農業土木学会論文集
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2004 巻, 231 号
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  • 三浦 麻, 筑紫 二郎, 林 静夫, 田中 明
    2004 年 2004 巻 231 号 p. 249-258
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    佐賀県東松浦半島の盆地部において夜間に発生する気温の急上昇は夜間最低気温の発生時刻を左右する. 本研究では夜間昇温現象の発生過程を解明するために, 繋留気球による鉛直気温観測および熱画像による傾斜面温度観測を行った. 観測の結果, 海洋を渡ってきた温暖な空気が地形の影響を受け, 台地斜面を流下する地形風によって盆地部に移流することで夜間昇温が発生することがわかった. 台地部における風速が1ms-1以下で一時的に吹く場合には, 盆地部では静穏であり地上30m以上の領域だけで昇温した. 台地部における風速が1ms-1以上で継続して吹く場合には, 盆地部においても風が生じ昇温現象が発生した. また, 海洋を渡ってきた南西風が半島に吹走すると, 温暖な空気が盆地部の南方斜面を流下し, 鉛直および水平方向に拡大することで盆地部に昇温現象をもたらした. さらに, 熱画像によって地形的な影響を受けた温暖な空気が盆地部に移流することが認められた.
  • 森 洋, 田中 忠次
    2004 年 2004 巻 231 号 p. 259-265
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    試験方法の取り扱い方が簡便で, 直接, 剪断強度を求めることが可能な一面剪断試験における上下剪断箱間隔 (d) の影響を, 風乾状態の豊浦標準砂を用いた在来型 (直径6cm) の試験装置より得られた実験結果に弾塑性有限要素解析を適用して比較・検討した. dを, 想定した剪断帯幅に近似させた時, 剪断箱内の側面摩擦低減と試料流出抑制を伴ったゴムメンブレンによる間隙処理を施した一面剪断試験では, 間隙処理を施さない場合に比べて試料流出が抑えられ, 上下剪断箱間の相対水平変位に対する剪断応力と垂直変位が信頼性のある実験挙動を示した. dを変化させた時の異方性を考慮した弾塑性有限要素解析より求めた剪断抵抗角は, dを5段階に変化させた場合の実験結果と比較的よく一致した. また, 定体積条件を想定した解析結果では, 上下剪断箱間隔に対応する要素部分での変位境界条件の違いにより, 得られる剪断応力が異なる結果となった.
  • 金木 亮一, 山本 愛子
    2004 年 2004 巻 231 号 p. 267-272
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    降雨流出時の, 内湖の流入負荷量と流出負荷量の時間変動を実測し, 水質浄化能を検討した. 窒素とリンの流入負荷量については溶存態に比べて懸濁態の急激な増加が目立ち, 面源負荷や河川の底泥が大量に内湖に流入していることが伺われた.流出負荷の増加量は少なく, 内湖に流入した負荷が, 貯留効果および流速の低下に伴う沈殿作用によって浄化されていた. 流入負荷量にはヒステリシスが見られ, 流量増加時の方が流量低下時より多くなっていることから, 流量増加時の貯留能力を如何に確保するかが, 浄化能向上の課題となる.
  • 雨よけ施設による実証試験
    岩田 幸良, 中野 寛, 奥野 林太郎
    2004 年 2004 巻 231 号 p. 273-278
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    干ばつ時の水不足による作物の減収量を評価をするため, 北海道の主要畑作地帯の3カ所に雨よけ施設を設置し, 無降雨条件で灌水量を変化させた試験区の収量の違いを調べた. 試験地における蒸発散位の上限に相当する3mm・d-1の灌水量を基準とし, 2mm・d-1, 1mm・d-1と灌水量を減少させることで水ストレスを受けた条件を作り, 各試験地の代表的な畑作物を栽培した. その結果, 例えばダイズ・ニンジン・バレイショでは2mm・d-1の灌水量で基準区に比べ95%以上の収量が期待できるなど, 灌水量が少ない場合の減収量を各作物ごとに定量的に把握することができた. このことから, 地域の現状に見合った灌水量や作物を設定して雨よけ施設内で栽培試験をおこなうことにより, 経済的な畑地の用水計画を立案する上で有用な水分不足時の減収量を把握できることが示された.
  • 温度管理を中心として
    于 衛東, 吉田 勲, 原田 昌佳
    2004 年 2004 巻 231 号 p. 279-285
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, 高温好気法による生ゴミの処理に関する可能性を調査した, 今までの研究では, 本法は, 有機廃棄物を効果的に処理するとともに, 発生した水分は発酵熱によってほぼ蒸発することが分かっている, 筆者らは, 今回, 籾殻、珪藻土、杉チップの3種類の担体を使用し, それらの担体について, 種種のBOD担体負荷を与えて, それぞれの担体の有機物の分解能力を調査するとともに, 生ゴミ投入間隔を温度管理によって定めた.その結果, 以下の点が明らかになった.(1) 担体には籾殻と珪藻土よりも杉チップが適している.(2) 生ゴミ投入間隔を24~36時間に設定すると, 処理工程中, 担体は高温に保持され, 分解率が高くなる.(3) 投入間隔を温度管理すれば, 投入間隔を12時間あるいは48時間とした場合よりも, 1.6倍の高分解が行える.(4) 炭素は炭酸ガスとして放出される, 窒素は亜硝酸や硝酸として担体中にとどまる.実験開始30日後, 担体内の窒素量は11倍に増加した.
  • 井上 光弘, 森井 俊広, 西村 拓, 藤巻 晴行
    2004 年 2004 巻 231 号 p. 287-293
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究は, 現場の不飽和透水係数を測定する原位置試験法の基準化を目的としたもので, 測定が簡便で実務的な不飽和透水係数の測定法を開発することにある. 手法として内部排水法を採用した. 原位置試験法として, プロファイル水分計で土壌水分貯留量, 2連式埋設型感圧センサーで全水頭勾配を自動計測するシステムを構築した, 砂丘地圃場への適用を試み, 不飽和透水係数の算定精度を向上させるために, 測定方法を工夫して, 時系列データから等比数列間隔でデータを抽出する方法を提案し, 内部排水法, 単位勾配法で不飽和透水係数を推定した. 単位勾配の仮定と土壌水分貯留量の経時変化を表す関数の曲線あてはめから, 不飽和透水係数を決定する簡便法を提案し, 既往の定常浸潤法, 定常蒸発法による不飽和透水係数との良好な一致から, 簡便法の有用性を確認した.
  • 合崎 英男, 佐藤 和夫, 長利 洋
    2004 年 2004 巻 231 号 p. 295-301
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は, 仮想評価法 (CVM) を利用して農業・農村環境保全政策の環境便益を評価することである. 農業・農村の持つ多面的機能のうち, 洪水緩和機能, 地下水かん養機能, 水環境保全機能, 土壌流亡抑制機能, 有機性資源活用機能, 景観管理機能, 保健休養機能, および生物保全機能を対象とする. 今後30年間に農地面積が現在よりも20%減少し, それに伴い低下する多面的機能を現状水準に維持する農業・農村環境保全政策による環境便益を評価した.全国2,140世帯から得た回答結果をノンパラメトリック推定法により分析したところ, 4,441円/世帯・年 (95%信頼区間: 2,918円~7,254円) との結果が得られた.
  • 太田 好重, 古賀 潔
    2004 年 2004 巻 231 号 p. 303-309
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    締固め土中に封入された空気が間隙水圧に与える影響を調べるために, さまざまな条件で間隙水圧の経時測定を行い, その変動と原因について実験的に検討した. その結果, 高含水比で締固められた土の間隙水圧は, 圧縮された封入空気のため高い圧力となる. 締固め直後は空気が膨張して, 急激に土の骨格を押し広げ, 続いて間隙水を排除するため, 間隙水圧は急激に低下する. その後, 封入空気が間隙水へ溶解することにより負圧となり, やがて一定となることが明らかとなった. また, 封入空気の溶解に関わる温度条件と雰囲気気体をかえた実験により, 締固め直後の高い間隙水圧は封入空気の圧力が原因であり, 間隙水圧の長期的な低下の原因は, 封入空気が間隙水へ溶解するためであることする説を支持する結果が得られた.
  • 茨城県フラワーパークとフルーツラインを事例として
    蘭 嘉宜, 八木 洋憲, 丹治 肇
    2004 年 2004 巻 231 号 p. 311-321
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農道整備事業による都市と農村のアクセス改善は農村のレクリエーション空間としての利用を促進する. 茨城県フラワーパークと広域農道整備事業等により整備されたフルーツラインを事例として, 農道整備事業が持つレクリエーション促進効果を評価した. フラワーパーク来園者の一部を対象にアンケート調査を実施し, 来園に要する一般化費用と単位人口当たり来園者数の関数を推定した. トラベルコスト法により求めた事業前後の消費者余剰の差をフルーツラインの効果とした. その結果, フラワーパーク来園者の消費者余剰の9.7%が, フルーツラインによる増加分となった. 農村のレクリエーション空間としての利用を促進するためには, 魅力ある農村空間の整備とともに, 農道整備事業によるアクセス改善も有効な施策である.
  • 森井 俊広, 松本 智, 森 敬幸, 稲葉 一成
    2004 年 2004 巻 231 号 p. 323-329
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    土の中の水の移動に関わる問題では, 透水性を原位置でできるだけ精度良く効率的に測定することが重要となる. ゲルフ式ウェルパーミアメータ (GWP) 法を用いた原位置透水試験法の精度と効率性を, 砂地での現場試験と数値試験により調べた. GWP法では, ウェルから地盤への定水頭条件での浸潤量を測定して, 現場飽和透水係数を求める. 原位置透水試験により地盤の深さ方向の現場飽和透水係数を測定し, これをコア土の透水係数, ならびにウェルからの地盤への浸潤を模擬した数値試験から計算した透水係数と比較した. これらより, 深さ1~2m程度の深さ方向の土の透水性を実用的かつ効率的に測定できる原位置透水試験法が現実的なものになったと結論付けた.
  • 稲垣 仁根, 奈良 大和, 斎藤 正樹, 中園 健文
    2004 年 2004 巻 231 号 p. 331-344
    発行日: 2004/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    従来のポンプ送水系パイプラインの設計では, フライホイールなどの負圧対策施設を導入し, 発生する負圧を水頭表示で7m以下に抑えて, 水柱分離を発生させないことを前提とした設計を行ってきた. 著者らは, 上水道用パイプラインにおいて, ポンプ動力を急に喪失した場合のポンプ吐出側の圧力を計測したところ, 水柱分離発生と水柱の再結合に伴うと推察される水撃作用を確認した. そこで, ポンプ急停止時の水撃圧を抑制するために, スイング式逆止弁の改良型である水撃圧防止弁を負圧発生地点の下流側に設置する方法を検討した. ポンプ動力を喪失した場合の水柱の分離と再結合に伴う水撃圧と水撃圧防止弁によるその抑制効果について現地計測を行い, 水撃圧防止弁を設置する方法の有効性を確認した-さらに, 水撃圧防止弁の簡略化したモデルと水柱分離の離散型空洞モデルを用いたシミュレーションにより実用に耐えうる精度で再現することができた. 従って, シミュレーションによりポンプ急停止時に水柱分離と再結合が発生する場所とそれに伴い発生する水撃圧の大きさを予め予測しておき, 各種の負圧対策施設を考慮したシミュレーションを行うことにより, 負圧対策施設の必要性やその規模について, より適切な判断を下すことが可能となる.
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