日本写真学会誌
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70 巻, 5 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 瀬川 浩司, 阪井 正樹, 新井 永範, 中崎 城太郎
    2007 年 70 巻 5 号 p. 260-267
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    自己組織化で作られるナノスケール分子系の光機能は重要である. 本研究では, LB法を用いて非水溶性ポルフィリンのJ会合体分子膜を作成した. 特に, 気一液界面に生じたT (4-MeOP) PJ会合体は高配向単分子膜を形成し, ポルフィリン平面が基板に垂直配向すること, またこの単分子膜が高配向を保ちながら20層まで累積できることを明らかにした. また, 置換基の異なるポルフィリンヘテロ積層体を構築し, 励起エネルギー移動等を観測した. 一方, 水溶性ポルフィリンのTSThP異性体のJ会合体で様々な自己組織化挙動を見いだした. さらに, TSPH会合体の機能化に関してポルフィリンJ会合体の可逆な電気化学過程を明らかにし, 光化学的な手法により初めて安定なポルフィリンJ会合体πラジカルの生成に成功した. これらの結果は, ポルフィリンJ会合体ラジカルの基礎的な研究や新規光電子材料としての応用へと展開が期待される.
  • 水口 仁
    2007 年 70 巻 5 号 p. 268-277
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    分子の “吸収係数” が大きく, これらが “周期的に配列” した顔料結晶や色素の会合体では, 励起分子の間に強い相互作用が起こる. この相互作用は励起子相互作用 (“遷移モーメント間の相互作用”) と呼ばれ, 吸収帯のシフトや分裂 (Davydov分裂) を誘起する. 本講では励起子相互作用の理論を概観し, シアニン色素のJ会合体を含め, いくつかの具体例をあげて説明した.
  • 古木 真
    2007 年 70 巻 5 号 p. 278-286
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    スクエアリリウム色素を対称に水面上単分子膜において分子構造と会合構造を評価し, J会合体を形成する置換基構造を明らかにした. 得られたJ会合体は理想的な二次元構造を有していることから, その光学特性を可能な限り定量的に評価した. J会合体の機能発現にかかわる集団励起やエネルギー移動に関して検討した結果を紹介する.
  • 谷 忠昭
    2007 年 70 巻 5 号 p. 287-294
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    銀塩写真感光材料を代表するカラーフィルムでは, 入射する光の像を構成する三原色の成分はそれぞれ対応する3つの別々の層で捕捉され, 各層ではハロゲン化銀 (AgX) 粒子に吸着された増感色素が入射光子を吸収する. 色素分子が光子を吸収して励起された状態は励起子として色素分子間を移動し, 励起子は解離してAgX粒子の伝導帯に電子を注入し色素相に正孔 (色素正孔) を残す. 励起子の解離には適したサイトが存在する. 色素のJ会合体形成は以下の事実をもたらすので, 感度と色再現の観点からカラーフィルムにとって好都合である. すなわち, J会合体は単量体に比べて粒子の単位表面積あたりの吸着色素分子数が多く, 吸収波長が長い上に狭い波長範囲で強い光吸収を引き起こす. J会合体中では励起子は速やかに移動することができるので, 解離に適したサイトに容易に到着し高い効率でAgX粒子に電子を注入することができる. 一方, J会合体が大きくなり過ぎると励起子の解離に適したサイトの濃度が低くなり, 色素正孔も移動しやすくAgX粒子に注入された電子との再結合が起こりやすくなるので, J会合体のサイズは最適となるように調整する必要がある.
  • 第1部 分光増感 (上) 1920年代まで
    大石 恭史
    2007 年 70 巻 5 号 p. 295-305
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    銀塩感光材料の分光増感技術の歴史を, その大きな流れを方向付けた次の主要な転換点に於ける, 技術革新過程に重点を置いて概観する: 1. 色素増感の発明, 2. 色素の進化-シアニン類の主流化, 3. 科学の役割-シアニン化学の確立, 4. 新合成法創出.
  • イオン伝導度による解析
    キムラ ソクマンホー, 小松 秀樹, 三觜 剛, 久下 謙一
    2007 年 70 巻 5 号 p. 306-311
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    銀塩光熱写真感光材料における潜像形成機構を明らかにするため, ナノサイズのハロゲン化銀結晶のイオン伝導度を測定して, 粒径依存性と脂肪酸銀添加の影響を調べた. ナノサイズ領域でもマイクロサイズ領域から連続して, イオン伝導度は粒径に反比例した. また, 脂肪酸銀が少量でも存在すると, イオン伝導度が大きく低下した. これらの結果により, 銀塩光熱写真感光材料における潜像形成には, 脂肪酸銀が大きく関わっており, イオン過程での銀イオン供給源としてはハロゲン化銀結晶中の格子間銀イオンのみならず, 脂肪酸銀から解離された銀イオンが考えられた. これより銀塩光熱写真感光材料の潜像形成過程は, 湿式処理銀塩写真材料において従来提唱されている潜像形成過程とは異なることが示唆された.
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