骨格筋に強縮刺激を繰り返し断続的に与え, 疲労曲線と同様に膜電位の経過を観察し次の結果を得た.
(1) 0.4V/cm刺激 (supramaximalで最小の刺激) で疲労した筋は容易に恢復するが, 4V/cm刺激 (興奮伝導を絶つた筋に収縮を起し得る強さの刺激) によつて疲労した筋は恢復しない.この時筋線維は顕微鏡下で損傷されたと思われる像を示す.
(2) 刺激を繰り返し与えると収縮高は漸次小さくなるが, 刺激休止期の膜電位は最初数回の刺激で急に減少し, その後は略一定の値に保たれている.0.4V/cmで刺激した時, 刺激を中止すると膜電位は速やかに刺激前の値に戻る.
(3) この結果から, 正常筋の収縮の大きさと収縮中の膜電位の変化との間には一定の関係は無いことが結論された.従つて原線維の収縮と膜現象との間に疲労し易い中間過程が介在することが要請された.
(4) 外液のK
+を増すか, 麻酔薬の添加, 或はNa
+の除去により, 興奮伝導を絶つた条件下では膜電位の速かな激少は認められず, 刺激が繰返される度に膜電位は極く僅かではあるが減少し, 収縮高もまた少しつつ減少していく.
(5) この結果から, 活動電位の消失した筋では電流によつて膜電位と収縮高とは相伴つて減少するが, 膜電位の減少が収縮の原因なのではなくて, 電流が直接収縮を起させ, 膜の脱分極をも促していると考えられた.
終りに臨み, 終始御懇篤なる御指導と, 御校閲をいただいた恩師真島英信教授, 並びに細胞内電極法による実験に当つて御援助をいただいた竹内宣子博士に深く感謝の意を捧げます.
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