日本小児アレルギー学会誌
Online ISSN : 1882-2738
Print ISSN : 0914-2649
ISSN-L : 0914-2649
27 巻, 1 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
第49回日本小児アレルギー学会会長講演
シンポジウム1 分かりやすい食物アレルギー診療の実際
  • 柴田 瑠美子, 向山 徳子
    2013 年27 巻1 号 p. 13-14
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/11
    ジャーナル 認証あり
  • 手島 玲子
    2013 年27 巻1 号 p. 15-19
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/11
    ジャーナル 認証あり
    本総説では,食物アレルゲンの話として,(1)平成13年4月よりアレルギー物質を含む食品に関する表示制度が始まったアレルゲンを含む食品の原材料表示制度について,(2)主に2タイプに分類される食品中のアレルゲンの性質について,(3)化粧品に含まれていた小麦加水分解物等による経口以外の経路からの食物アレルゲンによるアレルギー症例について,の順番でその概要について説明を行った.
  • 小俣 貴嗣, 宿谷 明紀, 海老澤 元宏
    2013 年27 巻1 号 p. 20-27
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/11
    ジャーナル 認証あり
    食物アレルギー(FA)の確定診断は,食物経口負荷試験(負荷試験)がgold standardである.また抗原特異的IgE抗体価の評価は抗原や臨床型によってその解釈が異なるが,一部の抗原ではプロバビリティーカーブが負荷試験適応の指標として有用である.臨床型別に診断法を概説する.
    1. FAの関与する乳児アトピー性皮膚炎
    詳細な問診聴取後,スキンケア,ステロイド軟膏塗布および環境整備を指導し,改善が乏しい例,増悪寛解を繰り返す例ではFAの関与を考え,IgE抗体検査や食物日誌により原因抗原の検索を行う.
    2. 即時型FA
    問診により疑われた食物に対するIgE抗体の検索を行う.ここで注意すべきはIgE抗体陽性でも当該抗原の曝露で症状を起こさない例があることである.IgE抗体のみでは診断確定はできない.
    3. 特殊型(食物依存性運動誘発アナフィラキシー,口腔アレルギー症候群)
    食物依存性運動誘発アナフィラキシーでは誘発試験(食物負荷,運動負荷,食物+運動負荷),口腔アレルギー症候群では原因抗原そのものを用いたprick prick testが有用とされている.
  • 高増 哲也
    2013 年27 巻1 号 p. 28-30
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/11
    ジャーナル 認証あり
  • 高松 伸枝, 近藤 康人, 柘植 郁哉, 宇理須 厚雄
    2013 年27 巻1 号 p. 31-36
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/11
    ジャーナル 認証あり
    食物アレルギーの栄養食事指導は,患児の食生活の背景を考慮した上で,医師の指示に基づいた指導計画とする.「食物アレルギーの栄養指導の手引き2011」を参考に,原因食物の必要最小限の除去にとどめ,症状が誘発されない範囲での摂取とする.また患児の成長を考慮し,食物選択や調理を工夫して栄養素バランスのよい豊かな食事づくりをめざす.耐性獲得や経口免疫療法による除去の変更や解除時には,加工食品などを利用して円滑に進める.重症児では治療中に困難を生じることが多く,継続的な支援が必要である.
    社会的支援として保育・教育施設での対応給食が充実しつつあるが,少人数で多種の対応食が作成されている.毎日安全で確実な給食業務を行うために,医療機関からの情報提供(学校生活管理指導表・診断書など)と家庭での摂取状況の把握は不可欠で,地域の連携・協力が求められる.
  • 今井 孝成
    2013 年27 巻1 号 p. 37-40
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/11
    ジャーナル 認証あり
シンポジウム5 みんなに伝えよう!こどものアレルギー
シンポジウム6 新生児乳児消化管アレルギー
  • 板橋 家頭夫, 谷内江 昭宏
    2013 年27 巻1 号 p. 65-66
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/11
    ジャーナル 認証あり
  • 木村 光明
    2013 年27 巻1 号 p. 67-72
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/11
    ジャーナル 認証あり
    新生児・乳児消化管アレルギーは,細胞依存性アレルギーの機序により,主に消化管症状を呈する食物アレルギーの一型である.症状は血便や嘔吐,下痢などであり,さまざまな組み合わせで各患者に発生する.診断には,(1)原因食物摂取後に発症すること,(2)原因食物中止後症状は消失し,かつアレルゲン除去食による治療開始後は症状再燃をみないこと,(3)原因食物の負荷試験が陽性であること,の3条件を満たす必要がある.診断確定のためには負荷試験が不可欠であり,無用な食物制限を避けるためにも可能な限り実施することが望ましい.牛乳蛋白が原因の患者では,牛乳蛋白に対するアレルゲン特異的リンパ球刺激試験(ALST)の陽性率が高く,診断的に有用である.IgE抗体は通常陰性である.
  • 宮沢 篤生, 今井 孝成, 板橋 家頭夫
    2013 年27 巻1 号 p. 73-78
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/11
    ジャーナル 認証あり
    新生児・乳児消化管アレルギーは,近年の症例集積研究による病態解析や診断指針の標準化により,小児・新生児医療従事者間で広く認識されるようになった.しかしながら,新生児医療の現場においては消化管アレルギーが疑われる新生児に対する診断を目的とした経口負荷試験は敬遠される傾向にあり,現状では原因と考えられるミルクの中止によって症状が消失したこと(=除去試験陽性)や食物抗原特異的リンパ球刺激試験や便粘液中好酸球など補助診断検査の結果だけを診断根拠としていることも多い.本稿では厚生労働科学研究班による全国調査ならびに新生児科医を対象とした意識調査の結果をもとに,新生児医療の現場における消化管アレルギーの診療の現状について考察する.
  • 大塚 宜一
    2013 年27 巻1 号 p. 79-85
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/11
    ジャーナル 認証あり
    新生児期に認められる粘液便,下痢,下血,嘔吐などの消化器症状に対し,ミルクアレルギーの関与が指摘され新生児・乳児消化管アレルギー(Food protein-induced enterocolitis syndrome;FPIES)や新生児ミルクアレルギーなどと呼ばれている.これらは,(1)嘔吐と下血を呈するもの(食道大腸炎型),(2)嘔吐のみ呈するもの(食道炎型),(3)体重増加不良を認めるもの(腸症型),(4)下血のみ呈するもの(直腸大腸炎型)に大別される.また,その多くは,(1)早期産児や低出生体重児に多い,(2)末梢血白血球数および好酸球数の増加,血清eosinophil cationic protein値の上昇,(3)ミルク由来の蛋白抗原に対するリンパ球刺激反応が陽性,(4)大腸内視鏡検査でリンパ濾胞増殖像を呈する,(5)病理所見として著明な好酸球浸潤を伴う,(6)ミルクアレルギーに準じた治療で改善する,(7)一過性で比較的予後は良好,などの特徴を有する.
    新生児期は,特に消化機能や腸管粘膜のバリアー機能が未熟で抗原が侵入しやすい.また,新生児期に多く認められる好酸球血症は,これらの細胞が有するproteinaseにより粘膜障害を生じやすい.Proteinaseにより粘膜上皮細胞の微絨毛が障害されると,peptidaseなどの消化酵素が欠乏し食物不耐症を来す.従って新生児期のアレルギーの診断には,抗原特異性を確認することが重要で,ミルクでは下血するが加水分解乳もしくは糖水では下血しないなどの所見を確認する.抗原特異的な反応でなければ新生児一過性好酸球性腸炎(Neonatal transient eosinophilic colitis;NTEC)を含む好酸球性胃腸炎の可能性も考慮する.
    下血が主症状である直腸大腸炎型では,好中球に加え好酸球などの炎症細胞浸潤を粘膜固有層や粘膜上皮層内に認める.さらに,好酸球による上皮細胞の破壊像,陰窩炎,杯細胞の過形成などを来し,好酸球性腸炎の像を呈する.特に,新生児期のものほど,好酸球浸潤は著明である.
    これらの粘膜を用い炎症性シグナル分子の発現をmicroarrayで網羅的に検討したところCCL11(eotaxin-1)やCXCL-13の発現亢進を認めた.特に好酸球浸潤と関連の深いCCL11の発現は新生児期に,リンパ濾胞増殖因子であるCXCL13の発現は乳児期により強く発現しており,新生児期のより重篤な好酸球浸潤と乳児期のより強いリンパ濾胞増殖性変化を反映していると考える.一方,好酸球性食道炎で求められるようなIL-5, IL-13, eotaxin-3等の発現亢進は認められなかった.いずれも好酸球性の炎症性病変であるが,病変の主座により,それぞれの成因には違いがあるようである.
  • 中山 佳子
    2013 年27 巻1 号 p. 86-92
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/11
    ジャーナル 認証あり
    新生児・乳児消化管アレルギーは多彩な症状を呈し,その鑑別診断は多岐に渡る.小児消化器専門外来を血便の精査目的に受診した新生児・乳児における大腸内視鏡検査と病理組織検査による消化管アレルギーの診断と治療経過を後方視的に検討した.
    対象21例中76%(16例;日齢15~8ヶ月)が,病理組織検査で好酸球>20/hpfの浸潤を認め消化管アレルギーによるproctocolitis疑いと診断された.内視鏡所見は,リンパ濾胞過形成ないし斑状発赤を,主に直腸から左側結腸に認めた.牛乳抗原などの除去療法を行い,全例で症状は改善した.
    血便を伴う新生児・乳児消化管アレルギーの診断において,内視鏡検査と病理組織検査は消化管アレルギー以外の消化管疾患を確実に鑑別でき,診断上の有用性は高いと考えられた.今後,病理組織の好酸球浸潤の基準,食物負荷試験,ALST,パッチテストなどとの比較検討が必要である.
原著
  • 山岡 明子, 林 千代, 渡邊 庸平, 園部 まり子, 長岡 徹, 三田 久美, 柳井 智和, 三浦 克志
    2013 年27 巻1 号 p. 93-106
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/11
    ジャーナル 認証あり
    【目的】沿岸部在住のアレルギー児が東日本大震災によってどのような影響を受けたかを調査し,今後の対応を検討することを目的とした.
    【対象と方法】対象は,岩手県,宮城県,福島県の沿岸部在住のアレルギー児900名の保護者.各地域の行政機関を訪問してアンケート調査を依頼し同意が得られた保護者にのみ回答をしてもらい,返信用封筒にて回収した.
    【結果】気管支喘息では,気管支喘息発作の頻度は内陸部を対象にした報告より多く,医療機関へ受診できなかった例もみられた.食物アレルギーではアレルギー用食品の入手が困難であった例が多く,また誤食によりアナフィラキシーを生じた例もみられた.アトピー性皮膚炎では入浴やシャワーができずに湿疹が悪化した例が多かった.
    【考案】津波の影響を受けた沿岸部在住のアレルギー児は大変な状況であったと考えらえた.今後の対策としては,各個人での医薬品やアレルギー用食品などの備蓄は重要であるが,津波で影響を受けると考えられる地域では,公的機関での備蓄や緊急時の応急的な処置が受けられるような体制作りが必要と思われた.
  • 吉原 重美, 藤澤 隆夫, 栗原 和幸, 宇理須 厚雄, 濱崎 雄平, 西牟田 敏之, 西間 三馨, 森川 昭廣, 近藤 直実
    2013 年27 巻1 号 p. 107-115
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/11
    ジャーナル 認証あり
    吸入ステロイド(ベクロメタゾンまたはフルチカゾン100 μg/日)により効果不十分な軽症~中等症持続型喘息患児(6~15歳)を対象として,長時間作用型β2刺激薬であるツロブテロール貼付薬(1または2 mg/日)を12週間併用投与し(併用群17例),追加治療薬としての有用性を吸入ステロイド倍量投与(増量群13例)と比較検討した.ツロブテロール貼付薬併用群では,起床時%PEFが観察期間に比べて1~12週後まで有意に改善し,7週目には吸入ステロイド増量群との間に有意差を認めた.また就寝前%PEF,喘息症状およびQOLに関しても,有意な群間差は認めなかったものの,観察期間に比べ改善がみられた.ツロブテロール貼付薬追加投与の安全性は高く,副作用は2例において皮膚のかゆみ,かぶれが発現したのみであった.ツロブテロール貼付薬は,わが国の「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン(JPGL)2012」において中等症持続型以上の喘息患児に対する追加治療として推奨されているが,本結果から,軽症持続型を含めた喘息患児においても追加治療の選択肢となる可能性が示唆された.
疫学委員会報告
feedback
Top