農業土木学会論文集
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1998 巻, 196 号
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  • 鈴木 純, 松田 松二, 中山 敬一
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 571-578,a1
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1994年夏, 高温・少雨による干ばつが発生し, トウモロコシの生産が深刻な打撃を受けた. しかし1995年は, トウモロコシの生長期の気象状況が1994年夏とほとんど同じであったにもかかわらず, トウモロコシの干害は顕著ではなかった. この2年間の干害の程度の差異は, 雨期, すなわち梅雨時の降水量の差異によって説明される.
    ほとんどの飼料用トウモロコシは, 干ばつが予想される状況下においても潅漑されることはなかった. これは, 青刈りトウモロコシに対する潅漑作業は重労働であり, さらには収量および品質に対する効果が, あまり明らかにされていないためである.著者らはここに, 1994から1996年のトウモロコシ畑における水収支解析, 収量試験等の結果から, 青刈りトウモロコシ等の深根性作物に適した潅漑方式を提案する.
    ここで提案する潅漑方式は, 以下のとおりである.
    (1) トウモロコシの生育期間中一回のみ, 梅雨明け時に潅漑することで, 十分な収穫が得られる.
    (2) 潅漑水量は, 深度1.0mの土層を圃場容水量に接近させる水量である.
    ここで提案する潅漑方式の効果は, 下記のとおりである.
    (1) (青刈りトウモロコシ畑等に対する) 潅漑労働を大幅に軽減できる.
    (2) 潅漑時期は潅漑のピークを後に控え, 用水に余裕のある時期である. したがって, 農業用水の平滑的利用が可能である.
    (3) (ここで提案する潅漑方式による) 栽培実証試験によれば, 潅漑によって非潅漑より12%の増収 (乾物) が認められた.
    (4) ここで提案する潅漑方式は, 背丈の高い作物畑における移動式散水施設の移動の困難さを解消する. なぜなら, 飼料用トウモロコシは梅雨明け時にはまだ小さいからである.
  • 特に緑藻類によるpHの変化について
    工藤 明, 川越 信清, 泉 完, 杉本 宏司
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 579-586,a1
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    湖沼では, 藻類によって日中かなり高いpH値が観測されているが, コンクリート製の幹線用水路末端区間でpHが10以上になることは極めて珍しい事例である.
    幹線用水路の流下に伴う水質変化機構を解明するため, 青森県五所川原幹線用水路において, 流下に伴う変化と末端地点の日変化を現地で観測した. その結果, 好天時では幹線用水路末端地点より上流約3km地点からpHは急激に上昇した. 末端地点のpH経時変化は日中上昇し, 夜間に低下する傾向を示した. この区間では夏場に緑藻類 (シオグサ藻) が繁茂するため, pHの変化は緑藻類の光合成の影響を受けていると考えた.
    そこで, 五所川原幹線用水路末端から採取した緑藻類を使用し, pHの経時変化を再現するためガラス水槽を用いた室内実験を行った. 室内実験で得られたpHの変化は, 現地で観測した結果と同一傾向を示した. 各種の条件下で行った室内実験で, 緑藻類による潅漑用水のアルカリ化現象は光量と水温に影響されることを示した. さらに, 緑藻類の生育には水質が大きく影響する. 幹線用水路末端では排水路からの補給水を導入した後, 緑藻類の生育が見られなくなった.
  • 平面問題からみた梁のたわみ公式
    渡辺 正平
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 587-595,a1
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    梁の弾性たわみの式は, 平面保持の仮定のもとに曲げモーメントのみから誘導された初等解が周知である. 公表されている勢断力の影響を考慮した初等解の補正式では, たわみはボアソン比および梁の高さとスパンの比の関数となっており, コンクリートやモルタル, アスファルトのような材料のたわみ試験では補正項が無視できない大きさとなる. しかし, 初等解も補正式も平面応力に関するものである. そこで, 応力関数法によって弾性たわみの解析解を平面ひずみと平面応力に分けて誘導し, 数値計算を行った. それによって, 平面ひずみと平面応力でのたわみの相違を厳密に調べると共に, 補正式の精度も検討した. さらに, 平面ひずみに対する初等解も誘導し, 平面ひずみと平面応力でのたわみが異なる理由を究明した. なお, 有限要素法によって解析解を確認し, さらに, 支点の拘束条件の違いがたわみに与える影響を有限要素法によって検討した.
  • 稲垣 仁根, 小路 順一, 近藤 文義
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 597-609,a1
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    自動減圧弁を用いた低圧化パイプラインシステムを導入する場合には既存の機材が使用されるため, 自動減圧弁を直列配置すると自励振動を生ずる問題が残されていた. 現在, 作動機構が改良された新型の自動減圧弁が開発されているので, 本論文では, この新型自動減圧弁の数理モデルを作成し, 水理実験結果に対してシミュレーションによる検証を行い, モデルの妥当性を確認した. さらに, 現地のパイプラインを想定したモデルを作成して, 新型自動減圧弁を直列配置した場合の流況変動を再現した. その結果, 流況の変化に対して新型自動減圧弁が十分に作動した場合には, 減圧弁の下流側の圧力は設定圧力に制御され, 共振現象等の不都合な現象が発生していないことが確認できた. 水撃圧が発生するような流況の変化が速い状況においても, 新型自動減圧弁は水撃圧をある程度抑制できるため, 急変現象に対しても効果を期待できるものと考えられる.
  • 抵抗体群を杭群とした場合
    木ノ瀬 紘一, 森 望, 高橋 幹子
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 611-618,a1
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    親水を意識した水路では, 河岸や水路岸に沿って植生群を繁茂させたり, 粗石群を設けることも考えられている. これらは, 水理学的に見れば抵抗体群を帯状に配置したことになり, 流水断面において流水抵抗を場所的に変化させたことになる. 抵抗体群を比較的径が小さく密に配置された杭群で置き換えた場合を対象に, その影響を従来から使われている比エネルギを指標にした一次元不等流計算法に取り込む方法を示した。このような計算法では, 杭群によって発生する複雑な乱流現象を反映したマクロな現象 (流速分布など) を定式化する必要がある. 本論文では, レイノルズ方程式を水深方向に積分して得られる運動方程式を基礎に, 渦動粘性係数をモデル化して, 横断方向の水深平均流速分布を求めた. この計算法から得られる流速分布や水深変化の性状は, ほぼ実験結果を裏付けるものであった.
  • 擁壁模型実験における側面摩擦の三次元解析による評価
    森 洋, 田中 忠次
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 619-627,a1
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    通常, 擁壁模型実験では地盤中に発生する勢断帯を観察するため, 側面にガラス板を用いている場合が多い.しかし, 地盤の積上げ高さ (H) に対する壁体幅 (W) の比 (W/H) が小さければ, 受働土圧を過大に評価することがある.本研究では, 豊浦標準砂を用いた下端ヒンジの転倒受働土圧実験を動的緩和法を適用した三次元弾塑性有限要素解析で比較・検討した.W/Hを1.05とした時, 側面摩擦角が6°程度のガラス板であっても, 側面摩擦除去を施した場合より全受働土圧係数は高くなった.本論文で示した三次元解析では側面摩擦の影響が評価でき, 側面摩擦条件を変化させた実験結果をよく再現できる.
  • カラム実験
    王 淑湘, 北村 義信, 矢野 友久
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 629-637,a2
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    脱塩と脱ソーダ性に関するリーチング効率の有効性を, 高塩類土壌における連続湛水ならびに間欠湛水の両方について比較した. 間欠湛水は全可溶性塩類のリーチングに対して, 連続湛水よりも効果的であった. しかしながら, 土壌中の水溶性イオンの減少はイオンの種類によって全く異なっていた. リーチングの間, 土壌の脱ソーダ性は脱塩と同時に生じたがそのプロセスは, 両湛水法に対して脱塩より遅れて生じた. 間欠湛水は脱ソーダ性に関して連続湛水よりも有利となることが判明した. 土壌水のSARを用いる従来の方法の代わりに, イオン活動度と陽イオン選択係数に基づいて土壌のESPを計算した.
  • 圧密変形解析手法による支持力評価手法の一提案と非排水支持力解析への適用
    東 孝寛, 高山 昌照
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 639-648,a2
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    微小変形理論に基づいた弾塑性有限要素法による圧密変形 (土/水連成) 解析手法を使用して, 飽和粘土地盤の支持力を評価する一手法を提案した. 提案した手法では, 土の構成式として関口・太田モデルを用い, 圧密の解析手法として赤井・田村の手法を採用している. 提案手法を用いて, 帯状等分布荷重が作用する等方均質な正規圧密飽和地盤の非排水条件下における支持力解析を行い, 提案した支持力評価手法の適用性と解析に使用する要素の種類が解析結果へ及ぼす影響について検討した. その結果, 次数低減積分を採用したアイソパラメトリック四辺形要素を使用した場合, 解析から求まる地盤の極限支持力は, Prandt1解とほぼ一致した.
  • 木村 晴保, 矢伏 真悟, 伴 道一
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 649-654,a2
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    湾奥に河川水が流入する湾においては, 河川水は湾海水を連行し, それによって湾の海水交換は促進される.本研究では湾の海水交換の促進を目的とし, 河口にスルースゲ・トを備えた有限水深河口域の密度流理論式を導出し, スルースゲートによる河川水の湾海水連行率Qの増大効果について検討した, 結果は次の通りである.
    (1) 河川水の湾海水連行率Qは河川水の放出密度フルード数Fdoや湾の相対水深R, ゲートの相対開度Gおよび湾口での湾海水補給最の関数である.
    (2) 湾口からの湾海水補給量が十分可能な場合, ゲートの相対開度Gの縮小はFdoRを増大し, Q, つまり湾の海水交換を高める.
  • 川上 賢士, 山野 隆康, 辻 厚志, 青木 正雄
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 655-671
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    流動化処理土の強さを支配する因子として, 第一に挙げられるのはセメント系固化材の混入比率である. 筆者らは, 流動化処理土供試体に加わる圧縮力が, 供試体中の水和生成物と, それ以外 (すなわち土一水系連続体) の2者に分担される状態を仮想した. すなわち前者をリジッド部, 後者をソフト部とし, これら2部材が共同して外力に抵抗するものと考えた.
    強度の指標として圧密降伏応力を取り上げ, これとリジッド部体積率の関係を, 合成柱をモデルとして解析的に導出した. ただしソフト部領域の間隙比は, リジッド部体積率の値に関わりなく一定とした.
    一連の圧密試験を実行し, 提案モデルの妥当性を検証することができた.
  • 軽部 重太郎, 杉本 英夫, 藤平 雅巳, 中石 克也
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 673-680,a2
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    アロフェンとイモゴライトの分散凝集と荷電特性を測定し, 懸濁状態での基本的な性質を考察した. 非脱鉄アロフェンの正味荷電ゼロ点はpH5.9, 脱鉄アロフェンのそれはpH5.1で, アロフェンは両者ともそれらの前後で凝集した. 非脱鉄アロフェンの凝集領域はやや高く出た. 非脱鉄イモゴライトの正味荷電ゼロ点はpH7鳥脱鉄イモゴライトのそれはpH6.0であった. それより高いpHでは正味負荷電が高くなるにもかかわらず, イモゴライトは両者ともアルカリ性のすべての点で凝集した. このことは相対粘度の変化でも認められ, 粘度の高い状態はイモゴライトが凝集して太くなった状態に対応した. イモゴライトが10%混入すると, アルカリ性でアロフェンの分散性は低下したイモゴライトは黒ボク土に広く含まれるので, 粒度分析などで分散を阻害する主要な原因の1つになると考えられた.
  • 酸性水浸透による内部侵食
    山岸 寿樹, 加藤 誠, 西村 拓, 河野 英一, 岡崎 正規
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 681-686,a2
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    日本の火山灰土壌では酸性雨に対する緩衝能力が非常に高いとされている。しかし、土の許容能力を超えると、一挙に緩衝機能が低下し、回復できない状況に至る。本研究では、pH2~5の硝酸、硫酸混合酸性水を模擬酸性雨として使用し、関東ロームが酸性雨にさらされた時の土壌の分散性の変化とCa、Mg、AIイオンの溶脱の様子をピンホール試験を用いて実験的に調べた。供試土は、多摩ロームの不撹乱土と撹乱締固め土を使用し、透水性の変化や溶脱イオンの変化から不撹乱土の骨格構造が酸性雨耐性に寄与していること、また、現在程度の酸性雨ではCa、Mgの溶脱は生じてもAlイオン溶脱の影響が現れる程度の土壌劣化は生じていないことが推察される。
  • 金 翰泰, 河地 利彦, 平松 研, 吉武 美孝
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 687-694
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    自由水面の決定およびSOR法による全体方程式の求解における計算の収束性の改善を目的として, 定常不圧地下水流解析モデル (有限要素法モデル, 境界要素法モデル) にファジー則を基礎とした緩和スキームを組み入れる. 提案したスキームは, もとより簡単なものであるが, 優れて反復計算での収束を速め, 安定性を高める. 自由水面の決定問題では, スキームが発揮する性能はモデル化手法が有限要素法であるか境界要素法であるかにはほとんど関係しない. 全体方程式の求解問題では, スキームの使用によって, 収束のために必要な反復回数は減少するが, 自由水面の決定問題ほどには演算量が減少しない. 互いに独立なこれら二つのスキームを並行して適用した場合, 相乗効果によって, それらのうちの一つを適用した場合に較べて, 全体的な演算時間はより効率的に減少する.
  • ドアン ドアントウアン, 佐藤 政良
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 695-709,a3
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究は, 1981年から実施された農地所有制度改革に伴う, 北部ヴェトナム紅河デルタ農村地帯における農地の農民への再配分を分析する. そのため, 3つの村の集落において, 農民に配分された耕地についての現地調査を行った.
    この農地配分に当たっては平等が最優先の原則であったが。それは行政村のレベルではできず。伝統的集落のレベルで実現された. 各集落の土地は, 土壌および用排水条件の違いによって細かく区分され, それぞれの区で各人が同じ面積を配分された. そして, 各家族のメンバーの面積を集めたものを1区画として, 各区内でランダムに配置された.
    これは, 各農家の干ばつや洪水に対する危険度, 収量の安定度, 義務が等しくなるようにするために実施されたものである. これによって, 貧弱な用排水条件の下, 用排水管理に関する集落全体としての最適な決定ができることになった. しかしこれは一方, 小農地片の分散所有をもたらし, 耕作における必要投入労働を増加させた. 将来, 土地および労働の生産性向上に向けた耕地の整理統合を実施するには, 用排水条件の改善が大前提になる.
  • 赤井・田村の圧密解析法についての一検討
    東 孝寛, 高山 昌照
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 711-719,a3
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    有限要素法による圧密解析法として多用されている赤井・田村の圧密解析法においては, 連続条件式を差分近似する際の動水勾配の評価法として, 要素重心間の間隙水圧 (過剰間隙水圧) や全水頭の差から, x (水平), y (鉛直) 方向の動水勾配を差分的に求める方法 (A法) と, 重心間の動水勾配を間隙水圧 (過剰間隙水圧) や全水頭の差から直接差分的に求める方法 (B法) が使用されている. 本文では, 最初にB法を透水性が異方的である地盤へ適用できるように拡張した. 次に, 三角形要素から成る一次元と二次元の圧密解析モデルについて, A, B両手法を用いた赤井・田村の圧密解析法による圧密解析を行い, 解析から得られた結果と同じモデルについての理論解, あるいはSandhu流の圧密解析結果との比較を通して, A, B両手法による解析結果の差異について検討した.
  • 浅井戸群の揚水管理に関する研究 (2)
    大橋 行三, 藤原 正幸, Moha P. BHATTA
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 721-734,a3
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    広域的な浅層地下水の取水管理は, 流動場の動的把握と共に, 水利権等制約条件の競合・協調を柔軟に解決するための「組合せ最適化手法」との連結が必要である.
    本研究の基礎となる浅井戸 (径: 3-5m, 深さ: 8-15m) の「揚水能力」等の水理属性の計量手法は, すでに提案した. 本研究は, 40数個の浅井戸を, 隣接数個を一組と見る10井戸群に分け, 各々が「群揚水能力」を持つサブシステムと想定した. 次に, 揚水管理を自律分散型のシステム構成によるサブシステム相互間のスケジューリング問題として捉えた. 具体的な井戸群内の揚水操作に対しては, 水量割付ルールと, 経験知識から抽出した揚水継続・休止時間等の計量要素による作業割付け方法を提案すると共に, これらのアルゴリズムの構築を検討し, 手順の具体化と適用の可能性を明らかにした.
  • 康 躍虎, 河野 広, 西山 壮一, 陳 荷生
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 735-742,a3
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    現実には, 圃場の勾配は不均一であるのが通常である. したがって, 不均一の勾配下におけるマイクロ潅漑設計手法は重要な課題である. 現在のところ, エミッタの平均流量と潅水の均等性を与件とし, 有限要素法を用いた解析方法はKangらの方法のみである. しかしながら, この方法は解析手順が複雑なため, 技術者には理解されにくい. 本論においては, 不均一の勾配の圃場に対して, 必要とするエミッタの平均流量と潅水の均等性が与えられたとき, ラテラル流量式を用いる方法を論じた. まず, ラテラル流量式を用いて, エミッタ平均流量に基づく作動圧力が得られる. 次に, ラテラルに沿う水圧と流量は, Forward Step法を用いて求めることができる. そして, 潅水の均等性の検討が可能である. 前述の設計法およびKangらの計算機シミュレーションに基づき不均一の圃場におけるすべての設計パターン (6種類) が本論に示されている.
    エミッタ平均流量, 潅水の均等性がわかり, そしてラテラルの長さまたは管径が与えられると, 作動圧力が求められ, 最も適切なラテラルの位置が求まる. 本論には設計手順も示してある. これらの例はKangらによって示された有限要素法を用いている. 本論に示した方法は, 有限要素法による場合より精度は劣る. しかし, 実用的には十分である. Forward step法やBack step法や, 通常見られる数値解析の書籍にある最小二乗法を用いており, 有限要素法を用いる方法よりはるかに簡単である.
  • 畑地における水管理の実態 (I)
    橋本 岩夫, 西出 勤, 千家 正照, 天谷 孝夫, 西村 直正
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 743-751,a3
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    露地栽培の転換畑は, 普通畑とは土壌条件, 水利条件が異なるので, 潅漑には普通畑の技術で対応できない特有の問題が生じている。1つには, 水田時の耕盤が残る転換畑の有効土層, 土壌水分の消費, 潅水開始時期が, 普通畑とは異なるという問題がある。また, 2つには, 水田用水を利用して, 畦間に一時湛水あるいは常時湛水する方式で畦間潅漑が行われている。この畦間潅漑の方式によって, 転換畑の水利用が異なるという問題がある。本研究では, これら2つの問題の実態を調査によって明らかにした。
    その結果を要約すると, 次のとおりになる。
    1) 耕盤を残している転換畑では, 土壌水分の消費は耕盤層から上の層に限られて, 耕盤直下層以深では行われない。有効土層深は25cm前後である。一方, 耕盤を破砕した転換畑では, 浅い層ほど消費が多く, 深くなるにつれて漸次少なくなる。有効土層深は50cm前後である。
    2) 耕盤を破砕した転換畑の潅水はpF2.6前後で始められている。一方, 耕盤を残している転換畑では, それよりも高水分のpF2.5~2.6以下で始められている。
    3) 畦間潅漑の一時湛水方式は, 乾燥時に一時的に畦間湛水させ, 作物に水分を供給した後は, 残水を落水する方法である。排水性, 通気性を必要とする作物に適用される。1回の潅水量は約150mmである。間断日数は乾燥状況に左右されて一定しない。
    4) 畦間潅漑の常時湛水方式は, 耕盤の湛水機能を利用して, 常時畦間に湛水させる方法である。土壌に高水分状態を必要とする作物に適用される。潅漑開始時に湛水を始める水量80~100mmを必要とする。湛水後の1回の潅水量は5~20mmである。間断日数は2~3日である。
  • 金木 亮一, 久馬 一剛, 岩間 憲治, 小谷 廣通
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 753-758,a4
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    無代かき移植・育苗箱全量施肥栽培区 (無代かき区) と代かき移植・全層施肥栽培区 (代かき区) を実験圃場に設け, 代かきの有無による表面流出負荷の差異を検討した. 無代かき区には稲作期間中に必要とされる全ての窒素量を, 被覆肥料を用いて育苗箱に一括施肥するとともに, 耕起の際にリンを全層施肥した. 一方, 代かき区には慣行の元肥相当量の窒素 (内訳は被覆肥料が80%, 速効性肥料が20%) およびリン, カリを耕起の際に全層施肥した. 代かき・田植期6日間 (5月20~25日) の代かき区からの表面流出負荷は, SSで無代かき区の19倍, BODで5.2倍, D-CODで12倍, T-Nで8.5倍, T-Pでは14倍であった. この実験により, 水田からの表面流出負荷削減に対して無代かき・育苗箱全量施肥栽培法が効果的であることが判明した.
  • 洪 林, 高瀬 恵次, 佐藤 晃一
    1998 年 1998 巻 196 号 p. 759-765
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本論文では, 棚田を含む流域 (棚田流域) のピーク流出および雨水保留特性について, 山林地流域と比較することにより検討した.その結果, 棚田流域のピーク流出係数は山林地流域に比べてやや大きく, 洪水到達時間は短いことが明らかとなった.そして, これらの解析結果に基づき計画降雨に対すうピーク比流量を求めたところ・棚田流域のピーク比流量は山林地に比べておよそ1.55倍になることが予想された.また, 直接流出量を分離して得られる雨水保留特性について検討を行い, 棚田流域の雨水保留量は山林地流域に比べて小さいことを示した.さらに, 水収支的考察により, 棚田流域の浸透強度が山林地流域よりかなり小さくなることを明らかにした.
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