1994年夏, 高温・少雨による干ばつが発生し, トウモロコシの生産が深刻な打撃を受けた. しかし1995年は, トウモロコシの生長期の気象状況が1994年夏とほとんど同じであったにもかかわらず, トウモロコシの干害は顕著ではなかった. この2年間の干害の程度の差異は, 雨期, すなわち梅雨時の降水量の差異によって説明される.
ほとんどの飼料用トウモロコシは, 干ばつが予想される状況下においても潅漑されることはなかった. これは, 青刈りトウモロコシに対する潅漑作業は重労働であり, さらには収量および品質に対する効果が, あまり明らかにされていないためである.著者らはここに, 1994から1996年のトウモロコシ畑における水収支解析, 収量試験等の結果から, 青刈りトウモロコシ等の深根性作物に適した潅漑方式を提案する.
ここで提案する潅漑方式は, 以下のとおりである.
(1) トウモロコシの生育期間中一回のみ, 梅雨明け時に潅漑することで, 十分な収穫が得られる.
(2) 潅漑水量は, 深度1.0mの土層を圃場容水量に接近させる水量である.
ここで提案する潅漑方式の効果は, 下記のとおりである.
(1) (青刈りトウモロコシ畑等に対する) 潅漑労働を大幅に軽減できる.
(2) 潅漑時期は潅漑のピークを後に控え, 用水に余裕のある時期である. したがって, 農業用水の平滑的利用が可能である.
(3) (ここで提案する潅漑方式による) 栽培実証試験によれば, 潅漑によって非潅漑より12%の増収 (乾物) が認められた.
(4) ここで提案する潅漑方式は, 背丈の高い作物畑における移動式散水施設の移動の困難さを解消する. なぜなら, 飼料用トウモロコシは梅雨明け時にはまだ小さいからである.
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