農業土木学会論文集
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2004 巻, 229 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 日下 達朗, 篠崎 桂一, 深田 三夫, 西山 壮一
    2004 年 2004 巻 229 号 p. 1-5
    発行日: 2004/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    宮古島の大半の島民が利用している地下ダムの水は, 300mgL-1と国の定める水質基準値ぎりぎりの硬度値となっている。その硬度の低減化の過程で一日に約4.8tの粒状炭酸カルシウム (ペレット) が生成され, 年1,750tに達している. このペレットは多孔質からなり, 空気浄化効果や水浄化効果があるとされ, 沖縄で問題となっている赤土流出を抑えるための素材としての効果に対する基礎実験を試みた. 充填材としてこの宮古島産のペレットを使用し, 任意の透水速度を得ることが出来る装置を工夫開発した. 直径10cm, 高さ30, 40, 50cm塩ビ管内に, 74μm以下の赤土の土粒子を対象に, 1500mgL-1程度の濁度に調節した濁水を流入させ, ペレットの厚さ, 透水速度を変えて実験を行った. その結果透水速度は遅く, 充填厚さは厚い方 (少なくとも50cm以上) が浄化効果は向上することが判明した.
  • 陳 嫣, 三原 真智人, 駒村 正治
    2004 年 2004 巻 229 号 p. 7-13
    発行日: 2004/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    これまで様々な土壌および栄養塩類の流出負荷予測モデルが開発されているが, 畑地において密度の小さい土壌細粒子が選択的に侵食されると, 流出負荷の予測が困難となる場合がある. そのため本研究では畑地での侵食過程における流亡土壌の粒径組成変動を捉え, 選択的な侵食過程が栄養塩類の流出に与える影響について検討した.
    傾斜模型試験枠を用いた実験の結果, 侵食過程が進むにつれて流亡土壌の平均粒径D50が増大する傾向がみられた. さらに畑地土壌に対する流亡土壌の栄養塩類濃度割合であるER (Enrichment Rati0) も, 流亡土壌の粒径組成変動に伴って変動した. とくに細粒分の多い流亡土壌が発生した場合, ERも上昇して栄養塩類の流出負荷が増大する傾向を示した. これらの結果より, 一連続降雨における土壌侵食に伴った窒素およびリン成分の流出負荷は, 流亡土壌の粒径組成とそれに伴うERの影響を強く受けることが明らかとなった.
  • 小関 恭, 佐々木 長市, Sukthai PONGPATTANASIRI, 諸泉 利嗣
    2004 年 2004 巻 229 号 p. 15-22
    発行日: 2004/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    周年地下水位の低い砂礫水田において, 心土層の酸素および二酸化炭素濃度の面的な変動実態を2力年に渡り調査した. 調査は, 畦近傍から中央部に向かい3ラインをもうけ, 各ライン上の1m, 5m, 10mおよび15m地点 (測定深約50cm) とした. 各地点の酸素濃度は灌漑開始後徐々に低下し9月上旬頃に最小値となるが, 非灌漑期に上昇し大気濃度に近づいていく周年変動が観測された. 二酸化炭素濃度は, 酸素濃度とは逆に灌漑開始後上昇し9月上旬頃に最大値となつたが, 非灌漑期には値が低下する周年変動となつた. これらの値には, 畦からの距離の増加に伴い酸素で低下, 二酸化炭素で上昇すること, また酸素濃度と二酸化炭素濃度の合計値がほぼ21%となるる相補性などが認められた.
  • 中石 克也, 栗原 陽雄, 大井 節男
    2004 年 2004 巻 229 号 p. 23-28
    発行日: 2004/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    高膨潤性のモンモリロナイトは, 低膨潤性のカオリナイトに比べ異常に大きな粘度を示すが, この違いがどのようなメカニズムによって生じるかは明らかにされていない. そこで, オストワルド粘度計を用いてモンモリロナイトとカオリナイトの希薄な分散系における粘度を精密に測定し, 粘土鉱物種の違いが粘度に及ぼす影響について検討した. 主な結果は, 以下の通りである. 溶媒と粒子の問での流体力学的相互作用である固有粘度 [η] は, 粘土粒子の形状をよく反映することがわかり, さらに, 塩濃度に対する [η] の変化の仕方は, 粘土の荷電量の違いによる影響を受けず, 拡散二重層の厚さのみに依存する. 次に, Huggins係数んに着目して, 粒子同士の衝突によって生じる流体力学的相互作用について考察した. 剛体球粒子のんは, EinsteinとBatchelorの理論式よりほぼ1になるが, 粘土鉱物についても1に近い値が得られた. カオリナイトは厚みのある固い板状粒子なので, これは妥当な結果であるが, 薄いシート状のモンモリロナイトは柔軟な構造であるにもかかわらず, 流動状態においては剛体粒子としての挙動を示した. さらに, 粒子同士の相互作用による粘度増加が固有粘度の自乗とほぼ等しいことから, 流体力学的相互作用は粘土鉱物種の粒子形状のみに依存すると考えられた.
  • 須甲 武志, 宮崎 毅, 井本 博美, 溝口 勝
    2004 年 2004 巻 229 号 p. 29-36
    発行日: 2004/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    軽油などの揮発性有機化合物 (VOC) で汚染された土壌を浄化する技術に, 空気またはO2を汚染された個所に送り, 既存の土壌微生物による汚染物質の分解を促す方法 (Bioventing) がある. 従来の研究では, 砂または砂質の土壌を用いたBioventingが多かった. そこで本研究では日本に広く分布する火山灰土壌を用いて砂質土との軽油除去効率の違いを明らかにすることを目的とした. 実験は, バッチ試験とカラム実験を併用し, 強制的な通気を行った際の汚染除去効率や微生物数の分布を調べた。その結果, 乾土1g中の微生物数がほぼ同数であったにもかかわらず, 火山灰土における軽油除去率は砂より劣ることが分かった. それは微生物の活性の違いによるものであると推定された. カラム実験では空気流入部で軽油除去率が高くなった.
  • 三浦 麻, 筑紫 二郎, 林 静夫, 田中 明
    2004 年 2004 巻 229 号 p. 37-45
    発行日: 2004/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    複雑地形である佐賀県東松浦半島は, 沿岸域, 台地部および盆地部の微気象変化は全く異なっている. このような半島の最低気温の発生時刻を把握することは, 農作物における凍霜害の農業気象災害において極めて重要である. そこで本研究では, 盆地部における最低気温の発生機構の解明を目的として, 半島内に設置している気象観測点および気象官署における観測値に基づき, 秋冬季の夜間気温変化の特徴および気温分布特性について解析した. その結果, 半島内の盆地部では最低気温は早朝だけでなく, 深夜にも頻繁に発生しており, その発生時刻が特徴的であることが分かった. その発生頻度は, 前日の20~23時に3割弱, 翌日0~3時に3割, 4~7時に4割の割合を示した. また, 夜間における最低気温の発生時刻は, 日没後の気温降下の途中で生じる気温の急上昇の発生時刻に関係することを明らかにした. 顕著な昇温は盆地部だけの現象であり, 南寄りまたは北寄りの風が風速1ms-1以上になる乏気温は約3℃ 以上上昇することが分かった. 昇温現象は, 地形の影響を受けて半島に接する海洋からの温暖な風が盆地内に侵入するために生じると推察した. さらに, 風が吹走するときには盆地では台地上よりも気温が高い分布を示すことがわかった.
  • 沖縄, 仲順地すべりについて
    中村 真也, 宜保 清一, 林 義隆
    2004 年 2004 巻 229 号 p. 47-53
    発行日: 2004/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, 残留係数を導入した三次元安定解析手法を提案し, その有効性について検証した. 通常の地すべりの安定解析において, 実験で得られるピーク強度, 完全軟化強度または残留強度のそれぞれの適用では安全率が過大または過小であると計算・評価してしまうため, すべり発生の事実が説明できない. 本解析手法により, すべり面の平均強度定数が算定され, 二次元解析結果と比べてかなり小さいことが検証できた. また, すべり時に動員されるピーク強度および残留強度のすべり面における領域が区分・表示できた. 本手法は合理的で効果的な地すべり防止対策を行う一助となる.
  • 粟生田 忠雄
    2004 年 2004 巻 229 号 p. 55-61
    発行日: 2004/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    液相の水は間隙中で連続であるかぎり水圧を伝達し, ダルシー則に従つて運動する. 排水がある程度進むと, 液相土壌水は土粒子の接点部に孤立したリング水となって残留する. この水分状態を懸垂水帯といい, 土壌間隙には気相, 液相および半固相の水が共存する. 半固相の水は土士粒子表面に水膜状に吸着されており, 水圧変動では動かない. 一方, 液相リング水の圧力伝達性や運動特性は未整理のまま残されている. それは, 土壌水の運動が相に無関係なエネルギー量で考察されてきたことによる. 本研究では, 粗粒土壌カラムを用い変動水位条件下における液相水の圧力変動を, 実験的かつ理論的に考究した. その結果懸垂水分におけるリング水は,(1) 相互に圧力の連絡を絶ち,(2) 水位変動では動かず,(3) 水蒸気拡散で直径を減少させる,(4) 検査面を代表する圧力を示さず,(5) 相変化を伴って運動する, ことを明らかにした.
  • 吉永 安俊, 酒井 一人, 渡嘉敷 義浩
    2004 年 2004 巻 229 号 p. 63-69
    発行日: 2004/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    国頭マージ地帯の沈砂池の貯留水が数日間も懸濁しているのをよく見かける. この現象は流出濁水に化学肥料が混入している場合にみられ, 沈砂池における微細七粒子の沈積をさらに困難にし, 公共水域汚染を助長している. 本研究は微細土粒子流出防止対策の一環として化学肥料が長期縣濁現象に及ぼす影響を明らかにするため化学肥料添加, 無添加水中における耐水性団粒試験と化学肥料添加, 無添加濁水の沈降試験および浮遊土砂の粒度分析を行った. その結果, 化学肥料には「分散作用」 と「凝集沈降抑制作用」 があり, それらが長期懸濁の原因であることが明らかになった. また, 分散, 凝集沈降抑制作用にはリン成分が深く関与していることも明らかになった. さらに, 沖縄島の国頭マージ土壌の懸濁水のほとんどが化学肥料により凝集沈降が抑制されることが明らかになった.
  • 中川 雅允, 本林 隆, 新井 裕, 西村 拓
    2004 年 2004 巻 229 号 p. 71-77
    発行日: 2004/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    カトリヤンマは水田を主な生息場所とするトンボで, 水田の土壌中において卵態で越冬する. 以前は普通にみられたが, 近年著しい減少傾向にあることが報告されている. 本研究では, カトリヤンマの卵の生態について休眠性と孵化条件を調べた. その結果, 春期の休眠覚醒後の卵は一時的であっても乾燥による影響を受けやすいこと, 孵化は湛水状態にあったとき光を刺激として促進されることがわかった. また, 近年の圃場整備による乾田化や休耕田の増加はカトリヤンマの減少をもたらすことが示唆された.
  • 村上 貴志, 阪口 秀, 村上 章
    2004 年 2004 巻 229 号 p. 79-84
    発行日: 2004/02/25
    公開日: 2011/09/13
    ジャーナル フリー
    土の締固めメカニズムを明らかにすることを目的として, 土中水分を考慮した個別要素法 (DEM) シミュレーションを行つた. すなわち, 水分による粒子同士の吸着と催滑の作用に着目し, 粒子間に形成される液架橋をモデル化した. 試料の含水比と液架橋による粒子間相互作用を関連付けることによつて, 含水比に依存する締固め時の土の挙動の違いを再現した. 一方, 土粒子の複雑な形状に起因するせん断抵抗を表現するために, 複数粒子を1粒子とみなすマクロパーティクルを用いた. 例題として, 突固めによる締固め解析を行い, 含水比一乾燥密度関係において一般的な締固め曲線と同様にピークを得る結果となつた. このことから, 締固め時の土の密度増加は, 粒子間に形成される液架橋がその一因であることを示した.
  • 勝山 達郎
    2004 年 2004 巻 229 号 p. 85-91
    発行日: 2004/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業水利施設は, 本来の機能とは別に, 多面的機能を有するが, その費用負担に関して様々な課題が生じている。我が国の農業水利施設の建設・管理に関する制度は目的を農業に特化し農業者の強制参加と負担を基本としている一方, 米国は国家便益を目的に多様な展開がなされ, 農業者等受益者と国の関係が契約で成立する. 受益地区の都市化・混住化の進行する中で, 我が国が国負担率の見直しや非農業者負担等の導入, 米国も農業者負担の軽減を考慮した多目的な事業の導入等, 両国とも官民負担制度を改正してきている. 日米の制度の比較により, その共通性と独自性を分析し, 多面的機能の発揮に向けた我が国の官民負担に関する制度の方向を考察した.
  • 勝山 達郎
    2004 年 2004 巻 229 号 p. 93-99
    発行日: 2004/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業水利施設は国営造成施設の管理委託を含めその大半を土地改良区が管理するが, 本来の機能とは別に多面的機能を有し, 受益地区の都市化・混住化の進行でその参加者と費用負担に関して様々な課題が生じている. そこで, 農業者を組合員とした費用の負担を基本としている土地改良区の仕組みに関して, 現行制度の制定時に, 多面的機能の発揮とその負担が問題なく成立した要因を分析し, 混住化等の中でその課題と方向を明らかにした. その上で, カリフォルニア州の非農業者も組合員とし様々な事業を行うかんがい区制度等との比較により, その実現性の検証と具体的内容を検討し, 多面的機能の発揮に向けた農業水利施設の土地改良区管理に関するわが国の制度のあり方を考察した.
  • 沖縄県における赤土流出モデル化に関する研究
    大澤 和敏, 酒井 一人, 吉永 安俊, 田中 忠次, 島田 正志
    2004 年 2004 巻 229 号 p. 101-108
    発行日: 2004/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    沖縄県では近年, 過度の赤土流出が問題となり, 新たな農地開発計画および農地管理方法を検討するためには, 集水域内での浮遊土砂の動態 (侵食, 運搬, 堆積) の把握が必要となる. 本研究では, 浮遊土砂の動態の把握を目的として, 代表的な圃場整備地区を含む小流域において多点同時観測を行った. 観測は複数回の降雨イベントにおいて十分短い時間間隔で主に流量および浮遊土砂濃度を測定した. 観測結果から, それぞれの経時変化, 浮遊土砂流出量, 浮遊土砂粒径, そして沈砂池における堆砂量について検討した. そして流域内の土砂収支を算定し, 土地利用分布, 沈砂池の構造および配置, そして出水規模の影響を考察した. その結果, 浮遊土砂流出は作物の被覆率の低い農耕地において顕著であり, 沈砂池の構造および配置によって堆砂量は異なる. また, 出水規模によって土砂の動態が異なることを実証した.
  • 石井 敦
    2004 年 2004 巻 229 号 p. 109-114
    発行日: 2004/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    日本では多くの農業水利施設が土地改良区によって「管理」されている. しかし, 近年の農村地域の都市化, 農家の兼業化・離農地主化等により土地改良区の農業水利施設の維持管理財源は赤字基調になっており, そのため, 土地改良区では財源確保のため多様な工夫をしている. 一方, こうした土地改良区の維持管理に対し, 国や地方自治体からの各種の公的支援もなされている. そこで, 代表的な農業用排水を管理する土地改良区の事例を調査し, 維持管理財源を内容別に分類・考察し, 土地改良区の経常的維持管理費には, 組合員から毎年徴収する組合費以外に, 水利施設の公的管理, 政府の維持管理費への直接的な公的補助, 土地改良に基づく組合費以外の収益, それ以外の市町村からの助成, 転用決済金の引き当てがあてられていることを示した.
  • 粟生田 忠雄
    2004 年 2004 巻 229 号 p. 115-116
    発行日: 2004/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
  • 森 淳, 柚山 義人, 中村 真人
    2004 年 2004 巻 229 号 p. 117-118
    発行日: 2004/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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