は消失した. しかし, この変化の程度は症例により異なり, 偏平上皮化生をみるも癌細胞が残存するもの, 癌細胞に著変を見ないものなどがあった. 癌細胞残存例では効果が不十分とみられ, 角化偏平上皮化し癌細胞の消失した例より有意に癌死例が多かった.
    本細胞診法は前立腺癌の治療効果判定法としても極めて効果的といえる.
  • 武田 正之, 片山 靖士, 木村 元彦, 片桐 明善, 斉藤 和英, 小原 健司, 米山 健志, 佐藤 昭太郎, 木村 元政, 椎名 信, ...
    1990 年 81 巻 5 号 p. 707-712
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    原発性副甲状腺機能亢進症患者11例に対して, 各種局在診断法による術前診断と病理学的所見を比較した.
    1. 正診率は選択的甲状腺静脈血採取法, MRIが75%と最も高く, 2核種シンチグラフィーが62.5%, エコーは57.1%であり, CTは25%と最も低かった.
    2. 新しい局在診断法であるMRIの現時点における欠点は, リンパ節と腺腫, 過形成を鑑別できないことであった.
    3. 原発性過形成の小病変を見逃さないためには, 初回手術時でも各種局在診断法を施行すべきであると考えられた.
  • 江左 篤宣, 内田 亮彦, 際本 宏, 大西 規夫, 杉山 高秀, 朴 英哲, 秋山 隆弘, 栗田 孝
    1990 年 81 巻 5 号 p. 713-718
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    各種萎縮膀胱, 神経因性膀胱に対する腸管利用による膀胱拡大術は, 腎機能保持・尿失禁治療における有用性, また長期成績の向上から積極的に行なわれるようになってきた.
    今回, 我々は当教室において経験した膀胱拡大術の臨床成績について追跡調査した. 1975年5月近畿大学医学部泌尿器科学教室開設以来, 現在までに膀胱形成術を施行した15例(男:2例, 女:13例, 年齢4~65歳) を対象とした. 原疾患は神経因性膀胱5例, 子宮癌術後6例, 膀胱結核3例, 間質性膀胱炎1例であった. 術式は ileocecal cystoplasty 12例, ileal-patch cystoplasty 2例, ileal-cup patch cystoplasty 1例であった. 後術平均観察期間は54ヵ月であった. 死亡例を3例に認めたが, 2例は子宮癌再発, 1例は膀胱癌新発生であった. 死亡例を除き, 全例術後水腎症の悪化を認めず, 機能的膀胱容量は300ml以上に増大した. 小児神経因性膀胱例を除き, 残尿はほとんど認めず, 間欠自己導尿を必要としなかった. 全例尿失禁は認めなかった. 小児神経因性膀胱の1例で骨盤内膿瘍のため, 29ヵ月後に回盲部導管造設術を施行した.
  • 神部 広一, 田口 勝行, 斎藤 敏典, 庵谷 尚正, 白井 修一, 近田 龍一郎, 福崎 篤, 桑原 正明, 折笠 精一
    1990 年 81 巻 5 号 p. 719-725
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    排泄性腎盂造影フイルムから定量的に腎機能を推定することを目的として, 尿量を測定せずに尿中の造影剤濃度のみからGFRを求めることの可能性を検討した. 造影剤をワンショットで投与した場合, 約60分を経過すれぼ, 単一コンパートメントモデルを適用して取り扱うことができ, さらに尿量の変動も少ないことも考慮すると, GFRと細胞外液量の比は時間を変えて測定した2つの尿中の造影剤濃度の比の対数から求められることを示した. 動物実験により尿中の造影剤濃度の推移曲線を求めて本法により解析した結果, 実測のクレアチニンクリアランス値と良く一致した.
  • 本間 之夫, 杉本 雅幸, 簑和田 滋, 東原 英二, 阿曽 佳郎
    1990 年 81 巻 5 号 p. 726-731
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1975年から1988年末までに, 東京大学泌尿器科で治療した腎細胞癌124例につき, その臨床像と治療成績を検討した. その結果, 最近の特徴として偶然発見される症例が増加していること, 手術方法に腎保存術が取入れられつつあること, 補助療法にBRMが頻用されつつあることがあげられた. 生存率の検討では偶然発見例, 血沈正常例, 病理構築上嚢胞型の例などの予後は良好であったが, 転移巣のある症例や Grade 3の症例は不良であった. 予後の推定には TNMV stage や Robson stage などの病期分類が有用であったが, 同じ病期にかなり予後の違う症例も含まれていた. 以上より, 今後の腎細胞癌の治療成績の改善には, 健康診断などによる早期発見を行うこと, 治癒切除後の再発転移の出現を防止する有効な手段を検討することが肝要と考えられた. また, 効果判定上からもより適切な背景因子の分類方法が必要と思われた.
  • 渡辺 博幸
    1990 年 81 巻 5 号 p. 732-738
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    視覚による性的刺激 (visual sexsual stimulation: VSS) による生理的な勃起及びプロスタグランディンE1 (PGE1) の陰茎海綿体注射による勃起時の陰茎海綿体血流量の変化を133Xeクリアランス法より求め, 陰茎血流動態の検討と血管系からみたインポテンスの原因の診断を試みた.
    VSS負荷による完全勃起はインポテンスの12例と射精障害の4例の計16例で得られた. PGE1の陰茎海綿体注射をインポテンスの102例に施行して69例に完全勃起が得られた.
    VSS負荷の16症例の陰茎海綿体血流量は, 負荷前1.95±1.35 (ml/100g/min) 負荷後10.71±3.96 (ml/100g/min) と勃起により著明に増加した. PGE1負荷の102症例中完全勃起の得られた69例の血流量は, 負荷前2.00±2.45 (ml/100g/min) 負荷後6.28±2.43 (ml/100g/min) と, VSS負荷症例ほどの増加は認められず, PGE1の陰茎海綿体注射による勃起と生理的勃起とは機序が異なることが示唆された.
    血管系の病変を高頻度に有すると考えられる糖尿病症例及び60歳以上の高齢症例の群と脳脊髄疾患の症例の群について比較したところ前者においてPGE1負荷前の血流量が低値であり, 動脈系の病変の影響が示唆された.
    また, 負荷後の血流の増加が充分であるにもかかわらず有効な勃起の得られない症例があり, このような症例では, 陰茎海綿体の血液保持能力の低下, すなわち静脈性インポテンスの存在が疑われた.
    133Xeクリアランス法によりPGE1の陰茎海綿体注射による勃起時の陰茎海綿体血流量を測定することにより, インポテンス症例の血管病変の診断が可能であると思われた.
  • 栗栖 康滋, 富樫 正樹, 北原 学, 柿崎 秀宏, 永森 聡, 小柳 知彦
    1990 年 81 巻 5 号 p. 739-742
    発行日: 1990/05/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は41歳女性で, 内科的治療に抵抗する高血圧を主訴に当科を受診した. 血圧は200/140mmHgと高血圧を示し, 末梢血レニン活性も3.1ng/ml/hrと高値を示した. 血管撮影では両側腎動脈に狭窄を認めた. 責任病巣診断のためカプトプリル負荷99mTc-DTPA腎シンチグラフィーを行うと, 負荷前シンチグラフィーに比較し右腎GFRの有意な低下を示した. そのため右腎動脈 Percutaneus transluminal angioplasty (以下PTAと略す) を施行したが, 高血圧は持続した. 再度カプトプリル負荷腎シンチグラフィーを行ったところ, 右腎GFRは低下しなかったが, 対側左腎GFRが有意に低下した. 再度左腎PTAを施行したところ高血圧は改善し, カプトプリル負荷腎シンチグラフィーにても, 両腎GFRの低下は消失した. カプトプリル負荷腎シンチグラフィーは腎血管性高血圧の病側診断および治療効果判定に有用と思われた.
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