農業土木学会論文集
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1992 巻, 161 号
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  • 松川 進, 中野 政詩
    1992 年 1992 巻 161 号 p. 1-9,a1
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    蒸発の進行に伴い土壌の表層の含水比が低下し, 結晶の析出が始まる。しかし, 低含水比では遠心分離器等により土壌溶液を抽出することが不可能で, 正確な土壌溶液濃度の測定が困難となる。そこで, 土壌懸濁液法により電気伝導度(EC)を測定し, 異なる濃度で飽和した試料を遠心分離器で含水比を調整し, 得られた含水比, 懸濁液EC, 遠心抽出液ECの関係からECを補正する手法を用いた。
    また, 浸透圧が水蒸気移動に及ぼす影響を水分移動式に加味し, 結晶の析出を吸込み項として溶質移動式に与えた。数値計算結果と補正したEC値の比較から, 結晶析出過程を含む塩類集積解析例を示し, 浸透圧が水分・溶質移動に及ぼす影響を推定した。
  • 三輪 晃一, 難波 直彦, 若松 千秋
    1992 年 1992 巻 161 号 p. 11-17,a1
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    クロボク土の圧縮性の改良方策の一つとしてシラスを混合した。非乾燥状態の混合試料は十分に練返して圧密試験に供した。過圧密条件で得られた拘束圧縮弾性係数は, シラス混入率0.5以下でクロボク土の値に近似し, それ以上の混入率になると混合土の弾性係数は増大した。混合土の圧縮指数および2次圧縮係数は粒径0.074mm以下の細粒分含有量の影響を受け, それらの値は含有量が40%以上で粘土質土, 30%以下で砂質土に類似することを示した。このような圧縮性の変化には混入率0.4まではクロボク土, 0.7以上ではシラスによる骨格の形成が関与し, 圧縮指数が0.2以下になるシラス混入率は0.7以上であった。
  • 宜保 清一, 江頭 和彦
    1992 年 1992 巻 161 号 p. 19-24,a1
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    滑り面土と非滑り面土を用いて, 残留強度と薄板状粘土鉱物粒子の配向の関係について検討した。粘土粒子の配向性のよい滑り面土では, 残留強度線の傾きが小さくなった。一方, 配向性の悪い非滑り面土では, 残留強度線は湾曲し, 剪断抵抗角および粘着力が比較的大きくなった。室内実験で評価した薄板状粘土鉱物の配向性の良否は, 現地での鏡肌形成の有無と対応した。
  • 野中 資博, 野田 修司, 浦上 良樹, 森 忠洋
    1992 年 1992 巻 161 号 p. 25-30,a1
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業集落排水処理施設の微生物腐食と農業水利施設の酸性雨対策を念頭に置いて, 異なるpH段階のモルタルの硫酸腐食実験を行い, その腐食生成物の分析を試みた。電子顕微鏡とエネルギ分散分析の結果から, pH1以下の極低pHでは石こう主体の腐食, pH3前後では石こうとエトリンガイトが混在する腐食, pH5~7ではカルサイトとエトリンガイトが混在する腐食であることが分かった。これらの結果から, 同じ硫酸腐食でもpHのレベルにより腐食生成物が異なり, その腐食形態が同一ではないことが分かる。よって, 防食対策は硫酸のpHに依存することになる。さらに, 腐食部分と健全部分の境界にFe層が発見されるが, これは補修深さの指標として有効であろう。
  • 低正圧地中連続潅漑に関する実験的研究 (II)
    谷川 寅彦, 矢部 勝彦
    1992 年 1992 巻 161 号 p. 31-36,a1
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    低正圧地中連続潅漑方法の基礎的検討として前報に引続き, 裸地条件下において多孔質管の形状, 多孔質管を横置きに埋設した場合の給水状況, 浸潤状況について実験的検討を行った。その結果, 多孔質管の外径の違いや適用する土壌の差異が給水状況と浸潤状況に大きな影響を及ぼすこと, 栽培へ適用するときの適切な多孔質管と設定負圧の組合せが必要であることを明らかにした。さらに, 多孔質管を横方向に埋設した場合, 多孔質管の埋設方法, 形状, 材質の選択が容易になること, 栽培への適用が容易になることを明らかにした。一方, 鉛直下方向に対する給水の損失はそれほど大きくならないことが分かった。
  • 低正圧地中連続潅漑に関する実験的研究 (III)
    谷川 寅彦, 矢部 勝彦
    1992 年 1992 巻 161 号 p. 37-44,a1
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, 低正圧地中連続潅漑法が栽培に適用可能であるかを実験的に追究した。供試土壌は砂質土壌であり, 供試作物はメロンとした。その結果, 基礎的な段階であるが一応の成果を得た。すなわち, 本潅漑法の適用により, 50cm H2O前後の低い水圧を多孔質管に設定することにより給水管理が可能であり, また, 供試土壌が砂質土壌であるにもかかわらず, 下層部で過湿にはならず, 鉛直降下浸透による給水損失の少ない管理が可能であることが分かった。さらに, 給水状況, 土壌水分状況が, 設定圧力だけでなく, 多孔質管や土壌の不飽和透水性, 根群分布とその吸水強度に大きく影響されていると考えられた。
  • 大上 博基, 大槻 恭一, 大原 芳夫, 丸山 利輔
    1992 年 1992 巻 161 号 p. 45-50,a2
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    さまざまな土地利用の地域が隣接する場合には, 狭い地域の蒸発散量を求める必要がある。本論では, 狭い地域の蒸発散量(ET)を算定するために, Seguinが導いたフェッチを考慮した補完関係式を改良し, 実験資料を利用して次式を導いた; ET=(1+α)cEpan100Epan. ここで, EpanとEpan100は, それぞれ地表面または作物群落面の蒸発計蒸発量, 高度100cmの蒸発計蒸発量である。αは, 蒸発計水面の大きさと位置(地域のフェッチ)および地表面の粗さによる係数である。圃場実験によってこの式の妥当性を検討した結果, 従来のフェッチを考慮しない補完関係式は狭い地域の蒸発散量を十分に算定できなかったのに対し, 本論で導いた補完関係式は概ねよく算定できた。
  • 酒井 俊典, 田中 忠次, 宮内 定基
    1992 年 1992 巻 161 号 p. 51-56,a2
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    アンカー問題におけるスケール効果の原因の評価を, 積上げ高さとアンカー直径の比が2の場合について, 1g重力場実験および勢断帯・ひずみ軟化を考慮に入れた弾塑性有限要素解析により行った。実験は試料に豊浦標準砂を用い, 密詰めで行った。有限要素解析は, 1g重力場・遠心力場に対応した解析を行った。その結果, 実験・解析とも地盤の破壊は進行的であった。また, 1g重力場と遠心力場とでスケール効果にも差が見られ, 1g重力場の方が顕著であった。スケール効果の原因としては, 内部摩擦角の応力レベル依存性だけではなく, 勢断帯発生による地盤の破壊の進行性の違いも寄与することが示された。
  • 新第三紀層泥岩の力学的性質とその実務への応用 (IV)
    仲野 良紀, 清水 英良, 西村 真一
    1992 年 1992 巻 161 号 p. 57-67,a2
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    トンネルの専門家の間で広く知られているカスナーの式をφ=0の場合にも適用し得るように拡張し, 前報(III)中で明らかにした新第三紀層凝灰質泥岩の力学特性に基づき, 激しい断層・褶曲作用を受けた地山中を掘削した鍋立山トンネルの膨張性地圧やコンバージェンスが, 掘削直後については全応力解析のφu=0法, 掘削後長時間経過後は有効応力表示の完全軟化強度定数Cs, φsを用いて説明できることを示した。また, 膨張性地圧の真の主要な原因は泥岩の吸水膨張によるものではなく, トンネル周辺に形成された塑性域の, 塑性流動によるものであることを定量的に証明した。さらにまた, 以上の事実に基づき, 深い膨張性トンネルの簡便設計法を提案した。
  • 木ノ瀬 紘一
    1992 年 1992 巻 161 号 p. 69-74,a2
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    波状床などに対応して形成される局所流特有の圧力場にも適用できる流砂量式を導いた。これらの式の誘導は, 局所流による圧力変化の影響を既往の流砂則,(1)芦田らの抗力モデル,(2)Bagnoldのpower modelおよび(3)佐藤らの揚圧力モデルに導入してなされた。そして, それぞれの流砂則に対して得られた流砂量式を使って算定される流砂量から, 圧力変化が流砂量に及ぼす影響を試算した。その結果は, とくに掃流力が比較的小さな領域で圧力変化の影響が顕在化し, 既往の流砂量式を用いて河床形態変化などの詳細を推定しても現象を十分な精度で説明できない可能性があることを示唆するものであった。
  • 水管理システム化に関する研究 (IV)
    猿渡 農武也, 四方田 穆
    1992 年 1992 巻 161 号 p. 75-83,a2
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ファジィ理論を用いて開発した「潅漑用水量の予測管理システム」を, 約2千haの開水路組織による水田潅漑地区で実証試験した。この結果, 水管理者の天候予想が日々の用水量決定と密接に関わることを明らかにした。まず, 管理者の予想天候を近傍の気象台記録と比較すると, その予想がきわめてあいまいであり, 予想と記録が一致した日は全潅漑日数の1/4であった。一方, 日々の用水量はシステムによって与えられる予想情報に沿っておおむね高い確信度をもって決定されているが, 少なくとも日数の30%はあいまい決定が行われていた。このことから, 適正な水管理を遂行するには, 気象情報サービスシステムの必要性が示唆される。
  • 甲本 達也, 大塚 泰孝, 近藤 信光
    1992 年 1992 巻 161 号 p. 85-89,a2
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    軟弱粘土地盤上に構造物を築造する場合には, 何らかの基礎工法を施す必要がある。従来からの基礎工法として支持杭工法などがあるが, これらの工法に対して, 杭のネガティブフリクションや抜け上がりなどの問題点が指摘されている。本報は, 支持杭工法に対する基礎工法として浮き基礎タイプの箱型基礎工法(SBF工法)を提案するとともに, 箱型基礎による構造物の沈下制御効果を有明粘土地盤における現地試験結果を用いて検討したものである。
  • 中 達雄, 穴瀬 真, 鬼塚 宏太郎, 島崎 昌彦
    1992 年 1992 巻 161 号 p. 91-97,a3
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    造成地内の流出土砂制御工法の実用化のために, 水路工法としての渦動排砂管付きフルームを考案し, 室内水理実験により排砂効果を実証した。さらに, 現地実証試験により, 本工法の排砂効果の検討と現地適用に当たっての問題点の抽出を行った。現地試験における排砂効果は, 室内実験と同等であり, 本工法の実用性を確認した。また, 沈砂池内において, 渦動排砂管により排除された土砂は, 堆積段丘を形成しながら効率的に沈降, 堆積していることも明らかにした。課題としては, 排砂管流出口が堆積土砂に埋没せず自由流出状態に常時保持されるような沈砂槽の容量および堆積管理が重要であることを明らかにした。
  • 富津, 長石, 三豊海岸を例として
    玉井 佐一, 松田 誠祐, 山田 泰生
    1992 年 1992 巻 161 号 p. 99-104,a3
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年, わが国の砂浜海岸では, 河川からの土砂供給の減少に伴って汀線の後退が見られ, これに対処する海岸構造物が海岸保全のため数多く設置されている。しかし荒天時, 海岸構造物による砕波の助長などによって,越波あるいは海水飛沫の内陸部への浸入が起こり, 海岸隣接地の潮風害が拡大の傾向にある。本報では, 千葉県木更津富津海岸, 新潟県佐渡郡長石海岸, 香川県観音寺市三豊干拓地を例として潮風害地区における飛沫の発生と浸入の実態を述べ, 防止・軽減対策工法を実験的に検討した。著者らの検討結果によれば, 堤防前面の緩傾斜工法が潮風害の防止・軽減に有効であった。
  • 加藤 正
    1992 年 1992 巻 161 号 p. 105-111,a3
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    リンゴのわい化栽培は早期多収, 良品生産確保などの理由から年々その面積を増加しているが, わい性台樹の根群分布は従来の普通台樹に比べて浅根性なため, 潅水の必要性が高い。しかし, 従来の普通台樹の干ばつによる被害がそれほど頻繁に発生しなかったことから, 潅漑用水の確保が十分なされていない現状にある。
    そこで, 節水可能な水管理技術を確立するために, 潅漑対象土層の深さとわい性台樹の生育, 収量および果実品質との関係を検討したところ, 潅漑対象土層を現行の有効土層とするよりは, 主要根群域の2/3程度とした方が高品質の二果実が生産され, また, 潅水量も少なく, 降雨の有効利用の可能性も高いものと判断した。
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