日本小児アレルギー学会誌
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21 巻, 3 号
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総説
  • 大嶋 勇成
    2007 年21 巻3 号 p. 263-270
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2008/01/29
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    免疫療法はアレルギーに対する唯一の原因療法といえる.従来の免疫療法にはアレルギー性鼻炎や喘息の症状を軽減し,治療薬の必要性を減らす効果が認められるが,副作用や治療必要期間の点からその適応は限られたものとなっている.しかし,免疫療法には新規の抗原感作を阻止し,アレルギー性鼻炎から喘息への進展を予防するといったアレルギー疾患の自然歴を変えてしまう可能性がある.近年,CpG モチーフをアジュバンドとして用いたり,IgE を介する副反応を抑制して免疫効果を高めるため抗原ペプチドや遺伝子改変アレルゲンを用いる新たな免疫療法が検討されている.本稿では免疫療法の現状とその作用機序,将来展望について概説する.
  • 足立 雄一
    2007 年21 巻3 号 p. 271-280
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2008/01/29
    ジャーナル 認証あり
    小児期の喘息の自然歴として,喘息児の30-50%は一旦寛解するが,その約30%がその後に再発するとされている.寛解に至らない,あるいは寛解後に再発する因子としては,吸入ステロイドによる介入の遅れ,リモデリングの存在,アレルギーの残存,遺伝的要因,さらには環境要因が挙られるため,これらを視野に入れた総合的な対応が寛解率向上と再発率低下に結びつくものと思われる.しかし,この分野におけるエビデンスアは少なく,長期にわたる前方視的な検討が必要である.
原著
  • 阿部 法子, 勝沼 俊雄, 赤司 賢一, 富川 盛光, 柴田 淳, 山田 節, 衞藤 義勝
    2007 年21 巻3 号 p. 281-288
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2008/01/29
    ジャーナル 認証あり
    気管支喘息における最も主要な病態は気道の慢性炎症であり,小児も同様と考えられている.従って吸入ステロイドによる長期管理は,持続型の喘息児において中心的位置づけを担うに至った.今回我々は小児にて懸念される代表的な全身性副作用である身長抑制に関して,乳幼児を対象とし後方視的に検討を行った.対象は6歳未満の乳幼児(平均3歳11ヶ月)で,初の吸入ステロイドとしてプロピオン酸フルチカゾンを開始し,少なくとも6ヶ月間継続使用した64人の喘息患者である.診療記録,母子手帳,通園先の健康手帳をもとに計測値を集計し,フルチカゾンの使用量,使用期間と成長との関連性を検討した.平均投与量は109.5μg/日,最長使用期間は48ヶ月であった.有効性に関しては吸入ステロイドにより,有意な症状の改善が認められた.ステロイドの使用量・使用期間毎の検討で,有意な成長抑制は認められなかった.フルチカゾン吸入は乳幼児においても安全に長期使用することが可能である.ただし実際の診療においては症例毎に成長をモニターすべきと考える.
  • -20年後の予後調査-
    井上 和子, 横内 裕佳子, 斉藤 恵美子, 原 光彦, 山本 康仁, 犬尾 千聡
    2007 年21 巻3 号 p. 289-296
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2008/01/29
    ジャーナル 認証あり
    1980年から1984年までの5年間に広尾病院小児科に喘息発作で入院した小児を対象として約20年後の予後調査を行った.2001年11月に239名にアンケートを送付しその内101名から回答を得られた(42.3%).その結果,有症率は初診時の重症度で異なり,軽症90.6%,中等症48.2%,重症18.2%,全体での寛解率は50.5%であった.対象者の基本因子(初発年齢,現在年齢性別,重症度,入院回数,喘息のタイプ,IgE 値)と予後との関係をロジィスティック回帰分析を用いて分析した.その結果,初診時の重症度がもっとも強く関連していた.有症者の43.7%(重症者6/18,中等症者15/30)が非発作時の治療を行っていなかった事から,今後初診時に重症と診断された者には,患者本人と保護者に対し喘息発作の治療のみならず,喘息の病態,予防的長期管理の重要性など患者教育を行う必要があると考えられた.
  • 川田 康介, 高増 哲也, 相川 博之, 栗原 和幸
    2007 年21 巻3 号 p. 297-304
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2008/01/29
    ジャーナル 認証あり
    2002年,小児気管支喘息の予後と予後に影響する因子を検討するために,1982~1984年に神奈川県立こども医療センターアレルギー科を初診した136名を対象にアンケート調査を行った.初診時年齢は6.9±3.8歳(平均±標準偏差),アンケート調査時の平均年齢は25.7±3.9歳,2年寛解率は54.1%(男56.8%,女48.9%)であった.2年寛解群と非寛解群を比較した場合,初診時末梢血好酸球数,初診時血清総 IgE 値,初診時重症度,男性のアセチルコリン吸入閾値,女性の思春期 V50 で統計学的有意差が認められた.治療では,ベクロメサゾン(BDP)吸入,クロモグリク酸ナトリウム(DSCG)吸入,テオフィリン定時内服いずれも治療群の寛解率が低い結果となったが,主に重症群に対して治療が行われたためと思われた.また,2年以上の寛解後再発があったのは16.7%,この内さらに寛解したのは21.4%であった.喫煙率は33.6%であり,喫煙の習慣については寛解と有意な関係はなかった.
  • -富山県における平成13年度と18年度調査の比較-
    足立 陽子, 中林 玄一, 淵澤 竜也, 岡部 美恵, 板澤 寿子, 高尾 幹, 山元 純子, 尾上 洋一, 足立 雄一, 村上 巧啓, 宮 ...
    2007 年21 巻3 号 p. 305-310
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2008/01/29
    ジャーナル 認証あり
    【背景】保育施設における食物アレルギー児に対する食物除去には,いくつかの問題点が指摘されている.一方,食物アレルギーに対する社会の認識は高まりつつある.
    【方法】平成18年に富山県内の439の全保育施設にアンケート調査用紙を郵送し,回答の得られた229施設(回答率52.2%)のアンケート結果を解析し,平成13年度の結果と比較した.
    【結果】食物除去の実施経験施設は70.5%から86.9%に増加し,食物除去を受けている園児の割合も1.24%から1.97%へと増加していた.医師の文書による指導を必要とする施設が13.5%から58.3%に増加していた.また,誤食時の対応を予め医師や保護者に確認していた施設も22.7%から79.9%に増加していた.一方,73.4%の施設でアドレナリン自己注射キットを知らなかった.
    【考案】保育施設における食物アレルギー児への対応は5年間で大きく改善されたが,誤食時の対応など未だ不十分な点もあり,保育施設に特化したガイドラインの作成が望まれる.
  • 島 正之, 前 寛, 小田嶋 博, 竹内 透, 宮城 慎平, 向山 徳子
    2007 年21 巻3 号 p. 311-318
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2008/01/29
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    これまで3歳児を対象に用いられてきた喘息に関する質問票によって,2歳未満の小児の喘息症状を評価することの妥当性について検討した.小児科を受診した2歳未満の小児64名を対象として,保護者に質問票に記入してもらい,医師による「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005」に準拠した乳児喘息の診断との関連性を検討した.医師により乳児喘息と診断されたものは,保護者の回答でも喘鳴が高率であったが,喘息以外のものでも約半数には喘鳴の既往があった.呼吸困難が3回以上あったと保護者が回答したものは,乳児喘息群では14.3%,その他の群ではいなかった.呼吸困難が2回以上のものはそれぞれ17.9%,2.8%であった.呼吸困難が3回以上あったものを「喘息」とすると,医師の診断に対する感度は14.3%,特異度は100%であった.2回以上のものとすると,感度は17.9%に上昇し,特異度は97.2%と十分に高かった.以上より,2歳未満の小児でも,2回以上の呼吸困難は喘息の特徴的な症状であると考えられた.
小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005をどう読むか
食物アレルギー診療ガイドライン2005解説
喘息死委員会レポート2006
  • 末廣 豊, 坂本 龍雄, 赤坂 徹, 西間 三馨, 鳥居 新平, 三河 春樹, 松井 猛彦
    2007 年21 巻3 号 p. 331-344
    発行日: 2007/08/01
    公開日: 2008/01/29
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    2006年10月までに喘息死亡例として登録された194例について集計した.2003年に追加1名と,2005年に1名の登録があった.男女比は1997年以前97/62(1.6:1),1998年以降22/13(1.7:1)で,大きな変化はみられなかった.不明・未記入を除いて死亡前1年間の重症度をみると1997年以前は軽症26%,中等症30%,重症44%,1998年以降は軽症30%,中等症25%,重症45%で,重症度に大きな変化は見られなかった.死亡年齢と死亡場所の関係をみると自施設で死亡した例は0~6歳72%,7~12歳54%,13歳以上では39%と加齢に伴い減少傾向が認められた.逆に自施設以外の場所での死亡例が年長になるほど増加する傾向にあり,学校内あるいは養護学校,下校時など学校が関与する症例が認められた.重症発作に関連する既往歴について,1997年以前に比べ1998年以降は発作入院歴,意識障害,イソプロテレノール使用歴に関してやや減少傾向があるが,挿管歴は1997年以前は7%に対して1998年以降は17%と増加傾向がみられた.喘息死に関与したと思われる要因については,予期せぬ急激な悪化71%が最も多く,次いで適切な受診時期の遅れ65%であり,次いで発作程度の患者46%や家族47%の判断の誤りで,1997年以前も1998年以降も大きな変動は見られないが,モーターネブライザー吸入過度依存が1997年以前に11%であったが,1998年以降3%と減少傾向がみられた.死亡前1年間の薬物治療内容はキサンチン製剤投与が最も多かったが,1998年以降は減少する傾向がみられ,ステロイド吸入は増加傾向,β2刺激薬貼付剤の使用が新たに認められるようになった.β2刺激薬吸入過度依存例については,1997年以前と1998年以降で,全体として大きな差は認められなくなってきた.死亡月については,10月,11月,12月,1月と6月,8月に死亡が多く,2月,3月,4月,5月と7月,9月に死亡が少ない傾向が見られた.死亡時刻については2時,3時,7時,15時の順に多い傾向があったが,どこかの時間帯に集中するという傾向は認められなかった.
日韓招待講演報告
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