「写真の進歩」は,毎年一度時期を決めて前年一年間の写真技術の動きを振り返ることにより,日々進歩を続ける写真技術の全体像を時系列的に俯瞰することを狙いとして,継続的に取り組んでいる企画です.
執筆陣は,技術委員会傘下の各研究会の代表者を中心に,外部の識者も加えた各分野の専門家により構成されています.各執筆者は担当の分野に応じた観点から,主として前年一年間に発表された技術(文献),製品,作品,統計等について,可能な限りその特徴・傾向・分析などのコメントを加えつつ紹介します.なお具体的な内容については各執筆者の意向を尊重しています.
過去の「写真の進歩」は,写真学会ホームページ(http://www.spstj.org/)の「学会誌からのトピックス」(http://www.spstj.org/book/pickups.html)にも掲載されていますのでご利用下さい.
今年は本特集筆頭に位置する記事のタイトルを,著者意向に基き内容により即した「写真産業界の現況」に変更しました(従来は「〜の展望」).なお例年掲載している「科学写真」の「文化財」分野については,準備不足によりレビューが実現できませんでしたことをお詫び申し上げます.
ズーム全域で優れた描写特性を実現する高画質性能と,35 mmフィルム換算焦点距離800 mm相当の超望遠域を手持ちで撮影可能とする優れた機動力を両立させ,かつ4K動画撮影を最大限生かすことができる超望遠ズームレンズH-RS100400の開発について紹介する.
リコーはペンタックスブランド初の35ミリフルサイズデジタル一眼レフとしてPENTAX K-1を開発した.35ミリフルサイズフォーマットの撮像素子を採用するに至った背景とPENTAX K-1の特徴的な機能について解説する.
デジタル一眼レフカメラ “EOS-1D X Mark II” は,キヤノンのフラッグシップモデル「EOS-1D」シリーズの最新機種であり,有効画素数約2020万画素新開発35 mmフルサイズCMOSセンサーや映像エンジンDIGIC 6+等のキーデバイス,約36万画素新測光センサーを用いたAEシステムや61点全点F8対応へ進化したAFシステム,AE・AF追従で約14コマ/秒(ライブビュー撮影時は約16コマ/秒)の高速連写など最先端技術や最高クラスの機能,性能を搭載している.さらに4K60PやフルHD120Pハイフレームレートなどの動画撮影機能を搭載するとともに,通信機能を強化している.本稿では本機種の特徴的な機能について説明する.
OM-D E-M1 MarkⅡは,OLYMPUS OM-Dシリーズの新フラグシップ機として開発されたカメラである.フォーサーズ/ マイクロフォーサーズの統合を果たしたOM-D E-M1のDUAL FAST AFや小型軽量,防塵防滴などの特長を継承しながら,全ての機能や性能は飛躍的に進化している.本稿では,OM-D E-M1 MarkⅡの開発における技術的なポイントについて紹介する.
原子核乾板では,飛跡を高精細に記録するため微粒子乳剤を用いるが,光学顕微鏡を用いて高速解析するには大きな現像銀粒子が望ましい.写真工業では,銀粒子を補力する技術として溶解物理現像法が知られている.本報では,カラーリバーサルフィルムの反転現像および黒白インスタント写真の拡散転写法で実用された溶解物理現像に関するレビューを行う.この補力法をベースに,原子核乾板の化学現像による微細な現像銀粒子を補力し肥大化させる方法に関して考察する.