日本小児アレルギー学会誌
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37 巻, 2 号
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原著
  • 宮本 学, 藤田 雄治, 吉原 伸弥, 寺師 義英, 中山 幸量, 髙栁 文貴, 安藤 裕輔, 加藤 正也, 中山 元子, 吉原 重美
    2023 年 37 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
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    【緒言】もち麦はもち性大麦の総称であり大麦の一種である.大麦は小麦と交差抗原性を有し,小麦アレルギー児の一部は大麦アレルギーを合併することが知られている.

    【症例】5歳男児.7か月時に小麦アレルギーと診断され,4歳時の食物経口負荷試験(OFC)ではうどん15gでアナフィラキシーを生じた.給食でもち麦入りご飯のカレーライス等の摂取から90分後に持続的咳嗽と皮膚紅潮を生じ救急搬送された.特異的IgE抗体価は大麦56.8,小麦 >100,ω-5-グリアジン4.68(いずれもUA/mL).もち麦約8.6gのOFCで呼吸器・皮膚症状が誘発され,もち麦(大麦)アレルギーと診断した.

    【考察】幼稚園の献立表で,もち麦が入っていることが不明確であったため,原因食物の特定に時間を要した.保護者を通じ園への献立表示の注意喚起を行った.大麦は食物アレルギー表示対象品目に含まれず,外食等でもち麦入りご飯として知らずに提供される可能性もあるため,給食提供者への啓発と,大麦アレルギー患者への指導が必要である.

  • 濱口 冴香, 山本 貴和子, 佐藤 未織, 大海 なつき, 隈元 麻里子, 小川 えりか, 野村 伊知郎, 山本 康仁
    2023 年 37 巻 2 号 p. 132-137
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル 認証あり

    急性食物蛋白誘発胃腸炎(acute FPIES)の経口食物負荷試験(OFC)における,OFC施行時期,過去の症状の重症度や負荷量と,OFCでの誘発症状の重症度の関係については明らかでない.今回,生後1か月まで混合栄養で症状がなかったが,生後3か月時の普通ミルク再導入により軽症のacute FPIESを疑う症状を呈し,確定診断のために国際コンセンサスガイドラインに準拠した通常負荷量でOFCを施行したところ,意識障害やアシドーシスを伴う重症な症状を呈したacute FPIESの乳児例を経験したため報告する.乳児期,また最終エピソードからOFCまでの期間が短い場合は,ガイドラインに準拠した負荷量でも重症の誘発症状を生じる可能性があり,負荷量設定,緊急時対応の事前準備が,安全なOFC実施に重要である.Acute FPIESに対するOFCの方法はまだ標準化されておらず,今後のエビデンスの蓄積が必要である.

  • 佐野 英子, 水野 友美, 長尾 みづほ, 松永 真由美, 浜田 佳奈, 高瀬 貴文, 安田 泰明, 星 みゆき, 野上 和剛, 藤澤 隆夫
    2023 年 37 巻 2 号 p. 138-149
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
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    目的:アレルギー疾患児をもつ養育者のニーズをソーシャルネットワーキングサービスに投稿された質問から探索する.

    方法:Yahoo!知恵袋データ(国立情報学研究所提供)から養育者が小児のアレルギーについて尋ねたと想定される質問文を抽出,テキストマイニング手法で分析した.

    結果:全データ約269万件からキーワード検索と3名の研究者による直接レビューで707件を選択,形態素解析で語を抽出した.単純集計では皮膚,食事に関連する語が多く,多次元尺度構成法では,これらと呼吸器症状関連語が治療関連語,何らかの答えを求める語を取り囲む形で分布した.コード定義を行い分類すると,頻度は不安・疑問,病院受診のコードに続き,皮膚症状が多かった.コード間の共起では不安・疑問,病院受診に皮膚症状,アトピー,食事,環境,睡眠,家族関係が互いに関連していた.呼吸器関連コード群は互いに強く共起し,他コード群とは弱い共起であった.

    結語:SNSでの養育者ニーズは生活の諸側面につながっている皮膚の問題が大きい可能性がある.

総説
  • 手塚 純一郎
    2023 年 37 巻 2 号 p. 150-155
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
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    運動誘発性喉頭閉塞症(exercise-induced laryngeal obstruction:EILO)は高強度運動時発作性に喘鳴と呼吸困難をきたす疾患である.楔状結節の余剰粘膜が内転する,かつ/または吸気時に開くべき声帯が内転することにより喉頭の閉塞が生じる事がその原因であり,誘発性喉頭閉塞症(inducible laryngeal obstruction:ILO)の病型の1つである.運動による誘発される声帯機能不全(vocal cord dysfunction:VCD),声帯奇異性運動(paradoxical vocal cord motion:PVFM),喉頭軟化症など様々な用語で表現されてきたが近年用語が統一された.診断は運動中の持続的喉頭内視鏡(continuous laryngoscopy during exercise:CLE)により確定するが施行可能な施設が限られている.

    運動誘発喘息として治療を受けていることがしばしばあり,疾患の認知が拡がることが望まれる.

  • 明石 真幸, 冠城 祥子
    2023 年 37 巻 2 号 p. 156-162
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
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    食物蛋白誘発胃腸炎(Food protein-induced enterocolitis syndrome:FPIES)は非IgE依存性食物アレルギーの一病型であり,原因食物を摂取した1~4時間後に皮膚症状や呼吸器症状などのIgE依存性反応を伴わない繰り返す嘔吐で特徴づけられている.2017年の国際コンセンサスガイドライン公開により,世界各国でFPIESに関する報告が増えている.海外におけるFPIESの原因食品は,牛乳・米・魚が多く,鶏卵がそれに続いている.一方,日本ではこの数年で鶏卵,特に卵黄によるFPIESの患者が急激に増加しており,現在では原因食品として最も頻度が高い.このため,鶏卵FPIESの発症年齢,予後などの疫学面では日本を中心に解明が進んでいるが,原因抗原・感作経路・嘔吐の機序・免疫学的機序については不明な点が多い.診断の補助となる検査,安全で信頼性の高い食物経口負荷試験や長期管理の方法も確立されていない.今後これらが明らかにされることで,急増する鶏卵FPIES患者数に歯止めがかかることが期待される.

解説:免疫アレルギー疾患における分子標的薬
  • 森田 英明, 松本 健治
    2023 年 37 巻 2 号 p. 163-169
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
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    長年にわたる基礎的,臨床的な病態解明研究の積み重ねと,昨今の医薬品開発技術の進歩により,疾患の病態メカニズムに基づいた治療薬の開発が可能になりつつある.病態形成に関与する特定の分子を標的として開発された治療薬を分子標的薬と呼び,主に細胞外分子(細胞膜上の受容体やサイトカイン等の液性因子等)を標的としたモノクローナル抗体等の高分子化合物と,主に細胞内分子(細胞内のシグナル伝達分子等)を標的としたJAK阻害剤やPDE4阻害剤等の低分子化合物が存在する.分子標的薬は病態に関与する特定の分子を標的にするため,従来の治療では治癒できなかった症例においても,症状の劇的な改善につながることも多い.一方で,アレルギー疾患は均一な疾患ではなく,ヘテロな集団で構成されているため,特定の分子標的薬が奏効する患者と,効果を示さない患者も存在する.故に病態メカニズムに基づき疾患を分類し,それぞれのサブグループに最適な治療を選択する,層別化医療を行っていく必要がある.

ガイドライン解説:食物アレルギー診療ガイドライン 2021
  • 八木 久子, 近藤 康人
    2023 年 37 巻 2 号 p. 170-176
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
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    食物アレルギー診療ガイドライン2021では,新たに食品ごとの各論を設け,第12章9,10,11,12で甲殻類・軟体類・貝類,魚類,魚卵,果物・野菜のアレルギーが章立てられた.甲殻類や魚類,魚卵,果物アレルギーは,実臨床においてよく遭遇する疾患であるが,ときに重篤な症状を引き起すことがある.また,鶏卵や牛乳などのアレルギーと比べ自然歴に関する情報が乏しく,さらに,主要アレルゲンの強い交差抗原性のため多種食品に感作されることが多く,一括りにして除去されやすい.

    第12章では,最新情報をもとに食品別に発症年齢・臨床型分類,予後,コンポーネント,診断,食事指導について記載されている.本稿より甲殻類・軟体類・貝類,魚類,魚卵,果物・野菜アレルゲンへの理解が深められ,より診断に基づく適切な食事指導につながれば幸いである.

  • 福冨 友馬, 川本 典生
    2023 年 37 巻 2 号 p. 177-180
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
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    本稿では2021年に発行された食物アレルギー診療ガイドラインにおける食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis,FDEIA)のセクションに関して,2016年ガイドラインの記載内容からの主な変更点について解説する.

    2016年発行のガイドラインでは,FDEIAは特定の食物摂取後の運動負荷によってアナフィラキシーが誘発される「疾患」であると定義されていた.しかしながら,FDEIAと考えられる患者が運動以外の誘因をきっかけにして症状が誘発されることは,実臨床では珍しくないし,安静時に症状を経験することもある.近年,FDEIAの病態に関わる重要な研究報告がいくつか行われた.すなわち,運動は即時型食物アレルギーの症状の誘発閾値を下げる要因の一つに過ぎず,FDEIAと考えられる患者が運動以外の誘因をきっかけにしても症状が誘発されうることが示された.このような知見に基づき,2021年のガイドラインではFDEIAは特定の食物摂取後の運動負荷によってアナフィラキシーが誘発される「病態」であると定義することとなった.

  • 中島 陽一, 猪又 直子, 大久保 公裕
    2023 年 37 巻 2 号 p. 181-187
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル 認証あり

    食物アレルギー診療ガイドライン2021では,食物以外の抗原感作による食物アレルギーを第14章として独立して章立てした.新しい点として第14-1章 花粉-食物アレルギー症候群では,交差反応に関与するプロテインファミリーについての記載が追加された.第14-3章に動物の飼育に関連した食物アレルギーとして,pork-cat症候群と,bird-egg症候群が新たに記載された.また第14-4章において動物の刺咬傷に関連した食物アレルギーとして,マダニ咬傷後のα-Galによる獣肉アレルギーと,クラゲ刺傷後のポリガンマグルタミン酸による納豆アレルギーの記載が追加された.これらの病態について概念,発症機序などを中心に解説する.

  • 福冨 友馬, 安冨 素子
    2023 年 37 巻 2 号 p. 188-191
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
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    食事に関連して起こるアレルギー症状の原因として,食物以外のものに対するアレルギーが関与していることがある.特に成人では,このカテゴリーに該当する患者は稀ではなく,これは食物アレルギーの鑑別診断としても重要である.2021年のガイドラインでは,新しくこのような疾患を扱う章を作り,その中でエリスリトール・コチニール色素・アニサキスによるアレルギー,経口ダニアナフィラキシー(パンケーキ症候群)に関して言及した.本稿では,それらの疾患概念,診断,生活指導に関して解説させていただく.特にアニサキスアレルギーは,成人でのアナフィラキシーの原因病態としても極めて頻度が高く,魚介類摂取後のアレルギー症状の原因として,常に念頭に置いておく必要がある.

  • 山田 佳之, 大嶋 勇成
    2023 年 37 巻 2 号 p. 192-196
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル 認証あり

    第16章「消化管アレルギーとその関連疾患」では新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症,好酸球性消化管疾患,グルテン過敏性腸症について記載している.JPGFA2016の発刊後,わが国では厚生労働省研究班が中心となって作成された新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症と好酸球性消化管疾患の診療ガイドラインが発表され,国際的には新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症に含まれるfood protein-induced enterocolitis syndrome(FPIES)のガイドラインが公開された.今回の第16章は公開されている各ガイドラインで注目されている部分を中心に内容を更新し,わが国の診療での現状も鑑みて作成された.本解説では日本の臨床の現状も踏まえ,前回のガイドラインであるJPGFA2016からの変更点,および新たに追加された情報について説明する.

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