順天堂医学
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48 巻, 4 号
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Contents
目次
特集 虚血性心疾患の予防と治療
  • -Metabolic syndromeへの新しい治療戦略-
    河盛 隆造
    2003 年 48 巻 4 号 p. 444-447
    発行日: 2003/03/28
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    生活習慣病として取り上げられる, 肥満症・高血圧症・糖尿病・高脂血症などは, そのひとつひとつが軽微であるにもかかわらずお互いに密接に絡み合い, 重篤な心血管疾患を引き起こすことがあり, Metabolic symdromeと呼ばれるにいたった. 2型糖尿病のnatural history, 正常血糖応答→Impaired Glucose Tolerance・Impaired Fasting Glycemia→糖尿病の発症, を変化させる薬剤を筆者は“metabolic modulators”として纏めている. metabolic modulatorsとして, チアゾリジン誘導体・スタチン・angiotensin II type 1 receptor阻害薬・ナテグリニド・αグルコシダーゼ阻害薬, などを挙げたい. 治療戦略として, なんらかの生活習慣病が発症した際に, 歩行習慣の獲得・肥満の是正, といったlife style interventionが必須となることはいうまでもない. さらに, metabolic moduiatorsを積極的に投与することが考察される.
  • 代田 浩之
    2003 年 48 巻 4 号 p. 448-457
    発行日: 2003/03/28
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    急性冠症候群はアテローマプラークに破綻あるいはびらんが発生し, 引き続く血栓形成によって発症すると考えられている. 破綻を起こしやすいプラークは不安定プラークと呼ばれ, その狭窄度は必ずしも高度ではなく75%未満の狭窄が7-8割を占める. 不安定プラークはその辺縁に活発に活動するT-リンパ球やマクロファージそして平滑筋細胞を持ち, それらから発現する蛋白融解酵素やサイトカイン, 増殖因子がプラークの不安定化を修飾する. 急性冠症候群の予防, 最近ではその急性期においても, これらのいわゆる炎症性反応を抑えてゆくことが重要と考えられるようになってきた. 急性冠症候群の中には典型的なST上昇型の急性心筋梗塞のほかにST上昇のない心筋梗塞 (non-ST上昇型心筋梗塞) あるいはQ波のない心筋梗塞 (非Q波型梗塞), 不安定狭心症や冠動脈疾患を原因とした突然死が含まれる. その診断においては臨床症状と心電図がもっとも重要であるが, 最近では新しい血清マーカーとして, トロポニンTや脂肪酸結合蛋白などが補助診断として有用である. これらを用いながら, 来院から診断そして治療までのプロセスをいかに短時間に能率的に行うかが重要である. 治療には内科治療だけでよい場合から, カテーテル治療, そして緊急に冠動脈バイパス術を必要とする症例まで様々である. その中で個々の重症度を速やかに評価し, 刻々と変化する病態を捉えながら, 時期を逃さず治療を選択し実行して行く必要がある. 大まかな治療の流れとしては, 初期治療に平行してリスクの評価を行い, 血行再建術の適応と時期を判断する. 急性期の内科治療, カテーテル治療あるいは冠動脈バイパス術に引き続き二次予防のプログラムを導入する. 治療内容としては一般療法 (鎮痛と安静), 虚血の軽減 (硝酸剤・β遮断剤あるいはCa拮抗薬) と責任病変の血行再建 (カテーテル治療と冠動脈バイパス術・その補助療法としての抗凝固剤・抗血小板剤), 再発予防と心機能不全の改善維持 (心臓リハビリテーション・冠危険因子の改善・抗血小板剤・高脂血症治療剤・β遮断剤・ACE阻害薬) を用いる. 二次予防には, A: aspirin and anticoagulants, B: blood pressure and beta blocker, C: cholesterol and cigarettes, D: Diet and diabetes, E: exercise and educationの原則で多面的なアプローチが必要である. この報告では, 最近の急性冠症候群の概念・診断・治療のプロセスを概説する.
  • --On pumpからoff pumpへの変遷--
    天野 篤
    2003 年 48 巻 4 号 p. 458-465
    発行日: 2003/03/28
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    冠状動脈バイパス術は体外循環心停止下 (on pump) に施行され, 手術手技の向上・医療器材の改良・心筋保護の改良などによって, 十分に満足できる成績にまで向上するようになった. しかし, 対象症例と冠状動脈病変の複雑化によって, よりハイリスクのものに関して手術成績を向上させる必要性に迫られるようになってきている. このような背景から, 各施設でいろいろな方法が模索されてきたが, 1995年頃から重症例に限って施行されていた心拍動下 (off pump) 冠状動脈バイパス術の改良によって目的が達せられるようになってきた. 重症例に対する成績の向上から適応の拡大もはかられ, 使用されるバイパスグラフトの採取法や手術器具も改良された. 周術期において体外循環の有無が合併症の発生について重要なことは勿論であるが, 術後に発生する心房細動についてはoff pump術後で新たな対応が必要になってきている. 最終的に術式の変遷によって患者への低侵襲化だけでなく, 手術の質を落とさずに医療経済的に貢献できるようになったと考えている.
原著
  • 武井 歩, 藤木 慶子, 糸井 素純, 村上 晶, 中安 清夫, 金井 淳
    2003 年 48 巻 4 号 p. 466-475
    発行日: 2003/03/28
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的・対象・方法: 1961年1月から2001年12月までの間に順天堂大学附属順天堂医院眼科外来, またはコンタクトレンズ外来に受診歴のある円錐角膜患者男性3199例・女性1460例, 計4659例を対象に, 診療カルテをもとに氏名・性別・生年月日・初診日・初診時年齢・両眼発症かまたは片眼発症か, (その後の経過も含め) デスメ膜の破裂の有無, 佐藤氏式後面一文字, または十文字切開術の既往の有無・角膜移植術の既往の有無・アレルギー疾患の合併の有無について調査した. 結果: 症例は全体で, 男性3199例・女性1460例, 計4659例, 男女比は2.19対1であった. 初診時の年代を10年ごとに分類しそれぞれの男女比をみると, 1970年以降では, 2.44対1 (1970-1979年) ・2.24対1 (1980-1989年) ・2.21対1 (1990-1999年) ・1.99対1 (2000-2001年) と徐々に女性患者の割合が増加していた. 経過中デスメ膜の破裂が認められたのは202例242眼, 佐藤氏式後面切開術の既往が認められたのは28例34眼であった. 角膜移植術が施行された症例は640例739眼で, 症例では13.7%, 眼数では8.2%を占めていた. 角膜移植術を受けた症例は初診時年代別にみると, 徐々に減少している傾向にあった. アレルギー疾患の既往の有無については, 聴取できた症例のうち何らかの既往がある症例は452例, 既往のない症例が668例であり, 40.4%に何らかのアレルギー疾患の既往が認められた. 考察: 41年間を通じた結果では, 男女比・病側性・デスメ膜破裂患者・後面切開術の既往・角膜移植術の既往・アレルギーの既往がある症例の割合は既存の報告とほぼ同等であった. 初診時年代ごとに分類すると, 近年女性患者の割合が増加し, 角膜移植術を要する患者が減少している傾向が認められた.
  • --発生部位・病型別治療評価--
    比企 さおり, 山高 篤行, 小林 弘幸, 岡田 安弘, 宮野 武
    2003 年 48 巻 4 号 p. 476-483
    発行日: 2003/03/28
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: リンパ管腫は病理学的には良性腫瘍であるが, 浸潤性の発育を認め, 重要臓器を圧迫する例もあり, しばしば治療に難渋する. 本邦での治療法は, かつては外科的切除が中心であったが, 近年はブレオマイシンやOK-432の局注といった硬化療法を第一選択とする考え方に変遷してきた. 本症は頭頚部に好発するが, それ以外にもリンパ管の存在する全ての部位に発症しうる. しかし, 発生部位別にみた治療法の選択, またCysticやCavernousといった病型別の治療法選択について統一した見解は得られていない. これらを考慮し, 各々の発生部位や病型に適した, 効果的な治療方針を確立することを目的に, 自験例105例の比較検討を行った. 対象: 1979年から1999年の21年間に当科で経験したリンパ管腫109例中, 無治療で経過観察した4例を除く105例を対象とした. 方法: リンパ管腫を画像診断と病理標本に基づき独自に4病型に分類し, 外科的切除と硬化療法のそれぞれの治療成績および合併症の発生率を発生部位と病型別に検討した. 結果: (1) 外科的切除の有効率 (88.4%) は, 硬化療法 (69.4%) より高かったが, 合併症の頻度が硬化療法の約3倍であった. (2) 発生部位では54.3%を占める頭頚部領域の治療成績が全体の成績を左右し, 切除に伴う重篤な合併症も同部位に多かった. (3) 病型ではCysticの中でも比較的Cavernousに近いと考えられるMultiple Cystic typeの治療成績が低かった. 結論: 自験例における硬化療法の有効率は69.4%で, 他施設のこれまでの報告 (80-90%) ほどの有効性を認めなかった. 発生部位別では頭頚部, 病型別ではMultiple Cystic typeの治療方針の検討が必要と考えられた.
  • 川南 勝彦
    2003 年 48 巻 4 号 p. 484-494
    発行日: 2003/03/28
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 〈難病患者に共通の主観的quality of life尺度 (主観的QOL尺度) 〉の開発時に課題となった点について検討し, さらに, Short Form 36 Health Survey (SF-36) を使用して主観的QOL尺度の基準関連妥当性を検討した. 対象: 全国の保健所のうち, 本研究に調査協力可能であった30保健所管内における新規, 継続特定疾患医療受給者2,060人とした. 方法: 特定疾患治療研究事業医療受給申請書, 臨床調査個人票, 主観的QOL尺度, SF-36を対象者に対して調査し, 内的構造の確認, SF-36各サブスケール得点との相関関係等を検討した. 結果: 1) 有効回答者数1,563人 (対象者2,060人のうち, 調査協力に同意しなかったあるいは回答拒否者497人), 有効回答率75.9%であった. 2) 因子構造として病気に対する《受容》と《志気》の2因子の構造 (2因子で初期の固有値1.0以上, 累積寄与率70%以上) で, 開発時の因子構造との変化は認められなかった. 3) 信頼性・内的整合性が高く (α係数=0.85), 主観的QOL尺度の得点分布において正規分布に近い分布を示した. 4) 重症度・病状との関連性については有意な関連性は認められなかった. 5) SF-36サブスケールのうち, 〈心の健康〉〈活力〉〈全体的な健康観〉で中程度以上 (r≧0.5) の有意な相関関係が認められた. 結論: 開発時の課題点を考慮して, 調査対象として難治性皮膚疾患, 特発性拡張型心筋症などの疾患を加えADLの低い対象者を含め, 各疾患の機能水準を評価するために重症度・病状を調査内容として加えて, 主観的QOL尺度の妥当性を検討した結果, 内的妥当性が得られ, 各疾患の重症度や病状に影響されることのない尺度であることが確認された. SF-36との関連性より基準関連妥当性のある尺度であることも確認された.
  • --感度と特異度について他の診断基準との比較--
    許 志泉, 戸叶 嘉明, 松平 蘭, 金井 美紀, 竹内 健, 高崎 芳成, 橋本 博史
    2003 年 48 巻 4 号 p. 495-504
    発行日: 2003/03/28
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的と方法: シェーグレン症候群 (Sjögren's Syndrome: SS) における診断基準はまだ国際的に統一されていない. 現在各国に広く使われているDaniels-Talal基準 (D-T基準) ・ヨーロッパ基準・日本基準 (厚生省改訂基準) と中国診断基準 (中国基準) の4基準の2基準以上を満たす96例をSS症例とし, 1基準以下を満たす19例をコントロール症例として, 各基準の感度と特異度を検討したうえ, 抗SS-A/B抗体の観点から中国基準の妥当性を検討した. 結果: 原発性SSの検討では, 感度は日本基準100%・中国基準98.3%・ヨーロッパ基準98.3%・D-T基準78.9%で, D-T基準は有意に低かった. コントロールの検討では, 特異度は日本基準100%・D-T基準100%・中国基準94.7%・ヨーロッパ基準89.5%であった. 中国基準を満たす原発性SSはコントロールと比べ, シャーマー試験・ローズベンガル試験・蛍光色素試験・口唇唾液腺生検・ガムテスト・リウマトイド因子 (RF), 高γ-グロブリン血症・腎機能障害・白血球減少・貧血が有意に多かった. 抗SS-A抗体・抗SS-B抗体のいずれも陰性例に比べ, いずれか陽性例のRF, 高γ-グロブリン血症がより多く, 尿異常・腎機能障害がより少ないことを認めた. この結果をもとにして, 抗SS-A/B抗体および涙腺と唾液腺に関連する検査を含めて中国基準の改訂試案を作成し, 感度と特異度を検討したところ, いずれも100%を示した. 結論: 中国基準は日本基準に次いで感度と特異度が優れていたが, 特異性の高い項目を組み合わせることにより, より少ない項目数で高い感度と特異度を有する基準に改訂することができた.
  • 森近 浩, 橋本 隆之, 草野 マサ子, 倉本 孝雄, 林 敬民, 稲見 邦晃, 高桜 芳郎
    2003 年 48 巻 4 号 p. 505-515
    発行日: 2003/03/28
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 幽門輪機能不全において逆流性食道炎によく遭遇する. 幽門輪機能正常と比較し, 胃の形状と肥満より検討した. 対象: 男性647例 (平均58.6歳) ・女性413例 (平均62.0歳) 計1,060例 (平均59.9歳) である. 方法: 幽門輪機能不全の判定は上部消化管内視鏡検査時に幽門輪の完全に機能しないものとし, 胃の形状は上部消化管X線立位正面充盈像で造影剤の食道から胃に入り込む線と胃軸との角度とした. 肥満は日本肥満学会の基準により, また逆流性食道炎の判定はロスアンゼルス分類による内視鏡所見基準に従った. 結果: 幽門輪機能不全の逆流性食道炎の発症は幽門輪機能正常の約2倍であり, その発症率は牛角胃様の胃III群では87.75%, 肥満では86.67%であった. 結語: 幽門輪機能不全は牛角胃になるほど, また肥満ほど逆流性食道炎の発症率は高率となり, 十二指腸胃逆流にも注目すべきである.
症例報告
  • 松永 肇, 藤田 綾, 小谷野 肇, 小沼 富男, 河盛 隆造, 芹沢 信子, 佐藤 信紘
    2003 年 48 巻 4 号 p. 516-519
    発行日: 2003/03/28
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    アルコール多飲による急性膵炎に伴って急激に発症した糖尿病で, 膵炎治癒後もインスリン依存状態を継続している症例を経験した. 本症例は, (1) 抗GAD抗体等の糖尿病関連各種自己抗体が陰性, (2) ケトアシドーシスを伴い, 急激に発症, (3) 発症時, 567mg/dlと著明な高血糖を認めたにも関わらず, HbAlcは5.6%と正常, (4) 尿中Cペプチド3μg/Dayと, 発症時既にインスリン分泌が枯渇, (5) 発症時, 血中アミラーゼ1282mg/dl, リパーゼ5815mg/dlと血中膵外分泌酵素が上昇, などの特徴を有した. さらに膵炎治癒後もインスリン自己分泌能は回復せず, 1年以上継続的にインスリン依存状態となっており, 非自己免疫性劇症1型糖尿病と考えられた.
抄録
てがみ
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編集後記
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