アルカリ性ホスファターゼisoenzymeの構造と機能の相関性については, いくつかの研究室でなされている. この研究は, 酵素を糖分解酵素およびタンパク分解酵素で消化したときの変化を観察し, 各isoenzymeの糖組成と処理酵素の物理化学的性質, 酵素活性, 各種レクチンや血液型抗血清との親和性, 酵素の糖鎖の代謝回転と関係を調べたものである.
1. 成人小腸酵素は僅かのシアル酸しか持たないが胎児小腸酵素は明らかにシアロ糖タンパクであった. また, その他の糖組成も両者で異なっていた. しかしながら, 成人肝臓と胎児小腸酵素標品の糖組成は似ていた.
2. シアリダーゼ処理肝臓酵素のKm値は小腸酵素のKm値に近づく. しかしながらlog Km値のpH依存性は両者で明らかに異なっていた.
3. 脱シアロ肝臓酵素の耐熱性や, タンパク分解酵素による消化の結果は, 0.5%SDS存在下で, 未処理肝臓酵素よりも不安定となった. また未処理および脱シアロ肝臓酵素のヘリックス含量はそれぞれ39.0%ならびに30.8%, 見かけの分子量は175,000および168,000と計算された.
4. α-マンノシダーゼ, exo-N-アセチルD-グルコサミダーゼ, およびendo-N-アセチル-D-グルコサミニダーゼD処理をした小腸酵素の活性は減小した. このうちα-マンノシダーゼ'処理をした酵素活性が最も著明に減少し, 同時にその至適Mg濃度は40mMから5-10mMに変化した.
5. コンカナバリンAは酵素活性を二相性に変化させた. 最初の賦活域は0-0.02μMの, つぎの阻害域はそれ以上の濃いコンカナバリンAで生ずる. またHill係数は賦活域で0.5, 阻害域で1.0と計算された.
電気泳動法によるレクチンと酵素の相互作用の結果から, 本酵素のもつ糖鎖は分泌型糖タンパクと似たものと思われた.
6. パパイン処理酵素は, 疎水性アミノ酸と糖含量の多いペプタイドを含んでいた.
7. 成人小腸酵素は血液型物質を含む糖鎖をもっているものと思われた.
8. 本酵素の半減期は, 肝臓標品では125時間, 小腸標品では7.5時間であった. 脱シアル酸により前者の半減期は22-25時間に短縮された. しかし, これ以上他の糖分解酵素で糖部分を処理しても, 逆に未処理の肝臓酵素の半減期に近づいた. 後者ではシアル酸とガラクトースもしくはシアル酸とフコースを除去した場合, その半減期が短縮され, 約1.2時間となった.
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