本研究は白黒写真の輝度対比がもたらす美学的経験と, 輝度対比を検知あるいは感ずる能力, すなわち観察者のコントラスト感度との関係を調べたものである.コントラスト感度が, 写真の物理特性 (テーマのない刺激) にだけ依存するのか, それとも写真の絵柄やテーマ (テーマのある刺激) にも依存するのかを明らかにするために, テーマのある刺激としてAnsel Adamsの写真を, そしてテーマのない刺激としてグレースケール画像を用い, それぞれのコントラスト感度を心理学的尺度構成法により比較した. Ansel Adamsはゾーンシステムを用い, メリハリがあり, 階調豊かな写真を作った写真家であるが, Adamsが見, そして感じたものが, ローカルコントラストを調節することで強調されていること, そしてローカルコントラストはアンカーのようにローカルフレームワークを強調し, 高い明度恒常性のある観察条件をもたらし, 美的感覚を増大させることがわかった.
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