日本小児アレルギー学会誌
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32 巻, 4 号
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原著
  • 河原 隆浩, 増本 夏子, 手塚 純一郎
    2018 年32 巻4 号 p. 647-653
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
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     【背景】食物経口負荷試験 (OFC) は, 少量摂取でもアナフィラキシー (An) を起こすことがあるため, 重篤な症状を誘発するハイリスク児を事前に予測できることが望ましい.

     【目的】牛乳の少量OFCで重篤な症状を誘発する危険因子を明らかにする.

     【方法】2011~2016年までに, 牛乳の少量OFC (目標摂取量 : 5ml以下) を施行した児を対象とした. OFCの結果を中等症~重症, 陰性~軽症に分類し, 患者背景 (月齢, 総負荷量, 気管支喘息〔BA〕, アトピー性皮膚炎の合併, 多種抗原への感作の有無, 牛乳Anの既往, 皮膚症状以外の即時型症状の誘発歴, BAの家族歴, An発症時期とOFC施行までの期間), 牛乳特異的IgE値, 総IgE値を診療録より後方視的に検討した.

     【結果】牛乳のAn既往, BAの合併, BAの家族歴は, 中等症~重症な症状を誘発する危険因子であった.

     【結語】牛乳のAnの既往, BAの合併またはBAの家族歴のある児に牛乳の少量OFCを行う際は, 十分な体制下でOFCを行うことが望ましい.

  • 是松 聖悟, 豊国 賢治, 高松 伸枝, 松本 重孝, 藤本 保
    2018 年32 巻4 号 p. 654-665
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル 認証あり

     大分県は, 県知事が会長を務める大分県地域保健協議会の下部組織として, 県医師会, 県小児科医会, 県薬剤師会, 県栄養士会, 医学部, 食物栄養学部, 学校医部会, 県教育委員会, 公立養護教諭部会, 県福祉保健部で構成するアレルギー対策専門委員会を設置した. 給食の実態調査と, 国公立, 私立の保・幼・小・中・高・支援学校の管理職研修を行い, そこから得られた課題である医師による診断, アレルギー対応食の提供, アナフィラキシー時の対応をもととして, 県内統一の学校, 幼稚園, 保育所におけるアレルギー対応手引きを作成した. アレルギー専門医, アレルギーエデュケーターともに少ない県において, 医療, 保健, 教育が連携して開始した対策を報告する.

  • 萩野 紘平, 大石 拓, 濱本 諒, 長尾 佳樹, 小倉 由紀子, 小倉 英郎, 藤枝 幹也
    2018 年32 巻4 号 p. 666-673
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル 認証あり

     【目的】高知県内の小児気管支喘息による入院の推移を調査するとともに, 発作誘発因子としてのウイルスについても検討する.

     【方法】高知県の入院可能なおもな小児医療機関に, 喘息発作 (喘息性気管支炎を含む) で入院した20歳未満の患者を対象とした. 2005年, および2010~2015年の各施設の喘息発作 (喘息性気管支炎の病名を含む) による入院患者数, それぞれの入院月, 性別, 年齢層, 呼吸補助を要する強い発作の有無, ウイルス検索の結果を後方視的に調査した.

     【結果】喘息入院数は徐々に減少していた. 2015年の月別入院数は9月, 10月に大きなピークを認め, 前年同月の約2倍であった. 高知大学での2012~2015年のウイルス学的検討では3歳以上で55.0%, 3歳未満では44.3%にヒトライノウイルスが検出された.

     【結語】重症喘息発作の誘発因子探索として感染症サーベイランスを行うことは, 早期にその増悪因子の流行を察知し喘息患者への予防的対応がとれる可能性がある.

  • 阿久澤 智恵子, 金泉 志保美, 佐光 恵子
    2018 年32 巻4 号 p. 674-689
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル 認証あり

     【目的】保育所職員が感じているアナフィラキシーショックの対応に対する知識不足や不安感・自信のなさを軽減し, アナフィラキシー対応の救急処置体制を整備することを目的としたアナフィラキシー初期対応研修プログラムを実施し, その効果を検証する.

     【方法】研修を受講した保育所職員を対象に, Kirkpatrickの4段階評価測定モデルを用いて研修前・研修後・研修6か月後にアンケート調査を実施した.

     【結果】155名から回答を得た. 保育所職員のアナフィラキシー対応に関するネガティブな意識は, 研修前と比較して研修後, 研修6か月後に有意に軽減されていた. 「一般向けエピペン®適応」 の13の症状について研修前後, 6か月後に, 「息がしにくい」 以外のすべての症状において有意な差が認められた. シミュレーション訓練後, 保育所の救急処置体制の改善点が具体的に抽出され, 研修6か月後は具体的な改善が行われていた.

     【結論】シミュレーション訓練を組み込んだ研修プログラムは, 保育所職員の知識・技術の向上と維持, 救急処置体制の改善を促進した.

総説
  • 貝沼 圭吾
    2018 年32 巻4 号 p. 690-697
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
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     わが国のアレルギー疾患対策は, 平成26年 (2014年) に成立したアレルギー疾患対策基本法と平成29年 (2017年) に告示されたアレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針に基づいて推進されている. 平成29年7月には, アレルギー疾患医療提供体制のあり方に関する検討会報告書を発出し, 現在, 各都道府県において, 医療提供体制の整備が行われているところである. さらに, 正しい情報を提供するためのウェブサイトの構築や免疫アレルギー疾患における研究戦略の策定に向けた取組みを進めているところである. 基本指針には, 様々な対策の必要性が示されており, 厚生労働省だけでなく, 関係省庁と連携をとりながら, アレルギー疾患を有する者が安心して生活できる社会の構築を進めていく必要がある.

  • 南部 光彦
    2018 年32 巻4 号 p. 698-708
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
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     アレルゲンは本来, アレルギー患者のIgEと結合してアレルギー症状を引き起こす分子であるが, 近年ダニアレルゲンが気道上皮や皮膚ケラチノサイト, また免疫系細胞にもさまざまな影響を及ぼしていることが報告されてきた.

     Der 1はシステイン・プロテアーゼであり, 糞に大量に存在している. Der 1はプロテアーゼ活性によってTh2アジュバントとして作用し, また上皮のバリアを傷害してIL-33を誘導し, さらに上皮細胞や好塩基球, 好酸球なども刺激する可能性が報告されている.

     Der 2はMD-2と相同性を有しており, LPSとともにTLR4を刺激して, 自然免疫反応を誘導する可能性が報告されている.

     Der 3, 6, 9はセリン・プロテアーゼであり, 気道上皮やケラチノサイト, 樹状細胞などのprotease-activated receptor-2を介してさまざまなサイトカイン, ケモカインを誘導する可能性が報告されている.

     そのほかのダニアレルゲンコンポーネントについても最近の知見を簡単に紹介する.

ガイドライン解説:小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017
  • 荒川 浩一
    2018 年32 巻4 号 p. 709-715
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
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     「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン (JPGL) 2017」 は, Mindsに準拠して作成した初めてのJPGLである. 第1章では, 診療ガイドラインに記載すべき事項と構成に関する追加文書を掲載した. はじめに, 作成目的を明確化し, 改訂への経緯, 作成組織 (三層構造の担当組織) を示した. クリニカルクエスチョン (CQ) は 「長期管理」 および 「急性増悪 (発作) 」 における重要臨床課題から設定し, 推奨文とその解説形式でまとめ, 治療以外の章では教科書的な記述方法とした. また, 作成における基本方針として, 利益相反に配慮した透明性の高い診療ガイドラインであることを示した. 作成工程には, システマティックレビューの方法や推奨グレードの設定方法を記載し, JPGL2012からの変更点を箇条書きにして明示し, 今後の課題として公開後の取り組みについて言及した. 章末にはCQおよび推奨, 解説を掲載した.

  • 平井 康太, 望月 博之
    2018 年32 巻4 号 p. 716-722
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
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     日本小児アレルギー学会による 「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン」 (以下JPGL) の普及, 近年における治療の著しい進歩により小児の気管支喘息 (以下喘息) は軽症例が多数を占めるようになった. しかしながら, 喘息の自然寛解はさほど高率ではなく, 抗炎症薬も永続的な効果は確認されないため, 軽症に対してこそ有効な治療が必要と思われる. JPGL20171) でも従来どおり, 病態生理を理解し重症度を考慮した適切な治療を行い, 患児のQOLを改善させること, 成人まで持ち越させないために, 長期間, 良好なコントロールを維持することを推奨している. 本編ではJPGL2017の第2章 「定義, 病態生理, 診断, 重症度分類」 について, 小児の喘息治療の戦略を踏まえ解説する.

  • 吉田 幸一, 赤澤 晃
    2018 年32 巻4 号 p. 723-727
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル 認証あり

     「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン (JPGL) 2017」 において, 第3章 疫学には気管支喘息の有症率や合併症, 予後などの調査結果を最新のデータに更新し, これまで独立して章立てしてきた 「喘息死」 に関する疫学的データを合わせて記載した. さらに気管支喘息の入院患者数や喘息コントロールに関する調査結果も記載した. それにより, 日本における小児気管支喘息の動向がこの章だけで把握できるようになった.

     JPGL2012からの大きな違いは, 日本でも小児の気管支喘息有症率の増加がみられなくなったことである. JPGL2000発刊以降, 小児の喘息死亡数や入院患者数は著しく低下し一定のガイドライン普及効果が感じられるが, 乳幼児期の対応などわれわれが解決できていない課題も疫学調査からみえてくる.

  • 井上 祐三朗, 下条 直樹
    2018 年32 巻4 号 p. 728-734
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
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     喘息は個体因子と環境因子が絡み合って発症する. 個々の患者での発症・増悪にかかわる危険因子を明らかにして, それらに対する対策を講じることが予防の中心となる.

     喘息の発症にかかわる個体因子・環境因子は, 個々の患者において多様である. 喘息の発症にかかわる個体因子には, 性別, アレルギー素因, 気道過敏性, 出生時の低体重, 肥満, 遺伝因子などがあげられ, 環境因子には, アレルゲン曝露, 呼吸器ウイルス・細菌感染症, 室内空気・大気汚染物質などがあげられる. 喘息発症の予防としては, 妊娠中および出生後のタバコの煙からの回避が推奨される. また, 早産児に対するパリビズマブは, 反復性喘鳴を予防することが示されている.

     喘息の増悪にかかわる環境因子を調整することは, 薬物療法, 患者教育と並んで喘息治療・管理の大きな柱の1つである. 室内塵ダニを含めた吸入アレルゲンや非特異的因子 (タバコの煙, 室内空気・大気汚染物質) の曝露からの回避が推奨されている.

知っておきたい最新のアレルギー・免疫学用語
疫学委員会(喘息死検討部会)報告
  • 楠 隆, 赤澤 晃, 荒川 浩一, 今井 孝成, 大矢 幸弘, 板澤 寿子, 長尾 みづほ, 福田 啓伸, 二村 昌樹, 吉田 幸一, 小田 ...
    2018 年32 巻4 号 p. 739-745
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル 認証あり

     日本小児アレルギー学会・喘息死委員会宛てに1989~2017年10月までに気管支喘息に罹患していて死亡し登録された症例は新規登録6名を加えて252例で, 対象外を除いた219例について解析した. 男女比は136/83 (1.6/1) であった. 死亡年齢は0~3歳, 12~16歳の思春期にピークがみられた. 都道府県別では, 東京24例, 愛知16例, 福岡15例などの順となっていた. 喘息の型はアトピー型が47%で約半数を占め, 季節性では通年性が38%であった. 死亡前1年間の重症度は, 重症26%, 中等症18%, 軽症18%, 不明・未記入38%であった. 不明・未記入の割合が1999年までは34%に対し, 2000年以降は53%と増加していた. 入院回数は0回37%, 1回15%, 2回5%, 3回以上14%, 不明・未記入29%であった. 受診時の状況は, 受診時死亡例 (dead on arrival : DOA) が58.2%, 死因は窒息が59.6%でいずれも最も多かった.

日韓招待講演報告
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