気管支喘息の治療は病態解明が進んできたこともあり, 急激に変化してきている. 国際的にも理想的喘息管理プログラム6項目や, 喘息がコントロールされた状態7項目が示されている. しかし, これらの理想的プログラムと目標を施行し達成することは現状の思春期~青年期の気管支喘息患者をみると極めて困難な状況である.
1975年と1994年の国療南福岡病院小児科における気管支喘息の年間登録外来患者数と発作入院数を比較すると, それぞれ4.7倍 (466→2194人), 6.0倍 (121→723例) に増加している. 一方, 死亡例は増加せず年に1例のペースであり, 大部分は自宅か, 来院途中での死であった. このことは小児気管支喘息の治療管理の大きな進歩を示している.
しかしながら, 死亡24例中20例の急死例は10~29歳であり, 全国的にも15~29歳では1980年からの10年間で男女とも死亡率は3倍になっている. このデータは心理・社会・経済的ハンディキャップを持つ重症な思春期~青年期の喘息患者の管理の困難さを示唆するものである.
重症難治型の喘息の予後は, よいものではなく, 20年後の予後調査では寛解27.2%, 死亡12.7%であった.
結論として, 気管支喘息は一般的にはコントロールしやすくなり軽症化している感があるが, 重症難治型の若年喘息患者においては日常生活の障害, 進学就職上の障害, 専門診療・夜間救急体制の不備, 周辺社会の無理解など, 多くの問題があり, 社会的視野を持った真の意味での total care の構築が急がれる.
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