農業土木学会論文集
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2004 巻, 233 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 劉 廷璽, 天谷 孝夫, 朝倫 巴根, 劉 小燕
    2004 年2004 巻233 号 p. 449-460
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    乾燥地における, 降雨の浸透過程や不圧地下水の蒸発過程中での, 不飽和帯断面の水分動態特性と貯水量変化の特徴とを検討した. 結果は次の通りである.(1) 不圧地下水の蒸発は, 不飽和帯の土性と地表植生とに大きく影響される.(2) 降雨浸透過程中で, 含水率が最も大きく変化する領域は地表から深さ1m以内にあり, 断面含水率は四つの領域に分かれる.(3) 降雨浸透涵養量は, 地表植生, 地下水深不飽和帯貯水量により大きく影響される.(4) 降雨浸透涵養係数は, 不飽和帯貯水量と降雨量とが増すにつれて大きくなる. 降雨浸透遅滞日数と降雨浸透涵養継続日数は, 地下水深と共に増加する.(5) 不圧地下水の蒸発係数は, 地表植生と地形類型に影響される. さらに不飽和帯貯水量と地下水深の増加に伴い減少する.(6) 不圧地下水蒸発比率は地下水深の増加につれて減少し, 植生がある場合は不圧地下水蒸発量と共に増加する.(7) 降雨浸透と不圧地下水蒸発との連続過程における不飽和帯水分の動態は, 四段階を経た.
  • 吉田 貢士, 島田 正志, 田中 忠次
    2004 年2004 巻233 号 p. 461-467
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    従来の複断面形状や粗度分布のある水路における1次元不等流解析モデルでは, 分割断面間での流速差起因の乱流混合による抵抗増加については考慮されてきたが, 断面間での移流の効果は考慮されていなかった. 本研究では, 横断方向のエネルギ勾配の分布および移流量を考慮した抵抗予測モデルを提案し, 断面平均流速の分布や水面形計算における精度の向上を図ることを目的としている. 既往モデルと本モデルとの比較において, 流速差起因の乱流混合の強さを表す乱流混合係数については一定とし, 移流の効果を相対的に比較・検討した結果, 不等流性の強い流れにおける提案したモデルの有効性および移流効果が水路抵抗に大きな役割を果たしていることが確認された.
  • 久米 崇, 長野 宇規, 渡邉 紹裕, 三野 徹
    2004 年2004 巻233 号 p. 469-476
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    内蒙古河套灌区の灌漑下流部に位置する排水不良農地において, 除塩灌漑に伴う土壌塩分分布の時間的・空間的変動を明らかにするため, 2002年9.月, 2003年8-9月の2期間に各種現地観測を行った.地下水観測の結果, 動水勾配は1/480~1/1,600で透水係数が10-5~10-7cms-1であったことから, 地下水の流れは非常に緩慢であると考えられた.観測孔における地下水塩分濃度は不均一性が大きく, 2003年の除塩灌漑前後での濃度変化はほとんど見られなかった.電磁誘導法を用いた塩分観測の結果, 325mmの灌漑が行われた2002年9月から2003年8.月の約1間および150mmの除塩灌漑を挟む2003年8月から9月において, 水平方向の土壌塩分分布パターンの変化は小さく, 土壌塩分分布の不均一性は解消されなかつた.調査圃場における除塩灌漑は, 作土層の除塩には有効であるが, 地下水の水平移動が緩慢であるため, 圃場外への除塩効果は極めて小さいと考えられた.
  • 東京都日野市の農業水路を事例として
    西田 一也, 千賀 裕太郎
    2004 年2004 巻233 号 p. 477-487
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    都市近郊の農業水路における魚類の生息状況と生息環境を把握し, その魚類の生息に影響を及ぼす要因を明らかにする目的で2001年冬から2002年秋にかけて, 魚類, 水路の物理的環境, 水理諸元, 水質の四季調査を, 東京都日野市を流れる日野用水および根川, 豊田用水, 向島用水において行った. また接続する水田の位置と取水および排水の状況を確認した. 夏季に日野用水および豊田用水, 向島用水においてはドジョウ, キンブナ, タモロコ等の仔稚魚および未成魚が, 魚類の湖上可能である水田に近い調査区間に局所的に多く出現し, 水田が産卵, 仔稚魚の生育の場となっていることが示唆された. また下流域における冬季の水深の減少が. 魚類の生息に悪影響を及ぼしていることが示唆された.
  • 中野 拓治
    2004 年2004 巻233 号 p. 489-495
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業集落排水施設のデータから, 沈殿分離槽における窒素除去性能の把握と設計・管理因子による影響を検討し, その浄化特性について考察した.沈殿分離槽流入水と流出水のT-N濃度分布は正規分布によく適合しているとともに, 槽内では約2割の窒素除去を期待できることが判明した. 沈殿分離槽の窒素除去性能は, 汚水中の浮遊物質の沈殿・除去と槽内に蓄積された物質等からの再溶出作用に影響されていることが確認された. また, 沈殿分離槽の窒素除去率については, 汚泥堆積厚/設計水深比, 水面積負荷, 及び正規化された流入水SS濃度を説明変数とする重回帰式が導かれ, これにより窒素除去性能を推定できることが確認された. 沈殿分離槽において窒素除去性能の安定を図るためには, 流入水のSS濃度に応じて水面積負荷を確保するとともに, 堆積汚泥厚を適切に管理することの重要性が示唆された.
  • 足立 泰久, 小林 幹佳, 柳橋 寛一
    2004 年2004 巻233 号 p. 497-504
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    攪拌槽内で形成されるフロック構造の再配列、密度増加の機構を明らかにする目的で、急速凝集系におけるフロックの成長過程を追跡した。実験は、球形度、単分散性に優れたポリスチレンラテックス粒子を用いて行い、フロック投影図におけるフロック内2点最大距離Dmとフロック構成粒子数乞との関係を、ブラウン運動のみによる凝集と攪拌条件で凝集が進行する場合とについて、特に凝集初期の小さいフロックについて比較した。その結果、攪拌条件下では、ブラウン運動によるフロック形成に比べ、衝突クラスター間の再配列による密度増加が凝集初期の段階より検出された。このような密度増加は層流条件下のせん断凝集では生じないことから、攪拌槽中のフロック成長においては、乱流の圧力や速度の変動と流体力学的相互作用が互いにカップリングする形で、フロックの密度増加がもたらされていると結論づけた。
  • 佐藤 徹, 鈴木 敬
    2004 年2004 巻233 号 p. 505-513
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    我が国にアスファルト表面遮水壁型ロックフィルダムが初めて建設されてから30数年が経過している. この間, 表面遮水壁に使用されているアスファルト混合物は, 日照, 降雨, 紫外線酸素等の暴露を受け, 劣化が進んでいる. この劣化の進行程度は, これまで斑IS規格によるバインダー試験である針入度試験および軟化点試験等の初期値との比較, あるいは混合物の力学試験である曲げ試験等によるひずみの初期値との比較の結果等により調査してきたが, 劣化予測の判断をすることは困難であった. 本研究においては, 近年研究が進められているSHRP規格の試験のうちバインダー試験に注目し, 経年劣化の予測を研究した. その結果, 促進耐候性試験 (PAV試験) の加圧劣化時間を変化させた試料を用いて, 動的ねじ腿ん断試験 (DSR試験) および低温クリープ試験 (BBR試験) を行うことによって経年劣化予測が可能であると確認した.
  • 横山 雄介, 吉野 邦彦
    2004 年2004 巻233 号 p. 515-521
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    三宅島では, 2000年6月に起きた火山噴火により, 全島避難を強いられている.2003年現在, 主要道路などについては復旧作業も完了しているが, 農地被害についての詳細な調査結果は未だ公表されていない.本研究では, 現地調査の出来ない状況下において、GIS及び空中写真を利用し, 農地の被害状況判読を行った。その結果, 島内では西部の伊ヶ谷地区, 神着地区東部から坪田地区北部にかけての地域で被害が大きく, その他の地域では大きな被害を受けた農地はごく少数である事などが分かった.この被害状況判読結果をもとに、地区ごとに復興計画について提言を行った.また, 被害状況の把握に関しては,(1) データベースを作成し空中写真と重ね合わせる事によって目視判読時の判読精度が向上する,(2) 植生被害や回復状況は衛星画像から判読可能であることが分かった.
  • 山下 祐司, 足立 泰久
    2004 年2004 巻233 号 p. 523-529
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    土壌中のコロイド輸送に対するコロイド安定性及び土壌の間隙径の影響を明らかにするために, ガラスビーズ及び鹿沼土を充填したカラムを用いてコロイド粒子の通過実験を行った.実験に際しては, 塩濃度の調整によって凝集分散を制御できるポリスチレンラテックス (以下PSL) 粒子懸濁液を用い, PSL粒子の破過曲線の形状を単純塩 (NaCl) の流出を基準に解析した.ガラスビーズを充填したカラムにおいては, PSL粒子の流出応答の開始が単純塩と一致し, また, 流入濃度 (C0) に対する流出濃度 (C) の割合 (以下相対濃度, C/C0) の収束値が10-4mol・l-1から10-1mol・l-1のNaCl濃度の増加に伴って減少した.これは緩速凝集領域にあるPSL粒子の凝集速度が塩濃度の増加に伴って増加することに対応している.一方, 鹿沼土を充填したカラムにおいては, 単純塩の破過曲線の形状から充填粒子が団粒構造の特徴を有することが確認された.また, PSL粒子の流出の開始は単純塩より早く, その後, 一定の値には収束せず徐々に増加した.PSb粒子の相対濃度は静止した懸濁液で完全に分散状態にある10-4mol・l-1オーダーの塩濃度領域で著しく変化した.両充填カラムにおいて, 相対濃度のイオン強度依存性は充填粒子径が小さいほど明瞭であった.PSL粒子の急速凝集条件下では, 相対濃度が経時的に減少していくライプニングが確認され, 充分時間経過後にはカラム上層部に膜が形成された.顕微鏡観察から, 膜はPSL粒子のフロックであることが明らかとなり, フロックの形成がライプニングと密接に関わっていると判断された.
  • 川本 健, Aung BANYAR, Møldrup PER, 小松 登志子, 小田 匡寛
    2004 年2004 巻233 号 p. 531-539
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    土壌撥水性 (WR) は土壌侵食の促進や不飽和土壌におけるフィンガー流の発生といった土壌水文学的問題と密接に関係する. 本研究では, WRが土壌の保水性に及ぼす影響を調べるため, WRを有する団粒構造の発達した火山灰土壌を用いて, TDRコイルプローブ法による土壌水分量とテンショメータによる圧力水頭の同時測定により水分特性曲線を求めた. WRの度合いが大きな試料では, 吸水過程の水分特性曲線より, わずかな圧力水頭増加にともなう急激な水分量増加を示し, 初期水分量から飽和状態に達することが確認された. そして, 再吸水. 再脱水過程の水分特性曲線より, WRの度合いの大小にかかわらず, 土壌への吸水は団粒内間隙から開始することが示された. しかし, WRの度合いが大きな試料は, WRを示さない試料に比べ, 団粒内間隙へ吸水が抑制されることが明らかになった.
  • 郭 世文, 服部 九二雄, 緒方 英彦, 高田 龍一
    2004 年2004 巻233 号 p. 541-547
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究は, クリンカーアッシュがコンクリートの細骨材として利用できるかどうかを検討するものである. クリンカーアッシュはフライアッシュと近似する化学組成を有し, コンクリートに化学的な悪影響がない. クリンカーアッシュは高い吸水率をもつため, コンクリートに骨材として用いる場合, 流動性を改善する効果をもつII種以上のフライアッシュと併用するほか, AE減水剤などの併用も勧められる. クリンカーアッシュを細骨材の換わりに使う場合, その置換率は10%が限界だと考えられ, 同時にセメントの換わりにフライアッシュの置換率を30%とした方がよい. クリンカーアッシュをコンクリートの細骨材の10%置換した場合, コンクリートの強度発現と組織構造には支障ないことを明らかにしたが, コンクリートの耐凍結融解性が低く, AE剤の添加による対応が必要である.
  • 金沢用水と七ヶ用水のクラスター分析による解析
    丸山 利輔, 田野 信博, 村島 和男, 瀧本 裕士, 橋本 岩夫, 上田 哲行, 皆巳 幸也
    2004 年2004 巻233 号 p. 549-553
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    都市型と農村型農業用水の地域用水機能につて比較した研究は少ない. 本研究は両者の特徴を比較検討する目的で, 金沢用水 (辰巳, 大野庄, 鞍月用水) と七ヶ用水を取り上げて研究した. まず,「現在の用水の利用について」,「用水の役割について」のアンケートの回答結果を生活系用水, 親水系用水, 環境系用水に分類して一致係数法によりクラスター分析し, 都市型の金沢用水では, 生活系用水の割合が少なく, 農村型の七ヶ用水ではこれが大きいこと示した. また, この回答結果に「用水で改善が望ましい点」の回答結果を加え, 一致係数法によりクラスター分析し, 平均値の順序で出現割合を整理した結果, 金沢用水では, 各回答項目ごとの出現割合の分散が大きいのに, 七ヶ用水ではこの分散が小さいことを見出した.
  • 飯嶋 孝史
    2004 年2004 巻233 号 p. 555-561
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    用水戸協会と呼ばれる中国の参加型灌漑管理組織の基本的特徴と課題を明らかにするため, 事例協会の定款と現地調査結果に基づいて検討した. その結果, 協会の基本的特徴として1) 法人組織であること, 2) 事務執行機関, 意思決定機関, 下部管理組織を有すること, 3) 規定上は民主的, 自治的な組織運営の基礎条件が整っていること, 4) 支線用水路以下の水路系を管理対象とすること, 5) その用水受益者を構成鼻とすること, 6) その維持管理, 運用, 水費徴収事務を主な業務とすること等を明らかにし・課題として1) 民王的・自治的組織運営の定着のための支援, 2) 構成員数減少の影響と対策, 3) 基幹施設管理に対して協会の意向を反映させるシステムの構築, 4) 複数の協会問の協議調整システムの構築を提示した.
  • 新潟県羽越荒川を例として
    三輪 弌, 杜 河清
    2004 年2004 巻233 号 p. 563-570
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    洪水水衝部の位置・変化と平水時ミオ筋変動は, いずれも河道内に形成される砂礫堆の形状パターンとその変化によっている. 直線水路や波長と振幅のそろった蛇行水路での砂礫堆の挙動は, 水路実験によって明らかにされてきたが, 河道計画において最も重要なことは, 河道平面形状の変更を伴う改修河道における挙動を明らかにすることである. そのさい, 水路の製作が容易で, 水路形状を変更させながらの実験も可能な小型模型実験が望ましく, その実験手法の開発が急がれていた. 我々は, 木下によって実施された大井川の帯模型実験等を参考に, 新潟県羽越荒川を例にとって, 平面縮尺1/1000という小型模型水路において, 3種類の水路床粒子で河川の砂礫堆形状パターンを再現することに成功し, 実験水理諸量の相似則について検討した.
  • 七ヶ用水地区における農村型用水と金沢市内を流れる都市型用水との比較
    田野 信博, 瀧本 裕士, 村島 和男, 橋本 岩夫, 皆巳 幸也, 丸山 利輔
    2004 年2004 巻233 号 p. 571-578
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    CVM解析は, 地域用水機能の価値を貨幣尺度で計る手法の一つとして注目されている. 本報では, CVM解析プログラム (ターンブル法とプロビットモデル) を用いて, 農村型用水の一つである七ヶ用水の経済評価と住民意識について分析する. また, 既報の金沢市内を流れる都市型用水の解析結果と比較をする. 七ヶ用水の解析結果からプロビットモデルのWTP平均値は約6,000円で, ターンブル法の中位平均値と上位平均値の間にあることが判明した. また, 中央値は両法でほぼ一致した. しかし, 金沢用水と比較すると, 七ヶ用水の方がプロビットモデルのWTP平均値で1,900円ほど高い結果が得られた. これは農村型用水 (七ヶ用水地区) と都市型用水 (金沢用水地区) の性格の相違によると考えられ, 負担金を支払って用水を生産. 生活手段の一つとして利用している農村型用水と, 公的な資金により環境整備を行う都市型用水の大きな相違点であると考察した.
  • 粟生田 忠雄, 関根 玲奈
    2004 年2004 巻233 号 p. 579-580
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
  • 小出水 規行, 村岡 敬子, 竹村 武士, 奥島 修二
    2004 年2004 巻233 号 p. 581-582
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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