日本小児アレルギー学会誌
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25 巻, 5 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • 川田 康介
    2011 年 25 巻 5 号 p. 785-793
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/27
    ジャーナル フリー
    ガイドライン(食物アレルギー診療ガイドライン2005,食物アレルギー経口負荷試験2009)発刊の成果もあり,全国において食物経口負荷試験(Oral Food Challenge;以下,OFC)が普及しつつあるが,その主体は病院入院での実施である.今回,当院開業外来で平成22年度に実施したOFC 333件の方法・結果について報告する.平成22年1月から10月までに負荷試験を実施した333件(164人:男107女57).年齢:生後10カ月から22歳.試験前に方法・危険性等について十分な説明を行い,同意書を作成した.オープン法にて30分間隔,単日複数回投与を行った.負荷食品は鶏卵45.6%,牛乳22.5%,小麦11.4%の順に多く,全体の約8割を占めた.負荷陽性は149例(45.4%)であり,皮膚症状95.3%,呼吸器症状24.2%,消化器症状10.7%であった.アナフィラキシーは34例(10.2%)で,14例(41.2%)にアドレナリン筋注を使用した.OFCの結果に応じてその後の食事指導を行った.負荷方法の工夫,誘発症状への迅速な対応などにより開業外来においても安全かつ確実なOFCが実施可能であると考えられた.
  • 林 大輔, 青木 健, 市川 邦男
    2011 年 25 巻 5 号 p. 794-800
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/27
    ジャーナル フリー
    目的 食物アレルギーは乳幼児期に多い疾患で即時型症状のため救急外来を受診することも多い.我々は地方都市の救急病院である当院における受診状況について調査した.
    対象と方法 平成21年1月から平成22年12月の間に食物アレルギー即時型症状のため当院を受診した101人を対象に原因食物,受診時間,症状,治療,看護師によるトリアージについて検討した.救急車で来院した6人も同様の検討を行った.
    結果 食物アレルギー即時型症状の主な原因食物は鶏卵40人(39.6%),牛乳17人(16.8%),魚卵10人(9.9%)であった.看護師が83人にトリアージを行い,蘇生が2人(1.9%),緊急が28人(26.9%),準緊急が36人(35.6%),非緊急が17人(16.8%)であった.アドレナリンは4人(4.0%)に投与された.救急車で来院した6人の原因食物は牛乳2人,鶏卵2人,ナッツ1人であった.
    結論 即時型症状の原因食物は鶏卵,牛乳,魚卵が多かった.アドレナリンの使用率が低く,初期対応について啓蒙が必要と考えられた.
速報
  • 山岡 明子, 阿部 弘, 渡邊 庸平, 角田 文彦, 梅林 宏明, 稲垣 徹史, 虻川 大樹, 柳田 紀之, 箕浦 貴則, 森川 みき, 近 ...
    2011 年 25 巻 5 号 p. 801-809
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/27
    ジャーナル フリー
    【目的】アレルギー疾患を有する小児が東日本大震災によってどのような影響を受けたかを調査し,今後の対応を検討する.
    【対象と方法】対象は,宮城県立こども病院総合診療科,仙台医療センター小児科,森川小児科アレルギー科を定期受診した402名のアレルギー疾患の小児の保護者.口頭で同意を得た後,外来の待ち時間にアンケート記入を行い,診察時に回収した.
    【結果】困った事で最も多かった回答は,それぞれ,気管支喘息では「停電のため電動式吸入器が使用できなかった」,アトピー性皮膚炎では「入浴できず湿疹が悪化した」,食物アレルギーでは「アレルギー用ミルクやアレルギー対応食品を手に入れるのが大変だった」であった.
    【まとめ】大震災に対する今後の対応として,気管支喘息では停電の時でも吸入できるような吸入薬や吸入器の備え,アトピー性皮膚炎では入浴できない時のスキンケアの指導,食物アレルギーではアレルギー用ミルクを含めたアレルギー対応食品の備蓄や避難所などの公的機関で食物アレルギーへの理解を深める啓蒙活動が必要と考えた.
喘息死委員会報告
  • 末廣 豊, 赤坂 徹, 坂本 龍雄, 西間 三馨, 鳥居 新平, 三河 春樹, 松井 猛彦
    2011 年 25 巻 5 号 p. 810-825
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/27
    ジャーナル フリー
    我が国の喘息死は小児,成人共に減少傾向にあり,喘息死亡率も減少し概ね低率で安定しつつある1)~3).日本小児アレルギー学会・喘息死委員会宛に2010年10月までに,気管支喘息があって死亡し登録された症例は233例で,対象外を除いた206例について解析した.2010年には2名の登録があった.男女比は1997年以前98/63(1.6:1),1998年以降28/17(1.6:1)で,変化はみられなかった.不明・未記入を除いて死亡前1年間の重症度をみると1997年以前は軽症26%,中等症30%,重症44%,1998年以降は軽症35%,中等症27%,重症38%で,重症度に大きな変化は見られなかった.死亡年齢と死亡場所の関係をみると自施設で死亡した例は0~6歳73%,7~12歳55%,13歳以上では38%と加齢に伴い減少傾向が認められた.逆に自施設以外の場所での死亡例が年長になるほど増加する傾向にあり,学校内あるいは養護学校,下校時など学校が関与する症例が認められた.発作重症化に関わる要因として,入院歴が52%に認められたが,意識障害を来たすほどの重症発作,挿管,isoproterenolによる治療の既往は少なかった.喘息死に関与した要因では,予期できない急激な悪化,適切な受診時期の遅れが最も多かった.適切な受診時期の遅れを来たした要因として,患者・家族による判断の誤りが多く,短時間作動性β2刺激薬の加圧噴霧式定量吸入器(pMDI)やモーターネブライザー(MoNe)への過度依存,怠薬がそれに次いだ.薬物療法について,1997年以前の死亡例を1998年以降と比較すると,キサンチン製剤とβ2刺激薬の内服,自宅でのMoNe吸入,pMDIは減少し,吸入ステロイド(ICS)は増加傾向にあるものの38%に留まっていた.また,β2刺激薬貼付剤やLABA(long acting β2agonist)の使用が新たに認められるようになった.死亡前1年,1ヶ月間の重症度別薬剤使用状況を解析した結果,吸入ステロイド,ステロイド内服とも,使用していない症例が少なからず報告されており,死亡前にコントローラーとして充分に使用されていなかった可能性がうかがえた.また,急性発作増悪時にSABA(short acting β2agonist)定量噴霧式吸入が充分に行われていなかった可能性も考えられた.
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