日本小児アレルギー学会誌
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35 巻, 3 号
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原著
  • 伴 尚子, 平田 美里, 下村 瑞代, 濵野 翔, 西間 大〓, 松﨑 寛司, 手塚 純一郎
    2021 年35 巻3 号 p. 199-205
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
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    食物アレルギーの栄養食事指導は食物経口負荷試験に基づき,「必要最小限の原因食物の除去」を原則とし,食べられる範囲の指導を行うことが推奨されている.しかしアレルギー食品を安全に摂取するための指導法について検討した報告は少ない.

    今回,食物経口負荷試験で症状が誘発されないと確認された量(以下,指示量と略す)以下のアレルギー食品の摂取でアナフィラキシー(anaphylaxis,以下Anと略す)症状を誘発した症例を診療録から後方視的に見直し,「食物経口負荷試験に基づいた栄養食事指導」において自宅での摂取時の注意点について検討した.

    対象は2017年1月~2019年2月に当院にAnの診断で入院し,指示量以下のアレルギー食品の摂取で症状が誘発された8人.原因食品は牛乳7人,鶏卵1人だった.誘発要因として継続摂取ができていないことや,摂取時の体調,摂取後の運動などが考えられた.半数が指示食品を好まず指示通りの摂取ができていなかった.安全な摂取継続のためには,定期的なフォローが必要である.

  • ~東京都多摩地区での後方視的検討~
    中川 愛, 遠藤 朝則, 鈴木 亮平, 相良 長俊, 青田 明子, 赤司 賢一, 勝沼 俊雄
    2021 年35 巻3 号 p. 206-213
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル 認証あり

    【目的】小児におけるハンノキ花粉抗原感作と口腔アレルギー症候群(OAS)の関係性を明らかにする.

    【方法】2018年4月1日~2020年3月31日に当科にてハンノキおよびスギ特異的IgE抗体価を測定した15歳以下の小児を対象とし,OAS症状に関して後方視的な検討を行った.また上記期間のハンノキ花粉飛散時期におけるハンノキ花粉飛散量を測定した.

    【結果】対象490人のうち,ハンノキ特異的IgE抗体価陽性者は165人(34%)であった.OAS群は41人(8.3%),非OAS群257人(52%),OAS不明が192人(39%)であり,OAS群のハンノキ特異的IgE抗体価は非OAS群に比べ有意に高かった.1シーズンあたりのハンノキ花粉平均飛散量(57個/cm3)は,スギ花粉(3,667個/cm3)に比べ少なかった.

    【結論】都内のハンノキ花粉飛散量は非常に少なかったにもかかわらず,小児の34%で抗体価が陽性であり,ハンノキ特異的IgE抗体価の上昇とともにOAS有症者の割合が増加した.

  • 益海 大樹, 竹村 豊, 有馬 智之, 山崎 晃嗣, 長井 恵, 井上 徳浩, 杉本 圭相
    2021 年35 巻3 号 p. 214-219
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
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    【緒言】低出生体重児用ミルク:FM-LBWは,栄養価に優れるため,主に新生児集中治療室で使用される.

    【症例】生後4か月の男児.胎児期から徐脈を指摘され,出産予定日の2日前から胎動減少と胎児水腫を認め,緊急帝王切開で出生となった.出生後,徐脈が原因で新生児仮死となり,新生児集中治療室に入室した.日齢10に全身状態の改善に伴いミルクを開始した.日齢19に発熱を認め,血液培養検査から敗血症と診断し,抗菌薬治療を開始した.日齢32にFM-LBWに変更したところ,発熱,および腹部膨満と嘔吐が出現した.感染症を疑い抗菌薬を継続したが,反応は乏しく,末梢血好酸球の著明な上昇(25.2%)を認めた.乳児消化管アレルギーを疑い,試験的にFM-LBWを除去し,母乳とミルクへ変更したところ,解熱と消化器症状の改善を認め,末梢血好酸球は低下した.

    【考察】本症例の症状に関する明確な機序は不明であるが,FM-LBWに含有する乳タンパク量が多かったことが,症状誘発の原因として考えられた.

  • ―227例の後方視的検討―
    土井 政明, 松原 祥高, 岩越 奈由, 高木 久美子, 佐々木 彩, 古市 康子
    2021 年35 巻3 号 p. 220-227
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
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    鶏卵の抗原性は加熱で大きく変化する.今回,弱加熱全卵を用いた食物経口負荷試験(oral food challenge,OFC)における結果と各背景因子との関連性,安全性,および鶏卵特異的IgEの検査妥当性について後方視的に検討した.

    弱加熱全卵OFC 227例(陽性47例)において,陽性群では有意に月齢とアレルギー性鼻炎合併率が高く(陽性45か月,21.3%;陰性31.5か月,5.0%),総immunoglobulin E(IgE)および卵白,卵黄,オボムコイド特異的IgEが高かった(陽性302IU/mL,7.98,1.29,4.86UA/mL,陰性131IU/mL,3.42,0.64,1.08UA/mL).誘発症状のグレードは中央値で2と比較的低かった.各鶏卵特異的IgEを受信者操作特性解析したところ,それらの陰性適中率が高かった.

    鶏卵除去解除に弱加熱全卵OFCは有用である.弱加熱全卵OFCは比較的安全であるものの,年長児,アレルギー性鼻炎合併例,および鶏卵特異的IgEが高い症例に実施する際は,誘発症状の出現に注意が必要である.鶏卵特異的IgEが低値であれば除去解除できる可能性が高いと考えられた.

  • 髙木 俊敬, 前田 麻由, 山下 恒聖, 國上 千紘, 岡田 祐樹, 中村 俊紀, 神谷 太郎, 今井 孝成, 水野 克己
    2021 年35 巻3 号 p. 228-232
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル 認証あり

    症例は5か月の男児.ゴマ摂取歴はなく両親にゴマを積極的に摂取する嗜好はない.生後1か月から脂漏性湿疹を顔面に認め,生後4か月には全身に皮疹が拡大した.保護者にステロイド忌避があり自己判断で市販のゴマ油含有外用薬を日常的に広範囲に塗布していた.生後5か月に湿疹増悪と活気低下,体重減少を認め当院に入院した.入院時血液検査で,血清総IgE値,ゴマ特異的IgE抗体価の高値を認めた.ゴマ油含有外用薬を中止,適切な治療にて皮疹は軽快した.乳児期はゴマを完全除去し,1歳3か月時にゴマ0.3gの食物経口負荷試験を実施した.結果,全身に膨疹と掻痒を速やかに認め,ゴマアレルギーと診断確定した.乳児早期からゴマ油含有外用薬を湿疹部に塗布したことにより経皮感作が誘導され即時型アレルギーを発症した可能性がある.皮膚のバリア機能が障害されている患者において食物成分を含む外用を行う際には食品成分に対して経皮感作が起こりうる可能性を考慮し,医薬品をはじめ一般用医薬品や医薬部外品に含まれる食品成分に注意する必要がある.

総説
  • 加藤 則人
    2021 年35 巻3 号 p. 233-238
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
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    近年,アトピー性皮膚炎の病態に関する研究が飛躍的な進歩を遂げ,その研究成果をもとに,新しい作用機序を持つアトピー性皮膚炎の治療法の開発が盛んである.Interleukin-4,-13のシグナルを阻害するデュピルマブや,ヤヌスキナーゼ阻害外用薬のデルゴシチニブなど,すでに国内の臨床現場で成人アトピー性皮膚炎を対象に承認されている薬剤も含め,アレルギー炎症に重要な役割を有する2型サイトカインに対するモノクローナル抗体,ヤヌスキナーゼ阻害薬,フォスフォジエステラーゼ4阻害薬の中から,おもなものについて紹介した.これらの一部については,小児を対象にした臨床研究も進んでいるようである.アトピー性皮膚炎を対象にした新たな治療薬の開発は盛んで,今後もさらに多くの薬剤が承認されると期待される.アトピー性皮膚炎では,長期の寛解維持が重要であり,効果とともに安全性に関する長期データを注視して行く必要がある.

  • 遠隔医療のための人工知能を搭載した喘鳴自動判別機器
    土生川 千珠
    2021 年35 巻3 号 p. 239-247
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
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    COVID-19によるパンデミックは小児アレルギー疾患の診療に影響を及ぼし,遠隔医療の必要性がより重要となった.遠隔医療では,医師が直接聴診することはできないため,迅速かつ正確に喘鳴を検出できる在宅医療機器が必須であるが,現在は皆無である.

    私達は2003年から気管支喘息の肺音解析を行い,在宅用喘鳴自動検出器の開発に成功した.ハンディータイプのデバイスで,マイクを右前胸部に接着させ,安静呼吸で30秒間録音する.喘鳴が記録されると光が点灯する.喘鳴音の定義に基づいたアルゴリズムを搭載し,声,心音や環境雑音を高精度にノイズキャンセリングできる.本アルゴリズムは,日本,米国,中国で検証され高精度の結果を得た.2020年,イギリスとEU 28か国で医療機器承認後,市販している.現在は,米国と中国で薬事申請中であり,日本のPMDAへも申請準備中である.本デバイスを遠隔医療に応用することで,乳幼児や思春期の今まで見過ごされた発作を検出することができ,喘息の長期予後の改善に大きく貢献できることを願う.

ワーキンググループ報告
  • 是松 聖悟, 板澤 寿子, 手塚 純一郎, 吉川 知伸, 吉田 幸一, 平井 康太, 加藤 政彦, 長尾 みづほ, 藤澤 隆夫
    2021 年35 巻3 号 p. 248-255
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
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    目的:COVID-19流行期の小児喘息への影響を調査した.

    対象と方法:保護者を対象に流行前後の喘息の状況や風邪の頻度などについてインターネット調査した.

    結果:820人から回答を得た.COVID-19罹患児はなかった.流行期の喘息の状態は,例年の同時期より「良かった」,「変わらなかった」で87.2%を占めたが「悪かった」が8.5%にみられた.風邪をひく頻度は例年の同時期より「減った」,「変わらなかった」で93.3%を占めたが「増えた」が4.3%あった.多変量解析で喘息悪化のオッズ比は流行前1年間の週1回以上の喘鳴で有意に高く(オッズ比5.88,95%信頼区間2.54-13.60),長期管理薬使用で有意に低値であった(オッズ比0.45,95%信頼区間0.26-0.77).風邪をひく頻度の増加は受動喫煙,流行前1年間の週1回以上の喘鳴で有意に高かった.

    結論:COVID-19流行期の喘息悪化は少なかったが,同時期の喘息悪化と風邪をひく頻度の増加に関連する因子を見いだした.

ガイドライン解説:小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020
  • 平井 康太, 望月 博之
    2021 年35 巻3 号 p. 256-261
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
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    小児気管支喘息治療・管理ガイドライン(Japanese Pediatric Guideline for the Treatment and Management of Asthma:JPGL)2017に引き続き,「病態評価のための検査法」として,小児気管支喘息の診断と治療に必要な客観的な検査について説明している.喘息の基本的な免疫異常であるTh2型反応の評価,すなわち,血清総IgE値や末梢血好酸球数,アレルゲン特異的IgE抗体やプリックテストから,喘息の診断や重症度の評価,治療効果の判定に重要である呼吸機能検査[スパイロメトリー,強制オシレーション法(forced oscillation technique:FOT),気道過敏性検査を含む]や呼気NO測定について解説した.これらの検査の中で,スパイロメトリーが最も重要であるため,原理から測定結果の解釈,小児患者での実施上の留意点について解説を加えた.さらに,いくつかの新しい評価法についての解説も行っている.

  • 宮地 裕美子, 大矢 幸弘
    2021 年35 巻3 号 p. 262-270
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル 認証あり

    JPGL2020の第6章は「患者教育,吸入指導」とされ,患者教育の重要性を考慮し,第7章「長期管理に関する薬物療法」第8章「急性増悪(発作)への対応」の前に章立てされている.また喘息治療・管理において重要な吸入指導と統合し,吸入指導における患者教育についても述べている.JPGL2020ではより視覚的にもわかりやすく図表の変更を行った.

    気管支喘息の治療は医師が適切な処方や指示を出しても患者側が受け入れて実行しなければ期待通りの効果は得られない.そこに患者教育の果たす重要な役割がある.

    ただ,患者教育と言っても,医療従事者が喘息の知識を患者に与えるだけの教育は効果が低く,患者や親などの保護者が喘息治療を主体的に自己管理できるように導かなくてはならない.そのためには,患者・家族とのパートナーシップを確立し,治療目標を共有してアドヒアランスの向上を図るような患者教育が必要となる.

    本稿では第6章の患者教育・吸入指導の概要を改訂点など含め解説する.

  • 八木 久子, 伊藤 靖典, 滝沢 琢己
    2021 年35 巻3 号 p. 271-278
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル 認証あり

    小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020「第7章 長期管理に関する薬物療法」では,JPGL2017の「長期管理に関する薬物療法プラン」の表に,新たに小児適用となったホルモテロールフマル酸塩水和物・フルチカゾンプロピオン酸エステル配合剤,ならびに適用年齢が6歳以上となったメポリズマブと12歳以上となったデュピルマブを反映させ,全治療ステップにおいて増悪因子への対応,患者教育・パートナーシップを考慮するように項目を追加し,「長期管理プラン」と表題を変更した.また,6歳以上の治療ステップ4の追加治療の最上位に生物学的製剤を位置づけ,同製剤の適正使用を促すために,対象年齢や用量・用法,使用に際しての評価項目やチェックリストを別表に提示した.また,難治性喘息を「治療ステップ4の基本治療を行ってもコントロール状態が得られない喘息から,診断の誤りを除外したもの」と,真の重症喘息を「難治性喘息に対して増悪因子の対応を十分に行ってもコントロールが維持できない喘息」と定義した.

食物アレルギー委員会報告
  • 北沢 博, 山出 晶子, 山本 貴和子, 二村 昌樹, 岡藤 郁夫, 山田 佳之, 海老澤 元宏
    2021 年35 巻3 号 p. 279-303
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル 認証あり

    背景:IgE依存性鶏卵アレルギーに対する経口免疫療法は,その効果,安全性についてコンセンサスが得られていない.

    目的:IgE依存性鶏卵アレルギーに対する経口免疫療法の有用性,安全性についてシステマティックレビューにて評価すること.

    方法:IgE依存性鶏卵アレルギー患者を対象とし,鶏卵の経口免疫療法と鶏卵完全除去を比較した無作為化比較試験について検討し,経口免疫療法の有用性と安全性についてメタ解析を行った.

    結果:12の研究においてシステマティックレビューを行い,経口免疫療法群で鶏卵摂取可能量の増加した人数が完全除去群より有意に高く,有用性が示された.一方で,経口免疫療法群で有意に有害事象の頻度は高かった.

    結論:IgE依存性鶏卵アレルギーに対して経口免疫療法の有用性が期待できる一方で有害事象の危険性も完全除去より高く,治療の選択肢の一つとして検討する際は安全性に十分配慮した上で行う必要がある.今後,経口免疫療法の実施プロトコールやその効果,安全性について更なる検討が必要である.

  • 川本 典生, 房安 直子, 佐藤 幸一郎, 三浦 太郎, 鈴木 修一, 中村 俊紀, 山本 貴和子, 二村 昌樹, 岡藤 郁夫, 山田 佳之 ...
    2021 年35 巻3 号 p. 304-318
    発行日: 2021/08/20
    公開日: 2021/08/20
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    IgE依存性牛乳アレルギーにおける経口免疫療法(OIT)が牛乳の完全除去の継続よりも有用かどうか,システマティックレビュー(SR)により検討した.検索期間が2012年10月1日までの先行のSRから無作為化比較試験(RCT)を抽出し,それ以後2019年3月までのRCTをCENTRAL,MEDLINE,Embase,医学中央雑誌から追加検索した.既報のSRから5報のRCTを選択し,4報のRCTを追加で選択した.摂取量の増加した患者数,日常摂取量(200mL)への脱感作を得られた患者数ともに,牛乳OITの有用性が示された.sustained unresponsivenessを評価した論文はなかった.重篤有害事象の記載はなかったものの,有害事象とアドレナリンの使用はOIT群で有意に多かった.免疫学的変化の評価項目はばらつきが多く,メタ解析できなかった.方法や対象が一定でなく,安全性については注意が必要だが,OITは症状誘発閾値上昇や日常摂取量の脱感作の点で完全除去の継続と比べて有用と考えられた.

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