本研究では, 灌漑用水が市街地を流れる金沢市の事例を取り上げ, CVM (仮想評価法) により住民による地域用水機能の経済評価を行った.その結果, 以下のようなことがわかった.(1) 金沢市内を流れる都市型用水の地域用水機能としての評価額は, 農村型用水の評価額よりも低かった.このことは, 都市部と農村部で用水の多面的機能に対する意識の違いによるものと考えられる.(2) また, 都市型用水の持つ機能としては, 景観保全や安らぎ・交流の場としての評価が高く, 用水が住民にとって憩いの場となっている.(3) CVM値に有意な差をあたえる要因ごとに経済的な評価を行うと共に, ターンブル法とプロビットモデルによる評価額の差を求め, 両者の問に大きな差のないことを明らかにした.(4) しかし, 用水に対する住民の意識は都市内の地区間で異なり, 水路の見通しが良い地区ほどWTPの評価額が高く, 用水に対して景観の価値を求める傾向の強いことが伺えた.
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