胎盤の絨毛膜を介する物質の輸送機構とこれが胎児発育に及ぼす影響との関連性を知るためにヒト胎盤絨毛膜のCa-ATPase活性およびNa・K-ATPase活性を測定し, 同時にAdenylate Cyclase-cyclic AMP系を測定し臨床像との関連性を検討し次の成績を得た.
1. ヒト胎盤絨毛Ca-ATPase活性を比活性 (μmoles Pi/mg Protein/30min) でみるとその値は, 妊娠初期・中期および後期AFDで, 各々21.4±2.4, 31.4±6.7および25.8±4.4であった.
2. ヒト胎盤絨毛Na・K-ATPase活性を比活性 (μmoles Pi/mg Protein/30min) でみるとその値は妊娠初期・中期および後期AFDで, 各々0.95±0.10, 1.86±0.40および1.58±0.44であった.
3. LFDおよびSFD症例におけるヒト胎盤絨毛Ca-ATPase活性とNa・K-ATPase活性を比活性で示すと, Ca-ATPase活性はLFDで27.9±1.9, SFDで21.2±1.8であり, Na・K-ATPase活性ではLFDで1.50±0.35, SFDで1.68±0.34であった.
4. ヒト胎盤絨毛Adenylate Cyclase活性を比活性 (p moles of cyclic AMP formed/mg protein/15min) で示すと妊娠初期・中期および後期AFDの値は, 各々59.9±19, 7,100.9±19.9および115.2±27.8であった.
5. ヒト胎盤絨毛cyclic AMP濃度は妊娠初期・中期および後期AFDで, 各々21.3±8.0, 12.8±2.8および15.2±5.6p moles/mg Proteinであった.
6. LFDおよびSFD症例におけるヒト胎盤絨毛Adenylate Cyclase活性は比活性で示すとLFDでは149.7±13.8, SFDでは95.0±11. 第であり, またsyclic AMP濃度は, LFDで19.2±2.4, SFDで9.9±1.6p moles/mg Proteinであった.
以上の結果, 測定したこれらの物質は妊娠中期より高値を示し, 胎児発育がスパートする状態とほぼ一致する傾向にあり, これらの物質の代謝調節機構の中で果す役割から考察すると, 胎盤における物質のTransport機構及び胎児発育の一部にそれぞれ重要な役割を担っている事が示唆された.
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