人の視覚系は,
n次元の分光刺激
Cから三刺激値を担う基本的な分光成分び (
fundamentalと呼ぶ) を抽出して色を知覚する.
Cから
C*への射影原理はマトリクス
R理論として知られる.射影子
Rを構成する基底ベクトルの組をマトリクス
Fと呼び,
Fは視覚系の基本色空間FCS (Fundamental Color Space) を張る.射影子
Rは無彩色 (
achromatic) 射影子
RAと有彩色 (
chromatic) 射影子
Rcにスペクトル分解することができる.本稿では, 基本分光成分びのスペクトル分解を用いて新しいFCSを構成する.提案モデルは直交反対色条件を満たし, かつ色相の直線性をもつ点に特徴がある.ここでは, 有彩色射影子
Rcをさらに反対色成分
RRと
RBに分解する.これにより基本分光成分びは, 射影子 (RA, RR, RB) によって輝度色差分光成分 (
CA*,
CR*,
CB*) に分解され, 新しい色空間座標系に写像される.色彩画像の変換に当っては, 擬似逆行列を用いた逆射影によって
ROB/XYZ三刺激値から基本分光成分びを復元した後, 本モデルを適用する.最終的に, スペクトル分解された無彩色成分
CA (
λ) と有彩色成分
CR (
λ) および
CB (
λ) は, マトリクス
Fとの内積をとることによりスカラー量の色空間座標値 (
LA, CR, CB) に変換される.提案モデルの色空間特性を, CIELABおよび色相直線性の良いIPT色空間と比較し, 画像の色領域分割への応用例を併せて紹介する.
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