色素凝集体の分光学的性質, 励起動力学, 光化学の最近の研究を紹介する. 代表的な5種類の色素を中心に取り上げた. それらは長鎖アルキル基をもっオキサシアニン (S9) とチアシアニン (S11), メロシアニン (MC), 長鎖アルキル基をもたないプソイドイソシアニン (PIC), ベンズイミダゾロカルボシアニン (BIC, TDBC), メソ位エチル置換チアカルボシアニン (TDC, THIATS) である. J凝集体 (JA) はPIC水溶液で発見され, つづいてBIC, TDBC, TDC, THIATSなど多くのシアニン色素も水溶液, 低温ガラス, 吸着層中でJAを形成することが明らかになった. KuhnのグループはLB膜中でS9, S11, MCなどのJAを作製し, LB膜の光物理学, 光化学の研究分野を切り拓いた. 今日ではLB法, 交互吸着法, スピンコート法などを用いて, 長鎖をもたないPICなどのシアニン色素のJAを有機薄膜 (LB膜, SA膜), ポリマー膜に担持することが可能になり, 分光学的研究, 線形・非線形光学材料開発が活発に行われている. 電子顕微鏡, 走査プローブ顕微鏡SNOM, 蛍光顕微鏡などの発達の結果, 水溶液, 吸着膜, 有機薄膜, ポリマー膜中のJAの多様な超分子構造, 形態が明らかになってきている. なかでも水溶液中のPIC, TDBCJAの超構造形成は注目される. 低温ガラス中のPIC, BIC, TDBC, TDC, THIATSの超高速分光, 非線型分光測定と理論解析にもとずくJAの励起動力学の研究が進んでいる. 色素凝集体との関連から, 光合成細菌のアンテナ系におけるバクテリオクロロフィル (BChl) の環状凝集体についても言及した.
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