成層土層が土壌面蒸発により水分を失うとき, 下層から表土層への水分移動の存在およびその特性そしてその大きさおよびその際の下層にある砂層内の水分移動の特性を, 表土単層および2成層, 3成層状態にある供試体における蒸発実験で確めることができた。
(1) 恒率乾燥期間における表土層の水分分布および比蒸発速度は下層の有無には無関係である。
(2) 恒率から減率へ移る第一限界含水率は下層の有無に無関係で約30%である。今回の実験の範囲では表土層の長さによってもあまりかわらなかった。
(3) 減率乾燥期間では, 下に層があると表土層の平均水分量が下層がないときより大きくなり比蒸発速度~ 表土層平均含水率曲線の形が下層がないときに比べてかわる。
(4) 下層に毛管水帯といわれる状態の水分があっても, 下層から表土層への水分移動は条件によらず表土層平均含水率が30%になるまではみられずそれ以下になったときに初めてみられる。この30%という値の表土層平均含水率を吸収開始水分量と名づけた。
(5) 吸収開始水分量のときの表土層の水分分布は条件によらずほぼ垂直である。
(6) 吸収開始水分量は第一限界含水率と同じく30%の値を示し最小容水量40%よりは小さい。
(7) 表土層が吸収開始水分量のとき砂層上端は砂の最小容水量値15%を示している。
(8) 下層から表土層への水分移動量は, 蒸発量の約113である。
(9) 砂層では, 表土層が吸収開始水分量になるまでは下方移動が行なわれ, 吸収開始水分量以下になると上方移動がみられ最小容水量の15%よりも水分量が低下する。
しかし, 表土層と砂層の境界でのpFコウ配は常に砂層から表土層への水分移動があるような型になっている。
(10) 黒ボク層では, 下降移動が全蒸発期間に行なわれていた。したがって下層から表土層への水分移動は実際には砂層から表土層への水分移動である。
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