日本小児アレルギー学会誌
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23 巻, 5 号
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総説
  • 浜崎 雄平, 山本 修一
    2009 年 23 巻 5 号 p. 613-622
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
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    気管支喘息の病態は慢性の気道炎症である.従って治療は抗炎症薬投与による炎症の抑制が中心である.近年,生体内に能動的に炎症を抑制する抗炎症・消炎症の機序が存在することが指摘され,オメガ3脂肪酸由来の物質protectin, reselvinが重要な消炎症物質として注目を浴びている.一方,従来は炎症性のメディエーターと考えられてきたオメガ6脂肪酸であるアラキドン酸代謝物を中心とする活性脂質が,ある条件下では能動的な消炎症の機序にも関与していることも示されてきた.この分野の研究は将来の喘息治療の戦略のひとつとして可能性を秘めたものである.(pro-resolutionは炎症収束との訳もあるが,本文では消炎とした)
  • 土居 悟
    2009 年 23 巻 5 号 p. 623-628
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
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    ある種の感染が喘息の発症について抑制的に働くという衛生仮説があり,環境中のエンドトキシンの量とアトピー性喘息の有病率は逆相関する.その一方で,RSウイルスとライノウイルスの呼吸器感染は喘息症状の悪化と関連する.さらに,喘息患者の気道上皮細胞ではライノウイルス感染に対する自然免疫に関する防御機能が低下している.また免疫系の成熟と関連して,これらの感染が乳幼児期から青年期のどの時期であるかも影響する.ウイルス感染において,抗原呈示細胞におけるtoll-like receptor(TRL)からのシグナル伝達,気道上皮細胞や抗原呈示細胞からのサイトカイン産性,さらにTh1細胞とTh2細胞のバランスがTh2細胞優位になることが,喘息の発症や症状の悪化に関連する.
原著
  • ―プロスペクティヴ調査―
    岩田 力, 栗原 和幸, 小田島 安平, 宇理須 厚雄, 井上 壽茂, 河野 陽一, 森川 昭廣
    2009 年 23 巻 5 号 p. 629-642
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
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    1歳未満の気管支喘息患児に対して,オノンドライシロップ10%(プランルカスト水和物)の安全性および有効性を検討するため,使用実態下における調査を実施した.
    調査方法はプロスペクティヴな中央登録方式とし,全国の医療機関93施設より192例を収集した.
    安全性解析対象症例184例中に副作用の発現は認められなかった.
    有効性解析対象症例173例中,改善症例は159例(改善率91.9%)であった.背景要因別での有効性の検討結果からは,特に問題を認めなかった.
    以上,本剤は1歳未満の気管支喘息に対して安全性および有効性に優れた薬剤であることが確認された.
  • 林 典子, 今井 孝成, 長谷川 実穂, 黒坂 了正, 佐藤 さくら, 小俣 貴嗣, 富川 盛光, 宿谷 明紀, 海老澤 元宏
    2009 年 23 巻 5 号 p. 643-650
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
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    食物アレルギー患者の食生活支援において,栄養士の役割が期待されているが,その栄養指導法は未だ確立されていない.そこで,食物アレルギー児及び非食物アレルギー児の保護者を対象に日常生活で直面している問題を明らかにする調査(家庭内外での食生活,母のストレスや周囲の理解度,通園通学施設の対応に関して)を行い,重点的な栄養指導項目の選定を試みた.対象は544名で,食物アレルギー児286名,非食物アレルギー児258名であった.児が家族と別献立であったのは非食物アレルギー児21.7%,食物アレルギー児40.1%であり,原材料に注意を払っていたのは非食物アレルギー児67.5%,食物アレルギー児96.8%であった.食物アレルギー児の40.1%が経済的な負担を感じ,54.1%が外食を自由にできておらず,除去品目数の多さはその負担を助長していた.また,園や学校の給食や栄養士の対応に不満であるのは食物アレルギー児28.2%,非食物アレルギー児4.6%であった.栄養士は,これらの負担を軽減するための支援(栄養指導)を医師の診療に協力して行う必要があるといえる.
  • 細木 興亜, 平口 雪子, 徳田 玲子, 長尾 みづほ, 藤澤 隆夫, 高松 勇, 錦戸 知喜, 吉田 之範, 亀田 誠, 土居 悟, 森下 ...
    2009 年 23 巻 5 号 p. 651-658
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
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    【目的】急性増悪で初回入院した乳幼児喘息例の臨床的特徴を明らかにする.
    【方法】生後6ヶ月から5歳未満の間欠型または軽症持続型の喘息患者で,急性増悪により初回入院した29例の退院後長期投薬の有無による臨床経過の差を後ろ向きに検討した.
    【結果】退院後6ヵ月の観察期間で,長期投薬あり群(75.9%)の急性増悪再発率は0.66回/患者・年,なし群は1.00回/患者・年であった.長期投薬なし群はあり群と比較し急性増悪の再発頻度と再発までの期間に有意差を認めなかったが,有意に早く治療コントロール不良となった(p<0.05).再増悪ないし治療コントロール不良群は他のアレルギー疾患合併,好酸球増多の何れかを認める割合が高く(p<0.05),ダニ抗原感作陽性を加えた3因子のいずれかを有する傾向も高かった(P<0.05).
    【結論】初回入院後に再び急性増悪またはコントロール悪化を来たす例はアトピー素因を持つ例が多く,長期管理薬が投与されないとより早期にコントロール不良となる傾向であった.
  • 中村 利美, 中川 睦美, 平松 正行, 鬼頭 俊行, 松江 悠紀子, 林 陽子, 中村 常之, 犀川 太
    2009 年 23 巻 5 号 p. 659-664
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
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    アレルギー食を提供している102の病院施設にアンケート調査用紙を送付し,アレルゲンとして頻度の高い食品の開始時期,献立作成,および食品選択にどのような配慮がなされているかを調査した.43施設(回答率42.2%)中,26%の病院で提供した食事でのアレルギー症状を経験していた.離乳食に加えるものを遅らせる配慮をしている施設の割合が高い食品は,卵(全卵:65.1%),乳製品(ヨーグルト:48.8%),小麦(パン:72.1%)であり,幼児食の献立に入れない配慮をしている施設の割合が高い食品は,いくら(90.7%),温泉卵(76.7%),鯖(72.1%),蕎麦(67.4%),ピーナッツ(65.1%)であった.アレルゲンとして頻度の高い食品の開始時期を遅らせることや献立に入れないことは,食物アレルギー発症や誤食による症状誘発の危険性への配慮であり,病院食の安全管理上重要と考えられる.
  • 岡畠 宏易, 喜多村 哲朗, 藤高 道子, 池田 政憲, 有田 昌彦
    2009 年 23 巻 5 号 p. 665-672
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
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    2008年9-12月に,広島県内89医療機関を定期受診した小児気管支喘息患児2052名(0-1歳:2-5歳:6-15歳=130:1009:913)を対象とし,JPACを使用して喘息の治療および発作の状況に関して実態調査を実施した.
    設問の「最近1ヶ月間の喘息症状と生活の障害」中,「ゼーゼー・ヒューヒューした日」は878名,「呼吸困難(息苦しい)のある発作」は426名,「夜中に目をさましたこと」は476名の患者にみとめ,これら3つがいずれも「まったくない」児は1093名であった.JPAC合計点数15点の完全コントロールは681名,12-14点の良好なコントロールは813名,11点以下のコントロール不良は558名で,使用している長期管理薬は,いずれの年齢ともロイコトリエン受容体拮抗薬が最も多く,ついで吸入ステロイド薬であった.治療ステップを考慮した重症度では,年齢が低い児ほど重症度が高かった.
    JPACは地域における喘息患者の重症度やコントロール状態の調査に役立てることの可能なツールであると考えられた.
小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2008解説「ガイドラインをどう読むか」
  • 宇理須 厚雄
    2009 年 23 巻 5 号 p. 673-680
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
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    急性発作に対する治療のポイントを記す.
    1,家庭での対応
    (1)患者と保護者に対して,発作時の対処法を発作の強度に応じて指示する.特に,致死的なことがある重篤な発作については十分に説明する.
    2,医療機関での治療
    β2刺激薬,ステロイド薬,アミノフィリン,イソプロテレノール,酸素吸入,輸液など,発作時に用いられる薬剤の作用や副作用ならびに投与方法を熟知する.発作の強度(小発作,中発作,大発作,呼吸不全)を,症状,酸素飽和度,可能ならば肺機能などを用いて素早く評価し,その重症度に応じて迅速に治療を進める.特に重症発作に対しては敏速な治療が求められる.
  • 河野 陽一
    2009 年 23 巻 5 号 p. 681-688
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
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    気管支喘息は慢性の気道炎症疾患であり,予後改善のためには長期管理が重要である.治療管理は「寛解・治癒」を目標とし,日常のコントロール状態を正しく把握する.重症度判定を基に治療ステップを決定するが,重症度判定には「見かけ上の重症度」「真の重症度」があることに注意し,「真の重症度」により治療ステップの選択を行う.コントロールが得られたら,ステップダウンを図るが,「見かけ上の重症度」は間欠型以下に保つ.
食物アレルギー経口負荷試験ガイドライン2009解説
速報
喘息死委員会報告
  • 松井 猛彦, 赤坂 徹, 坂本 龍雄, 末廣 豊, 鳥居 新平, 西間 三馨, 三河 春樹
    2009 年 23 巻 5 号 p. 705-714
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
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    わが国の喘息死は減少傾向にあり,喘息死亡率も減少傾向にある.
    日本小児アレルギー学会・喘息死委員会に,2008年10月までに,小児気管支喘息があり死亡して登録された症例は222例で,そのうち喘息死の199例について解析した.
    喘息死亡例の登録は1996年頃から減少傾向にあり,近年は1~2例で推移しており,2008年に登録されたのは4例でそのうち喘息死亡例は2例であった.喘息死が急激に減少し始めた1998年以降と1997年以前を比較し解析した.
    喘息死亡前の喘息重症度は不明・無記載を除くと,軽症27%,中等症29%,重症43%で,重症発作に関連する既往歴は,入院歴を52%に認めるるものの,意識障害を来すほどの重症発作,挿管,isoproterenolを使用した既往歴は少なく,重症発作の既往歴や喘息重症度だけで喘息死のリスクをチェックすると,多くの症例が漏れることは明らかであった.
    喘息死に関与した要因では,予期せぬ急激な悪化,適切な受診時期の遅れが最も多く,次いで医療設備・人の不足,怠薬,薬物過剰が挙げられ,適切な受診時期の遅れを来した要因として,患者自身あるいは患者家族のの発作程度の判断の誤りが多く,次いで,短時間作動性β2刺激薬の定量噴霧剤(pMDI),モーターネブライザー(MoNe)への過度依存の順であった.
    上述で,1997年以前と1998年以降では大きな差を認める事項はなかった.
    死亡前の抗喘息薬による薬物療法は,1998年以降死亡例を1997年以前と比較すると,キサンチン製剤とβ刺激薬内服・自宅MoNe吸入・ pMDIはやや減少傾向となり,ICSはやや増加傾向にあるものの32%にとどまっていた.
    喘息死亡例の発症年齢,初診年齢と死亡年齢をみると,喘息死亡例の喘息発症年齢は0~3歳が多く,平均発症年齢は2.5歳で,死亡年齢は12~16歳が多く,平均12.2歳であった.喘息発症から喘息死のまでの期間は平均7.0年で0年が最も多かった.初診から喘息死までの期間は平均3.5年で,0年が95例と最も多かった.喘息発症から喘息死までの期間が明らかになった症例の死亡年齢をみると,発症から2年未満で死亡した症例(32例)は,死亡年齢が2歳以下の低年齢に多く,全当該死亡年齢症例の中に発症2年未満で死亡した症例の割合(%)をみると発症年齢が高くなるに従い低下するが,9歳以上での発症は数は少ないものの発症2年未満で死亡した症例の占める率が高かく,注意が必要である.
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