順天堂医学
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56 巻, 5 号
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目次
Contents
話題 産業医への期待:最近の話題
  • 最近の話題
    横山 和仁
    2010 年56 巻5 号 p. 404-405
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
  • 土肥 誠太郎
    2010 年56 巻5 号 p. 406-413
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    最近の専属産業医には, 多くの業務と機能が求められています. 過重労働対策, メンタルヘルス対策, 生活習慣病対策, 復職判断と就業上の配慮, さらには作業環境管理や作業管理としての職場有害環境への対応などです. そして, 総括管理として労働安全衛生マネージメントシステム (OHSMS) への参画や, 労働衛生管理の全体計画の策定なども含まれています. 産業保健の課題としての優先順位は, (1) 職場有害要因による健康障害の防止, (2) 過重労働による健康障害の防止, (2) メンタルヘルス不調の防止とメンタルヘルスの増進, (2) 母性保護, (5) 生活習慣病の予防, (6) 癌対策?, (7) 感染症対策?……と考えています. 今回, 産業保健と臨床との比較的つながりの強い, 過重労働対策, メンタルヘルス対策, 生活習慣病対策について, 専属産業医としての機能や役割を具体的に解説できればと考えました. 〈過重労働対策〉産業医には過重労働そのものをなくすことは困難ですが, 過重労働による健康障害の防止については, 労働安全衛生法 (安衛法) において重要な役割を担うという矛盾した状態にあります. その中で, 産業医はどのような業務と役割が求められているのかを考えます. 〈メンタルヘルス対策〉産業医が行う重要な判断の一つに復職判定があります. 長期欠勤者をスムーズな復職に導き, 適切な復職判断を行うためには, 休業時からの継続的に対応してゆくことが重要であり, 復職のプロセスと各段階における対応の注意点を中心に解説したいと考えます. 〈生活習慣病対策〉働く人々に包括的な保健サービスを提供するとの観点から, 特定健診・保健指導を具体的に産業保健で取り組む場合の考え方や方法を解説したいと考えます.
  • 高橋 信雄
    2010 年56 巻5 号 p. 414-419
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    最近, 事業所が産業保健上の課題と認識していることは, 「メンタルヘルスケア」「高年齢化対応」「有害物質管理」「生活習慣病の増加と作業関連疾患」などである. 特にメンタルヘルスケアと作業関連疾患については, 社会経済情勢の変化を背景に大きな関心事となっている. これらへの対応は, 多くの事業所において, 産業保健スタッフや衛生関係スタッフおよび職場の管理者が, それぞれチームとしてあるいは相互に協力して行うが, 産業医は中心的な役割を果たし, いわば「要」としての存在である. 産業保健全般に関して, 産業医に期待する役割と機能は次のようなものである. (1) 医学的知見・技術をベースにした産業保健の実践, (2) 個人のケアの充実, (3) 組織の課題把握と対応の提言・指導, (4) 関係スタッフとの協働, リーダーシップ, (5) 社内・外関係者との良好な関係, (6) 教育・指導技法の習熟, (7) 産業医巡視, 衛生委員会における意見, (8) PDCAの実践, (9) ス タッフ育成等. そして, 仕事を円滑にすすめるためにお願いしたいこととして以下の点がよく話題になる. (1) 組織の一員としての認識をもって仕事をすすめる, (2) 保健医療の専門家であると同時に, 関連分野について造詣を深め, 指導して欲しい, (3) 組織内ルール, マナーへの配慮, (4) スタッフ育成, (5) 守秘義務と課題対応のバランス. このように産業保健に課されたテーマはたくさんあり, 産業医には多くのことが期待されている. やりがいのある面白い分野と思う.
  • 特に保健師を中心に
    福田 洋
    2010 年56 巻5 号 p. 420-429
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    日本経済は低成長・高ストレス・高齢化の時代に入っており, 今後産業保健活動や職域におけるヘルスプロモーション活動は, 産業医学の枠を越えた取り組みになっていくと思われる. 産業看護職, 人事労務担当者といった事業所内, 事業所間の情報交換だけでなく, 健康保険組合, 保健指導などのアウトソーシング先, 医療機関, 研究機関, 自治体など産業保健をとりまく様々な組織間の連携も重要性を増している. 本稿では, まず産業保健活動にかかわる職種と連携の概要について述べ, 生活習慣病, メンタルヘルス対策における連携の要点について記述した. さらに, 中小規模事業所における連携の具体例について, 風土や体制ができあがっているケースと, 産業保健活動の立ち上げから行ったケースについて示した. 最後に, 順天堂大学発祥の多職種産業保健スタッフの勉強会について紹介し, よりよい産業保健活動に寄与するために, 今後産業医が連携すべきスタッフの育成についても述べた.
  • 日笠 豊
    2010 年56 巻5 号 p. 430-436
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    産業保健の分野において, 産業医活動の大半を嘱託産業医が行っている事実からも, 嘱託産業医が占める役割は非常に大きいということができる. しかし医師が主役を務める医療の世界とは異なり, 会社という組織の中では産業医は裏方であり, そのような立場から求められる嘱託産業医像について考えを述べた. また産業医や産業医活動を支援する実務的な立場からの試みについても, その取り組みを紹介した. メタボリック・シンドローム対策については, アシックスが行っている運動能力測定を利用して運動指導を試みた. これは会社の産業衛生スタッフの協力もあり成果は出たものの, 商業ベースでは非常に高額になってしまうため実施が難しいことがわかった. メンタル対策としては, 組織のメンタル健全度 (モチベーション) の数値的な把握ができないかを検討し, ハーズバーグの理論を応用して計測を行った. これは非常によい結果が得られたが, 会社側の十分な理解とスタッフの協力が不可欠なために, 実務運用の困難さが理解された. また日々のカウンセリングの結果から, 現代日本人のもつ精神的脆弱さの根底には, 普遍的な問題として過剰なタナトス抑制があるのではないかという考えを述べた.
第26回都民公開講座《認知症の原因には何があるのか?―認知症が心配な貴方へ―》
  • 波田野 琢
    2010 年56 巻5 号 p. 438-443
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病はアルツハイマー病についで多い原因不明の神経変性疾患である. 大脳基底核のドパミン神経細胞が比較的選択的に脱落し, 運動機能障害が目立ち日常生活動作 (ADL) に大きな影響を与える. 約5%の患者さんには明らかな遺伝的背景により発病しているが, ほとんどは孤発性である. そのため, 複数の遺伝子および環境因子が影響する多因子遺伝病であると考えられている. さらに, パーキンソン病患者の剖検脳でLewy小体といわれる封入体が特徴であり, 封入体形成の機序を解明することで病態を明らかにできると期待されている. 遺伝的素因の面からは家族性パーキンソン病の原因遺伝子を突き止め, その遺伝子がコードする蛋白の機能を解析することで多くの知見が得られている. 家族性パーキンソン病の原因蛋白の多くは蛋白分解系, ミトコンドリア関連蛋白, 酸化ストレス, 膜輸送, 小胞体ストレスなどに関係しており, これらの細胞内機能が障害を受けることで発病すると考えられている. 環境因子としてはMPTPの発見が大きな手がかりとなっている. この薬剤はミトコンドリアの複合体Iを阻害するが, 曝露するとパーキンソン病類似の症状になる. また, 殺虫剤やプロテアソーム阻害剤などを実験動物に曝露するとパーキンソン病類似の変化が脳に出現することも報告されている. パーキンソン病の治療は1960年代にレボドパを補充することで症状は劇的に改善することが発見され, それ以降ドパミン受容体を刺激することが治療の中心になっている. レボドパ治療は最も有効であるが, 長期投与でウェアリングオフ, ジスキネジアといった症状の日内変動が問題となり, ドパミン受容体作動薬は日内変動の抑制はできるが眠気, 吐き気, 下腿浮腫, 心臓弁膜症などの副作用が問題になる. そのため, 個々の症例に併せて, 薬物調整をすることで, 長期にわたって日常生活維持させることが重要である.
  • -特に認知症について-
    高梨 雅史
    2010 年56 巻5 号 p. 444-446
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病の代表的症として“四大症状”といわれるものがある. それは,“安静時振戦 (手足が震える) ”,“筋固縮 (筋肉が硬くなる) ”,“無動症状 (体の動きが鈍くなる) ”,“姿勢反射障害 (立位時のバランス障害) ”などの運動機能の症状が挙げられる. しかし, 近年パーキンソン病でも運動機能の症状以外の様々な症状が出現することが認識されるようになった. これらの症状は“非運動症状”と呼ばれている. 具体的には精神神経症状 (幻覚や認知症など), 睡眠障害, 自律神経障害, 消化器症状, 感覚障害 (痛み, しびれなど) などが挙げられる. この中でも特に認知症についてはパーキンソン病の病態にとって重要な症状と考えられている. 認知症というと真っ先に思い浮かぶのは加齢による老年性認知症やアルツハイマー病であるが, パーキンソン病における認知症は老年性認知症やアルツハイマー病の認知症とは異なる特徴を有している. 一つは物忘れなどの記銘力障害だけでなく遂行機能と呼ばれるものが障害される. これは様々な情報をうまく処理して対応する機能でこれがうまくできないと発想の柔軟性や多様性がなくなり多くのことに対する対応ができなくなることである. 次に幻覚やうつ症状といった精神的な症状が関与しやすいことである. 幻覚やうつなどの精神症状はパーキンソン病の非運動症状でも頻度の多いものでありこれらの症状が合併すると本来の認知機能がさらに修飾されより複雑な症状となり対応に苦慮せざるを得ないことが多い. さらに, パーキンソン病に関連するl-dopaは運動だけでなく認知機能, 精神症状にも影響を及ぼすため治療として投与している抗パーキンソン病薬がこれらの症状に影響し十分な運動の治療ができなくなることも多くみられる. 認知症というと高齢者のイメージがあるが, パーキンソン病の認知機能障害はもちろん高齢者のほうが出現頻度は高いが, 比較的早期に高齢でない年齢でも発症することがある. このような場合精神症状が早期から出やすいという特徴もある. パーキンソン病の認知機能障害についてはアルツハイマー病に対するドネペジルや漢方の抑肝散などが治療約として使われることがあるが, 認知機能障害そのもののに対する効果は難しく運動症状の治療薬である抗パーキンソン病薬とのバランスを上手くとりながら薬剤治療だけでなくリハビリや介護の面でもサポートをしていく必要がある. この点は担当Drや看護師, 理学療法士らとコミュニケーションを取りながら家族だけで悩まずに問題に取り組んでいかなければならない.
  • 本井 ゆみ子
    2010 年56 巻5 号 p. 447-451
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    アルツハイマー病の成因としてアミロイドカスケード仮説は広く知られている. この仮説はアルツハイマー病脳にみられる老人斑の構成蛋白であるアミロイドβ蛋白が, 神経原線維変化の構成成分であるタウ蛋白をリン酸化し神経細胞死をもたらし, 認知症を引き起こすとする説であり, このカスケードを止める多様な薬剤の治験が現在も進行中である. しかし, アミロイドワクチンと近年注目されているアミロイドオリゴマーはこの仮説を変えようとしつつあり, 本稿ではこの変化について解説する. さらに, 後半では現在まで日本には抗認知症薬は1種類しかなかったが, 2011年に承認の可能性が高い薬剤3種について解説する.
  • 中村 真一郎
    2010 年56 巻5 号 p. 452-456
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    鑑別とは事物の質をみきわめることです. 一口に質をみきわめるといっても, どのような目的でみきわめたいのかによって着眼点は異なります. そこで本稿では一般の方にも役に立つ3 つの視点から認知症をみきわめるコツを解説します. どれも簡単なものばかりですから, 気楽にお読みください. 認知症をみきわめる3 つの視点とは以下のとおりです. 1. 治癒する見込みがあるのか? 2. 認知症ではどのような症状がみられるのか? 3. 自然な老化と認知症とはどのように違うのか? まず全体からみれば少数ではあるものの治癒の可能性のある病気について説明します. 続いて大多数を占める認知症の症状を理解するポイントを示します. 最後に老化に伴う自然な衰えと認知症との違いについての解説をしたうえで, それらを日常的な側面から見分けるヒントもお示しいたします.
原著
  • 母体から独立した状況下でのヤギ胎仔のbehavioral stateについて
    落合 圭子, 伊藤 茂, 吉田 幸洋, 江原 義郎, 桑原 慶紀
    2010 年56 巻5 号 p. 457-464
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    【目的】母体からの影響を除いた状況下での胎児のbehavioral states を評価することを目的として, われわれが開発したヤギ胎仔子宮外保育装置を用いて動物実験を行った. 【方法】妊娠118日-126日 (満期 : 150日) のヤギ胎仔10 頭を用いて子宮外保育実験を行った.子宮外保育実験は, われわれが独自に開発したA-VECMO (膜型人工肺による動-静脈式体外酸素化法) を用いた子宮外保育実験装置を用いて行った.子宮外保育開始後, 胎仔の状態が安定したところで, 血圧, 心電図 (ECG), 脳波 (EEG) などの生理学的パラメータをデジタルデータレコーダに記録した.記録したデータはオフラインでサンプリング周波数300Hz, 解像度16 ビットでAD 変換の後, コンピュータ解析を行った.それぞれのデータはEEGにおいて高振幅 (high-voltage) と低振幅 (low-voltage) の繰り返しが少なくとも1回は含まれる部分を3 ヵ所ランダムに選び, 自己相関モデルによるパワースペクトル解析を実施した. 【結果】10 頭すべての胎仔において, 子宮外保育実験中のEEG は高振幅期と低振幅期の2 つに分類され, それぞれが相互に繰り返し出現した.パワースペクトル解析の結果, 高振幅期脳波は0.5-4Hz, つまりデルタ波帯域に一致するピークを有する脳波であり, 低振幅期脳波は, これに加えて8-13Hz, つまりアルファ波帯域にもピークを有する脳波であることが明らかとなった. 【結論】A-VECMO (膜型人工肺による動- 静脈式体外酸素化法) を用いた子宮外保育実験中においても, 妊娠125 日前後のヤギ胎仔はnon-REM期およびREM 期あるいは覚醒期に匹敵する2 つの異なるbehavioral statesを示すことから, 未熟ヤギ胎仔において自律的なbehavioral statesの発達が認められることが判明した.
  • -1992年から2006 年の15 年間の順天堂大学医学部卒業生からのアンケート調査の解析-
    建部 一夫, 檀原 高, 各務 正, 酒井 理恵
    2010 年56 巻5 号 p. 465-471
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    目的: 近年プロフェッショナル・コンピテンスといわれている医師として必要な知識・技術やコミュニケーション能力等を, 日常の医療活動において発揮するということは, 医師として重要だが, 身につけることは容易ではない. 今回, 医師自身の成長満足度から, プロフェッショナル・コンピテンスの学習カリキュラムのあり方を検討した. 対象・方法: 1992 年から2006 年の15 年間の順天堂大学医学部卒業生 (医師) 1,186 名を対象に, アンケート調査を行った. プロフェッショナル・コンピテンスとしては, 人間関係 (relationship), 状況認識 (context), 認識行動 (cognitive), 探求性 (habits of mind), 社会性 (affective/moral), 内在化 (integrative) を対象とし, それぞれに関する質問票を作成した. 母集団を卒業年次別に卒後3-7 年, 卒後8-12 年, 卒後13-17 年の3 区分とした. 解析は, 全体, 卒後年次区分別, 性別, 専攻別, 勤務先別に分け, 成長満足度を従属変数として重回帰分析を行った. 結果・結語: 回答者数は481 名 (回収率40.6%) であった. 検討の結果, 人間関係 (relationship) と状況認識 (context) に関するコンピテンスの実践については, 十分な学習ができていない可能性があった. この2 つのコンピテンスは, 日常的に実践できることが成長満足度にプラスの影響があった. 卒後医学教育において, 人間関係 (relationship) と状況認識 (context) の学習について, より積極的な指導が推奨され, 一方, 医学部卒業後の医師の多くは, 認識行動 (cognitive), 探求性 (habits of mind), 社会性 (affective/moral), 内在化 (integrative) について学習できていることが示唆された.
症例報告
  • 高 志剛, 田代 良彦, 永易 希一, 丹羽 浩一郎, 小野 誠吾, 石山 隼, 杉本 起一, 秦 政輝, 神山 博彦, 小見山 博光, 高 ...
    2010 年56 巻5 号 p. 472-477
    発行日: 2010/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    症例は62歳, 女性で主訴は右下腹部痛.血液検査でCEA とCA19-9 の上昇を認め, CTとMRI検査では骨盤の右側に2.2cm大の腫瘤をみとめた.またPET/CT検査では同部位に強い集積を認め虫垂原発の悪性疾患を疑った.手術はSingle incisonal laparoscopic surgery (SILS) で開始したが虫垂腫瘍が右付属器と回腸末端部に癒着しており, 開腹移行となった.術中迅速病理検査で虫垂癌の右卵管浸潤と診断され, 回盲部切除術を施行した.虫垂原発の悪性疾患の鑑別診断にPET/CTは有用であると考えられた.
報告
抄録
順天堂医学原著論文投稿ガイドライン
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編集後記
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