保存科学研究室は,作品保存のための調査研究,保存処置作業の実施・監督,保存に関する情報交換を行うことを目的に設立され,1994年度より保存科学専門員が配属された.その後の歩みと,この2年間の美術館改修による保管施設の充実と改修中の注意点について解説する.
平成28(2016)年,全館改修期間中に東京都写真美術館は展示室のスポットライトの全面LED化を実現した.機器の選定にあたっては,高演色性,作品の再現性,空間照明のクオリティを重視した比較テストを行い,収蔵品と施設の適性に応じた機器を導入した.
私は今まで複数の角度から高画質画像のアーカイブにトライしてきた.JAGAT(公益社団法人日本印刷技術協会)に移籍してからもそれを継続していたが,その応用例として母子手帳等の公的な制度への活用もあり,要点を報告させていただく.
デジタルデータの保存メディアとして,光ディスクは有用なメディアの一つである.長期保存の観点では,解決すべきデー タ保存の課題が存在する.本解説では,光ディスクによる解決方法や,運用のメリットと最新技術について紹介する.
ITの新たな流れとして,オープンソースという考え方が生まれ,一般に広まってきている.本解説では,オープンソースの可能性に関する業界動向と,近年のデバイスの高性能化により一気に導入が進んでいる,ソフトウエアによる従来型ストレージの置き換えとしてのSDSの特長について解説を行っている.
国立国会図書館(以下,NDL)は,所蔵資料のデジタル化により作成したデジタル画像(デジタル化資料)やインターネッ トから収集したPDF,EPUB形式等の電子書籍・電子雑誌(オンライン資料)等,大量のデジタルファイル形式の資料(デジタル資料)を保存・提供している.本稿では,デジタル資料を収集・保存・提供するシステムである国立国会図書館デジタルコレクション1)について,長期保存システムの国際標準Open Archival Information System(OAIS)参照モデル(ISO 14721:2012)2)の機能要件の観点から考察し,デジタル情報の長期保存の課題について述べる.
カメラの主要な構成要素であるシャッターは,デジタルカメラの時代になってもその役割に変化はないが,技術的な側面はさまざまに変化してきている.本稿ではその解説の第1部としてシャッターの機能の基礎的な事項とシャッター効率について論じる.
日本カメラ博物館が2012年に寄贈を受けた『寫眞雜誌(脱影夜話)』は,以前から「日本最古の写真雑誌」として認識されているが,本寄贈品を内容調査した結果,再考すべき点が複数見出された.これについて検証と考察を行った.また後継誌との関連や,発行年と誌名の変遷,装丁などについても考察を行った.
FTO/TiO2/CH3NH3PbI3/Hole Transport Material(HTM)/Auからなるペロブスカイト太陽電池(PSC)の構造を単純化することにより,電子構造と諸性能(Voc, Isc, FF)の関係を明瞭に分析することを目指した.その結果,HTMに2,2´,7,7´-tetrakis-(N,N-di-p-methoxyphenylamine)9,9´-spirobifluorene(spiro-MeOTAD)を用いた場合には,HTMとAuのフェルミ準位の一致による前者から後者への電子移動によりHTMはp型となり,spiro-MeOTADはドーピングなしでもCuSCNと同等以上の性能を示すことが分った.諸性能は大気中で数日のうちに向上した.これに呼応してAuの仕事関数が数日で増加していた.陽極の仕事関数の増加がHTM中の正孔トラップを除去して正孔輸送を促進し,VocのみならずIscやFFをも増加させたものと考えられる.調製後数日以上経過すると,電池の諸性能が劣化するとともにCH3NH3PbI3の有機成分の消失が観測された.
平板ITO透明導電膜,そのITOに島状金ナノ粒子を固定化したものを電極として,Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)薄膜を電解重合させた.それぞれの電極を利用したEC素子で光学特性を検討した結果,島状金粒子の電極を用いると,Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)の着色状態と消色状態との変色量が増大し,着色時の反応が高速化された.