日本小児アレルギー学会誌
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28 巻, 3 号
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総説
  • 大久保 公裕
    2014 年 28 巻 3 号 p. 313-319
    発行日: 2014/08/20
    公開日: 2014/10/20
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    I型アレルギー疾患に対するアレルゲン免疫療法(減感作療法)は皮下免疫療法(subcutaneous immunotherapy:SCIT)として1911年のNoon L. の報告以来100年の治療経験がある.いくつかの欠点があり,残念ながら日本では標準治療にはなっていない.これを改善するために舌下免疫療法(sublingual immunotherapy:SLIT)が現状で最も安全で最も実用化が近い方法である.我々はスギ花粉症へのSLITの臨床試験を行ってきた.局所の違和感以外の副作用はなく,有効性も症状スコアを減少させ,薬物使用量を減少させ,QOLの悪化を軽減する治療法であることが確かめられている.小児のスギ花粉症に対しても効果が検証されているが,エビデンスはない.今後,小児におけるエビデンス構築が日本でも必要である.
  • 柳田 紀之, 佐藤 さくら, 今井 孝成, 長谷川 実穂, 林 典子, 海老澤 元宏
    2014 年 28 巻 3 号 p. 320-328
    発行日: 2014/08/20
    公開日: 2014/10/20
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    食物アレルギーの管理の基本は正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去の指導である.その実践のためには食物経口負荷試験に基づいた指導が基本となる.しかし,食物経口負荷試験を行う施設は全国的には需要に対して充足しているとは言えない.本稿では食物経口負荷試験の歴史について触れ,各国のガイドラインを踏まえて当院での方法を具体的に紹介し,今後の食物経口負荷試験普及の一助としたい.
原著
  • 柳田 紀之, 宿谷 明紀, 佐藤 さくら, 永倉 顕一, 江村 重仁, 浅海 智之, 小川 絢子, 岡田 悠, 小池 由美, 小倉 聖剛, ...
    2014 年 28 巻 3 号 p. 329-337
    発行日: 2014/08/20
    公開日: 2014/10/20
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    【背景】日本小児アレルギー学会アナフィラキシー対応ワーキンググループは皮膚症状以外の重篤な症状を「一般向けエピペン®の適応」の症状(以下WG症状)として公表した.【目的】当院小児科で行った重症例への食物経口負荷試験(以下負荷試験)の結果に基づき,WG症状のアドレナリン筋肉注射(以下Ad筋注)に対する妥当性を評価する.【方法】経口免疫療法の適応判定のために微量で重篤な症状が誘発される5歳以上の児を対象に二重盲検負荷試験を行った.試験陽性の鶏卵151例,牛乳163例,小麦50例,ピーナッツ27例の計391例の誘発症状を後方視的に検討した.【結果】Ad筋注された90例ではAd筋注がない301例に比べ有意に呼吸器症状(p<0.001),神経症状(p<0.001),循環器症状(p<0.001)が多かったが,皮膚症状には差を認めなかった.WG症状を認めた106例のうち,90例(84.9%)にAd筋注が行われた.WG症状がない例へのAd筋注はなかった.【結論】重症例への負荷試験結果を基にした検討では皮膚症状の有無はAd筋注の判断に有用ではなかった.WG症状は妥当なAd筋注の基準であると考えられた.
  • 海老島 優子, 花村 香葉, 西紋 悠子, 林 奈津子, 福田 博子, 井端 友季, 高 祥恵, 吉野 翔子, 下寺 佐栄子, 平口 雪子, ...
    2014 年 28 巻 3 号 p. 338-347
    発行日: 2014/08/20
    公開日: 2014/10/20
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    目的:医師とコメディカルスタッフが協働して行った患児主体のぜんそく教室が気管支喘息の小中学生のアドヒアランスやセルフケアに与える効果について検討する.対象:2011年8月4日に行った“こどもぜんそく教室”に参加した喘息患児18名のうち,教室後も定期的に通院した17名を対象に,教室前,教室1, 3か月後の喘息日記,ピークフロー(Peak Expiratory Flow:PEF),服薬のアドヒアランス,セルフケア,呼吸機能を評価した.結果:教室1か月後は教室前に比べてアドヒアランスやセルフケア,呼吸機能の改善を認め(P<0.05),“こどもぜんそく教室”は有効であった.教室3か月後も吸入やPEF手技は教室前と比較すると良好であり,教室1か月後と比較するとアドヒアランスが低下した患児はいたが,50%以上のアドヒアランスを維持できている患児は教室前よりも増加していた.結語:医師,コメディカルスタッフが協働し,患児を主体としたぜんそく教室は,患児が喘息の病態や治療の必要性を理解し,主体的にセルフケアに取り組む機会となり,アドヒアランスの向上に有効であった.
  • 渡邊 庸平, 林 千代, 山岡 明子, 三浦 克志
    2014 年 28 巻 3 号 p. 348-355
    発行日: 2014/08/20
    公開日: 2014/10/20
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    【目的】成人領域において吸入ステロイド薬(Inhaled corticosteroids:ICS)による喘息治療への吸入療法の普及に伴い,医師と薬剤師が病薬連携を構築し喘息治療を行うことの必要性や有用性が報告されている.しかし,小児気管支喘息治療における病薬連携については,これまで報告がなく課題や問題点は明らかにされていない.そこで我々は,小児気管支喘息治療で用いられる長期管理薬の保険調剤薬局(薬局)における調剤状況や吸入指導の実態を調査し,効果的な病薬連携の構築を検討するためにアンケート調査を行った.【対象と方法】宮城県全域の薬局(1045店舗)を対象とし,小児気管支喘息治療に関する治療薬の調剤状況,吸入指導における状況や課題,病薬連携への意識などに関するアンケート用紙を郵送で送付し,回収した.回収された454件のアンケート(回収率43.4%)のうち,小児への調剤を行っていると答えた334件において解析を行った.【結果】44.7%の薬剤師が患者(保護者)からICSの副作用について質問されたことがあり,44.8%が医師による吸入指導の不足を指摘していた.また,薬剤師による吸入指導に関しては,実際に吸入の仕方を説明しながら行う直接指導が徹底されておらず,指導回数も十分ではなかった.吸入指導に関して,多くの薬剤師が病薬連携構築を希望しており,医師・薬剤師合同の勉強会の開催や統一した吸入指導箋を希望する回答も多かった.【まとめ】小児気管支喘息治療において多くの薬剤師が病薬連携を希望しており,効果的な病薬連携体制の構築が必要と思われた.
  • 是松 聖悟, 在津 正文, 藤高 道子, 楠目 和代, 緒方 美佳, 藤野 時彦, 池田 政憲, 得 雄一郎, 西川 清, 小田嶋 博
    2014 年 28 巻 3 号 p. 356-363
    発行日: 2014/08/20
    公開日: 2014/10/20
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    食物アレルギーに対する食物経口負荷試験の実施状況を検討するため,西日本小児アレルギー研究会と四国小児アレルギー研究会の会員376名(324施設)にアンケートを送付し,1施設1部の回答を求めた.有効回収率は50%(163施設)で,病院72%(63施設),クリニック42%(100施設)であった.回答者はアレルギー専門医が63名,一般小児科医が100名であった.負荷試験はアレルギー専門医の74%,一般小児科医の38%が実施しており,実施医における,外来での実施数(月平均)は,アレルギー専門医の57%が1-5件,28%が11件以上と回答した.また,一般小児科医の85%が1-5件と回答した.入院で実施していたのは,アレルギー専門医の40%,一般小児科医の23%しかいなかった.アレルギー専門医の87%が,食物経口負荷試験の診療報酬を請求していたが,一般小児科医は38%しか請求していなかった.負荷試験を行いにくい理由として,一般小児科医は,検査するスタッフ,場所や時間の確保に限界があること,即時反応のリスクがあることを挙げ,アレルギー専門医は,さらに,健康保険で定められた負荷試験の回数制限,対象患児の年齢制限も挙げた.多くの患児が安全で有効に負荷試験が実施できるように,研修システムを確立し,同時にアレルギー専門医における食物経口負荷試験の適応を拡大することが望まれる.
解説
手技編(検査)について
  • 望月 博之
    2014 年 28 巻 3 号 p. 364-371
    発行日: 2014/08/20
    公開日: 2014/10/20
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    小児では喘鳴,咳嗽などの呼吸器症状は頻回に認められるが,近年,乳幼児の反復性する喘鳴にはいくつかのphenotypeが存在することが報告されている.病態や予後・経過,治療法は,各々のphenotypeによって異なるはずであるため,肺機能検査や気道過敏性検査などの客観的な指標による評価を用いて,phenotypeの分類を含む喘息の診断を進めるべきである.最も頻回に用いられる肺機能検査はスパイロメトリーで,最大努力性呼気により求められるFVC, FEV1, MMF, V'50, V'25等のパラメーターが活用されている.フローボリューム曲線における努力非依存性の下降脚の形状は特に重要で,末梢気道の異常を鋭敏に示すことができる.残念ながら年少児では努力性呼吸が要求される検査ができないが,最近になり,インパルスオシロメトリー法(IOS)のような年少児にも使用可能な機器が入手可能になった.これらの技術を有効に用いて,小児の喘息の診断や治療のために,肺機能の客観的評価がなされるべきである.
  • 勝沼 俊雄, 赤司 賢一, 渡辺 雅子
    2014 年 28 巻 3 号 p. 372-377
    発行日: 2014/08/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル 認証あり
    小児気管支喘息における気道炎症レベルの有力なモニター法として呼気中一酸化窒素(Fractional exhaled nitric oxide;FeNO)分析,呼気凝集液(Exhaled Breath Condensate;以下EBCと略)分析に期待が集まる.近年,ポータブル型FeNO測定機が医療機器として承認され,その使用が容易となった.FeNOは喘息の診断のみならず,重症度判定,治反応性等にも応用可能である.EBCに関しては,過酸化水素等酸化ストレスマーカー,ロイコトリエン等エイコサノイド,サイトカイン等の測定が可能である.臨床所見・呼吸機能にFeNO, EBC等のデータを加味して診療を進めることが最良と考える.
  • 小田嶋 博
    2014 年 28 巻 3 号 p. 378-381
    発行日: 2014/08/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル 認証あり
    運動負荷テストはアレルギー疾患の診断においてしばしば行われる.その中でも最も多く,また,実施方法が確立されているのは,運動誘発喘息(EIA)に対する検査である.ここでは日常臨床で実際に行っている経験に基づいて,その方法について述べた.EIAは小児の日常生活のなかで頻度が高く,また実際の生活に結びつくことから,適切に評価し日常臨床に役立てていくことが望ましい.
  • 吉田 之範
    2014 年 28 巻 3 号 p. 382-385
    発行日: 2014/08/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル 認証あり
    小児気管支喘息の合併症としてのGERDの精査目的で検査を行う場合,24時間胃食道pHモニタリングが最も有用である.ただpHモニタリングではGERと症状の関連をみることも重要である.さらに,最近,わが国でも小児で,食道内のインピーダンス(抵抗)を測定し,液体の逆流やガスを測定するCombined Multiple Intraluminal Impedance and pH monitoringの使用が可能となった.非酸性の逆流も検出できることが特徴であり,今後のデータの蓄積が望まれる.食道内視鏡検査・生検や上部消化管造影などは,呼吸器症状だけではなく,嘔吐や下血などの消化器症状も呈する場合に追加すればよいと思われる.
日韓招待講演報告
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