目的: 近年プロフェッショナル・コンピテンスといわれている医師として必要な知識・技術やコミュニケーション能力等を, 日常の医療活動において発揮するということは, 医師として重要だが, 身につけることは容易ではない. 今回, 医師自身の成長満足度から, プロフェッショナル・コンピテンスの学習カリキュラムのあり方を検討した.
対象・方法: 1992 年から2006 年の15 年間の順天堂大学医学部卒業生 (医師) 1,186 名を対象に, アンケート調査を行った. プロフェッショナル・コンピテンスとしては, 人間関係 (relationship), 状況認識 (context), 認識行動 (cognitive), 探求性 (habits of mind), 社会性 (affective/moral), 内在化 (integrative) を対象とし, それぞれに関する質問票を作成した. 母集団を卒業年次別に卒後3-7 年, 卒後8-12 年, 卒後13-17 年の3 区分とした. 解析は, 全体, 卒後年次区分別, 性別, 専攻別, 勤務先別に分け, 成長満足度を従属変数として重回帰分析を行った.
結果・結語: 回答者数は481 名 (回収率40.6%) であった. 検討の結果, 人間関係 (relationship) と状況認識 (context) に関するコンピテンスの実践については, 十分な学習ができていない可能性があった. この2 つのコンピテンスは, 日常的に実践できることが成長満足度にプラスの影響があった. 卒後医学教育において, 人間関係 (relationship) と状況認識 (context) の学習について, より積極的な指導が推奨され, 一方, 医学部卒業後の医師の多くは, 認識行動 (cognitive), 探求性 (habits of mind), 社会性 (affective/moral), 内在化 (integrative) について学習できていることが示唆された.
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