日本小児アレルギー学会誌
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8 巻, 2 号
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  • スペーサーを用いた低年齢児に対する検討
    宮林 容子, 市川 邦男, 向山 徳子, 馬場 実
    1994 年8 巻2 号 p. 52-57
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    3~6歳の中等症以上の気管支喘息児を対象に, 2週間の対照観察期間の後スペーサーを用いてベクロメタゾン吸入療法 (BDP150あるいは300μg/day) を6週間実施した.
    1) 小発作日数はBDI療法開始2週以内に減少し, 特に300μg/day群でその効果が優れていた.
    2) PEFRは多くの症例でBDI療法開始後1, 2週より改善傾向が認められたが, 低年齢のため習熟度の問題に加え, 発熱, 腹痛など全身状態の変化による影響を受け易く, バラツキが大きかった.
    3) 300μg/day使用群ではBDI療法後に血清コルチゾール値の低下を示す症例が認められた.
    4) 本療法により口腔内カンジダ症を認めた症例はなかった.
    以上よりスペーサーを用いたBDI療法は低年齢児の発作コントロールに対し, その使用状況, 状態の観察を細かく行うことにより, 有用な治療法であると考えられた.
  • 渋谷 信治
    1994 年8 巻2 号 p. 58-64
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    重症喘息児4症例 (9~15歳) を対象にBDI (100μg×2/日) の定期吸入を6週間行い, ピークフロー (PEF) にてモニタリングし, PEF, PEFの日内変動率, 喘息症状について検討した.
    1) BDI開始前のPEFの低さと喘息症状の程度は症例によって異なっていたが, 日内変動率はすべての症例において上昇していた. BDIの適応は, 症状だけでなくPEFモニタリングの情報を総合して判断することが望ましい.
    2) BDIに対するPEFの反応の程度は, 症例ごとに異なっていた. PEFモニタリングによってBDIの投与量の不足や過剰投与を判定することができた.
    3) 以上より, PEFモニタリングは, BDIの適応や効果を判定し, 投与量の調節を行うのに有用である.
  • 高橋 義博, 神鳥 理子, 平野 浩次, 木村 義治, 佐藤 澄人, 杉本 和彦
    1994 年8 巻2 号 p. 65-72
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    種々アレルギー, 特に卵アレルギーが疑われる小児に対する麻疹・MMRワクチン接種について, 接種前の卵白およびワクチン液による皮膚テストならびに皮膚テスト陽性例に対するワクチン接種方法について検討した. 対象は1991年に当科予防接種外来麻疹・MMRワクチン接種希望者で, 予防接種前の問診で卵摂取時有症状例 (発疹, 下痢その他), 既に卵白RASTが陽性と判明している例など, 25例について, 卵白プリックテスト, 麻疹ないしはMMRワクチン液を生食で10ないしは100倍に希釈したものを用いた皮膚テストを行なった. 卵白プリックテストでは, 卵摂取時有症状例8例全例陽性, RAST卵白陽性例では7/9例が陽性であった. ワクチン皮膚テストでは, テスト陰性の23例には, 麻疹ないしはMMRワクチンを通常接種したが, 即時型アレルギー副反応はみられなかった. ワクチン皮膚テスト陽性の2例は, Herman らの方法に従い減感作予防接種を行なったが, 即時型ならびにその後の全身反応はみられなかった. 種々アレルギー, 特に卵アレルギーが疑われる児への麻疹・MMRワクチン皮膚テストは, 簡便かつ安全でワクチン液による即時型反応出現の予測に有用と思われた. 麻疹・MMRワクチン接種希望者でワクチン皮膚テスト陽性例には, ワクチンの減感作接種が有用と思われた.
  • 中岡 嘉子, 千葉 康則
    1994 年8 巻2 号 p. 73-80
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    沖縄県那覇市の小学校児童の11392人の保護者に対し, 質問用紙法による調査を行い, 児童のアレルギー疾患, 就中, アトピー性皮膚炎, 喘息の病歴の有無, 遺伝関係について調査した.
    その結果, 20年前の復帰後, 児童のアレルギー疾患, 特にアトピー性皮膚炎が増加しつつあることがわかった. しかし, 全国の平均に比べるとまだ少数であり, アトピー性皮膚炎については, 全国平均の約3分の1ほどである.
    遺伝関係については, 親や祖父母のアレルギー疾患の病歴がある場合, その子どもにアレルギー疾患が発症する率は高い. しかし, このような遺伝関係が認められないにもかかわらず, アレルギー疾患が発症する児童が多く認められる.
    また, アトピー性皮膚炎については, 夏期に症状が増悪する児童が多い点が, 全国の傾向と違う特徴である.
  • 森川 利夫
    1994 年8 巻2 号 p. 81-85
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    先に提案した血清IgE値の基準値の適正さを検討するために, 6ヶ月以上の間隔で血清IgE値を測定した153例において, そのIgE値の推移をみた. その基準値で高IgE児とした症例において, その後の血清IgE値から考えての false positive および false negative はそれぞれ20.5%と10.2%であった. そしてそれらを小さくするために, その時点ではまだ高・低いずれのIgE群に属するとも決められないという意味での, 次のような gray zone を設定すれば, この基準値は適正なものになると考えられた.
    その gray zone は, 6ヶ月以下: 2~5, 6~11ヶ月: 4~10, 1歳: 8~20, 2歳: 15~40, 3~4歳: 30~70, 5歳以上: 50~100IU/mlというもので, それ以上の血清IgE値を示した場合には遺伝的に高IgE値であり, それ以下の場合には遺伝的に低IgE児であると考えることができる.
  • 齋藤 昭彦, 弘岡 順子, 西村 〓三
    1994 年8 巻2 号 p. 86-90
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    小児気管支喘息 (以下, 喘息と略) は, その発症から寛解に至るまで長い年月を要し, 呼吸困難発作を反復する疾患であるため, 喘息という病気が患児のみならず, 両親や同胞に与える影響は大きいと思われる. そこで, 今回, 喘息児の同胞が, 喘息という病気をどのように受け止め, どのような心理的, 社会的影響を受けているかについて, 当科を受診している喘息患児の同胞100名にアンケート調査を行い, 検討して考察を加えた.
    その結果, 喘息児と共に生活する同胞への影響は非常に大きかった. また, 症例によっては, 同胞の回答が, 患児の治療に役立つ重要な問題点を知るきっかけとなり得た. 更には, 医療者側からの積極的アプローチが患児のみならず, 両親, さらには同胞に対して必要であると思われた症例も明かとなった.
  • その意義と問題点
    浜崎 雄平, 松本 重孝, 市丸 智浩, 小林 育子, 田中 英理子, 宮崎 澄雄, 津田 恵次郎, 西間 三馨
    1994 年8 巻2 号 p. 91-96
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    195人の小学生児童の心電図R-R間隔の変動係数 (CVR-R) を測定した. これらの児童に対してアンケート調査をおこない, 5群に分け (コントロール, BA, AD, AR, triple allegies 群), 各アレルギー群のCVR-R値とコントロールを比較したところいずれのアレルギー群も低い傾向を示した. 次に, 19名の外来通院中, および25名の長期入院中の喘息児で同じ検査をおこなった. 外来通院中の患児は同様に低い傾向を, 長期入院患者では有意に低値を示した. 以上の結果は気管支喘息を含むアレルギー患者が必ずしも, CVR-Rで示される副交感神経緊張状態にはないということを示している. 又, 入院患児のうち, 交感神経刺激剤を常用している患児で, より低いCVR-R値を示し, 交感神経機能の影響を完全には排除できない可能性が判明した. 更に, 6名の患児で8Wの水泳訓練をおこないその前後でCVR-Rを測定したところ, 6名中5名で値が低下した. 水泳訓練により, 副交感神経の緊張が低下した可能性を示すものと考えられた.
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