日本小児アレルギー学会誌
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13 巻, 1 号
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  • 第35回日本小児アレルギー学会会長講演
    豊島 協一郎
    1999 年13 巻1 号 p. 1-12
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    気管支喘息 (以下喘息と略す.) の基本病態が気道の慢性炎症性病変を伴う気道過敏性亢進であることが明らかにされ, 治療の基本戦略は気道炎症の抑制と考えられるようになった. このことを基礎に治療が進歩し, 適切な治療を実施すれば気管支喘息小児の大部分は喘息の無い小児と全く同様の活動が保証されるようになった. しかし, 未だに学習空白や行事参加制限など患児の成長発達阻害が少なからず見られ, 時には喘息死も生じている. 病気としての気管支喘息の治療技術の進歩に目を奪われ, 時に喘息小児の成長発達支援という小児科診療本来の目標が軽視される傾向がその一因となっていることに気付く事が少なくない. 喘息の病態理解と治療に大きな変化があった30年間に亘る喘息小児の治療を通して, 患児や家族から教えられた喘息小児の成長発達支援にっいて述べた.
  • スギ花粉とトマトの共通抗原性について
    徳田 玲子, 近藤 康人, 安藤 仁志, 和田 映子, 宇理須 厚雄
    1999 年13 巻1 号 p. 13-17
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    oral allergy syndrome (以下OASと略す) はシラカンバをはじめとする樹木花粉症の合併率が高い. イネ科花粉や雑草花粉症でも同様の報告がされているが, 我が国で最も多いスギ花粉症との合併の報告は少ない.
    我々は, トマトによるOASにスギ花粉症を合併した14歳女児例を経験した.
    患児は12歳ごろよりスギ花粉症があり, その頃からトマト摂取後に口腔内のしびれ感や違和感を訴えるようになった. 特異的IgE抗体 (CAP-FEIA) は, スギ花粉85.2UA/ml, トマト10.9UA/mlであった.
    患者血清を用いた immunoblot 法と inhibition immunoblot 法を行った.
    患者血清IgEはスギ花粉抽出抗原の major allergen であるCry j1とCry j2に反応し, トマト抽出抗原では複数のタンパクと反応した. inhibition immunoblot 法では, スギ花粉抗原とトマト抗原の間で互いに濃度依存性に抑制されるバンドが観察され, 両者の間には共通抗原性が存在する可能性が示唆された.
  • 藤高 道子, 加藤 恭博, 村木 可枝, 溝口 信行, 佐倉 伸夫, 上田 一博
    1999 年13 巻1 号 p. 18-22
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    18q-症候群のため精神運動発達遅延を有する2歳の喘息女児例にテオフィリンRTC療法を施行したところ, 常用量の投与でテオフィリン血中濃度が低かったにも関わらず, 不随意運動の副作用が生じた. 経口β2刺激剤では興奮性の副作用が生じたため治療が難しく発作が頻発した. 喘息発症当初は吸入指導の困難さ, 吸入療法への非協力的状況から, 自宅での定期吸入療法の効果は期待できないと思われたが, Disodium Cromoglycate (DSCG) の定期吸入を試み, 以後発作回数は減り, DSCG以外の薬剤が殆ど不要となった. 喘息の改善に伴い療育指導への参加が積極的に可能となり, 発達の面でも発作頻発時に比べ良好な経過が得られている. DSCGがどの程度肺内に沈着しているかを知る指標としてDSCG血中濃度を測定したところ, 本症例のDSCG吸入後の血中濃度は, 精神運動発達遅延のない喘息患児でDSCGが有効な症例の血中濃度の平均値と同等であり, 精神運動発達遅延のない児に劣らない量が吸入できていると考えられた. DSCGの常用量投与中に発作回数が増した時はDSCGの増量が有効であった.
  • 入院時気道過敏性の観点から
    松原 和樹, 杉本 日出雄, 松田 秀一, 七条 孝三郎
    1999 年13 巻1 号 p. 23-28
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    施設入院をした気管支喘息児214名を対象に, 入院時及び退院時の気道過敏性閾値, 呼吸機能, 運動負荷試験を検討した. さらに入院時の気道過敏性の閾値で2群 (1250μg/ml以上及び未満) に分け, 入院時の気道過敏性, 呼吸機能, 運動負荷試験に影響を与える因子を検討した. その結果, 1. 全症例での検討では入院時に比し退院時にはいずれの検査も著明に改善していた. 2. 入院時の気道過敏性が1250μg/ml未満の群では, 通年性になった時期から施設入院までの期間が長く, β刺激薬MDIの使用頻度が高かった. 3. 気道過敏性閾値が1250μg/ml以上の群では1250μg/ml未満の群に比し入院時, 退院時とも呼吸機能, 運動負荷試験で良好であった. 種々の薬剤により発作のコントロールが不良で家庭内外の環境の整備や鍛練が充分に行えない症例には施設療法を考慮することが望ましいと思われた.
  • 松原 和樹, 杉本 日出雄, 松田 秀一, 七条 孝三郎
    1999 年13 巻1 号 p. 29-35
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    気管支喘息児は運動誘発喘息への不安のため, 運動を敬遠しがちになり, 運動能力の低下, 運動に対する自信の喪失といった様々な問題が生じてくることがある. 今回, 入院時に運動誘発喘息を認めた183名 (男110名, 女73名, 平均年齢11.0±2.5歳) を対象に運動負荷試験による1秒量の最大低下率, アセチルコリン吸入試験での閾値, 運動能力テスト (50m走, 持久走) を1年間経時的に測定した. また, 入院時及び退院時の薬剤使用状況を調査した. その結果, 1. 運動負荷試験, アセチルコリン吸入閾値は経過とともに改善を示した. 2. 運動能力も向上した. 3. さらに著明な薬剤減量を図れた. 喘息児にとって日頃からのトレーニングは運動能力の向上のみならず, 薬剤減量, 気道過敏性の改善にも有効と思われた.
  • 坂井 堅太郎, 牛山 優, 真鍋 祐之
    1999 年13 巻1 号 p. 36-42
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    鶏卵の卵白を生, または加熱凝固させた場合のペプシンとパンクレアチンによる卵白タンパク質成分の消化性をSDS-PAGEとイムノブロットにより検討した. 生卵白のオボアルブミン (OA) は, ペプシンおよびパンクレアチン消化に対して強い抵抗性を示したが, 加熱凝固卵白では, これらの消化酵素によく消化された. オボムコイド (OM) のペプシン消化は, 生および加熱凝固卵白に拘わらず, よく消化された. OMのパンクレアチン消化は, 生卵白の場合で強い抵抗性を示したが, 加熱凝固卵白の場合ではよく消化された. オボトランスフェリン (OT) のペプシン消化は, 生および加熱凝固卵白に拘わらず, よく消化された. OTのパンクレアチン消化は, 生卵白の場合で強い抵抗性を示したが, 加熱凝固卵白ではよく消化された. これらの結果から, 卵白タンパク質の消化性は, 胃腸管の消化酵素の種類と卵白の生, または加熱凝固の状態により異なることが示された. また, 実際に生卵白を摂取した際, OAは, 胃腸管のいずれの消化酵素においても消化されにくいが, OM, またはOTはペプシンによりよく消化されるので, これらのタンパク質の消化には, 胃内でのペプシンによる消化能力が重要と推察された.
  • 安藤 仁志, 徳田 玲子, 森田 豊, 和田 映子, 近藤 康人, 宇理須 厚雄, 山田 一恵, 松田 幹
    1999 年13 巻1 号 p. 43-49
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    ovomucoid (OM), ovalbumin, ovotransferrin, lysozyme 及びOMの third domain with carbohydrate chain (D3 CHO), third domain without carbohydrate chain (D3) の特異的IgE抗体価を測定し, その臨床的意義を検討した. 対象は卵白に対する特異的IgE抗体高値の患児32名. これらの患児に二重盲検法による卵白経口負荷試験を行い即時型過敏反応 (IHR) 陽性群と陰性群に分け検討した. 卵白成分の中でOM特異的IgE抗体価は, IHR陽性群が陰性群に比し高値の傾向にあった (p<0.1). また sensitivity, specificity, accuracy は89.5%, 30.7%, 65.6%で他の成分に比し良好であった. 一方, D3CHO, D3の特異的IgE抗体価では, IHR陽性群が陰性群に比し有意に高値であった (p<0.01). sensitivity, specificity, accuracy はD3CHOでそれぞれ89.5%, 92.3%, 90.6%, D3では94.7%, 69.2%, 84.4%でOMに比し良好であった. 以上からD3CHO, D3に対するIgE抗体価を測定することは, 卵白によるIHRの診断に卵白や他の卵白成分特異的IgE抗体価よりも有用であることが示唆された.
  • 数間 紀夫, 白瀬 江里奈, 松岡 郁美, 平川 典子, 大谷 智子, 本城 美智恵, 村田 光範
    1999 年13 巻1 号 p. 50-54
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    (目的) 気管支喘息児には副交感神経機能の24時間リズムが消失している例があるが, どのような因子と24時間リズムが関わっているかを検討した.
    (方法) 対象は気管支喘息児145例である. 対象に24時間心電図記録をし, 副交感神経機能の指標である%RR50 (先行するRR間隔に比し, 50msec以上異なるRR間隔の指定区間における出現頻度の割合) を1時間毎に求め, Single cosine fiting 法をもちいて24時間リズムの解析をした. 24時間リズムの有無を調べ, 24時間リズム保有群 (111例) と消失群 (34例) で種々の因子 (年齢, 肥満度, 発作時間, 重症度, 治療別, 合併症の有無, NNA (1日平均の心電図RR時間)) について比較した. さらに, 2群間での24時間平均値 (MESOR) および振幅を比較した.
    (結果) 24時間リズム保有群と消失群ではNNA以外の因子には有意差がなかった. 消失群ではNNAが保有群よりも低値を示した (t=2.07, p=0.04)
    (考案) 気管支喘息児における%RR50による副交感神経の24時間リズムが消失している群では, 副交感神経の緊張低下や時間における変動幅の減少があり, 生体リズムの乱れと関連していた. 心拍数の増減がリズムを乱す因子の1つとして考えられた.
  • 第2報 アトピー性皮膚炎の診療コストについて
    五十嵐 隆夫
    1999 年13 巻1 号 p. 55-62
    発行日: 1999/03/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    限られれた財源をより有効に使うため, 小児アレルギー性疾患治療のコストエフェクトを研究する目的で, アトピー性皮膚炎の診療コストを調査した. 診療所, 総合病院, 大学病院の小児科外来を受診した0から20歳のアトピー性皮膚炎患者242名の1ヶ月間の外来診療コストを, 受診回数, 処方薬の種類と薬剤料, 検査料について調べた. 外来診療費は, 診察料が3,000円, 処方薬剤料が5,000円であり, 処方箋料が1,600円, 検査料が1,400円, 総計で11,000円であった. 処方薬剤料の内訳は, 経口抗アレルギー剤が56%, 経口DSCGが21%, 外用剤が21%, 抗ヒスタミン剤が3%であった. 処方薬剤料は年齢層別に差は認めなかったが, 重症度別では, 軽症と中等症, 重症で2~5倍の差が認められ, 経口抗アレルギー剤, 経口DSCGの投与が大きく影響していた. 今後, 経口抗アレルギー剤, 経口DSCGの投薬適応についての検討が必要である.
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