日本小児アレルギー学会誌
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10 巻, 1 号
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  • 食物抗原の除去および負荷の影響について
    桑畑 圭子
    1996 年10 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    食物アレルギー児59例を対象として, 分子量の異なる非代謝性の糖である lactulose (L) とL-rhamnose (R) を同時に経口投与し, それらの尿中排泄率の比 (L/R比) を用いて腸管透過性を評価した.
    抗原の除去食療法が不完全な児のL/R比は, アトピー家族歴や既往歴のない非アトピー児 (コントロール群) および除去食療法が完全な児に比べて有意に高く, 腸管透過性の亢進が示唆された (p<0.01). 一方, 完全除去児および誘発歴が明らかな抗原 (主として鶏卵と牛乳) のみ完全除去の多種抗原感作児でのL/R比は, コントロール群と差がなかった.
    除去試験および負荷試験前後でのL/R比は, 除去試験後に低下し, 負荷試験で誘発症状を呈した例では負荷後に増加を認めた.
    また, 検査前10日未満に気道感染を認めた非アトピー疾患児のL/R比は, コントロール群に比べて有意に高値を呈した (p<0.05).
    今回の結果より, L/R比を用いた腸管透過性は食物アレルギー児での抗原食物の摂取や除去による局所の病態を反映し, 客観的評価を下す上で有用であることが示唆された.
  • 泉 信夫, 芦沢 隆夫
    1996 年10 巻1 号 p. 9-13
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    気管支喘息児のEIAに関して学校関係者と共に検討していく場合に資するよう, 小学4年生を対象にアンケート調査と運動負荷による実態調査をおこなった. 1小学校の5年間の4年生計884名中84名 (9.6%) を気管支喘息と判定した. そのうちEIAが疑われる症状に関する回答はa)「よくある」10名, b)「たまにある」40名, c)「なし」34名であった. 75名にFEV1を指標に自由走によるEIAの発生を検査した. FEV120%以上の低下はa) 8名中8名 (100%), b) 39名中15名 (38%), c) 28名中6名 (21%) で, 全体では75名中29名 (39%) であった. FEV1が50%以上の低下はa) 4名 (50%), b) 7名 (18%), c) なしで全体では11名 (15%) であった. EIAに関する簡単な質問でもある程度の把握が可能と考えられた.
  • 加野 草平, 西間 三馨
    1996 年10 巻1 号 p. 14-18
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    DSCGエアゾールとDSCG液の効果の違いを高張食塩水吸入試験を用いて検討した. 対象は, 施設入院中の気管支喘息児9例 (男5例, 女4例, 8-14歳) である. 患児それぞれに, control (生理食塩水, 2ml), DSCG 2puff (2mg), DSCG 4puff (4mg), DSCG 1A (20mg, 2ml) を2日以上7日以内の間隔をあけ吸入させ, その15分後に3.6%高張食塩水吸入試験を行った. 各群において高張食塩水吸入試験前の%FEV1.0に有意差を認めなかった. DSCG 2puff, DSCG 4puff, DSCG 1A (20mg) 吸入後のPD20は, コントロールと比して有意に上昇しており, いずれのDSCG吸入もPD20を有意に改善させた. DSCG吸入群間では, DSCG 4puff は2puff より有意にPD20を改善させたが, エアゾールと液剤との間には有意差を認めなかった. 一方, 個人別にみると, DSCGエアゾールの効果に関して, コントロールと比べPD20が改善する例とほとんど変化しない例に分かれ, PD20が2ml以下の気道過敏性が高い5例中4例では, エアゾール2puffの高張食塩水吸入に対する抑制効果はほとんど認められなかった.
    以上の結果より, DSCGエアゾールは気道過敏性の低い軽症例ではDSCG液と同等の効果が期待できるが, 気道過敏性の高い重症例では, 1回2puff吸入は不十分である可能性が示唆された. 今後は, 重症度別にDSCGエアゾールの効果を吸入量も考慮して判定する必要があると考えられた.
  • 江原 朗, 佐々木 真樹, 外岡 立人
    1996 年10 巻1 号 p. 19-23
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    テオフィリンの経口投与をうけており, 中発作以上で入院した気管支喘息患児9名を対象とし, Bayes 法を用いてテオフィリンの薬物動態の検討を行った. これまでは, 発作時と非発作時において, テオフィリンのクリアランス, 分布容積, 半減期に差は生じないという報告と, 発作時にはテオフィリンのクリアランスが低下し, 軽快するとクリアランスが上昇するという報告があり, 一致を見ていなかった. 私たちの研究では, クリアランス, 分布容積および半減期を発作時と非発作時において比較したが, 両者のあいだに統計学的有意差を見いだすことはできなかった.
  • 八木 映子, 宇理須 厚雄, 森田 豊, 近藤 康人, 鶴田 光敏, 矢崎 雄彦, 山田 一恵
    1996 年10 巻1 号 p. 24-31
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    過去に卵白特異的IgE抗体陽性 (スコア2以上) と診断され, 一度でも卵白を摂取したことがあるアレルギー疾患児44例を対象に卵白凍乾末負荷試験を, またそのうちの20例には, 固ゆで卵白および卵白凍乾末両者の負荷試験を実施した. その結果, 卵白凍乾末負荷試験を実施した44例では, 保護者による卵白即時型過敏症状の有無の判断との不一致率は47.7%であった. この食い違いは保護者が加熱加工された鶏卵摂取の結果で判断していたことが理由の1つと考えられた. また, 両者の負荷試験を実施した20例では, 卵白凍乾末負荷試験では陽性であった14例中11例で固ゆで卵白負荷試験は陰性であった. さらに卵白特異的IgE抗体値から固ゆで卵白負荷試験の結果は予測できず, きめ細かい食事指導を実施するためには, 卵白凍乾末だけではなく固ゆで卵白による負荷試験も必要であると考えられた.
  • 気管支喘息児におけるIgG subclass (IgG2, IgG3) 値の年令的推移
    柏木 保代, 河島 尚志, 武隈 孝治, 篠本 雅人, 袁 萠萍, 島崎 哲弥, 千葉 友幸, 星加 明徳
    1996 年10 巻1 号 p. 32-36
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    我々は第1報においてアレルギー患児のIgG subclass を測定し, 内13.7%にIgGのいずれかの subclass に低下を認め報告した. 今回, 気管支喘息患者のうちIgG2またはIgG3が低値を示した8例, すべての subclass が正常域であった10例を対象とし年齢的推移を検討した.
    IgG2が正常域のIgG2値およびIgG3正常域のIgG3値の年令的推移は, 全例正常範囲内での変化であった. IgG2低下を示した3症例中1例のIgG2は加令とともに上昇し正常域となった. 他の2例は経過を追って測定すると, 一時的に正常域に入るものの, 年令が上昇するに連れ再び低下を示した.
    IgG3低下を示した6例のIgG3値は4例で正常域となり, 2例は低下のままであった. 正常域に上昇した3症例も正常域下限であった. これらのことから気管支喘息患者の一部では, 長期にわたり subclass 値の異常を認めると考えられた.
  • 岡部 俊成, 飛田 正俊, 阪口 雅弘, 井上 栄, 宮沢 博, 野呂瀬 嘉彦, 竹田 幸代, 向後 俊昭
    1996 年10 巻1 号 p. 37-43
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    気管支喘息小児20例について, ゴキブリ特異的IgE抗体の測定を行い, その陽性率は, クロゴキブリが25% (5/20), チャバネゴキブリは30% (6/20), ダニは95% (19/20) であった. このうち9例について, 室内アレルゲンの検索を行い, クロゴキブリ主要アレルゲン (Per f1) を4例で検出したが, チャバネゴキブリ主要アレルゲン (Bla g2) は検出できなかった. ゴキブリ特異IgE抗体とアレルゲンともに陽性であった症例は, アレルゲンおよび抗体の両者を検索し得た9例中の1例のみであった. ゴキブリ特異的IgE抗体陽性群と陰性群の室内ダニ (Der 1) アレルゲン量の比較では, 子供部屋, 台所, 居間で両群間に有意な差はなかった.
  • 第4編 単回吸入時の吸入間隔と吸入回数
    西間 三馨, 小田嶋 博, 古賀 一吉, 青見 裕子, 藤野 時彦, 宮崎 澄雄, 浜崎 雄平, 小林 伸雄, 井上 敏郎, 熊本 俊則, ...
    1996 年10 巻1 号 p. 44-52
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    23例の小児気管支喘息患者にβ刺激薬をMDIで投与し, 2吸入する際の吸入間隔の違いによる臨床症状と肺機能の変化を多施設間で検討したが, 群間に有意差はなかった.
    同様に, 低用量2回吸入と高用量1回吸入による, 臨床症状と肺機能の変化を18例の喘息児で検討したが, 両群間に有意差はなかった.
    以上より, 小児におけるβ刺激薬MDIの至適吸入指導は「2吸入以上する場合は基本的吸入手技を繰りかえして連続して吸入してよい. また, 高濃度MDIのあるときは低濃度MDIで分割して吸入しなくてもよい.」となった.
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