日本小児アレルギー学会誌
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33 巻, 3 号
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原著
  • 西村 龍夫, 牧 一郎, 尾崎 由和, 松下 享, 卯西 元, 武知 哲久
    2019 年 33 巻 3 号 p. 279-287
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/31
    ジャーナル 認証あり

     【目的】1歳児を対象に, 乳児期の食物アレルギー症状と除去食の実態を調査する.

     【方法】2014年10月〜2014年12月の3か月間, 65施設の小児科外来において, 麻しん風しん混合ワクチン1期の接種を目的に受診した1歳児の保護者を対象とし, それまでの食物アレルギー症状と思われる症状の有無と食物除去についてアンケート調査を行った.

     【結果】65施設から853例の調査票を回収した. 31.1%でこれまでに食物アレルギーと思われる症状が出たと回答し, 顔などの部分的なじんましんや痒みが最も多かった. 現在何らかの食物を除去しているのは27.8%で, このうち29.9%は複数の食物除去を行っていた. 除去を医師の指示で行っていたのは57.8%であり, 24.6%は保護者の判断であった. 除去理由は, 医師の指示の中では血液検査が82.6%と最も多く, 保護者判断の中では, アレルギーが怖いからが49.0%と最も多かった.

     【結論】多くの保護者が血液検査や食物アレルギーへの不安感から食物除去を行っている.

  • 安西 香織, 巽 亜子, 住本 真一
    2019 年 33 巻 3 号 p. 288-294
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/31
    ジャーナル 認証あり

     薬剤性過敏症症候群は, 薬剤内服を契機に発症する重症薬疹の1つであり, 抗てんかん薬・抗菌薬などが原因である. 診断基準の1つに, 末梢血好酸球の増多 (1,500/μL以上) がある. 症例は, 従来健康でアレルギー歴のない15歳男児. 15歳になって初めて無熱性痙攣を2回起こし, カルバマゼピンの内服を開始していた. 開始3週間後に発熱・紅斑が出現し, 肝機能障害や白血球 (36,440/μL), 好酸球の著明な増多 (21,499/μL) を認めた. カルバマゼピンの中止とともに, ステロイドによる治療を開始し, 症状は軽快, 好酸球の低下を認めた. カルバマゼピンの薬剤誘発性リンパ球刺激試験が陽性であり, HHV-6の再活性化も確認され, 薬剤性過敏症症候群の基準を満たした. 好酸球増多が著明であったために精査した結果, 血清TARCおよびIL-5の異常高値およびaberrant T cell陽性を認めたことから, 薬剤性過敏症症候群の病態とリンパ球性好酸球増多症の病態が重なる部分がある可能性が示唆された.

  • 木村 彰宏, 田村 京子, 小島 崇嗣
    2019 年 33 巻 3 号 p. 295-303
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/31
    ジャーナル 認証あり

     【背景】アドレナリン自己注射製剤 (エピペン®) の普及に伴い, 不適切な使用例の報告が増加している.

     【目的】食物アレルギー児と保護者の, エピペン®の取り扱い方の習熟度と使用すべき症状の認識度を明らかにする.

     【方法】エピペン®の処方更新に来院した中学生以上の食物アレルギー児33名と保護者97名を対象にエピペントレーナーの取り扱い方の習熟度を調べた. また家庭での取り扱い方の練習の状況, 保管場所, 使用すべき症状の認識度などについて, 無記名アンケート調査を行った.

     【結果】取り扱い方の観察ではトレーナーラベルの確認, 注射部位の選択と注射部位に障害となる物がないことの確認, 押し付け時間などの点で不適切な手技が観察された. 取り扱い方の練習では1年以内に1度も練習をしたことがないと答えた者が大半を占めた. また, 対象患者の半数近くはぐったりする, 失禁, 息苦しさなどの重篤な症状の発現時でも, まだエピペン®を使用する時期ではないと誤認していた.

     【結論】エピペン®は処方時の指導だけでは, 取り扱い方や使用すべき症状の持続的な理解につながらないことが示唆された.

短報
  • 齋藤 麻耶子, 山本 貴和子, 石川 史, 大矢 幸弘
    2019 年 33 巻 3 号 p. 304-307
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/31
    ジャーナル 認証あり

     【目的】本研究は, 小児喘息患者アドヒアランス評価質問票 (PAAQ) と, 呼吸機能検査, FeNO値との関連を探索することを目的とした.

     【方法】吸入ステロイドを使用している9〜15歳の気管支喘息患者のうち, PAAQ, JPAC, FeNO, 肺機能検査を行った者を対象とした. 欠測値のない者を対象 (n=54) に, PAAQスコアのカットオフ値0.65により2群に分け, これらの検査結果とPAAQとの関連を検討した.

     【結果】FeNO値はPAAQ高値群において有意に低く, FeNO値とPAAQスコアとは負の相関を認めた. しかし, FeNO値が高くかつPAAQスコアも高いケースも一部存在した.

     【結論】FeNO値はアドヒアランスと負の相関を示すことが多いが, PAAQスコアを同時に測定することでアドヒアランス以外の悪化要因の存在を推測できる可能性が示された.

総説
  • 吉田 幸一
    2019 年 33 巻 3 号 p. 308-315
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/31
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     保湿剤や食物の早期摂取によるアレルギー疾患の発症予防に関する研究結果が報告され, 医療機関での診療だけでなく, 離乳食の開始など一般的な生活にも大きな影響を与え始めている.

     高緯度地域にアレルギー疾患をもつ患者が多いという横断的疫学調査の結果から, ビタミンDはアレルギー疾患の発症に関連がある因子の1つとして以前から考えられていた. その後, ビタミンDが免疫や肺の発育にも影響を及ぼすことやビタミンD欠乏症がアレルギー疾患発症のリスクになることが報告され, 最近では, 妊娠中のビタミンDサプリメントによる乳幼児の喘鳴抑制効果を示したランダム化比較試験の研究結果が報告されている. しかし, 食物アレルギーやアトピー性皮膚炎など他のアレルギー疾患に対する抑制効果を示す研究は少なく, 現段階ではアレルギー疾患の発症予防のためにビタミンDサプリメントを使用するエビデンスは十分ではなく, 推奨されない. 臨床応用までにはさらなる研究が必要である.

  • 堀向 健太
    2019 年 33 巻 3 号 p. 316-325
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/31
    ジャーナル 認証あり

     アトピー性皮膚炎 (AD) が他のアレルギー疾患の発症リスクを上げることが明らかになってきたため, その発症予防と増悪予防が注目されている. そして皮膚バリア保護により経皮感作を防ぐという観点から, 新生児期からの保湿剤定期塗布によりAD発症リスクを低下させるという報告が増えてきている. しかし, 保湿剤の定期塗布のみでAD以外のアレルギー疾患も防ぐことができるかに関しては, 大規模介入試験の結果を待つ必要がある. 一方, 経皮感作は 「経湿疹感作」 ともとらえることができ, 皮膚の炎症病変に対する早期介入試験が感作を予防するかを検討するために現在進行中である. さらに積極的に経口免疫寛容を誘導する目的で, 離乳食早期導入による食物アレルギー発症予防の検討が報告されるようになった. しかしそこでも, 皮膚の治療を並行して行う必要性があることが判明してきている. 最近, アレルギー疾患発症予防に対し衛生仮説やビタミンD仮説に関しても知見が増えてきており, 多面的に考えていく必要性が出てきている.

ガイドライン解説:小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017
  • 福家 辰樹, 井上 壽茂
    2019 年 33 巻 3 号 p. 326-334
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/31
    ジャーナル 認証あり

      「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン (JPGL) 2017」 第12章では学校, 保育所での生活を中心に, 運動への対応, 予防接種など, 喘息の日常管理について概説されている. 学校や保育所内あるいは校外活動に配慮が必要な場合は生活管理指導表を活用し, 保護者, 学校関係者と連携し適切な対応を促す. 運動により一時的に喘鳴や呼吸困難を伴う一過性の気管支収縮が起こる現象を運動誘発喘息 (EIA) とよぶ. 運動は子どもの成長・発達にとって様々な利点をもたらすため, EIAを起こさずに生活できるよう関係者がEIAについて正しい認識をもち, 互いに連携して対処することが必要である. 予防接種は, 喘息児でも十分な注意と配慮のもとに健常児と同様に接種可能である. 喘息児の全身麻酔や手術に際してはできるだけ良好なコントロール状態を維持し, 必要に応じて治療のステップアップや全身性ステロイド薬投与を考慮する. 災害時などの予期せぬ状況に備え, 対応できるように指導しておく. 非常時に活用できるパンフレットが準備されている.

  • 佐藤 さくら, 海老澤 元宏
    2019 年 33 巻 3 号 p. 335-339
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/31
    ジャーナル 認証あり

      「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017」 (JPGL2017) では, 初めて重要な臨床課題をクリニカルクエスチョンに設定し, システマティックレビューによる評価をもとにガイドライン作成委員会にて作成した推奨文を掲載した. JPGL2017では, 乳幼児喘息の定義を2歳未満から5歳以下に変更し, 乳幼児期の喘鳴性疾患を鑑別しやすく分類したこと, 長期管理における吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬の配合剤の位置づけを変更したこと, ヒト化抗IgEモノクローナル抗体 (オマリズマブ) を長期管理薬の追加治療としたことなどがおもな変更点である. しかし, 小児喘息に関するエビデンスはいまだ乏しく, エビデンスレベルの高い報告がない項目についてはエキスパートの経験や意見に基づいて作成された. 病態・診断・疫学・予防・治療・管理のいずれに関しても, エビデンスとなりうる研究の実施が求められる.

  • 山田 佳之, 荒川 浩一
    2019 年 33 巻 3 号 p. 340-343
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/31
    ジャーナル 認証あり

     日本小児アレルギー学会による 「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン」 (以下JPGL) の普及により, 多くの施設で標準的治療が行われるようになってきており, 小児気管支喘息治療の基本薬剤が適切に使用されることが重要である. 第14章ではおもな抗喘息薬について一覧表にして示した. ここ数年, 主要な薬剤に大きな変化はないが, 注目すべき新規の薬剤として生物学的製剤が加わった. JPGL2012では付記として第7章の長期管理に関する薬物療法の中で紹介されていたオマリズマブとその後にわが国の小児で承認されたメポリズマブについてJPGL2017では本文中および第14章の一覧表に記載した. また第14章では原則として独立行政法人医薬品医療機器総合機構 (PMDA) から得られる情報をもとに表を作成し, 禁忌, 副作用について明確に別項目として記載した. 本稿では一覧表に記載されたおもな薬剤についてJPGL2017本文中での記載事項も引用し解説した.

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