農業土木学会論文集
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1999 巻, 201 号
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  • 藤巻 晴行, 井上 光弘, 山本 太平, 冨樫 敬
    1999 年 1999 巻 201 号 p. 297-308,a1
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    一定の下端圧力水頭をもつ土壌カラムを用いた一定気象条件下の定常蒸発実験による, 低圧力水頭領域の不飽和透水係数K (θ) の測定を試みた.採土によって得られた定常水分分布と, 別個に測定された土壌水分保持曲線を用いてK (θ) を算定する方法として,「水分勾配法」と「逆解析法」の二つの方法を提示した.どちらも水蒸気フラックスを考慮した.マサ土を用いた定常蒸発実験では, 蒸発開始から24時間程度でほぼ定常状態に到達した.測定されたK (θ) を用いて定常状態に至るまでの非定常数値解析を行い, 蒸発速度および下端からの給水速度の数値解と実測値を比較したところ良く一致し, 得られたK (θ) の信頼性が示された.また, 砂丘砂, マサ土およびロームを対象とした数値実験により, 定常状態到達の判定基準や下端圧力水頭などについて検討を行った.
  • 乱流中のフロックの沈降特性 (II)
    原田 昌佳, 平松 和昭, 四ヶ所 四男美, 森 健
    1999 年 1999 巻 201 号 p. 309-316,a1
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    開水路剪断流中を浮遊するフロックの沈降特性を数値実験とウェーブレット解析により検討した.開水路流れなの乱流構造に関する既往の確率統計的知見を用いたモンテカルロシミュレーションにより数値模擬した鉛直二次元剪断流場を対象に, フロックの運動をラグランジュ的に追跡した.フロックの動的応答特性を検討する際に, 新しい信号処理手法として最近注目されているウェーブレット解析の導入を試みた.その結果, フロックが迫随しうる流体の低周波数変動成分とその運動に影響を及ぼす高周波数変動成分を見出すことができた.さらに, 剪断流場での平均沈降速度の低下に関する検討も行い, その低下率を規定する無次元パラメータを見出した.
  • 村上 章, 阪口 秀, 高尾 智幸, 長谷川 高士
    1999 年 1999 巻 201 号 p. 317-327,a1
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    半径の異なるアルミ棒積層体を用いて、二次元の条件で落し戸実験を行つた。ドアの落下速度、用いるアルミ棒の粒径を変えて実験を行い、高速ビデオ装置を用いた録画を画像処理することで、主働モードにおける棒中心の変位を非接触で計測した。密に積んだ均等径あるいは混合径の試料について、変位のプロフィールを観察するともに、粒状体のせん断にともなう渦運動の存在を粒子中心の相対変位分布から確認した、変位から直接渦運動を見出せない場合でも、せん断変形の大きな箇所で高い渦度分布が見出された。こうした渦運動は、DEMシミュレーションでも予測された現象であり、いくつかの粒子の集合運動によっている。その径は4~5粒子分の大きさであることも明らかにした。
  • 底面融雪の研究 (1)
    倉島 栄一, 関 基, 加藤 徹, 向井田 善朗
    1999 年 1999 巻 201 号 p. 329-337,a1
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    積雪底面付近で地中から供給される熱流によって起こる融雪は底面融雪と呼ばれている.底面融雪が河川流出に及ぼす影響を把握することは, 潅漑計画やその他の利水計画の上で重要と思われる.しかし底面融雪を定量的に推定した研究はきわめて少ない.
    このこのような背景から底面融雪を把握することを目的として, 気象要素ならびに地表面下10cmの温度, 熱伝導率の観測を行った.熱伝導および積雪中への日射の透過, 水蒸気輸送を考慮した推定手法を示し, これを抽出した期間に適用した結果, 推定された日底面融雪量は良好な精度を示した.また, 積雪中の熱移動を伝導のみに限定した簡便な推定方法でも十分な再現性が得られることが明らかになった.
  • 沖縄県における赤土流出のモデル化に関する研究
    酒井 一人, 吉永 安俊, 島田 正志, 翁長 謙良
    1999 年 1999 巻 201 号 p. 339-347,a1
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    沖縄県では赤土流出の予測法が求められている.赤土流出の長期観測が難しいことから, 実用的なモデルの構築には至っていない.流域単位での土砂流出モデルとしては, L-Q式がよく用いられるが, パラメータを一定とした時不変系L-Q式による長期解析は難しい.そこで, 本研究では沖縄県久米島の白瀬川における観測データをもとに時変系L-Q式といえる浮遊土砂流出解析モデルを考え, そのモデルの中でどのパラメータを時間的に変化させれば長期解析が可能であるかについて検討した.その結果, 浮遊土砂流出解析モデルにおいては残存堆積負荷量から算定される降雨および流水による土砂の分散と運搬を評価することによって赤土流出の長期解析が可能であることを示した.
  • 直播稲作に関するソフト面の研究 (1)
    牧山 正男, 山路 永司, 佐藤 洋平
    1999 年 1999 巻 201 号 p. 349-354
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    直播稲作 (「直播」) の導入意義に関して営農の観点から理論的に検討を行い, 以下の3点の成果を得た: 1) 営農における稲作の省力化, 低コスト化に関して定義づけを行い, また省力化の目的に応じて農家類型を「農業型 (米)」,「農業型 (他)」,「農外型」,「非経営戦略型」の4類型に分類した. 2) 低コスト化は主に省力化の結果として得られるものであり, 直播においては省力化こそが主目的かつ意義深いことを示した. 3) 農業経営の拡大を目指す農家にとって直播導入は労働ピークのカットのために有効で, 特に農業型 (他) の農家にとつては他作物との労力配分が可能となり, また直播の収量低下に対する許容力が高い点から直播導入の有効性が高いこと, 逆に農外型にとっては, 農外所得機会が労働の季節差が少ないこと, 労力配分の効果が低いことから, 直播導入の意義は低いことを示した.
  • 離島における地下水資源の保全と開発に関する研究 (I)
    小路 順一, 籾井 和朗, 藤野 和徳, 國武 昌人
    1999 年 1999 巻 201 号 p. 355-362,a2
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    海岸周辺の地下水を水源としている離島では, 増加する水需要に対処する新規開発を検討する際, 海水侵入域の塩・淡地下水の挙動を解明することが重要となってくる.本論文は, 琉球石灰岩を帯水層とする地域で, 潮汐の影響を受ける短期の塩・淡水位観測値の再現を数値解析で行うことを目的としている.数値解析は, 基盤岩の空間分布を考慮し, 塩水侵入先端位置の移動を含めた準三次元地下水密度流計算を差分法で行う.この際, 観測値に基づく数値計算パラメータの逆算方法, 定常塩.淡水塊界面からの観測開始時の水位推定方法を取り入れることにより, 観測値の再現は良好な結果を得た.このように, 現地観測値を活用した解析手法は, 空間的な水理地質特性を内含して取り扱うため, 広域の海水侵入域における塩・淡地下水挙動の解明には有効な手法であるといえる.
  • 佐藤 周之, 服部 九二雄, 緒方 英彦, 高田 龍一
    1999 年 1999 巻 201 号 p. 363-368
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, コンクリートの非破壊強度推定方法の一つであるマチュリティー法を3種類のサイズの異なるマスコンクリート供試体に適用し, その利用性を検討する.マチュリティー法に必要なマスコンクリート供試体内部の温度履歴は, 三次元有限要素法で推定する.この推定温度を用いてマチュリティー法による強度推定を行ったところ, 推定強度は標準供試体の圧縮強度と良く一致する.しかし, 材齢56日に各マスコンクリート供試体から抜取ったコアの圧縮強度と推定強度は一致しない.これらを一致させるためには, マスコンクリート供試体の大きさに関係する強度低減係数を推定強度に掛け合わせる必要があり, この係数は, マスコンクリート供試体の体積が増大するにつれて減少する。
  • 金木 亮一, 久馬 一剛, 小谷 廣通, 岩間 憲治
    1999 年 1999 巻 201 号 p. 369-375,a2
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    育苗箱全量施肥区と慣行施肥区を設け, 普通期の表面流出負荷および浸透負荷の差異を検討するとともに, 水稲の生育・収量・食味に与える影響を検討したその結果, 育苗箱全量施肥区の表面流出負荷と浸透負荷の合計はSS190, BOD35, COD88, T-N9.9, T-P1.1kg/haであったのに対して, 慣行施肥区の場合には, 各々160, 32, 82, 14, 1.7kg/haであった.すなわち, 育苗箱全量施肥区ではSS, BOD, CODの流出負荷が慣行施肥区よりもやや増加するものの, T-Nは慣行施肥区の71%に, T-Pは65%に減少することが判明した.生育については育苗箱全量施肥区の草丈がやや劣った.一穂籾数も少なかったが穂数は多くなり, 玄米重は慣行施肥区とほぼ同一となった.食味については, 食味計では慣行施肥区よりやや低い値を示したが, 官能テストでは良好な評価が得られた.
  • Wei YANG, 藤沢 健一, 糸井 徳彰, 野中 資博
    1999 年 1999 巻 201 号 p. 377-383,a2
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    汚水処理施設のコンクリート微生物腐食は広く知られるようになった。防食被覆工法を既存の劣化した躯体へ適用する場合には、除去深さの判定及び劣化部除去方法の選択を行わなければならない。そのために、三つの現場調査を行い、以下に示す結論を得た: 1) コンクリートの劣化深さの決定は、厳密には化学的評価指標 (硫酸浸透深さ) により評価できることが分かった; 2) 劣化部除去方法は、その劣化深さと採用する方法の特性に依存する。少なくとも圧力30m以上の高圧水洗を採用することが望ましいと考える; 3) 実際の除去深さは劣化深さとは異なる。採用すべき適切な方法は、その能力と効率及びコストの兼ね合いにより、化学的劣化深さと物理的劣化深さの中間に位置すると考えられる。今後、強度のある部分に浸透した残存硫酸イオンの挙動について調査を行い、劣化コンクリートの除去深さについてさらに検討を行う必要がある。
  • 宮本 幸一, 山本 太平
    1999 年 1999 巻 201 号 p. 385-393,a2
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    異常少雨により必要水量に不足を生じた場合, パイプラインによる水田潅漑地区では配水管理者の意志どおりに配水するために多くの困難が生じる.本研究は, 1994年に発生した異常少雨時の北陸地域での調査結果を基に, 以下の問題点の抽出と対策を検討した.(1) パイプラインによる水田潅漑地区39地区の管理者へのアンケート及び現地調査から渇水時の水管理の問題点を抽出した.(2) タンクモデルを利用した圃場レベルの用水量推定手法を提案した.このモデルにより調査地区の潅漑期降水量は平年の27.1%であったのに対し, 圃場地点での用水充足率は70.6%であったことが判った.(3) 管網シミュレーションと実際に採られた渇水対策結果を基に, より合理的な渇水時の水管理手法の提案を行った.その際, 施設に軽微な改良を伴う場合と伴わない場合に区分した.
  • 島田 清, 藤井 弘章, 西村 伸一, 森井 俊広
    1999 年 1999 巻 201 号 p. 395-400,a2
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本論文は, 降雨浸潤による斜面不安定化解析への適用を考慮しながら, マトリックサクションの変化にともなう不飽和まさ土のせん断強度の変化について論じたものである.2種類のまさ土 (Masa92とMasa96) について, 吸引法を用いてマトリックサクションを制御した一面せん断試験を行った.マトリックサクションの変化にともなうせん断強度変化をせん断強度定数の変化として論じた結果, 次のことが分かった.
    (1) Masa92とMasa96のせん断強度は, マトリックサクションの減少とともに減少し・マトリックサクションがゼロのとき, すなわち, 飽和の時, 最小値を示す.
    (2) Masa92とMasa96の粘着力 (c) とせん断抵抗角 (φ) はマトリックサクションとともに変化する.2つのパラメータはともに, マトリックサクションがゼロのとき, すなわち, 飽和の時, 最小値を示す.
    (3) 過圧密されたMasa92の粘着力は, 正規圧密されたMasa92のそれより大きい.
  • 黄土丘陵ガリ谷区を事例として
    楊 建英, 翁長 謙良, 宜保 清一, 藤本 昌宣
    1999 年 1999 巻 201 号 p. 401-408
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    GISおよびUSLEを用いて, 黄家二盆流域 (5.7km2) の斜面域の年流出土砂量を算出した.さらに, 黄土丘陵ガリ谷区流域流出土砂量予測モデルを導入して全流域年流出土砂量を算定し, ガリ流出土砂量を求めた.その結果, 次のことが認められた.1) 土地利用別の斜面ブロックの流出土砂量は, 農地, 荒廃地, 草地, 林地の順に少なく, 急傾斜農地および荒廃地で流出土砂が多く生産されている.2) 全流域流出土砂量40,965t/年のうち, 斜面域流出土砂量が642%の26,288t/年で, ガリ流出土砂量が14,677t/年である.3) 単位面積当たり流出土砂量は, 斜面, ガリ, 流域全体において, それぞれ5,611, 16,094, 7,319t/(km2・年) で, ガリが斜面より2.9倍も高い.
  • 吾郷 秀雄, 荻野 芳彦
    1999 年 1999 巻 201 号 p. 409-414
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    “ラテン・アメリカ地域の農民参加型アプローチによる総合的な農地保全計画の提言 (I)” た。これは全ての段階での農民参加型と、農家の社会経済的な要素の重視などからなる。本論では保全事業実施に重要な村レベル、小流域レベル、個人農家レベルの具体的なアプローチについて提言する。村レベルでは、村の保全委員会が保全事業推進のための責任機関になる。小流域は保全計画立案のための単位で、自然条件や、社会経済的及び文化的な条件が同一な地域である。流域内では保全対策の対応が各々の個人によって異なることから、個人農家毎の計画立案が必要である
  • 吾郷 秀雄, 荻野 芳彦
    1999 年 1999 巻 201 号 p. 415-420,a3
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    “ラテン・アメリカ地域の住民参加型アプローチによる総合的な農地保全計画の提言 (I)” では、FAOの地域プロジェクトで取りまとめた “総合的な土地管理” の体系について提言した。これは全ての段階での農民参加と、農家の社会経済的な要素の重視などからなる。本論では保全事業の実施に使用される技術マニュアルについて提案する。保全事業は共同事業と農家で実施される個人事業に分類される。個人事業については保全事業の技術戦略の達成手段を農家システム開発計画として立案することとし、対策技術を自然環境や技術・経済条件によりマトリクスに整理しマニュアル化した。
  • 吉田 弘明, 小泉 健, 山岡 賢
    1999 年 1999 巻 201 号 p. 421-427,a3
    発行日: 1999/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    炭は木材だけでなく, 有機性の廃棄物を材料として製造可能である.農村から排出される廃棄物を原料とする炭 (以下,「再資源炭」という) の製造は, 廃棄物の減量化・無臭化に優れた処理方法であるとともに, 廃棄物中の炭素の固定化を行うもので, 地球温暖化の防止に役立つものである.さらに再資源炭は, 木炭同様に水質浄化や土壌改良への活用が期待される.このように再資源炭は製造, 利用の両面で環境保全へ貢献が期待できる.このため, 本報では, これまでに行われた多方面の炭に関する研究成果を新たな視点から5つの分野に整理するとともに, 筆者らの再資源炭の研究状況を示し, 残された課題を述べ, 再資源炭を活用した環境保全型資源循環システムの構築に向けての展望を論じた.
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