農業土木学会論文集
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1993 巻, 165 号
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  • 大野 研
    1993 年 1993 巻 165 号 p. 1-8,a1
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ファジィ集合で定義された飽和浸透特性と不飽和浸透特性を利用できる有限要素法による浸透流解析の方法を開発した。これは,すでに開発済みのファジィ集合を利用した逆解析法とともに,情報化施工において重要な役割を果たすことになる。というのは,これらの解析方法は,種々の不確定性を考慮に入れることができるし,技術者の工学的判断をはじめとした多くの情報を利用できるからである。本解析法の有効性を示すために,2種類のビーズから成る層状媒体内の浸透流の実験を行い,計算結果と比較した。各々のビーズの浸透特性は,さきに開発をしたファジィ集合を利用した逆解析法によって得られているものを用いた。
  • 深田 三夫, 藤原 輝男, 日下 達朗
    1993 年 1993 巻 165 号 p. 9-22,a1
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    水滴が水面に衝突すると同時に水面下に半球状の水中ドームが形成され,水滴径の数倍の大きさに発達した後に縮小に転じやがて消滅する。この運動に伴って生じた負の水圧の作用で土粒子が剥離し水中に浮遊する。表面水が流れていれば,土粒子は沈降しながら移動する。ここでは,まず1個の水滴衝突で浮遊する土粒子量の解析を行った。次に同一径の複数の水滴が流れのある水表面に衝突するような降雨を考えた。この場合に,水中を運動中の土粒子は他の水滴の衝突の影響を受けずに流下するとした。この結果,輸送量は水滴エネルギ,降雨強度,水深,平均流速,土粒子径などの因子を含む関数式で表され,ある水深で最大値をとることがわかった。
  • 深田 三夫, 藤原 輝男, 日下 達朗
    1993 年 1993 巻 165 号 p. 23-32,a1
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    人工降雨による室内水路実験を行い,雨滴衝撃の加わる流れの流砂量を調べた。限界掃流力以下の流れでも流砂が生じその量はある水深で極大値を示し,一定水深のもとでは降雨の総エネルギ(衝突エネルギ×落下頻度)に比例して増える。流砂量は降雨因子にも依存するため,無次元流砂量ΦL(=qs/(sgd3)1/2;qs:流砂量,S=σ/ρ-1,σ:砂粒の密度,d:砂粒径)と無次元掃流力ΨT(=U*2/sgd;U*:摩擦速度)で実験データを整理しても一曲線上にのらないが,無次元量φ(=qs(σ-ρ)gWd/(ρUaIV02);Ua:表面流速,I:降雨強度,Wd:砂粒の沈降速度,V0:水滴の衝突速度),II3(=h/Hmax;h:水深,Hmax:水中ドームの最大半径),ξ(=d/Hmax)を用いて整理できる。
  • 酒井 俊典, 田中 忠次, 宮内 定基, 竹内 一生
    1993 年 1993 巻 165 号 p. 33-38,a1
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    酒井俊典・田中忠次・宮内定基・竹内一生浅いアンカーと深いアンカーの転移点の検討を,実験および有限要素解析により行った。実験は,アンカー直径(B)3,4,5cmについて,試料に豊浦標準砂を用い,密詰め状態で行った。有限要素解析は,B=3cmについて剪断帯・ひずみ軟化を考慮に入れた弾塑性解析を行った。その結果,h/B(h:積上げ高さ)と無次元荷重値(σ/ρdh)との関係は,実験,解析ともh/Bが5を境に曲線形状が異なった。また実験の観察では,h/Bが5を越えると勇断帯は地盤表面まで達しなかった。解析によるみかけの最大勢断ひずみ分布も,h/Bが5を境に分布形状が異なった。以上の結果から,密詰め砂地盤における浅いアンカーと深いアンカーの転移点はh/Bが5であることが判った。
  • 加治佐 隆光
    1993 年 1993 巻 165 号 p. 39-46,a1
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    造成階段畑を流域として表面流モデルを適用し,直接流出量から変動流出寄与域の時系列を直接的・陽的に求める逆解析手法を提示した。その際,当造成階段畑では,地中流が主であり、直接流出にならない降雨成分は主に畑地内で上流側に保留されること,および流出寄与域への観測降雨以外の鉛直フラックス成分は無視できることなどを仮定した。変動流出寄与域は,距離~ 時間平面上の特性曲線群として表現される。
    解析例では,パラメータ値および流出成分分離の適切な調整によって妥当性の高い変動流出寄与域の時系列を求めうることなどを示した。
  • 青山 咸康, 井本 有太郎, 増井 直樹
    1993 年 1993 巻 165 号 p. 47-53,a1
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究は鉄筋コンクリート部材の終局断面耐力評価が,現行の評価法(設計法)により適切に評価されるかどうかを,梁を例として実験的に検証したものである。
    一般に鉄筋コンクリート構造の耐力評価は構造全体として総合的に評価されるべきではあるが,現行の評価法は,部材レベル,応力状態レベルで耐力を評価できる状態にとどまっている。それは鉄筋コンクリート部材の示す複雑な挙動のためである。本研究においては,ディープビームを例とし,はりの耐力の評価が,微かな断面の変化によっても複雑になってくることを実証した。
  • 猪迫 耕二, 中野 芳輔, 黒田 正治
    1993 年 1993 巻 165 号 p. 55-64,a2
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本論文では畑地の水分状態を推定するモデルの一つとしてSoil Moisture Deficit (SMD)モデルに着目した。本モデルは比較的入手が容易な日単位気象データと土壌水分特性曲線および根の貫入深さのみを用いて土壌水分欠損量を推定するものであり,実用性を重視した簡便なモデルである。しかし,一方では簡便化を図るために計算上の仮定も多く設けられており,その土壌物理的妥当性を検討する必要がある。ここでは,畑地における土壌水分変動を実際に近い形で再現するSPACモデルを用い,これによる数値実験結果と比較することにより,SMDモデルの仮定が有する土壌物理的意味について考察を加えた。
  • 保水剤混入土中の水分移動に関する研究
    新庄 彬
    1993 年 1993 巻 165 号 p. 65-74,a2
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    密閉容器に保水剤混合砂を詰め,一定温度差を比較的長時間与え,水分量分布の経時変化を調べる実験を行った。その結果,無混合砂がヒータ側から恒温水槽側に向かって単調増加の水分量分布型を示すのに対して,混合砂の水分量分布型は顕著な波状分布を示すことがわかった。この混合砂の示す水分量分布型の特異性に着目することによって,温度勾配による水蒸気移動項の補正係数βを算出した。その結果,混合砂の補正係数は文献に示す無混合砂のそれに比べて水分飽和度の全域にわたり小さ目であった。また,温度差によって生じる不飽和混合砂内の水分移動はその大部分が水蒸気による一方向拡散で行われるという結論が得られた。
  • 低平地タンクモデルによる流出解析法 (I)
    早瀬 吉雄, 角屋 睦
    1993 年 1993 巻 165 号 p. 75-84,a2
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    低平地の実用的流出解析法として低平地タンクモデルを提案し,二,三の基礎的事項を明示した。主要な結果は次のようである。(1)低平地タンクモデルは,雨水の流出入についての連続条件に重点をおく準水理学的流出解析法である。(2)低平地タンクモデルは,計算上の距離・時間刻みをかなり大きくとることができ,ハイドログラフの再現精度は不定流モデルによるそれと大差なく,計算時間を大幅に短縮できる。(3)主要支線排水路が明瞭な場合,流域モデルは幹線排水路-主要支線排水路-水田の系として単純化して実用上十分である。(互)主要支線排水路が明瞭でない場合,流域モデルの単純化に際しては水路の通水能に留意することが望まれる。
  • 低平地タンクモデルによる流出解析法 (II)
    早瀬 吉雄, 角屋 睦
    1993 年 1993 巻 165 号 p. 85-91,a2
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    巨椋流域の下段地区を対象に,排水ポンプの性能変化・水収支等の検討および低平地タンクモデルの適応性について検討した。主要な結果は次のようである。(1)設置後6年程度では,ポンプの性能低下はないが,20~40年になるとかなり低下している。(2)低平地には,雨水以外に河川堤防の浸透水,取水口漏水,畦畔浸透水,住宅下水などが流入する場合があるので,対象期間の水収支を検討する必要がある。(3)水田の6,7月の最大保留量は34mm程度である。(4)河道・水田タンクの定数はすべて地形条件から決まり,幹線排水路-主要支線排水路-水田系に単純化された流域モデルを構成すればよい。また低平地タンクモデルの適応性は十分であることが分かった。
  • 低平地タンクモデルによる流出解析法 (III)
    早瀬 吉雄
    1993 年 1993 巻 165 号 p. 93-99,a2
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では,新潟平野新川右岸に位置する低平水田地域60.8km2を対象にしている。この流域の水は5カ所の機場から別々の河川に排水され,各機場が互いに幹線水路で連結され,さらに2カ所の小輪中,水門などがあって非常に複雑な排水組織を持っている。昭和53年の大出水例を低平地タンクモデルで解析した結果,次のことが解明された。(1)水田域の最大保留量が31mmであること,(2)輪中ポンプの存在や樋門の開閉状態など,水利構造物機能はできるだけ詳細に流域モデルに組込むことが肝要であること,(3)解析から得られた流量ハイドログラフ・水位ハイドログラフはともに,実用上十分な精度で出水氾濫現象を再現でき,モデルの適用性が確認された。
  • 杉山 博信, 角屋 睦
    1993 年 1993 巻 165 号 p. 101-109,a2
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    斜面雨水流の貯留則がKW理論に基づいて理論的に,実験データを用いて現象的に検討されている。その結果,流出モデル定数を一定としては,流出ハイドログラフを評価できないこと,流出現象を説明するには,流出形態に応じてモデル定数を変化させ,またくさび貯留効果を考慮することが必要であることが,明らかにされている。次いで,Prasadモデルの定数が時間の関数であることが,実験データを用いて検討されている。
    さらに,貯留関数モデルの改良開発法についての検討が試みられて,最終的には,くさび貯留効果を加味した新しいモデルが提案され,それによる再現結果が上首尾であることが示されている。
  • 増本 隆夫, 佐藤 寛, 渋谷 勤治郎
    1993 年 1993 巻 165 号 p. 111-119,a3
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    各種水工計画や施設管理に際しての入力となる豪雨データに対して,バリオグラムの特性を調べるとともに,その空間的降雨分布に不偏分散推定理論であるKriging法を用いた雨量計の最適な配置地点の決定法を提示した。その結果,降雨量に対する標高の影響はあらかじめ取除く必要があること,バリオグラムの値は降雨量分布の大きさに影響されるが,分布の中心位置の違いには左右されないことを明らかにした。さらに,Kriging理論による定式化は,面積雨量の推定だけでなく,仮想地点を含む全観測点の重みの推定,重要観測点の抽出,その組合せの選択等,雨量計の最適配置問題に対してたいへん有用な指針を与えてくれることが分かった。
  • 北海道における土壌侵食抑制に関する研究 (I)
    長沢 徹明, 梅田 安治, 李 里漫
    1993 年 1993 巻 165 号 p. 121-127,a3
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    傾斜試験枠によって降雨,流出,土壌流亡を観測し,主として水食に影響する降雨条件を検討した。このなかで,北海道の侵食性に関するUSLEの適応性に考察を加えた。また,10分および時間雨量データによるEI値間にはきわめて高い相関性が認められ,前者のEI値は後者の1.47倍を示した。10分雨量によるEI値は,USLE本来の値に近似すると考えられることから,札幌の降雨係数はR=132.47(m2・tf/ha・h)と推定できる
  • 吉田 力, 東山 勇
    1993 年 1993 巻 165 号 p. 129-137,a3
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    コンクリートの耐酸性に関する研究は多いが,わが国でもpH4以下の降雨がしばしば観測されるにいたり,酸性雨がコンクリートの劣化に及ぼす影響の検討が必要となりつつある。
    本研究は,その基礎的問題として特に硫酸・硝酸を対象に,コンクリートの結合材として主たる役割を果たすCaイオンの挙動に着目し検討した。その結果,コンクリートの耐酸性についてはpH3を境に劣化の影響が大きいこと,また,劣化の程度をCaイオンの分析,X線回析等から明らかにした。さらに,コンクリートの天然,人工のつららの成分の同定を行った。また,酸性河川の現地調査から,コンクリート構造物の劣化の状況も述べた。
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