日本小児アレルギー学会誌
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27 巻, 4 号
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総説
  • 玉利 真由美, 広田 朝光
    2013 年27 巻4 号 p. 539-547
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/11
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    気管支喘息は環境要因と遺伝要因とが複雑に関係して引き起こされる.この遺伝要因を同定するため,多くの遺伝解析が行われてきた.ゲノムワイド症例対照関連解析(genome-wide association study:GWAS)は全ゲノムにわたり頻度の高い遺伝子多型を対象とした,仮説を設定しないバイアスのかからない疾患関連遺伝子探索法である.十分な統計学的検出力を持つ網羅的なGWASにより,小児喘息の関連領域が明らかとなってきている.その結果,上皮傷害から自然-獲得免疫,そして気道炎症の始動に関わる遺伝子群の重要性が示されている.また複数のアレルギー疾患に共通する関連領域が存在することも明らかとなり,これらはアレルギーマーチのメカニズムの解明に役立つ可能性がある.同定された関連遺伝子群については今後,詳細な機能解析が必要であるが,GWASの知見は,ヒトのアレルギー疾患についての我々の理解を深めるものである.今後,よりよい治療法や予防法の確立のため,遺伝学,免疫学,疫学および臨床医学を統合した領域横断的な研究を進めていく必要がある.
原著
  • 清益 功浩, 河原 信吾, 柴田 優, 南部 光彦, 新家 興, 村上 義樹
    2013 年27 巻4 号 p. 548-556
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/11
    ジャーナル 認証あり
    我々は,JPACの点数とJPGL2012のコントロール状態の評価との比較検討を行った.共同演者の施設にて2012年5月1日~6月30日の期間で,定期受診した気管支喘息児または保護者がJPACを記載し,医師がJPGL2012のコントロール状態を評価した.回答者数は95人で有効回答者数は87人であった.年齢の中央値は5歳(0歳~15歳)であった.JPACの結果は,15点25%,12~14点52%,11点以下23%を示した.長期管理薬は98%が使用し,そのうち,吸入ステロイド薬は47%,抗ロイコトリエン薬は87%で投与されていた.みかけ上の重症度は,間欠型53%,軽症持続型39%,中等症持続型8%であった.治療を考慮した重症度は,間欠型26%,軽症持続型35%,中等症持続型24%,重症持続型13%,不明2%であった.コントロール状態の評価の比較的良好群,不良群では,良好群と比較して,JPACの点数は有意に低かった(p<0.001).コントロール状態の評価が不良である22人中,JPAC12~14点が10人みられ,コントロール状態の評価が比較的良好である28人中,JPAC 11点以下が8人みられた.コントロール状態とJPACに乖離が認められたため,JPACの不良となる基準点を現行の11点以外に12点と10点でも検討した.基準点を10点以下に設定すると,全体・陽性・陰性一致率がいずれも80%以上となり,コントロール状態の評価に近づくことが示唆された.コントロール状態とJPACとの間には乖離があることから,JPACを評価する際には注意が必要である.
  • 徳田 玲子, 長尾 みづほ, 藤澤 隆夫
    2013 年27 巻4 号 p. 557-565
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/11
    ジャーナル 認証あり
    患者中心の指標としてのQOLは,臨床試験のアウトカムとして重視されるべきである.本研究では掻痒を標的として抗ヒスタミン薬を治療介入に採用し,主要アウトカムをQOLとする試験を行った.対象はガイドラインに基づく外用療法を行っていた7~14才のアトピー性皮膚炎の小児23名で,追加治療として第2世代抗ヒスタミン薬レボセチリジンを投与,治療前,2週,4週後にThe Children's Dermatology Life Quality Index(CDLQI)日本語版によるQOL評価を行った(主要評価項目).副次評価項目はかゆみ日記による掻痒,SCORADスコアによる重症度とした.その結果,CDLQIは総スコアが2週,4週後で有意に低下(=改善),とくに痒み,睡眠,感情,治療負担の項目で有意であった.かゆみ日記による掻痒の週平均スコアも経時的に低下し,各評価ポイントで治療前より有意であった.SCORADによる重症度も有意に改善した.SCORADスコアとCDLQIスコアは有意に相関した(Spearmanの相関係数=0.43).以上,追加治療としてのレボセチリジンがアトピー性皮膚炎のQOL改善に有用である可能性と治療アウトカムにQOLを採用することの妥当性が示唆された.
  • 村井 宏生, 藤澤 和郎, 岡崎 新太郎, 林 仁幸子, 河北 亜希子, 安冨 素子, 眞弓 光文, 大嶋 勇成
    2013 年27 巻4 号 p. 566-573
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/11
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    【目的】教職員がアナフィラキシーを理解し初期対応を可能にするための教育は学校生活の安全のために必要不可欠である.教職員に対するエピペン®の実技指導を含む講習の有効性を検討した.
    【方法】福井市の小中学校教職員を対象に,食物アレルギーとアナフィラキシーに関する講習とエピペントレーナーを用いての実技指導を行った.講習会前後でアナフィラキシー対応に関する意識の違いをアンケート調査により比較検討した.
    【結果】講習前には,エピペン®認知度は97%であったが,使用法まで理解している者は29%にすぎなかった.使用に対する不安は,使用のタイミングが82%と最も多く,使用後の保護者からのクレームが68%であった.養護教諭や現場の教諭がエピペン®を施行するとした割合は,講習前の41%,28%から,講習後には63%,48%と著増した.実技指導により使用への抵抗感が軽減したとの回答が増加した.
    【結論】講演会に実技指導を加えることは,アナフィラキシーに対する理解を深め,エピペン®使用の不安を軽減する上で有用と考えられた.
  • 村上 佳津美, 土生川 千珠, 長坂 行雄, 竹村 司
    2013 年27 巻4 号 p. 574-579
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/11
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    声帯機能不全(vocal cords dysfunction:VCD)は,吸気時に開大するべき声帯が内転し,閉塞するため気流制限が生じ呼吸困難をきたす.聴診される連続性ラ音は,吸・呼気相の全肺野で聴診されることもあり,喘息との鑑別は困難である.またVCDは喘息と併存することもある.そのためステロイド治療に抵抗性であるが,投与される症例がある.今回,10歳女児のVCDと10歳男児の喘息児の連続性ラ音をβ2刺激薬吸入前後で呼吸音解析(LSA 2000)を施行し検討した.解析結果では,VCDは,最強度を示した周波数は,130 Hzであった.それは,喘息の最強度の周波数よりも低周波数帯域で吸気に多く記録されており,またβ2刺激薬吸入で改善を認めなかった.小児では,両疾患の発作時に肺機能検査や喉頭鏡などの検査は困難なことがある.呼吸音解析は,安静呼吸で行う非侵襲的検査である.今回の2症例においては,呼吸音解析による鑑別診断の可能性が示唆された.
短報
  • 柳田 紀之
    2013 年27 巻4 号 p. 580-584
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/11
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    【目的】病院で提供する定型除去食を作成し,提供開始前後で誤配膳の頻度を比較し評価する.
    【対象・方法】鶏卵・牛乳・小麦・そば・落花生・大豆・エビ・カニ・山芋・ごまの10品目をあらかじめ除去した1週間分の定型除去食メニューを作成した.2010年4月~10月の提供開始前と2010年11月~2011年2月の提供開始後で食物アレルギーを持つ入院児に対する誤配膳の頻度を比較した.
    【結果】定型除去食実施前の患者の平均年齢は4.0±3.0歳(8ヶ月-15歳)で,平均除去品目数は2.2±1.4品目(1-17品目)であった.定型除去食実施後の患者の平均年齢は4.6±3.3歳(7ヶ月-15歳)で,平均除去品目数は2.4±2.2品目(1-19品目)であった.定型除去食実施前は366食中8件(2.2%)の誤配膳があり,定型除去食実施後は350食中1件(0.3%)と有意(p=0.038)に減少した.
    【結論】定型除去食を活用することで誤配膳を減少させ,誤食事故のリスクを軽減できる可能性が示唆された.
ガイドライン解説
小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012
食物アレルギー診療ガイドライン2012
  • 伊藤 節子
    2013 年27 巻4 号 p. 597-606
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/11
    ジャーナル 認証あり
  • 相原 雄幸, 近藤 康人, 野村 伊知郎, 木村 光明
    2013 年27 巻4 号 p. 607-616
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/11
    ジャーナル 認証あり
    食物アレルギー診療ガイドライン2012の第10章は通常の食物アレルギーとは臨床症状や経過,検査所見,誘発試験,診断などが異なる4疾患を特殊型として位置づけて記載している.
    新生児・乳児消化管アレルギーは,消化器症状を主体とした細胞依存性アレルギー疾患であり,主要な原因は乳児用牛乳調整粉乳である.この疾患には多様性があり,今後細分類が課題となっている.
    食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FEIAn)は,即時型アレルギーに分類される疾患であり,主要な原因食物は小麦と甲殻類である.確定診断には最重症例を除き誘発試験を実施することが望ましい.重症食物アレルギー症例に対する経口免疫療法中あるいは終了後のFEIAn発症,成人の疫学調査と診断率向上が課題である.
    口腔アレルギー症候群(OAS)は,花粉と果物や野菜のアレルゲンとの交差反応性により発症する即時型アレルギーである.花粉症が先行する場合が多い.アレルゲンの解析が進んでいる分野である.口腔症状など軽微なものが主であるが全身症状もまれに起こる.ラテックスのへベインと果物・野菜クラス1キチナーゼとの交差反応性に起因したラテックス・フルーツ症候群(LFS)もOASと同様に即時型アレルギーであるが,全身性の重篤な症状をきたすこともまれではない.
    これらの疾患はいずれも研究途上にあり,今後の研究の進展に伴って変容する可能性も否定できない.これらの疾患の解明がさらに進み,治療法の改善にもつながることが期待される.
日韓招待講演報告
速報
  • 海老澤 元宏, 伊藤 浩明
    2013 年27 巻4 号 p. 621-628
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/11
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    【背景】Ara h 2は,ピーナッツアレルギーにおいて最も重要なコンポーネントであることが知られている.
    【目的】日本人のピーナッツアレルギー診断におけるAra h 2特異的IgE抗体(以下,Ara h 2-IgE)測定の有用性を明らかにする.
    【方法】ピーナッツアレルギーを疑った152症例(ピーナッツアレルギー(PA)68症例,非ピーナッツアレルギー(NPA)84症例)を対象に,イムノキャップ®により5種のピーナッツコンポーネントに対する特異的IgEを測定した.
    【結果】Ara h 2-IgEの診断効率が最も良く,95%陽性的中率(PPV)を与える抗体価は4.71 UA/mlで,その時の感度は57.4%であった.現行のピーナッツ粗抽出抗原を用いた特異的IgE抗体(以下,f13-IgE)では,50.8 UA/mlでPPVが95%となり,この時の感度は20.6%,Sampsonの報告した14 UA/mlでの感度は36.8%であった.また,f13-IgEの抗体価に関わらずAra h 2-IgEの陰性的中率(NPV)は89.3%であった.
    【結語】Ara h 2-IgEは,f13-IgEと組み合わせることでより正確なピーナッツアレルギーの診断に有用であり,経口負荷試験を実施する患者数を減少させることが可能となる.
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