複雑地形である佐賀県東松浦半島は, 沿岸域, 台地部および盆地部の微気象変化は全く異なっている. このような半島の最低気温の発生時刻を把握することは, 農作物における凍霜害の農業気象災害において極めて重要である. そこで本研究では, 盆地部における最低気温の発生機構の解明を目的として, 半島内に設置している気象観測点および気象官署における観測値に基づき, 秋冬季の夜間気温変化の特徴および気温分布特性について解析した. その結果, 半島内の盆地部では最低気温は早朝だけでなく, 深夜にも頻繁に発生しており, その発生時刻が特徴的であることが分かった. その発生頻度は, 前日の20~23時に3割弱, 翌日0~3時に3割, 4~7時に4割の割合を示した. また, 夜間における最低気温の発生時刻は, 日没後の気温降下の途中で生じる気温の急上昇の発生時刻に関係することを明らかにした. 顕著な昇温は盆地部だけの現象であり, 南寄りまたは北寄りの風が風速1ms
-1以上になる乏気温は約3℃ 以上上昇することが分かった. 昇温現象は, 地形の影響を受けて半島に接する海洋からの温暖な風が盆地内に侵入するために生じると推察した. さらに, 風が吹走するときには盆地では台地上よりも気温が高い分布を示すことがわかった.
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