順天堂医学
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53 巻, 4 号
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Contents
目次
特集 食道癌治療の最前線
  • -3領域リンパ節郭清手術の生存解析から-
    梶山 美明, 岩沼 佳見, 富田 夏実, 天野 高行, 諫山 冬美, 酒井 康孝, 大内 一智, 内田 陽介, 高山 敏夫, 櫛田 知志, ...
    2007 年 53 巻 4 号 p. 542-551
    発行日: 2007/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    悪性度の高い食道癌に対してリンパ節郭清の徹底化を図るためにわが国で3領域リンパ節郭清手術が完成された. 他の消化器癌手術に比べ難易度や侵襲度の高い本手術の適応と限界を, 生存解析から明らかにすることが本研究の目的である. 食道癌に対する3領域リンパ節郭清手術後の生存解析の結果から, その治療成績は必ずしも均霑化されておらず, 施設間格差が存在すると考えられる. また, 3領域リンパ節郭清手術の郭清効果が十分に期待できるのは転移個数が5個以下の症例であり, 厳格な3領域リンパ節郭清手術を施行することによって, 局所進行食道癌に対して60%前後の5年生存率が期待でき, この生存率は根治化学放射線治療の成績よりも良好であった. 一方リンパ節転移個数は食道癌の最も強力な予後因子であり, 転移個数が6個以上になると予後は急激に低下するためリンパ節多数転移例に対しては今後新たな全身治療法の開発が必須であると考えられる.
  • 富田 夏実, 梶山 美明, 天野 高行, 諫山 冬美, 大内 一智, 酒井 康孝, 内田 陽介, 高山 敏夫, 櫛田 知志, 折田 創, 橋 ...
    2007 年 53 巻 4 号 p. 552-566
    発行日: 2007/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    背景: 食道表在癌に対する内視鏡治療は標準的治療法として広く普及している. 近年, 食道癌内視鏡治療にESD法 (内視鏡的粘膜下層剥離術) を行われるようになったが, ESDの有用性は十分に検討されていない. 方法: 1998年4月から2007年6月に当院で経験した食道癌に対して内視鏡的粘膜切除術 (EMR) が施行された食道表在癌188例271病変をretrospectiveに検討した. EMR方法は従来法である2チャンネル法, EEMR法, EMR-C法と, 最近普及しつつあるESD法を使用した. 結果: EMR後の局所再発を全体で4.4% (12/271) に認めた. 従来法では8.0% (12/150), ESD法では0% (0/150) であった. 一括切除率はESDでは94.2% (114/121), 従来のEMR法では70% (105/150) であった. 12例のうち手術が1例, 化学放射線治療が1例, 内視鏡治療が10例に行われた. 結論: 食道ESDはEMRより一括切除率が高く詳細な病理学的検討が可能となり, 局所再発率が低いことより, ESDは食道表在癌の治療に有用であると考える.
  • 唐澤 久美子, 伊藤 佳菜, 廣渡 寿子, 伊沢 博美, 古谷 智久, 黒河 千恵, 小澤 修一
    2007 年 53 巻 4 号 p. 567-575
    発行日: 2007/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    放射線療法は世界のがん患者の50%が受けている治療法であるが, 日本での普及は遅れていた. 近年の治療技術の進歩で, 効果は増強, 有害事象はさらに減少し, 手術に取って代った領域もある. 癌患者の高齢化とともに合併症を有する患者も増え, 低侵襲で根治性があり, 外来施行も可能な治療として, 本邦でも利用率が増加しつつある. 消化器癌は, 放射線療法が不得手とする領域であるが, その中で, 扁平上皮癌が多い食道癌は, 放射線療法が手術と肩を並べる事が出来る数少ない癌腫である. しかし, 放射線単独療法の治療成績は不良で, ほとんどの場合, 化学放射線療法が適応となる. 白金製剤+5FUに加え, 最近ではタキサン系薬剤などの併用による化学放射線療法が行われその治療成績は, 放射線単独と比較して明らかに改善している. 化学放射線療法に手術を組み合わせるのが良いかについての結論は出ていない. さらに近年の進歩は, 照射技術そのものの改善であり, 強度変調放射線治療Intensity Modulated Radiation Therapy (IM-RT), イメージガイド放射線治療Image Guided Radiation Therapy (IGRT) などによりさらに高精度で有効な治療が可能となってきている.
  • 松本 俊治
    2007 年 53 巻 4 号 p. 576-580
    発行日: 2007/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    食道扁平上皮癌の化学・放射線療法の感受性予測因子について述べた. Human epidermal growth factor receptor 2 (HER2) の発現とBaxの低発現は化学・放射線治療抵抗性の予測因子になり, p21発現は治療良好の予測因子になる. 食道扁平上皮癌の分子標的薬としてHER2抗体薬であるTrastuzumab (Herceptin), epidermal growth facor receptor (EGFR) 抗体薬であるCetuximab (Erbitux) は報告されているが, これら薬剤の効果は確定していない. 食道扁平上皮癌の個別治療は, 各々の患者および癌腫の化学・放射線治療に対する感受性にあわせた化学・放射線治療を行うべきである.
原著
  • 松葉 剛, 鈴木 大地, 稲葉 裕
    2007 年 53 巻 4 号 p. 581-587
    発行日: 2007/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 今日, 海外に長期にわたり駐在する邦人の数は永住者および長期滞在者を合わせると100万人を超え, その中でもタイ国にはバンコクを中心に36,327人 (2005年) の在留邦人が暮らしている. 本研究では, 海外長期滞在者の健康づくりに資するデータを提供することを目的とし, タイ国駐在邦人の運動習慣について調査し, 運動による生活習慣病の予防やストレスの軽減との関連を分析した. 対象と方法: 2005年12月, タイ国バンコクにて20歳以上の在留邦人を対象にクラスター抽出によりバンコク周辺に事業所を置く日本の企業および日本人学校を無作為に抽出し, 職員およびその家族119名に対し運動習慣に関する質問紙調査を行った. その結果118名 (男性84名, 女性30名, 記載なし不明4名) より回答が得られた. その内希望者に対し血圧 (60名) および内臓脂肪 (58名) の測定を行った. ストレス測定に関しては一般健康調査票 (General Health Questionnaire) 12 (GHQ12) を用いた. 結果および考察: タイ国駐在邦人においては運動施設へのアクセスがよく, 定期的な運動習慣を持つものが多かった. 特にバンコクでは周りに先進工業国と同等の運動施設を備え, 駐在員や家族が定期的運動を継続し易い環境にあることが示唆された. 身体測定値では定期的運動群と非定期的運動群との間に統計学的な有意差を認めるものは見られなかったが, 拡張期血圧に関しては有意差は認められないものの定期的運動群のほうが低い値を示した. 生活満足度については, 有意差はないものの定期運動群のほうで〈ふつう〉以上の回答が多くみられた. 環境要因を除くと共分散構造分析において運動がもっとも健康な生活に影響を与える要因となっていた. 個人の行動変容によって改善が期待される要因として, 運動は食生活やストレスといった要因より影響のあることが示された.
  • 張 明姫, 松葉 剛, 北川 浩輝, 斉藤 弥束, 佐藤 靖子, 関口 泰弘, 稲葉 裕
    2007 年 53 巻 4 号 p. 588-597
    発行日: 2007/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: HIV/AIDSに関する保健政策の効果と改善点を明らかにし, 今後の保健政策に活用できるデータを収集することを目的として, 中国雲南省における住民, 特にミャンマーとの国境地帯に居住する住民を対象にHIV/AIDSに対する知識, 態度, 予防行動について質問紙を用いて調査を行った. 対象. 方法: 2006年11月4日-12日, 中国雲南省でミャンマーと国境を接する地域で15歳以上の住民を対象に質問紙を用いた調査を行った. 調査に関してはインタビューアーが中国語で行ったが, 文字の読める対象者には自記式で回答をお願いした. 結果と考察: HIV/AIDSに関する知識を決定するのは居住地域, および学歴であるという結果が得られた. 農村に居住するものや学歴が小卒以下の対象者では, HIVとAIDSとの違いには〈知らない〉と答え, AIDSはすぐに死んでしまう病気だと認識し, 自身に感染の危険があるかについては〈分からない〉と回答するものが多かった. さらに知識の量が態度に強く影響していることが示唆され, 知識の少ないものの方がHIV/AIDSとともに生きる者に対する偏見が強いことが明らかになった. 農民や, 学歴が小卒以下であると, まず知識, それが態度, 予防行動へと差が出てしまうようであるが, このようなファクターについて早急な改善は難しいと感じられた. まず生活水準や教育インフラをはじめとした社会開発水準を向上させなければ, 教育や疾病予防対策が行き届きにくく, 住民の関心も高まらないと予想される. そのような問題に関する対応策をとった上で, HIV/AIDS対策として, まず字の読めない住民でもわかりやすいロールプレイなどの手法や, 少数民族の地域を対象とした文化的背景を考慮した形での健康教育手法の普及が望まれる.
  • 福田 友紀子, 杉原 栄一郎, 中島 直也, 饗庭 三代治, 礒沼 弘, 林田 康男
    2007 年 53 巻 4 号 p. 598-604
    発行日: 2007/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 発熱は一般臨床の場で頻繁に遭遇する症状であり種々多様な疾患によって認められる. また, 高齢者における発熱の原因疾患の診断は, 各疾患の症状や病型が非定型的であったり, 複数の修飾因子が加わったりして, 確定診断に苦慮することも少なくない. そこで, 発熱を主訴として急性期疾患を対象に取り扱う高齢者専門病院に入院を要した後期高齢者を対象に, 入院時の発熱の程度とその病態・重症度との関連などの臨床的検討を行った. 対象: 2002年6月から2006年9月の間に, 順天堂東京江東高齢者医療センター高齢者総合診療科に発熱を主訴に入院した, 年齢が75歳以上の107例を対象とした. 方法: 後期高齢発熱症例を微熱群 (37.0-37.9℃) と高熱群 (38.0℃以上) に分け, 原因疾患の調査・炎症所見・血清総蛋白値・血清アルブミン値を両群で比較検討した. また, 発熱の原因疾患群別に炎症所見の程度に差があるかも検討した. 結果: 発熱の原因疾患は, 微熱群・高熱群ともに呼吸器疾患, 腎・泌尿器疾患が多く, なかでも肺炎, 尿路感染症などの感染症が多く認められた. 両群ともに白血球数, 好中球比率, CRP値は高値を示したが, 両群間に有意差は認めなかった. 血清総蛋白値, 血清アルブミン値は両群ともに低値であり, 有意差も認めなかった. 発熱の原因疾患としては, 肺炎群において炎症所見が最も高値を示した. 結語: 後期高齢発熱症例においては, 微熱群・高熱群ともに, 肺炎, 尿路感染症などの感染症の頻度が高いことを考慮して, 初期対応をする必要がある. また, 感染症の存在診断には, 白血球数のみならず, 好中球比率およびCRP値の測定が有用と考えられた. さらに, 両群間において, 炎症所見の程度や死亡率に有意な差異を認めず, むしろ微熱群で死亡例が多い傾向にあったことから, 発熱の程度と病態の重症度とは必ずしも一致しないと考えられた.
  • 助友 裕子, 稲葉 裕, 島内 憲夫
    2007 年 53 巻 4 号 p. 605-614
    発行日: 2007/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 市区町村健康政策行政担当者の属性・意識・生活状況と政策中の環境整備指標の採用度および策定における満足度との関連を明らかにする. 対象および方法: 関東地方1都6県の509市区町村における主な担当者に対し, 郵送法による質問紙調査を実施した. 現状特定・現状分析・問題と課題の決定・政策形成要因, 政策中の諸指標, 策定プロセスにおける満足度, 価値観と情況を調査項目とし, 有効回答274名 (回収率60.2%) のうち満足度と各論における環境整備指標の採用に関する質問にそれぞれ回答のあった143名ならびに149名を分析対象とした. 環境整備指標採用度ならびに担当者の満足度をそれぞれ従属変数とし, 各質問項目との四分表を作成し, 二項ロジスティック回帰分析によりオッズ比 (OR) および95%信頼区間 (CI) を求めた. 結果: 健康政策策定プロセスにおいては, 庁内の公私にわたる交流が環境整備指標採用度と, 庁外の交流や担当者の内面的情況が満足度と関連していた. 担当者の価値観と情況においては, 自らの健康がつくられる場所 (地域), 時 (食事中) を認めないことが満足度や環境整備指標採用度と関連していた. その他においては, 他課職員の巻き込みが環境整備指標採用度と関連していた. 結論: 健康政策策定プロセスにおける, 庁舎内外の組織的・個人的交流は, 行政担当者の満足度を促すと同時に環境整備にも有益である. 一方で, 満足度が高く環境整備の採用に関心がある場合, 健康をつくる時 (食生活) と場所 (地域性) が乏しい者が多いという側面においては, サービス提供者として矛盾が生じていた. この矛盾に注目した実態解明が必要である.
  • 吉儀 宏, 河村 剛光, 田中 稔, 溝田 淳
    2007 年 53 巻 4 号 p. 615-621
    発行日: 2007/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 正常者において前後方向動体視力 (VKVA) とパターンリバーサル視覚誘発電位 (VEP) の相関に関して検討した. 対象および方法: 矯正下での静止視力 (SVA) が1.0以上の正常成人男性16名 (19-25歳) を対象として, SVA, VKVA, およびパターンリバーサルVEPの記録を行い, VEPのN75, P100, N135の頂点潜時と, SVA, VKVAのlogMAR視力換算したものとの相関を検討し, またSVAとVKVAの比とVEPの各成分について検討した. 結果: SVAとVEPの各成分の間には有意な相関は見られなかったが, VKVAではVEPのN75成分の頂点潜時と有意な相関があり, VKVAの良好なほうが, N75の頂点潜時の短くなっていた. 結論: 本研究の結果から, VKVAとVEPのN75成分の頂点潜時と有意な相関が見られ, 一次視覚野における初期視覚の差がVKVAに関連あるものと推察された.
  • 君塚 孝雄, 玉本 文彦
    2007 年 53 巻 4 号 p. 622-630
    発行日: 2007/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 脳血管障害患者の高次脳機能障害の予後予測に対するリハビリテーション前の脳血流シンチグラフィの有用性につき検討する. 対象: 1997年6月-2001年1月までの4年間に脳血管障害で入院し, 回復期リハビリテーションを施行された204症例を対象とした. 全例が脳血管障害の初発例で, 開頭手術歴や他施設でのリハビリテーション歴の無い症例である. 方法: 入院時と退院時にFunctional Independence Measure (FIM) スコアを算出し, そのうちの認知5項目を高次脳機能の指標として使用した. また, リハビリテーション前に99mTc-ECD脳血流シンチグラフィを施行し, 局所脳血流量とリハビリテーション前後の高次脳機能との関係を統計学的に評価した. 結果: 障害側の前頭葉, 側頭葉, 頭頂葉の局所脳血流量は高次脳機能と相関があり, 特にリハビリテーション後での相関が高かった. 結論: リハビリテーション前の脳血流シンチグラフィによる脳血流量測定は, リハビリテーション後の高次脳機能の予後予測に有用であった.
  • 木原 正夫, 鈴木 祐介, 相澤 昌史, 鈴木 仁, 堀越 哲, 富野 康日己
    2007 年 53 巻 4 号 p. 631-638
    発行日: 2007/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: IgA腎症は原発性糸球体腎炎の大半を占め, 20年の経過で約40%は末期腎不全に至る予後不良の疾患であるが, 病因はいまだ不明である. 上気道感染後に腎炎が増悪することやワクチンを用いた臨床研究の結果などから, 粘膜免疫の異常が示唆されている. 最近われわれは, IgA腎症自然発症モデル“Groupe dddY mice”を確立した. このモデルの疾患感受性遺伝子は, ヒト家族性IgA腎症の感受性遺伝子と相同性を示したことから, 病因解明に有用なモデルであるといえる. 今回われわれは, 粘膜免疫反応において重要な役割を果たす樹状細胞dendritic cell (DC) に着目し, 腎炎発症ddYマウスを用いて, IgA腎症におけるDCのB細胞に及ぼす役割を検討した. 対象と方法: 腎炎発症ddYマウス, 腎炎未発症ddYマウスの脾臓からDCを, 正常BALB/cマウスの脾臓からB細胞を抽出した. DCとB細胞とを共培養し, 得られた上清のIgAをELISAにて測定した. また, それぞれのマウスから得られたDCよりRNAを抽出し, IgA産生に関わるサイトカインの発現をreal-time PCRを用いて解析した. 結果: DCとB細胞の共培養の結果, 腎炎発症ddYマウスDCが腎炎未発症ddYマウスDCと比較して, より強力にB細胞からのIgA産生を誘導した (p<0.01). 腎炎発症ddYマウスDCでは, APRIL (a proliferation-inducing ligand), IL-6のmRNA発現が有意に増加していることが判明した. 結語: マウスIgA腎症のDCはAPRIL, IL-6を産生することにより, B細胞からIgA産生性の形質細胞への分化をT細胞非依存的に誘導し, その結果液性免疫を介してIgA腎症の進展もしくは発症に関与している可能性が示めされた.
  • 井沼 治朗, 濱田 千江子, 島岡 哲太郎, 関口 嘉, 発田 陽子, 井尾 浩章, 金子 佳代, 堀越 哲, 富野 康日己
    2007 年 53 巻 4 号 p. 639-646
    発行日: 2007/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 多くの腎性貧血を有する腹膜透析患者に投与されているエリスロポエチン (Epo) は, 尿細管結紮再灌流腎症により誘導されたtransforming growth factor-β1 (TGF-β1) の発現を抑制することが報告されている. また, 低酸素状態の腎尿細管上皮細胞よりhypoxia-inducible factor-1α (HIF-1α) が発現することが確認され, TGF-β1の下流因子であるconnective tissue growth factor (CTGF) の発現を誘導することが報告されている. 今回, 我々はクロールヘキシジングルコネート (CG) 刺激による腹膜硬化モデルラットを用い, Epoの腹膜への影響について検討した. 対象・方法: 8週齢の雄Sprague-Dawleyラットを用いた. CGのみ腹腔内投与を行ったCG群, CGとEpoの腹腔内投与を行ったCG+Epo群, Epoのみ腹腔内投与を行ったEpo群および対照群の4群を作成し, 投与開始28日後に壁側腹膜を採取し, 免疫組織学的検索 (エリスロポエチン受容体 (EpoR), HIF-1α, pimonidazole) を行った. また, real-time PCRによるHIF-1α, TGF-β1, CTGFの遺伝子発現を検索した. 結果: CG群の腹膜は著明な肥厚を認めたが, Epoの併用 (CG+Epo群) により肥厚は抑制された. CG群の肥厚した腹膜内にEpo R, HIF-1α, pimonidazole陽性細胞を多数認められたが, これらはEpoの併用 (CG+Epo群) により減少した. Epo投与群 (CG+Epo群, Epo群) でのヘマトクリットは, 著明に上昇した. real-timePCRにより, CG群でHIF-1α・TGF-β1・CTGF遺伝子の強い発現が認められ, Epoの併用 (CG+Epo群) によりこれらの遺伝子発現は抑制された. 結論: 腹膜硬化モデルラットの腹膜にEpo R, HIF-1α, pimonidazole陽性細胞が多数認められ, 低酸素状態であることが示された. Epoの投与により腹膜組織の虚血およびTGF-β1を介したCTGFの発現を抑制することで, 腹膜の肥厚を抑制することが示された.
症例報告
  • 一瀬 哲夫, 諏訪 哲, 川村 正樹, 金村 俊宏, 宮崎 忠史, 宮崎 彩記子, 林 英守, 伊藤 誠悟, 櫻井 秀彦, 住吉 正孝
    2007 年 53 巻 4 号 p. 647-650
    発行日: 2007/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    62歳の男性, 上大静脈の深部静脈血栓症に対して上大静脈にRetrieval type Vena Cava Filter (Günther TulipTM Vena Cava Filter) を留置し線溶療法を行った. 治療後も浮遊血栓が残存し, フィルターは永久留置とした. 外来で抗凝固療法中に血栓の増大を認め, 再度線溶療法を施行し血栓は消失した. フィルター留置は合併症なく, 安全に施行可能であった. フィルターの長期留置は血栓症再発のリスク等あり慎重な意見もあるが, 本例のような塞栓症の再発リスクの高い場合はフィルターを恒久的に留置する必要があると思われる.
抄録
順天堂医学原著論文投稿ガイドライン
順天堂医学投稿規程
編集後記
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