農業土木学会論文集
Online ISSN : 1884-7234
Print ISSN : 0387-2335
ISSN-L : 0387-2335
2005 巻, 240 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 足立 一日出, 細川 寿, 吉田 修一郎
    2005 年 2005 巻 240 号 p. 541-548
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    重粘土汎用ほ場における作付け履歴と作土の新鮮土, 風乾土および炉乾土のコンシステンシーの関連を調査した. 前歴畑作物の新鮮土の液性・塑性限界, 塑性指数は, 同じ粘土含量で整理すると, 前歴水稲作付け土壌のそれらよりも明瞭に小さかった. 乾燥処理によって, 液性・塑性限界, 塑性指数は低下し, 同時に, 前歴による差も小さくなり, 炉乾土のそれらには前歴の違いによる差はほとんど認められなかった. また, 液性・塑性限界は, 粘土含量が多くなれば, 大きくなる明瞭な関係が認められたが, 塑性指数には, 粘土含量との明瞭な関係はみられなかった. 新鮮土と炉乾土との塑性指数比を試料相互のコンシステンシー特性の評価に用い, 土壌の畑地化の進行について考察した. 塑性指数比1.85を境に, 前歴水稲は大きな値に, 前歴畑作物は小さな値に分類された. 水稲作付け時, 深さ方向へ約2.0以上で似通った値を示した作土周辺の塑性指数比は, 畑作物への転換後4年間は表面から大きく低下したが, その後の低下は小さく, 10年以上の長期にわたって畑作物を栽培すると, 作土全体にわたって1.4以下の小さな値に低下した.
  • 秋葉 正一, 菊池 祥一, 加納 陽輔
    2005 年 2005 巻 240 号 p. 549-557
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 農業土木や社会基盤整備分野の計画・設計・施工・管理に関わる最適化問題において, 人工生命 (AL) による最適値探索手法の有用性を検討することである・そこで・本論文では乱による最適値探索手法を示し・その有用性を数値実験により検討した結果について述べる.最適化問題の例としては斜面安定解析における最小安全率同定問題を取り上げた.この問題にALを適用した場合の探索効果について, GA手法や市販F解析ソフトで用いられている手法等による同定結果と比較検討した.その結果, ALは, GA手法と比較して収束性あるいは最適値探索効果が格段に優れているととが確認された.特に探索結果に対する操作パラメータの依存度が低いことから, 最適化問題の違いによらずに適用することが十分に期待できることを示した.
  • Muhammad ASHRAF, 服部 九二雄, 緒方 英彦, Khaled HASSAN
    2005 年 2005 巻 240 号 p. 559-565
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究は, 乾燥環境下におけるモルタルの力学的, 鉱物学的及び形態構造的性状に与える鉱物性混和材の影響を検討したものである。モルタル供試体はJISR5201-l997によつて作製した。フライアッシュと高炉スラグが混和材としてそれぞれ10, 20, 30%と40, 50, 60%の割合で使用された。供試体には4種類の養生方法を適用した。即ち, 20℃水中での養生, 温度40℃相対湿度40%での乾燥養生, 材齢3日および材齢7日まで標準養生した後に乾燥養生したものである。鉱物学的・ミクロ構造的研究は走査電子顕微鏡及びX線回折で行つた。その結果, 鉱物性混和材を添加したモルタルの強度は乾燥条件下の水中養生でスムーズに発現することが分かつた。乾燥条件下の供試体は分散した微細構造を示したが, 標準養生での供試体は規則的に配列した微細構造を示すことが分かつた。
  • 金木 亮一, 中川 悟志, 安井 篤史, 西岡 治美
    2005 年 2005 巻 240 号 p. 567-573
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    水田からの流出負荷削減対策の一環として, 施肥田植機によるリンの側条施肥および窒素の育苗箱全量施肥による施肥量の節減を行い, 稲作期間中の流出負荷に及ぼす影響を3年間に亘つて検討した.
    減肥区の田面水および浸透水中のリン・窒素濃度は対照区に比べて低く, 流出負荷量 (表面流出およて順透負荷) はリン・窒素ともに対照区よりも少なくなつた減肥区の流出負荷量は対照区よりもリンでO.6~lkg/ha, 窒素で4へ6kg/ha削鍼されており, 施肥田植機および育苗箱全量施肥による施肥量の節減斌流出負荷削減に有効であることが判明したなお, 対照区のリン・窒素および減肥区のリンについては, 水田からの流出負荷量の方が流入負韻より多くなつて汚濁源となつていたが, 減肥区の窒素については流出負荷量の方力沙なく, 水田で浄化されていることが確認された.
  • 土原 健雄, 中矢 哲郎, 石田 聡, 今泉 眞之, 河地 利彦
    2005 年 2005 巻 240 号 p. 575-586
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    釧路湿原を流れる自然河川であるチルワツナイ川において, 地下水, 特に湧水の水文・化学特性を明らかにするために調査を行った. 釧路湿原の水文環境に影響を与える地下水は湿原と台地部の境界付近からの湧水だけではなく, 湿原内にも地下水が2種類の湧水形態 (噴火口型・噴砂丘型) で湧出していることが明らかとなった, 噴火口型湧水と噴砂丘型湧水は同じチルワツナイ川において異なる支流河川に分布しており, また水質分析及びクラスター分析から2種類の湧水と河川水の水質が異なることが示された. 特に噴火口型湧水は, 電気伝導度, SO42-, HCO3-硬度 (Mg2++Ca2+), Rn濃度が高く, 噴砂丘型湧水及び河川水と明確な差異を示した. これは台地涵養域からの流動経路の違いによるものと推測される. また調査時におけるチルワツナイ川全体に占める地下水の割合は20~30%程度と推定され, チルワツナイ川の水文環境に大きな影響を与えていることが明らかとなった.
  • 浅倉 千吉, 三輪 弌
    2005 年 2005 巻 240 号 p. 587-594
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    環境配慮型用排水路の一つに自然石を配置した工法がある. 立方体などの定形粗度については, 多くの研究事例があるが, 自然石のような不定形粗度についての研究事例はほとんどなく, 自然石配置水路の計画設計上の難点になっている. 本論は, 自然石の抵抗特性を明らかにする一連の研究のうち, 水路底に単体で設置した粗度要素に作用する抗力について水理実験により検討したものである。実験では、各種の粗度要素が受ける抗力を測定して影響因子の定量的評価を行った. 重要な因子は, よどみ領域の形状と粗度の上流側形状であった.
  • 金山 素平, 東 孝寛, 大坪 政美, 筑紫 二郎
    2005 年 2005 巻 240 号 p. 595-601
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    圧密係数は, 土の圧密速度を支配する土質定数であり, 通常, 段階載荷による一次元圧密試験から求まる圧密量一時間曲線に圧密理論を適用することによって決定される. 本論文では, 非線形最小二乗法を用い一次元圧密理論式を圧密量一時間曲線にフィッティングすることによって同定されたパラメータから求まる圧密係数について検討している. この方法は, 従来の方法と同様に初期補正値, 一次圧密量も算定することができ, 圧密理論曲線と実験曲線との分離点を明確に決定できるとともに, 従来法と比較して自動処理化に適している. 本方法から求まる圧密係数は, logt法による圧密係数より大きく, √t法による圧密係数と同程度の値を示した. また, 一次圧密量および初期補正値も√t法と同等の値を示したことから, 提案方法は従来の方法に比肩する精度を有していることが認められた.
  • 岡澤 宏, 長澤 徹明, 井上 京, 山本 忠男
    2005 年 2005 巻 240 号 p. 603-610
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    北海道南西部の多雪寒冷地域に位置する森林流域と草地畜産流域において, 平水時, 降雨流出時, 融雪流出時といった河川水文条件と汚濁負荷流出特性との関係を検討した. 比流量と窒素比負荷の年間流出量を推定した結果, 比流量の約50%は融雪流出時に流出するが, T-N比負荷の約50%は降雨流出時に流出することが明らかになった. 窒素を懸濁態成分 (TON) と溶存態成分 (NO3-N) に区分して, 各水文条件と窒素流出形態を比較したところ, 濃度, 比負荷ともに降雨流出時にはTON, 融雪流出時にはNO3-Nの流出が卓越していた. これは, 雨水, 融雪水の流出プロセスが, 窒素流出にも影響を及ぼすためと判断された. また, 森林流域と草地畜産流域における年間窒素比負荷を比較したところ, 草地畜産流域では森林流域の1.8倍に相当する窒素が流出しており, なかでも降雨流出時には草地畜産流域から高濃度で多量の窒素が流出する実態を明らかにした.
  • 柳川瀬 賢幸, 藤原 拓, 大年 邦雄
    2005 年 2005 巻 240 号 p. 611-620
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    沿岸施設園芸地域における地下水水質の経年変化およびその影響因子の検討を目的として, 計20地点を対象とした地下水水質調査を年1回の頻度で同時期に5年間実施した. 調査結果から, 栽培作物の変更にともなう施肥量の変化が地下水中の硝酸性窒素濃度の経年変化に影響しており, 自浄速度係数の値が小さいと推定されている地点では・年々硝酸性窒素濃度が増加していることが明らかになった. また, 調査によって得られた全ての時空間水質データをクラスター分析によって分類した結果,(1) 地質固有の水質を保持する「重炭酸・カルシウム」型のクラスター・(2) 施肥の影響を受けたクラスター,(3) 海水侵入の影響を受けたクラスター,(4) 施肥および海水侵入双方の影響を強く受けたクラスター・に大別でき, 多くの地点ではクラスターの経年変化はみられなかった. しかしながら, 施肥量および散水量が多い栽培作物に変更された地点では, 5年間でクラスター分類が変化するほどの水質変化が生じ, 施肥量・散水量・揚水量および土壌薫蒸が対象地域の地下水水質変化の重要な影響因子であることが示唆された.
  • 泉 完, 工藤 明
    2005 年 2005 巻 240 号 p. 621-628
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    現地の水クッション型落差工における流水音に関して調査を行い, 落下流れの水理現象における音響パワーレベルや騒音レベル, および流水音の減衰特性を検討した. その結果,(1) 水クッション型落差工の音響パワーレベル (PWL) および騒音レベルL (A) を, 流量, 水路幅, 落下高さ (落ち口水位と静水池水位との差), 落下点の静水池水深の各水理量で表した落下エネルギ量で整理し, PWLは86.6 (dB)~104.7 (dB) で落下エネルギの増大にともない増加すること,(2) 落下エネルギと音響パワーレベル, 騒音レベルの関係図から広範囲での各水理諸量における音響パワーレベルや騒音レベルの推測が可能になったこと,(3) 流水音の分布特性から, 流水音は上流方向への伝播が小さく, 流水音が騒音となる可能性がある場合, 住宅地と落差工の設置距離との一事例を示唆した, ことなどを明らかにした.
  • 島尻マージ土壌を用いた例
    陳 嫣, 凌 祥之
    2005 年 2005 巻 240 号 p. 629-635
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, 牛ふん, バガスの2種炭化物を島尻マージ土壌に混入し, 浸透排水の無機態窒素濃度の低減および土壌の保水性と透水性の改善を図った. さらに, チンゲンサイを用いた生育実験を行い, メタン発酵副産物の消化液と発酵残渣および牛ふん, バガス炭を様々な条件で島尻マージ土壌に投入し, 作物生育への影響を明らかにした. その結果, 炭化物を投入することによって, 島尻マージ土壌の透水性に顕著な変化はみられなかったが, 保水性は改良された. また, 炭化物を添加することによつて, 浸透排水の無機態窒素濃度は下がった. これは硝酸態窒素が脱窒し, アンモニア態窒素が炭化物に吸収されたためと考えられた. さらに, 栽培期間が短いチンゲンサイについて, 消化液は化学肥料 (硫安) の窒素成分代替として有効であることが明らかになった.
  • 茨城県大子町を事例として
    蘭 嘉宜
    2005 年 2005 巻 240 号 p. 637-646
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    茨城県北部, 大子町でレクリエーション客の周遊行動を調査し, レクリエーション周遊行動モデルを作成した. その結果, 周遊行動を規定する主な要因は, 主目的地では,(1) レクリエーション施設の評価,(2) 情報源の広範性,(3) 10代以下の年齢層の有無等, 周遊目的地では,(1) 主目的地が滞在型か否か,(2) 他の目的地との距離等であることが分かった. また, このモデルを使って, レクリエーション振興施策の効果を入り込み客数の変化により計測した. 主目的地として選ばれやすい目的地の評価があがる場合と情報源の広範性が向上する場合は, 滞在型の目的地の場合を除いて, 主目的地の入り込み客数が増加するとともに周遊行動が促進され, 入り込み客数の計も増加した. 一方, 周遊目的地として選ばれやすい目的地の場合は, 入り込み客数の増加は小さかった. 目的地問の距離が短縮される場合は, 距離の短縮が周遊行動を促進させて, 周遊目的地として選ばれやすい目的地の入り込み客数が増加し, 入り込み客数計も増加した.
  • 田中 勉, 廣瀬 哲夫, 井上 一哉, 永井 茂
    2005 年 2005 巻 240 号 p. 647-656
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    締切り矢板内地盤の浸透破壊に対する安全設計の考え方について, 性能設計あるいは照査型設計という観点から論述した. ここでは, まず, 破壊に至る地盤状態の変化について実験結果を用いて考察した. 次に, 性能設計において重要となる終局限界状態, 損傷限界状態及び使用限界状態 (安全施工限界状態) を定義し, 地盤が浸透破壊に至る状態変化と対応づけ, 各々の状態を規定する限界値の考え方及びその算定方法について考察した. そして,「損傷限界状態の限界値」=「変形開始時水頭差Hy」,「終局限界状態を表す限界値」=「破壊時水頭差Hf」とおくことを提案した. そして, HyはPrismaticfailureの考え方を用いて算出された理論限界水頭差HPFと等しくなること (Hy=HPF), Hfは二次元地盤 (掘削なし) の実験結果からHf=1.11Hyとなること, 安全施工限界水頭差Hsは基準類からHs=(0.460~0.733) Hyと算定されることを提案した.
  • Arien HERYANSYAH, 後藤 章, 水谷 正一, Muhammad JP YANUAR
    2005 年 2005 巻 240 号 p. 657-664
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    適切な流域モデルの構築は流域管理において必須事項のひとつである. 本研究ではインドネシア・チダナウ流域における水質汚濁問題に対する適用性の観点から, タンクモデルを基本とした流出モデルの評価を行った. 種々の流域分割に基づくサブ流域単位のタンクモデルの適用を比較し, 流域内の水の動きを考慮に入れて最適なモデル構成を決定した. ここで得られたモデルは, 水質挙動を付加した流域水質水文モデルを構成するための基礎構造モデルとして期待される.
  • 武山 絵美
    2005 年 2005 巻 240 号 p. 665-670
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ドイツにおけるエネルギー作物による減反農地利用制度を把握するとともに, その農村計画的効果を考察した. その結果, EU共通農業政策だけでなく, 再生可能エネルギー法も減反農地利用に関連しており, 両者の統合的運用によりエネルギー作物による減反農地利用が図られていることを示した. 再生可能エネルギー法が, 小規模な減反農地産エネルギー作物利用発電施設に対し有利な買電価格を設定していることが, 減反農地におけるエネルギー作物栽培成立の背景にあると言える. さらに, このような代替的農業の展開は, 農業の新たな機能の強化と農家の追加的収入源の確保につながり, 総合的な農村振興につながる可能性があることも指摘した.
  • 森 淳, 柚山 義人
    2005 年 2005 巻 240 号 p. 671-680
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    わが国の水田生態系を理解し, より効果的な保全を図るには, 水田や水路を中心とした水域の食物網解析が必要である. 本稿では, 水田水域生態系の食物網を特徴づける里山と水田の働きを示したうえで, 安定同位体比を用いた食物網解析に関する成果をレビューし, この手法を水田水域生態系に適用する上での課題と展望を論じた.
    陸起源有機物は, 藻類と同様に水田水域生態系における食物網の基点としての役割を担っている. 特に谷津田地域における役割は大きく, 藻類や水田由来の有機物とともに食物網を支えている.
    安定同位体比による食物網解析は, 水田生態系においても有効であり, 環境との調和に配慮した農業農村整備事業の実施と生態系保全施設の持続に貢献する.
  • 森 淳, 水谷 正一, 松澤 真一
    2005 年 2005 巻 240 号 p. 681-682
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
feedback
Top