モルモット盲腸紐のグリセリン筋を用いて, その諸性質を吟味した後, 本筋のATP収縮におけるCa
2+, Sr
2+およびBa
2+の賦活作用の大きさを比較検討して次のような成績を得た.
1) 50mM KCl, 5mM MgCl
2, 20mM histidine buffer溶液 (pH6.8) 中でのATP収縮にはMg
2+のほかに試薬中に含まれる微量のCa
2+が関与していた. 2) ATPの濃度と収縮との関係を検討した結果, 4mM ATPで最大張力を示した. 3) Ca
2+による賦活張力の発生閾値はpCa=5.5に, 最大張力を示す濃度はpCa=3.8において認められた. 4) Sr
2+による賦活張力の発生閾値はpSr=4附近にあり, またpSr=2.6附近において最大張力に近い張力を発生した. 5) Ba
2+による賦活張力の発生閾値はpBa=3.5附近に, またpBa=2.6において最大張力の76.2%の張力発生を示した. 6) pCa=8, pCa=7およびpCa=6の溶液中において4mM ATPにより, 常に最大張力の約25%の張力発生がみられ, 濃度に依存せず一定の張力を示した. 7) 溶液中の自由Ca
2+濃度は小川の見かけの安定度数を用いて算出し, Sr
2+およびBa
2+の場合にもCa
2+の場合に準じて補正した見かけの安定度数により算出した. 8) 以上のように盲腸紐グリセリン筋はCa
2+のほかにSr
2+およびBa2+にも感受性を示し, その大きさは最大張力の50%の張力を発生する各イオン濃度を求め, その逆数によって比較すると, Ca
2+: Sr
2+: Ba
2+=1: 1/28: 1/67となった.
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