土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
72 巻, 6 号
選択された号の論文の37件中1~37を表示しています
環境システム研究論文集 第44巻
  • 吉永 弘志, 大河内 恵子, 長谷川 啓一, 井上 隆司
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_1-II_8
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     植樹帯による道路交通騒音の低減量のうち地表面による減衰は既存の知見で計算することができるが, 樹木による減衰(以下, 「Awoods」という.)は, 知見が確立していないため計算することができない. そこで, 本論文では公園および公道でAwoodsを測定し, 文献値と比較した.公園の測定では回折や地表面による減衰の影響がない条件を設定し, 半球型の無指向性スピーカから発したピンクノイズを試験音源とし, 測定値を道路交通騒音の周波数特性の値に変換した. 公道での測定では等価騒音レベルLAeqの測定値から回折, 地表面効果, および空気吸収の影響を計算で除外し, Awoodsを逆算した.
     Awoodsの測定値は, 公園では-0.23, および-0.17 dB/m, 公道では-0.12, -0.10, および-0.04 dB/mとなり, 文献値(複数)の中間程度の値となった.
  • 尾花 まき子, 日髙 諒, 戸田 祐嗣, 辻本 哲郎
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_9-II_14
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     河川環境の適正な管理に向けては,河川が有する生態系機能を明らかにすることが求められている.本研究では,河道内砂州が持つ水質浄化機能として注目されている,砂州伏流水による脱窒作用に着目する.伏流水の流動に伴う脱窒は,主に,場に依存する土壌環境条件による反応とその場を通過する伏流水による移流の効果が支配的である.ここでは,平水時の砂州内縦断方向へ伏流水駆動が卓越する現象に対象を絞り,窒素濃度変化の連続観測の結果をもとに,砂州の水質浄化機能としての最大脱窒能を定量化する手法を構築した.その手法を,砂河川交互砂州形成区間にいずれも位置する庄内川,木津川,矢作川砂州に適用し,各砂州の最大脱窒能を比較したところ,庄内川砂州の水質浄化機能が最も高いことが示唆された.
  • 針谷 将吾, 石井 一英, 佐藤 昌宏, 藤山 淳史, 古市 徹
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_15-II_21
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     年間900万t発生する稲わらのエネルギー利用が求められている.稲わらペレットを,近年普及が進む家庭用木質ペレットストーブで燃焼した場合,灰分が多いため燃焼阻害が発生し長時間燃焼が難しい.本研究はその燃焼阻害の原因を明らかにした上で,稲わらと木質を成形時に混合する稲わら・木質混合ペレットの家庭用木質ペレットストーブへの利用を検討した.その結果,燃焼阻害は,通説であるクリンカ形成以前に,灰が火格子上に粗に堆積することで発生することが分かった.また混合ペレットは,同割合の稲わらと木質ペレットの混焼に比べ,灰の粒度が小さく密に堆積するため,火格子上の灰の体積が小さくなり,さらに稲わら混合率10%の場合,稲わら100%の場合よりも長時間連続燃焼可能であることを示した.
  • 靏巻 峰夫, 久保 朱里, 山本 祐吾, 吉田 登
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_23-II_34
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     少子高齢化,過疎化の問題に同時に直面する地方圏域では生活排水処理,廃棄物処理等の静脈系インフラの維持運営は難しさを増している.加えて,低炭素社会や経済性の要請によってインフラ運営が非効率にならないよう改善も必要とされている.本研究では,従来,別系統のシステムで運営されている生活排水処理と可燃ごみ処理を連携させてエネルギーリサイクルの促進と効率化を図ることによって,このような圏域でも適用できるシステムにより削減できる温室効果ガス量を検討したものである.可燃ごみのメタン発酵,発酵分離水の処理,発酵残渣及び排水処理汚泥の焼却等の対策に技術進展を加味した連携によって現在のシステムに対して約40%の削減の可能性があることがわかり,連携の有効性を明らかにした.
  • 飯野 成憲, 荒井 康裕, 稲員 とよの, 小泉 明
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_35-II_44
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     本論文では,一般廃棄物最終処分場の延命化に寄与すべく,大都市におけるごみ焼却主灰のセメント資源化のシステム最適化を検討した.まず,セメント原料の化学成分を考慮し,既存セメント工場への主灰受入可能量を推計した.次に,既存セメント工場,新設エコセメント工場で資源化を実施した場合の主灰処理計画モデルを提案した.モデルによる分析の結果,主にトラック及び内航船舶による既存セメント工場への輸送が優先的に行われ,単独の自治体によるエコセメント工場は新設されないことがわかった.次世代型のエコセメント工場として他県との共同運営を検討し,既存工場とともに費用便益分析を行ったところ,今後既存工場での処理量を段階的に増やすのではなく,早期に他自治体とのエコセメント工場の共同運営を検討するべきであることが示唆された.
  • 中久保 豊彦, 小林 緑
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_45-II_56
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     本研究では群馬県を対象とし,地域特性としてごみ焼却施設にボイラ・タービン発電の導入が想定されるごみ処理広域化ブロック,乾式メタン発酵の導入が想定されるブロックに類型した.特徴的なそれぞれのブロック(前者:太田館林,後者:吾妻)において,し尿・浄化槽汚泥等の処理・焼却機能をごみ焼却施設や下水処理施設に統合化する更新ケースを設計し,エネルギー消費量と温室効果ガス(GHG)排出量で評価した.太田館林ではし尿処理施設で発生する脱水汚泥をごみ焼却施設で乾燥・混焼させる連携ケースの導入により,熱回収ケースと比較してGHG排出量を13%削減できる可能性を示した.吾妻ではメタン発酵を活用してし尿処理施設を廃止させる連携により,15%のGHG排出削減効果が得られる結果となった.
  • 奥田 拓也, 中尾 彰文, 山本 祐吾, 中久保 豊彦, 吉田 登
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_57-II_66
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     下水汚泥のエネルギー利活用の推進が求められる中,本研究は下水処理場と産業工場,ごみ焼却場のインフラとの連携による全国でのGHG削減効果とその影響要因について分析した.まず全国の下水処理施設での未利用汚泥熱量と各地域の汚泥熱量と産業工場,ごみ焼却場の受入可能熱量との関係について考察した.次に,各汚泥燃料化技術のGHG収支をもとに汚泥燃料の産業工場,ごみ焼却場への配分ルールを設定し,下水汚泥の燃料利用による全国レベルでのGHG削減効果を推計した.分析の結果,150km圏内の製紙・セメント・石炭火力での汚泥燃料利用及び下水処理場と同一市町村内のごみ焼却場での汚泥混焼により全未利用汚泥量の約85%のエネルギー利用が可能であり679千t-CO2のGHGが削減されると推計された.さらに製紙工場での汚泥混焼率の変化がGHG削減量に及ぼす影響の地域的な特徴を明らかにした.
  • 松田 雄太郎, 中尾 彰文, 山本 祐吾, 吉田 登
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_67-II_78
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,兵庫県臨海地域をケーススタディの対象として,社会変化の影響を考慮し,セメント生産インフラを活用した下水汚泥固形燃料化の供給と受け入れポテンシャルを中長期で推計した.その上で,この連携システムにおける技術導入に伴う温室効果ガスの排出量も推計した.その結果,1) セメント産業の動向の範囲内であれば,技術展望オプションでは5箇所の下水汚泥処理施設分の汚泥を受け入れ可能ということ,2) セメント産業の成長を見込み,技術展望オプションが想定できるとき,6箇所分の汚泥を受け入れ可能となること,3) セメント生産インフラと連携して下水汚泥由来の固形燃料を有効活用するシステムはGHG削減ポテンシャルが高く,従来の汚泥処理が継続されていた場合と比べた2015~2040年におけるシステム全体のGHG総削減量は最大で4, 336[千t-CO2/年](GHG排出量125.4[%]削減)となることが明らかになった.
  • 津田 守正, 岩見 洋一
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_79-II_85
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     近年の家庭等における節水型機器の普及や,洗濯等における水の再利用など,家庭の水使用形態の変化を,長期的な水資源計画等において考慮することが重要になってきている.本論文では,上水道の給水制限時における,家庭の使用水量の変化を詳細に推計するため,複数月の使用水量の集計値である世帯別検針データから,集計値の時間的配分手法を用いて,日使用水量を推計する手法を提案した.上水道の検針データは世帯により集計期間が異なるため,給水制限時の使用水量を横並びで比較することが困難であるが,提案した手法により日使用水量が推計されるため,統一的な評価が可能となる.本手法を適用することで,世帯毎の検針日の相違にかかわらず,同等の推計結果が得られることを示した.
  • 石河 正寛, 松橋 啓介, 有賀 敏典
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_87-II_94
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     建物ポイントデータを用いた民生家庭・業務部門のエネルギー消費量の推計手法を改善し,地球温暖化対策地方公共団体実行計画の策定に資するデータを提案する.床面積に関する統計値を組み合わせて集合住宅の共用部の割合を示し,都道府県別および市別に戸建住宅,集合住宅,非住宅の用途の別に基準となる床面積を求めた.これを対応する用途別に集計した建物ポイントデータの床面積で除し,補正係数を算出した.補正した床面積に空家率も考慮して原単位を乗じることでエネルギー消費量を推計し,これを都道府県別および政令市別の各種エネルギー統計値と比較することで,従来手法よりも高い再現性が得られることを確認した.この方法による市のエネルギー消費量およびその分布を用いることで,街区等でのエネルギー対策による削減量の見積が容易になる.
  • 中道 久美子, 花岡 伸也, 関 建新
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_95-II_106
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     中国のCO2排出量は世界最大であり,全世界の20%以上を占める.国土が広く各省の特徴が異なる中国では,サプライチェーンの上流である産業と,下流である家計消費,人口,都市化率の両面からCO2排出量への影響を考慮し,将来の削減策を検討する必要がある.本研究では,現状の直接排出量及び家計消費に基づく誘発排出量を省市区別都市・農村別に推計した後,将来の経済発展や政策による間接排出原単位,家計消費,人口,都市化率の変化を考慮した省市区別誘発排出量を推計した.将来の地域開発政策や都市化,家計の消費構造の変化がCO2排出量を増加させる一方,上流の間接排出原単位の改善によりCO2排出量が減少することがわかり,上流への対策が排出量削減目標達成を大きく左右することが明らかになった.
  • 陳 鶴, 谷口 守
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_107-II_118
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     地方分権が進み,自治体と居住者と協力しながら,地球環境問題の解決が必要となる.そのため,居住者意識を把握する上で,広く環境改善のインセンティブが居住者にも行政にも及ぶ仕組みが求められている.本研究では,茨城県におけるアンケート調査に基づき,ライフスタイルの見直しが自治体間の環境バランスに与える影響について,環境バランスエリア概念を用いて分析を行った.結果:1,都市規模が大きくなるほど,一人当たりの環境負荷量と環境受容量が低くなる傾向を示している;2,主婦の食料自給率潜在上昇可能性が相対的に高く,壮年有職者の交通と家庭エネルギー消費潜在削減可能性が相対的に高い;3,シナリオ実施後の環境バランスエリアの範囲が縮小し,目標値に達成したエリアも増えた.
  • 鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 鎹 敬介, 小原 徳晃, 桃谷 和也, 定地 憲人
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_119-II_125
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     洪水中や洪水後の水は濁度を含んでいる.多くの魚は遊泳中に目や側線を使っていることから,濁度は魚群の遊泳特性に影響を及ぼす可能性がある.しかしながら,濁度と魚群の遊泳挙動に関する既往の研究は少ない.本研究では,静止流体中での濁度と魚の尾数の変化によるアユ魚群の遊泳挙動をビデオカメラによって記録した.その結果,濁度の増加によって魚群はいくつかの魚群に分裂することが判明した.これは,アユは遊泳中に魚群から離れた個体が濁度による視界の悪化のため,元の魚群に復帰することが困難になったために生じたと考えられる.これに加えて,濁度の増加で視界が悪くなり,個体間距離を減少させている.
  • 鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 高松 周平
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_127-II_132
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     わが国における魚道は階段式魚道が多数を占めるが,その多くはコンクリート製である.そのため魚道プールの壁面は灰色であることが多く,表面に塗装が施されることはほとんどない.一方既往の研究で,赤色がアユ(Plecoglossus Altivelis Altivelis)の忌避色であることは明かされたが,選好色については明かされていない.魚の忌避色あるいは選好色を魚道内に塗装することで遡上率が向上するのであれば,安価な既設魚道の改良が可能である.本研究では忌避色である赤色とその他三色を魚道プール内に塗装し,遡上率の変化を見た.その結果,上流側切欠き付近を黄色で塗装すると,黄色を選好して遊泳位置が上流側切欠きに移動し,結果的に遡上率の向上が見られた.
  • 青木 宗之, 菊池 裕太, 坂間 睦美
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_133-II_141
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     本研究は,水制周辺の流れおよび河床形状が魚類の遊泳行動に及ぼす影響を,流速V=√(u2+v2)および渦度ωzに着目し,検討を行った.そのために,水理実験および実魚(平均体長(BL)=5.9(cm)のウグイ)を用いた挙動実験を行った.
     その結果,流量の異なる2ケースともに,河床洗掘箇所に大きな差異はなかった.また,水制による治水(流速低減,水刎ね)機能が確認された.水制により流速低減した水制下流側で,魚が滞留する傾向にあった.魚の滞留箇所の流速Vは,25(cm/s)(巡航速度4BL(cm/s))以下であり,渦度ωzの大きさが2(rad/s)以上であった.河床材料が粗礫の場合,魚の水制下流側での滞留時間は,粗砂の場合に比べて1.7倍増加した.
     以上より,水制周辺の流れや河床形態が,魚の生息場になり得ることが示唆された.
  • 鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 宍戸 陽, 武田 知秀
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_143-II_148
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     環境に配慮した河川整備において,現在の河川では洪水時に魚類の避難場となりうる空間が乏しいという問題点が挙げられる.既往の研究によって,洪水時に魚類は比較的流速の遅い場所に避難することが知られているが,避難行動と河川構造物との関連性の解明は十分になされていない.本研究の目的は魚類の避難場所として重要視されているわんどがその効力を発揮する幾何学的構造の解明である.開水路側壁に開口部を設け,その長さを系統的に変化させていった.流速を次第に増加させていったときのオイカワの行動をビデオカメラで撮影し,開口部長さの違いによる行動の変化を調べた.結果として,開口部長さがオイカワの体長の8倍以上のときわんど部への避難行動が積極的になった.
  • 高見 徹, 神田 佳一, 渡部 守義
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_149-II_155
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     本研究では竹炭による都市河川の水質改善効果を定量的に評価するため,加古川水系養田川の旧河道(公園内水路)における実証実験とともに竹炭の溶存態有機物の吸着性能を評価し,公園内水路における竹炭のBOD低減効果を見積もることを目的とした室内実験を行った.その結果,実証実験おいて竹炭によるSSとBODの低減効果が認められた.また,室内実験においてFreundlich型吸着等温線による竹炭のメチレンブルー吸着性能とBOD成分(グルコース)の除去効果を評価し,公園内水路のBODを低減するために必要な竹炭質量を見積もることができた.
  • 田辺 篤志, 皆川 朋子
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_157-II_165
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     日本には約70種のシギ・チドリ類が飛来するが,このうち13種がレッドリストに掲載されている.これらの6種を対象に,九州沿岸部の生息適地を干潟とその周辺の土地区分に着目して推定し,これを踏まえて保全に向けた考察を行った.推定には,モニタリングサイト1000シギ・チドリ類調査による飛来データと土地区分を用いた.MaxEntによる解析の結果,河川・湖沼と干潟が重要である一方,森林や市街地は負の寄与が明らかになり,生息適地は,有明海や周防灘,八代海の沿岸部のほか,日向灘や奄美大島の沿岸部が推定された.レッドリスト記載種が飛来する生息地を保全するためには,保護区に指定されていない生息確率が高い場所の保護区の指定や干潟周辺も含めた保全が重要であり,日向灘や薩南諸島では現在飛来調査が少なく調査を行う必要があることが示唆された.
  • 岡村 麻矢, 上杉 幸輔, 皆川 朋子
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_167-II_176
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     菊池川では氾濫原に依存して生息する魚類(氾濫原依存魚種)が激減しており,氾濫原依存種を保全するためのワンドやたまり等の河道内氾濫原水域の造成等の対策が必要である.本研究では,菊池川における氾濫原依存魚種の保全にむけた知見を得るため,河道内氾濫原水域をタイプ分類し,それぞれが有する氾濫原依存魚種生息場としての機能を評価した.その結果,固定砂州たまりや水域面積の大きな固定砂州ワンドで氾濫原依存種が多く確認され,特に,氾濫原依存種で絶滅危惧種であるタナゴ類,ミナミメダカ,ツチフキ3種の保全には,固定砂州上のワンド・たまりが重要であることが示唆された.一方で,砂州上に形成されたワンド(砂州尻ワンド,砂州中腹ワンド,砂州頭ワンド)は,オイカワやカワムツの稚魚の生息場として機能していた.
  • 岸本 圭司, 稲員 とよの, 小泉 明, 長谷川 浩市, 畑中 哲夫, 道浦 吉貞
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_177-II_185
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     耐震性貯水槽は流入管に対して口径が大きくなるため内部の水の流れが遅くなり,滞留領域の発生が懸念される.また,貯水槽は配水管網の末端に設置されることもあるため,貯水槽内部の流れ場とともに,残塩濃度の管理が重要である.本研究では,流入流量の変化に伴う耐震性貯水槽内部の流況変化を数値流体解析により検討した.はじめに,代表的な貯水槽形状における流れ場を解析し,滞留領域の発生位置および流入出部の残塩濃度変化を把握した.次に,実運用されている貯水槽の流入出部における残塩濃度を測定した結果と解析結果を比較し,解析の妥当性を確認した.そして,同解析手法により貯水容量100m3規模の貯水槽における流入流量を低下させた場合の流れ場を検討したところ,日流量が10m3/day以下になると,貯水槽内部および流出部の残塩濃度が流入時より大幅に低下し,水質面での懸念が判明した.
  • 川村 和湖, 荒井 康裕, 小泉 明, 稲員 とよの, 横川 勝也, 加治 克宏, 鈴木 賢一, 有吉 寛記, 森山 慎一
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_187-II_194
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     水道管路の漏水防止対策に着目すると,高度な技術を有する調査員が,漏水音を聞き分ける方法で実施され,音の大きさ・高さ・音色を聞き分けていると仮定できる.近年,人材不足から技術力の継承が問題となり,今後は聴覚と経験による従来技術に代わる機械的な方法が必要となる.そこで本研究では,漏水有無の判別に有効な情報の明確化を目的に,異なる条件下で測定した漏水音データに関して,録音機で観測された波高値の時系列変化,並びにフーリエ変換した周波数スペクトルの特徴を分析した.判別分析の結果,漏水判別に有効な周波数領域は,DIPでは約1,000[Hz]~5,000[Hz],PEでは約500[Hz]~1,500[Hz]の範囲であることが示唆された.また,漏水箇所と録音機の位置関係や漏水量の多少が,漏水判別の精度に対して影響を及ぼすことが明らかとなった.
  • 荒井 康裕, 尾崎 和信, 小泉 明, 稲員 とよの, 細谷 昌平, 戸張 岳史, 松葉 香奈, 村山 聖
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_195-II_203
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     環境問題に対する取り組みは,あらゆる分野における重要な課題となっている.水道分野でも省エネルギー化に関する様々な施策が実施されている.特に,水道水を輸送する過程において多くの電力使用量を要するため,当該プロセスでの電力量削減が課題になっている.本研究では,東京都水道局の送配水システムを対象にした電力使用量の削減を目的に,最適化モデルの提案,並びにシミュレーションを試みた.第一に,対象地域の一部を想定した仮想ネットワークを対象にした検討を行った.配水池の運用条件(初期貯水量並びにローテーション時間)の差異が及ぼす電力使用量への影響を明らかにした.第二に,管路の二重化や浄水場・給水所を新設・拡充した場合の将来ネットワークに対する検討を行った.最新の改良モデルを適用し,安定給水の確保とエネルギー削減がどのようにバランスし得るのかを明らかにした.
  • 長谷川 高平, 荒井 康裕, 小泉 明
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_205-II_216
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     近年,送配水システムの資産管理をより合理化するためにライフサイクルアセスメント(LCA)の概念を応用したシステム最適化が行われる事例が増えてきたが,その結果を大きく左右する社会的割引率(SDR)の在り方についてこれまで十分な議論がなされてこなかった.そこで本研究は,SDR見直しの方向性を確立するとともに今後の関連研究が解決すべき課題を明らかにすることを目的に既往研究の現在価値化の適用事例及び理論の整理と送水システムを対象としたLCAへのSDRの感度分析を行った.事例整理と感度分析を通して,(1)実勢の利回り及び対象国債の償還年限と現行のSDRの乖離,(2)温室効果ガス排出への減価償却の適用は不適切である,(3)相対的に高いSDRの維持による将来世代との不公平の拡大,の3点を指摘した.また,今後のSDRの見直しの方向性として対象とする国債の償還年限の長期化とともに40年以上のSDRには逓減型SDRの概念を適用することを提案した.
  • 岡田 進太郎, 石井 一英, 藤山 淳史, 古市 徹
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_217-II_228
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     今後,人口減少や3Rの推進によるごみ減量により,都市の規模によっては現行の一般廃棄物処理システムの維持が困難になる恐れがある.一方,可燃ごみの処理方法としてバイオガスプラント(以下,BP)が注目されている.本研究では,特にコストとエネルギーの効率性に着目し,都市規模ごとに想定される課題解決のために果たすBPの役割を議論し,将来のごみ減量を考慮した効率的な処理システムを検討した.その結果,小規模自治体では生ごみ単独でのBPの維持は困難となる.中規模自治体では機械選別+乾式メタン発酵が有効である.大規模自治体では生ごみ分別+湿式メタン発酵が有効であるが,個々の自治体での応用的検討にあたっては既存の分別収集システム変更を考慮する必要があることを示した.
  • 勝見 慧, 藤山 淳史, 石井 一英, 古市 徹
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_229-II_240
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     廃棄物の分野においても,廃棄物の資源利用やエネルギー回収が重要視されている.なかでも循環資源として高いポテンシャルを有しているものに生ごみやし尿・浄化槽汚泥などの有機系廃棄物がある.これらの有機系廃棄物はこれまで焼却施設やし尿処理施設で個別に処理されてきており,今後の処理システムの方向性の一つとして,集約処理による資源化が考えられる.本研究では,その集約処理の一つの方法として,人口規模が少ない地域を対象に,汚泥再生処理センターでの集約処理を検討した.結果として,従来の焼却処理と比較した場合,汚泥再生処理センターでの集約処理はエネルギー収支の改善および環境負荷の削減,コスト削減などの面で効果が見られた.さらに,汚泥再生処理センターで処理方法の違い(高速堆肥化とメタン発酵の比較)を検討した場合,すると,メタン発酵の方が高速堆肥化に比べ,コストは高くなるが,エネルギー収支の改善と環境負荷の削減の面で効果が大きいことがわかった.
  • インドリヤニ ラフマン , 細川 翔平, 松本 亨
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_241-II_247
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     近年,インドネシアでは深刻化する都市廃棄物の改善のために「ごみ銀行」と呼ばれるコミュニティベースのリサイクルシステムが注目されている.本研究ではこの「ごみ銀行」に着目し,地域住民がごみ銀行に参加する要因を明らかにするために,地域住民に対してごみ問題やごみ銀行に関する意識についてアンケート調査を行った.得られたデータを元に共分散構造分析を行った結果,住民がごみ銀行に参加する要因は,会員と非会員に違いがあることを明らかにした.会員はごみ銀行への「対処有効性認知」が「目標意図」へ影響を及ぼし,非会員は「社会規範評価」が「行動意図」へ影響を及ぼすことがわかった.また,「対処有効性認知」と「社会規範評価」の関連が強いことから,ごみ銀行の活動を経験することがごみ銀行の有効性認知につながると考えられる.
  • 小泉 裕靖, 中谷 隼, 森口 祐一
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_249-II_256
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     東京都は,日本の中心として,社会資本や建築物などの整備が進められ,蓄積されたストック量は膨大であり,かつ,現在においても大量の物質投入と排出を繰返している.本研究においては,木造建築物の時系列的なフロー・ストックモデルを構築し,東京都における1872年から2050年までの180年間に適用した.建築物の残存率は,各建築世代に依存する構造的な寿命などの要因と災害や経済変化等の排出時点における外圧の双方により決定されると仮定し,統計値と合致するようフィッティング計算を行った.この結果,木造建築物のストック量(床面積)は2033年頃,滅失は2047年頃にピークを迎えることを示した.また,戦災やバブル経済などは,排出ピークを10~12年程度シフトさせる影響力があったことが示唆された.
  • 穴吹 凌, 石井 一英, 藤山 淳史, 古市 徹
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_257-II_267
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     事業収支が負となる場合,再生可能エネルギーの導入は困難である.しかし,再生可能エネルギーは非常時にもエネルギーを確保できる自立・分散型であり,雇用増加や地域産業への地域便益をもたらすが,事業評価には定性的にしか評価されていない.本研究では,事業収支に加えて地域便益の定量評価を事業収支に加味できるように,地域特性を踏まえた再生可能エネルギー事業の導入計画を支援するモデルを構築した.自治体が事業主体の木質バイオマス地域熱供給,牛ふんバイオガスプラント及び太陽光発電事業のケーススタディーに本モデルを適用したところ,事業種により非常時の電源確保,雇用及び地域産業への好影響の度合いが異なり,それら地域便益を含めると事業収支が正となることを示した.
  • 菊池 美南, 古林 敬顕, 中田 俊彦
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_269-II_276
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     わが国では,一次エネルギーの94パーセントを輸入化石燃料に依存して,大量のCO2排出に加えて国内資本が海外へ流出している.本研究では,福島県を対象として地域資源を有効利用する低炭素でかつ地域経済活性化に資する持続可能なエネルギーシステムを設計することを目的とする.地域に賦存する再生可能エネルギー資源量を推計し,県内の電力・熱需要を満たすエネルギーシステム構成を線形計画問題を解いて決定する.さらに,設計したシステム性能を経済波及効果など多様な観点から評価し,持続可能なエネルギーシステムの価値について考察する.設計の結果,風力発電導入量の増加と木質バイオマス資源を燃料とする地域熱供給システムの実現を通じて,地域資源を有効利用してかつ海外流出するキャッシュが大幅に減少可能なエネルギーシステムを構築できることが明らかとなった.
  • 松本 重行, 北脇 秀敏
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_277-II_288
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     開発途上国の多くの水道事業体では,水道料金請求の対象とならない無収水が多く,水道事業経営を圧迫し,施設整備や水道サービスの改善が進まない大きな要因となっている.本研究では,途上国における無収水の原因構成や資金制約,無収水対策の費用,効果,及び効果の減衰を考慮に入れた無収水対策選択モデルを構築し,整数計画法を用いた最適化計算を行うことによって,望ましい無収水対策の選択を行う手法を検討した.構築したモデルにより,水道事業体が置かれている事業環境や資金制約などの条件を設定することで,制約条件を満たす最適な対策手法を選択することが可能となり,対策手法の選択に影響を与える因子が明らかになった.
  • 神山 千穂, 橋本 禅, 香坂 玲, 齊藤 修
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_289-II_297
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     生態系サービスは相互に関わり, あるサービスの向上が他のサービスを低下させるトレードオフと, 双方のサービスが共に向上するシナジーが知られる. このような理解は, より多くの生態系サービスが発揮される生態系管理に貢献することから, 本研究では, 石川県19市町を対象とし, 生態系サービス35項目, 市町の基本属性20項目について関連性を調べた. その結果, 森林面積が大きく景観のモザイク性が高いか, 耕地面積が大きく人口が多いかという市町の基本属性が, 森林に関わる生態系サービスが高いか, 農業や文化に関わる生態系サービスが高いかに関連していることが示された. 本解析は, 生態系サービス間の関わりを定量的に示すとともに, 重要な課題となる関係性の位置付けを明確にし, 効率的な意思決定を可能にするものである.
  • 芳賀 智宏, 松井 孝典, 町村 尚
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_299-II_309
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     里山ランドスケープの持続可能な管理をするためには,里山の生物多様性や生態系サービスの量的な評価を行うことが求められている.この背景から里山での生物多様性をSatoyama Index (SI)やそれを改良した指標で定量的に評価し可視化する研究が進んでいるが,今後は将来シナリオ別に里山を含む空間の変化を定量的に評価できる手法に拡張していくことが求められている.本研究では,里山の構成要素のうち森林と耕作地を対象として里山管理のシナリオ分析を行うシミュレーションプロセスを開発することを目的とする.石川県をサンプルの対象地とし,石川県の主伐および間伐面積率と耕作放棄地率から作成した4つの里山管理シナリオで森林景観シミュレーションモデルLANDIS-IIを用いて1998年から2097年の植生の遷移を再現し,景観の多様性を改良さとやま指数(the modified Satoyama Index: M-SI)の推移で空間的に表現した.森林施業と耕作地の管理では特に耕作放棄の影響が大きく,耕作放棄が進展すると二次林の拡大によって均質な土地利用となりM-SI値が減少したが,耕作地を管理したシナリオでは景観の多様性が保たれるという結果が得られた.この結果から,社会シナリオをLANDIS-IIと連携させ,里山の状態量を動的かつ定量的に評価できるシミュレーションプロセスの開発について有用性と今後の開発課題を議論した.
  • 長谷川 啓一, 上野 裕介, 大城 温, 瀧本 真理, 光谷 友樹, 井上 隆司
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_311-II_317
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     近年,国内外において持続可能な開発や,自然生態系を活用した多機能な社会資本整備が重要視されており,これらの実現に向けて動植物への保全措置のより一層の充実が望まれている.そこで本研究では,動植物に関する調査や環境保全措置が実施されている全国の国直轄の道路事業417事例に着目し,動植物への保全措置の充実に向けた基礎的研究として,動植物保全における現状と課題を分析した.その結果,調査の段階では,猛禽類がやや多いものの,各分類群でほぼ一様に調査が実施されていた.一方,それらの調査結果を踏まえて環境保全措置の対象とされる分類群は,猛禽類と植物が非常に多くなっていた.特に保全対象となりやすい種の上位は,全国的にオオタカ,クマタカ,サシバ等の猛禽類が占め,その他にはエビネ,キンラン,ギンラン等のラン科の植物が多く見られた.なお環境保全措置の対象種数は,地域によってばらつきがみられた.環境保全措置後のモニタリングは,1~2年程度実施される例が多く,鳥類(猛禽類を含む)や植物では比較的長く実施される傾向があった.また,地域協働による継続的な環境保全に努めている事例もわずかに見られた.
  • 松本 嘉孝, 加藤 崇洋, 猪八重 拓郎
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_319-II_324
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     地震動などにより上水施設が破損した場合には,応急給水が避難所等で実施される.しかし,応急給水量や給水作業に対し事前に評価されていないことが応急対策の課題とされている.そこで本研究ではGISを用いて,応急給水量および作業量について検討を行った.配水人口はネットワークボロノイ分割によって求めた勢力図から求め,一日あたりに必要な水量を乗ずることで被災地域の必要水量を求めた.その結果,対象地域全般では災害拠点給水施設の保有水量が被災者の必要水量を満たしているが,宅地が密集している3地区では不足することが予測された.そして,給水作業評価も同様の手法で算出した結果,3日目までは,一日あたりの給水車台数が一桁代であった避難所は全避難所の70%であったが,4日目以降については,その割合が25%と著しく減少した.
  • 岩見 麻子
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_325-II_331
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,愛知県名古屋市南区星崎地区において,地区防災計画策定に向けて実施されたアンケート調査の結果から,居住する町内会や年代による防災意識の違いを把握するとともに,自由記述回答に対するテキストマイニングによって,同地区の住民が持つ不安要素の可視化を試みた.その結果,ハード面で課題を抱えている町内会ではソフト・自助面での防災対策が進んでいることや,年代によって距離の遠さの感じ方が異なることなどを明らかにすることができ,特に後者について,避難場所を選定・設定する際には物理的な距離だけでなく心理的な距離を考慮する必要があると考えられた.また,地震発生時の避難や避難場所について不安を抱えていることも明らかにすることができた.
  • 荒井 康裕, 小泉 明, 稲員 とよの, 川村 和湖
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_333-II_340
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     社会インフラに対する予防保全型の維持管理が必要とされる中,「モノ」をインターネットに接続する技術(Internet of Things: IoT)を活用したモニタリング技術に大きな関心が寄せられている.本研究では,地下に埋設される水道管路とそこで発生する漏水に着目し,所与の個数(k個)の漏水センサーをどの仕切弁・消火栓に設置するのが最も望ましいかという施設配置問題(k-メディアン問題)の最適化を試みた.水道管路ネットワークが有する形状特性を考慮するため,センサー設置候補箇所の「受け持ち管路延長」を定義し,これによる重み付け方法を考案した.さらに,センサーが設置されなかった箇所周辺での漏水探索が不利になることを回避する目的から,定式化の一部を改良し,未設置の箇所から全てのセンサー設置箇所までの距離の総和が最小になる組合せを選択させるような改良を試みた.提案した最適配置計画モデルを用いたケーススタディにより,センサーの「配置」と「未配置」が適度に配分されるような計画代替案が得られることを明らかにした.
  • 上野 裕介, 栗原 正夫
    2016 年 72 巻 6 号 p. II_341-II_349
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/10
    ジャーナル フリー
     各種の建設事業や自然環境調査において,猛禽類の生息状況が調査されている.猛禽類の調査は,目視観察や現地踏査といった膨大な調査努力量が必要な調査が行われる一方,発見漏れ等の課題もある.そこで本研究では,簡易に猛禽類の現地調査を行うための技術開発を目的として,オオタカAccipiter gentilisを対象に,音声認識を用いた生息判定技術の開発を試みた.まず,巣内ビデオの記録データからオオタカの鳴き声を抽出した.次に,鳴き声を計5パターン(警戒,餌乞,交尾,雛,幼鳥)に分類し,決定木分析によるオオタカの音声の自動判別モデルを構築した.その結果,構築したオオタカの音声判別モデルの正答率は,同一地区内では約87%であり,モデルを他地区に適用した場合も約65%と高い値を示した.
feedback
Top