農業土木学会論文集
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1996 巻, 181 号
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  • 2成層湛水条件下で発生するフィンガリングに関する研究 (II)
    長 裕幸
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 1-10,a1
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    2成層(上層が細, 下層が粗)湛水条件下で下層に発生するフィンガリング流について, とくに下層土の粒径分布の違いがフィンガリングの発生およびフィンガーの形状に及ぼす影響について実験を中心に研究を行った. 実験は過去の報告例の少ない3次元モデルで行った. 混合粒子構造で混合粒子の粒径が異なる場合, 混合される細粒子の量が変化する場合に分けた. その結果, フィンガーの1個1個が区別できるフィンガリング流が発生する限界の下層土の粒径分布を示した. また, フィンガーの平均径と最大比水分容量との関係を提示した.
  • 高木 東, 中尾 誠司, 友正 達美
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 11-21,a1
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    流れの土砂輸送能力の評価式を組込んだリルに関する流砂モデルを考え, 造成農地に形成されたリルにおける侵食および流砂量の解析に適用した. このモデルの微分方程式をいろいろな降雨強度の条件下で解くことにより, リルの流下方向に沿った流砂量の分布特性を明らかにした. つぎに, これらの解に基づき, リルに沿った各流下地点での侵食量を求めたところ, 大半の地点で実測値とよい一致をみた. さらに, リルにおける流砂量が侵食レートに及ぼす影響について解析した. 中程度および高い降雨強度の場合は, その影響は大きいものではないが, 低い降雨強度の場合は, 影響度は流下方向に増大し, 小さくないという結果が得られた.
  • 星野 達夫, 山路 永司
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 23-30,a1
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    都市周辺地域における農地の所有権移転は, 代替地取得を理由とするものの占める割合が高い. そこで, 道路用地買収を例に代替農地取得の過程について把握, 検討した. その結果, 農地の代替地取得率は他の地目のそれに比べて高い. 農地所有権移転全体の中で代替農地取得に見られる特徴は1件当たりの取得面積が大きく, 取得農家の農地経営面積が大きい. 反対に, 提供する農家は農地経営面積の小さな農家であることが判明した. また, 代替農地取得による圃場の分散が指摘されているが, 農家からみた従前の農地と代替農地の距離の比較および取得個所から圃場の分散が進むことを定量的に示した.
  • 野菜畑地からの硝酸態窒素流出特性に関する研究 (I)
    黒田 清一郎, 田渕 俊雄
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 31-38,a1
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    多施肥の野菜畑中心の集水域をもつ湧水の流量と硝酸態窒素濃度・負荷について精密な調査を1年間行った.
    硝酸態窒素濃度は平均値29.3mg/lと高かった. また流量に比べ濃度の変動は少なく, 降雨や施肥の影響によって大きく変動することはなかった. その結果, 湧水の硝酸態窒素負荷量は流量にほぼ比例した.
    土壌表面から地下水面までの畑地土層中には年間の窒素施肥量に相当する硝酸態窒素が存在した. また, 畑地直下の浅層地下水の硝酸態窒素濃度は4.0~18.0mg/lであった. このような土層中に蓄積された硝酸態窒素の存在が, 年間の湧水の硝酸態窒素濃度の変動を少なくしている原因のひとつと考えられる.
  • 中村 公人, 堀野 治彦, 諸泉 利嗣, 丸山 利輔
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 39-48,a1
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    融雪などの熱源として地下水を利用する技術(帯水層熱エネルギ貯留)の効率的な運用のためには, 飽和一不飽和土壌中の熱・水分移動に関する知見が不可欠である. 本研究では, 細砂と粗砂を試料として2層に成層化させたカラムを用いて地下水位一定型の熱・水分移動実験を行い, 従来の理論に従って, 準定常解析を行った. その結果, 細砂層での熱移動は, ほぼ熱伝導で説明できるが, 不飽和の粗砂層においては, 熱伝導による熱移動量が減少する一方, 温度勾配による水蒸気移動に伴う潜熱輸送量が大きくなることが明らかになった. なお, この水蒸気移動には, 拡散以外に, 水蒸気を含んだ空気の移流による移動も含まれていることと推察され, その補正の必要性を示した.
  • 宇波 耕一, 河地 利彦, Macarius YANGYUORU
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 49-56,a1
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    開水路非定常流の偏微分方程式を最適制御問題における状態変数の支配式としてとらえ, 変分法の枠組みにおいて考察する. 終端時刻観測問題における最適性の条件を記述する最小原理を導出し, その随伴系を用いた表現を与える. 数値計算に利用するため, 状態系と随伴系を近似する有限次元スキームを提案する. 開発した理論を, ゲートを備えた仮想の水路網システムにおける最適制御問題へ応用し, 最小原理に依拠したゲート操作則の合理的な改善を行う. その過程において, 最小にすべき汎関数値の実際の変化は, 随伴系ならびに初期状態とゲートにおけるエネルギ散逸の変化から予測できることを示す.
  • 藤居 良夫
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 57-68,a2
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    現在の農山村地域は過疎化と高齢化に向かい, このままでは地域の存続そのものが危惧される場合も考えられる. 地域の活性化をはかるためにも, 農村整備事業の重要性は今後ますます増大してくる. とくに, 生活環境と就労環境の質の改善をはかることは重要である. その計画においては, 現況把握だけでなく, 今後の環境整備に対する要因の構造分析が重要になり, 人間の行動や意識の在り方を検討する必要がでてくる.
    ここでは, 過疎問題に苦慮している島根県三隅町を取上げ, 転出・転入者の意識から生活環境と就労環境の評価構造を分析し, 過疎化に対する施策を今後の農村整備の方向性から検討した.
  • 融雪解析におけるKalman Filterの応用 (II)
    鎌田 新悦
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 69-77,a2
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    第一にDDF法による入力誤差を検討するため雨雪分離確率モデルを導入した. 第二にKalman Filter補正量に基づくLST-II入力の補正量を求めた. また, 入力補正からDDF融雪量の補正を行い, 補正融雪量を求めた. 第三に日水文データを用いたときのLST-II入力の補正が十分に有意義であることをシミュレーションによって明らかにした. 第四に雨雪分離確率モデルによる補正融雪量の誤差の検討を行い, 精度の高い補正融雪量を用いることによって, 刀利ダム流域における風速の融雪に及ぼす影響を明らかにした.
  • 刀利ダム流域における融雪解析 (I)
    鎌田 新悦
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 79-86,a2
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    刀利ダム流域における融雪解析を日単位水文資料に基づいて検討したものである.
    観測流量を分離時定数1(day)のLow pass filterによって低周波数成分と高周波数成分に分離し, 低周波数成分にはARモデル, 高周波数成分には即日流出モデルを用いることとした. つぎに, 両モデルの逆探法によって, 当該流域における日有効降雨量の分離則を求めた.その結果, ARモデルおよび即日流出モデルへの入力比は約4:6となった. さらに, 冬期・融雪期の基底流出および降雨・降雪の分離気温等について検討した.
  • 刀利ダム流域における融雪解析 (II)
    鎌田 新悦
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 87-96,a2
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    融雪に伴う流出量を降雨流出モデルを用いて, 観測流量から分離した. さらに, 分離した融雪相当流出量から流出モデルの逆探法によって日融雪量を求めた. 一方, DDF法により当該流域の日融雪量を求め, 両者を比較した. 結果は次のとおりである.
    1) 刀利ダム流域のDDFは平均的に5.0mm/(℃・d)を上回る.
    2) ARモデルおよび即日流出モデルにおける融雪量入力の分離則は降雨流出の場合に類似している.
    3) 多くの場合, 流出モデルによる方がDDF法によるよりも日融雪量が大きく, 融雪終了時点も遅い.
    4) 流出モデルによる融雪量は風速の影響を受けている.
  • 白谷 栄作, 戸原 義男, 四ヶ所 四男美, 井上 久義
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 97-105,a2
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    麦作圃場における暗渠排水に伴う窒素流出の評価モデルを同定した. 圃場レベルのモデル化では各態窒素の存在量の絶対的把握が困難で, 理論的または室内試験によって与えることのできるパラメータに限度がある. そのため, モデル化に際しては既往の知見と現地調査によって得られた情報を極力採用するよう心掛けた. モデルの主な特徴は, 硝化, 脱窒, 無機化, 可溶化および加水分解などを1次反応式で表現し, 反応の温度依存をArrhenius則で考慮したこと, および圃場排水の窒素濃度を圃場内の硝酸態窒素量に比例すると仮定したことである. 本モデルによって, 2年間の麦作圃場の窒素流出現象を定量的に評価することが可能となった.
  • 白谷 栄作, 戸原 義男, 四ヶ所 四男美, 井上 久義
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 107-113,a2
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    麦作期圃場を対象に, 取扱いが容易で, 汎用性の高い簡略な窒素流出モデルの開発を行った. 簡略化は土壌の複雑な窒素挙動について, 反応過程をいくつかの感度解析によって省略することと, 窒素形態のいくつかを集約化することによって行った. 本モデルの特徴は, 土壌中の窒素循環系の全体を地力窒素循環系と施肥窒素循環系の2つのサブシステムに分離したことである. 本モデルでは, 計算の初期条件を実際の施肥窒素量で与えることが可能で, さまざまな施肥条件に対して適用しやすいものである. 本モデルを2年間の麦作圃場の窒素流出現象に適用した結果, 満足できる精度でシミュレーションできた.
  • 貯水池形状と振動方向の影響
    松本 伸介, 長谷川 高士, 篠 和夫
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 115-121,a3
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    貯水池形状を規定する幾何学的パラメータと, 振動方向が地震時動水圧に与える影響について検討する目的で, 2次元境界要素法によりパラメトリックスタディを実施した. その結果, 以下に示すように知見が得られた.
    1) 水平振動の場合, フィレットの勾配が暖やかなほど, 取付け高が高いほど動水圧は低下する.
    2) 水平振動の場合, 池底がフラットに近いほど動水圧は高くなる.
    3) 斜方からの突き上げ振動の場合には, 水平振動の場合の2倍以上の高い動水圧が発生するケースがある.
    4) 前述の各因子が動水圧に与える影響の傾向は, いずれも堤体上流面や池底面と振動方向とのなす角度に大きく依存する.
  • ダム利水容量による河川流量時系列の評価 (I)
    衰 新, 佐藤 政良
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 123-130,a3
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    水利事業計画の観点から, 計画必要貯水池容量を用いた河川流量時系列の評価を行うため, 各水年の必要貯水池容量が互いに独立である限界の最大水利用レベルを検討した. 人為的な影響の少ない自然な流量を対象とするため, 日本全国から10カ所の多目的ダムを選定し, その流量記録から, 河川から一定量を利用する場合について, 利用レベルの上昇と必要容量の増加の関係について検討した. この限界レベルは, 長期平均流量の40~85%の問にあり, ほぼ最小年流量で決まるが, 年流量のつながり方にも影響される. また, 必要貯水池容量が開発流量の二次関数で表される範囲をはずれ, 急増するのは経年補給への移行によるものであることが明らかになった.
  • 高山 昌照, 東 孝寛, 肥山 浩樹, 新川 豊
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 131-136,a3
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    スラリー状粘土の圧密特性は, 遠心力を利用した自重圧密や浸透圧を利用した圧密実験から決定されている. ここでは, 透明なシリンダを利用した自重圧密実験から圧密解析に必要な土質定数の決定法について述べている. 透水係数(k)は自重圧密の初期沈下速度から決定する三笠と高田の方法によるものである. k-f(体積比)関係は初期fの異なる自重圧密実験から決定する, f-p(圧密圧力)関係は, 層厚の異なるいくつかの自重圧密実験の実測沈下量と推定値との差を最小にする方法によって決定する. 試料高さとシリンダ径の比が大きくなる自重圧密の場合, f-p関係の決定には周面摩擦を考慮する必要がある.
  • 関 勝寿, 宮崎 毅, 中野 政詩
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 137-144,a3
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    土に長期的に栄養水が侵入すると, 土の間隙中の土壌微生物と微生物がつくり出す代謝生成物が水の通り道を塞ぐ現象, いわゆるclogging (目詰まり) 現象が生じ, 土の透水性が低下することが知られている. そこで, 栄養水飽和浸透条件下での透水係数の長期変動を調べ, 深さ0~1cmの層において, 118日間でほぼ2オーダー透水係数が低下することを示した.
    透水係数低下の第一の原因は, 糸状菌の長い菌糸と微生物の代謝生成物による間隙の閉塞であり, 第二の原因は, グルコースから発生したメタンガスが118日間に表層に最大14%の気相率相当量が溶解せず気泡となって間隙中に閉塞されたことによるものであると説明された.
  • 凌 祥之, 安養寺 久男
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 145-151,a3
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    クロボクは, わが国の畑地では最も代表的な土壌であるが, 粒子が軽しょうなために, 表面流出して潅漑用水に流入することが懸念される. ここでは, 非アロフェン質のクロボクが潅漑用水に流入した場合の除去対策を検討するために, 予備的な試験を行い, その効果を把握した. その結果, 流出するクロボク土量を減少させるためには, 土壌を乾燥させることが有効であった. 土壌が乾燥すると, 耐水性団粒が粗団粒化し, 輸送抵抗が高まり, 水中では沈降を促進させた. 汚濁した潅漑用水を滞留させる組織を設ければ, 汚濁を軽減することが可能である. その他, フィルタやろ過材を用いて除去する方法を検討したが, 問題点も多かった.
  • 大久保 博
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 153-160,a3
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    十和田湖・奥入瀬川の河水統制計画で決められた奥入瀬渓流の風致保全のための放流量の決定根拠について, 過去の文献から考察した. その結果, 風致のための放流量は奥入瀬渓流直下流の水田に対する用水であることが推察された. また, 発電水利との関係についてふれた. さらに子の口 (湖口) の制水門が建設される前の自然流況での流量を, 昭和44年から昭和56年までのデータを用いて再現し, 昼間の放流量は平年の平均流量に相当することを確認したが, 自然流況を知る人のイメージとは異なっていた (聴取). その原因を探るため, 風致保全放流量に対するポジティブランレングスを求めて検討し, 保全された景観は秋期の景観であることを考察した.
  • 豊満 幸雄, 佐久間 泰一, 多田 敦, 坂口 隆
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 161-167,a4
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    茨城県のハス田面積は米の生産調整に伴い増大してきた. しかし, ハス田の圃場整備は進んでいない. そこで, ハス田の圃場整備のありかたを検討するために, 霞ヶ浦湖岸の出島村におけるハス田の土壌物理性, 作土深さ等を調べた. その結果, ハス田の特徴について次のことが分かった.(1) 深さ15cm程度までの土壌は沈殿状態になっており, 仮比重が極端に小さく, 水分が多い.(2) 作土の深さ方向における粒径組成が異なっており, 収穫作業や代かきによって砂分が下方に移動することが推測される.(3) 降下浸透はほとんどない.(4) 水田のような耕盤はない.(5) 作土深さは水田に比べて深く, さまざまな深さである.(6) 土壌および畦畔が水田より軟弱である.
  • 不耕起栽培初年目の事例研究
    泉 完, 佐藤 照男, 佐々木 長市
    1996 年 1996 巻 181 号 p. 169-175,a4
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    八郎潟中央干拓地における低湿重粘土の大区画水田について, 不耕起栽培と慣行栽培の栽培様式の違いによる用水量, 蒸発散浸透量 (減水深) の実態を明らかにし, 不耕起栽培の水管理方式を確立しようとするものである.ここでは, 不耕起栽培初年目における不耕起田と慣行田の取水量と蒸発散浸透量の調査を行い, 初期潅水量を含む取水量および蒸発散浸透量の実態を明らかにした.
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