目的: 発熱は一般臨床の場で頻繁に遭遇する症状であり種々多様な疾患によって認められる. また, 高齢者における発熱の原因疾患の診断は, 各疾患の症状や病型が非定型的であったり, 複数の修飾因子が加わったりして, 確定診断に苦慮することも少なくない. そこで, 発熱を主訴として急性期疾患を対象に取り扱う高齢者専門病院に入院を要した後期高齢者を対象に, 入院時の発熱の程度とその病態・重症度との関連などの臨床的検討を行った.
対象: 2002年6月から2006年9月の間に, 順天堂東京江東高齢者医療センター高齢者総合診療科に発熱を主訴に入院した, 年齢が75歳以上の107例を対象とした.
方法: 後期高齢発熱症例を微熱群 (37.0-37.9℃) と高熱群 (38.0℃以上) に分け, 原因疾患の調査・炎症所見・血清総蛋白値・血清アルブミン値を両群で比較検討した. また, 発熱の原因疾患群別に炎症所見の程度に差があるかも検討した.
結果: 発熱の原因疾患は, 微熱群・高熱群ともに呼吸器疾患, 腎・泌尿器疾患が多く, なかでも肺炎, 尿路感染症などの感染症が多く認められた. 両群ともに白血球数, 好中球比率, CRP値は高値を示したが, 両群間に有意差は認めなかった. 血清総蛋白値, 血清アルブミン値は両群ともに低値であり, 有意差も認めなかった. 発熱の原因疾患としては, 肺炎群において炎症所見が最も高値を示した.
結語: 後期高齢発熱症例においては, 微熱群・高熱群ともに, 肺炎, 尿路感染症などの感染症の頻度が高いことを考慮して, 初期対応をする必要がある. また, 感染症の存在診断には, 白血球数のみならず, 好中球比率およびCRP値の測定が有用と考えられた. さらに, 両群間において, 炎症所見の程度や死亡率に有意な差異を認めず, むしろ微熱群で死亡例が多い傾向にあったことから, 発熱の程度と病態の重症度とは必ずしも一致しないと考えられた.
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