農業土木学会論文集
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2003 巻, 226 号
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  • 宗村 広昭, 後藤 章, 水谷 正一
    2003 年 2003 巻 226 号 p. 455-464
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    那須野ヶ原において浅層地下水のNO3-N汚染が重要な問題となってきている.そこで本研究では, 地下水帯への窒素負荷流入過程のモデル化を目的に研究を進めた.既存の水文流出モデル (那須野ヶ原水文モデル) をベースに地下水窒素負荷流入モデルの構築を試みた.窒素負荷の流入過程を表現するために, 水文流出モデルにL-Q型と溶け出し型の二種類の窒素負荷挙動式を付加した.土壌の構造を考慮し, 非水田タンクの一段目にL-Q型, 二段目に溶け出し型を適用した.水田タンクには水田の特質を考慮し溶け出し型を適用した.その結果, NO3-N濃度の変動傾向や降雨に対する反応は概ね表現できた.さらに水文モデルのパラメータ値を変更し感度分析を行った結果, 水質に関する式形やパラメータ値が与える影響と比べると, 水動態のモデル化精度の方が, 水質モデルの再現性に対してより大きく影響を与えることが分かった.
  • 日下 達朗, 末本 航, 西山 壮一, 深田 三夫
    2003 年 2003 巻 226 号 p. 465-468
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    降雨や湧水等によりほ場面や土壌中から速やかに排水できない土壌条件において, 暗渠排水は有効な工法である.この研究では, 溝付素焼き土管に直径5mmの孔を開効率0.6%で開けた士管を開発し, 同じ材質で無孔土管を模型水槽に同時に設置し, 排水実験の繰返しによる排水特性を比較解析した, また, 孔口周辺に形成が想定される止粒子のアーチ構造は管内への土壌流入を抑え, 排水効率もかなり高く, 被覆材が不要な比較的浅い層に設置される暗渠管としての利用が期待でき, 新開発の孔開き土管が暗渠排水管としてかなり有望であることを実証した.
  • 仮想状況評価法による接近
    合崎 英男
    2003 年 2003 巻 226 号 p. 469-477
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は, 堆肥化施設整備のために耕種農家の堆肥需要量を予測する手法を開発することである.地域に適した施設を導入するためには, 導入にあたって計画受益地域内の堆肥需要量を予測することが重要である.本稿では, 取引実績のないときでも堆肥需要量が予測できること, 回答者数に一定の制限があっても分析に使えるデータ数が確保できることから支払カード形式の仮想状況評価法を採用し, データの収集方法 (質問文) から計画受益地域全体での堆肥需要量と堆肥価格の関係を示す堆肥需要曲線の導出方法までを示した.需要曲線の導出には, 作業が簡便な集計アプローチと計量経済学的手法に基づいた非集計アプローチの2種類を示した.本手法を茨城県稲敷郡東町を事例に適用した結果, 過大推計を回収率に基づいて修正すれば堆肥需要予測に有用であることが示された.
  • 浅野 勇, 向後 雄二, 林田 洋一
    2003 年 2003 巻 226 号 p. 479-488
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本論文では, クーリング流量及び水温がクーリングパイプ周辺の温度履歴に及ぼす影響について室内実験と数値解析を行い検討した. 1本のクーリングパイプを設置した供試体 (60×60×50cm) を用いて室内実験を行い, パイプ周辺の温度分布について調べた. 実験では, クーリング流量及び水温を変化させた. 実験結果より, クーリング水温はクーリング流量に比べてパイプ周辺の温度履歴に大きな影響を与えることを明らかにした. また, 有限要素法による実験結果に対するシミュレーションを行い, シミュレーション結果と実験結果が良く近似することを確認した.
  • 金沢市内を流れる農業用水に対する住民意識の分析事例
    瀧本 裕士, 田野 信博, 村島 和男, 橋本 岩夫, 上田 哲行, 皆巳 幸也, 丸山 利輔, 野口 寧代, 堀野 治彦
    2003 年 2003 巻 226 号 p. 489-496
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, 灌漑用水が市街地を流れる金沢市の事例を取り上げ, CVM (仮想評価法) により住民による地域用水機能の経済評価を行った.その結果, 以下のようなことがわかった.(1) 金沢市内を流れる都市型用水の地域用水機能としての評価額は, 農村型用水の評価額よりも低かった.このことは, 都市部と農村部で用水の多面的機能に対する意識の違いによるものと考えられる.(2) また, 都市型用水の持つ機能としては, 景観保全や安らぎ・交流の場としての評価が高く, 用水が住民にとって憩いの場となっている.(3) CVM値に有意な差をあたえる要因ごとに経済的な評価を行うと共に, ターンブル法とプロビットモデルによる評価額の差を求め, 両者の問に大きな差のないことを明らかにした.(4) しかし, 用水に対する住民の意識は都市内の地区間で異なり, 水路の見通しが良い地区ほどWTPの評価額が高く, 用水に対して景観の価値を求める傾向の強いことが伺えた.
  • 山崎 祐樹, 土谷 富士夫, 辻 修
    2003 年 2003 巻 226 号 p. 497-505
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    土中の水分および熱移動の研究において, 七の熱伝導率が重要な因子となっている.ここでは, 石英含量の異なる北海道の士に対して熱伝導率を測定し, 石英含量と水分量による熱伝導率の変化を比較するとともに, Johansenによる十の熱伝導率推定式の適応性について検証した.その結果, 凍結および未凍結の両条件下において, 石英含量および含水比の増加に伴って熱伝導率は増加する傾向を示したが, 十によってはその値が大きく変化した.Johansen法による熱伝導率推定式は, 石英含量の多い士には有効であるが, 石英含量の少ない十に対しての適応性は認められなかった.しかし, Johansenによる熱伝導率推定式に一定の修正値を加味することで, 石英含量の比較的少ない十に対しても熱伝導率の推定が容易にできることが明らかとなった.
  • 木ノ瀬 紘一, 原田 知明, 古谷 和子
    2003 年 2003 巻 226 号 p. 507-514
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    水没した植生群周辺に生ずる二次流 (縦渦) を解析するための新たな準3次元モデルの開発を行った。大規模水平渦と, 断面内に生ずる二次流から成る流れ場に対し, sds-2dhモデルに基づく平面二次元解析により大規模水平渦を再現し, 鉛直方向には半解析的な手法を用いて流速成分を算出し二次流を再現する枠組みのモデルである.
    得られた計算結果を既往の実験成果と比較したところ, 主流速の鉛直分布, 横断面内の主流速分布, 二次流 (縦渦) の形状を十分に再現できることを明らかにした.
  • 鬼怒・小貝モデルの改良
    松井 宏之
    2003 年 2003 巻 226 号 p. 515-521
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    地目別の流出過程を考慮したグリッド型流出モデルを開発した.このモデルの特徴として, モデルの最小単位となるセル内における地目別流出過程をタンクモデル, セル間の水移動を運動方程式・連続式によってモデル化していることが挙げられる.このモデルを鬼怒川水系・小貝川水系に適用し, 河川流況を良好に再現できるだけでなく, 地下水位の変動傾向についても比較的良好に再現できることを確認した.地下水位の変動傾向の再現において, 涵養源となる表流水の流出過程を考慮したことが精度の向上に貢献しており, このモデル化が有用であることを示した.
  • 広域農道バードラインを事例として
    蘭 嘉宜, 丹治 肇
    2003 年 2003 巻 226 号 p. 523-530
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農道整備事業の多面的効果の一つに, 生活中心地へのアクセス改善による生活利便性改善効果がある.本稿では, ヘドニック法を使つた生活利便性改善効果の評価手法を提案した.ヘドニック法の適用にあたつては,(1) 生活利便性を生活圏中心地へのアクセスにより評価し,(2) 一般道路を含めた道路アクセス改善の地価関数への影響を分析し, 対象とする農道の効果を求める方法を採つた.ケーススタディでは, 水戸を中心とした二次生活圏の地価の回帰分析により地価関数を推定した.この地価関数を使つて, 広域農道バードラインによる平野台団地での生活利便性改善効果を算定したところ, 2,750円/m2との結果が得られた.
  • 高木 強治, 小林 宏康, 浪平 篤
    2003 年 2003 巻 226 号 p. 531-542
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    遺構「鼻ぐり井手」は, 加藤清正が新田開発のため, 慶長13年 (旦608年) に開削した延長390mの用水路である.鼻ぐり井手では, ヨナと呼ばれる阿蘇火山灰が水路底に堆積しないよう, 底部に穿孔を有する隔壁を一定の間隔で残したまま水路を開削し, 土砂の掃流力を高めたといい伝えられている.本研究では, 鼻ぐり井手の現況および過去に存在したと考えられる隔壁を模型に再現し, 水理実験によってそれらの通水機能, 掃砂機能および流れの構造を明らかにした.その結果, 鼻ぐり井手では, 連続する隔壁を通過する流れが常に噴流状態にあり, 掃砂機能が通常の開水路より格段に強化されていること, さらにこの掃砂機能に係わる流速の増加が穿孔面積を縮めることによってもたらされ, 掃砂機能と通水機能がトレードオフの関係になっていることを明らかにした.
  • 中尾 誠司, 高木 東, 松田 誠祐
    2003 年 2003 巻 226 号 p. 543-549
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    傾斜ウネ立て圃場からの土砂流出量評価は, 農地の土壌保全を考える上で非常に重要なことである.最近, 中尾らによって傾斜ウネ立て圃場からの土砂流出量予測モデルが提案され, その有効性が検討された.しかし, この予測モデルは長大ウネを有する圃場には適用されていない.本研究では, このモデルを長大ウネ立て試験区に適用し, その有効性について検討した.傾斜圃場に長さ約50mおよび約73mの長大ウネ立て試験区を設け, 両試験区とも縦ウネ方式とし, 一雨ごとに各試験区からの降雨流出水量および土砂流出量を観測した.土砂流出量の実測値と予測モデルによる計算値を比較検討した結果, 両者は両試験区で比較的よく一致し, 当土砂流出量予測モデルは, 長大なウネ立て圃場においても実用的に十分, 適用できることがわかった.
  • 中尾 誠司, 高木 東, 松田 誠祐
    2003 年 2003 巻 226 号 p. 551-558
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    土壌侵食強度を評価するためのモデル式において受食性に関するパラメータを実験的に決定する手法の開発は重要である.筆者らは, すでにウネとウネ間から構成された傾斜畑からの土砂流出量予測モデルを開発したが, このモデルでは, 流量と勾配に関する指数関数として表されるリル侵食レート式が重要な役割を果たしている.当式には, 土砂流出量を予測する上で重要な受食性パラメータが含まれている.このパラメータは, これまで自然降雨下での長期にわたる現地観測データに基づいて決定され, 多大な時間と手間を要していた.そこで, 時間や手間のかからない実験により, この受食性パラメータを決定する方法を考え, これらの有効性について検討した.その結果, ウネ間流路における通水実験を行い, 土砂流出レートを測定する方法により, 簡易に受食性パラメータが決定できることを明らかにした.
  • 西村 伸一, 井上 隆司, 藤井 弘章, 脇谷 芳招
    2003 年 2003 巻 226 号 p. 559-560
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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