順天堂医学
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25 巻, 1 号
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目次
Contents
特集 臨床検査値の読み方,考え方
原著
  • 市川 勝基
    1979 年25 巻1 号 p. 20-35
    発行日: 1979/03/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎における嗜銀細胞のうごきに関して, これまでいくつかの報告がみられるが, それぞれ検索材料, 計測方法が異なり, その報告された結果は必ずしも一定したものではない. 著者は, 大腸の100腺窩あたりの嗜録細胞を計測し, 狭窄を伴わない小さい早期大腸癌, 大腸憩室症標本の病巣より十分離れた部位より嗜銀細胞対照基準値を求めた. その値を基準として, 潰瘍性大腸炎を含めた大腸の潰瘍形成性炎症疾患におけるこの細胞の分布形態を計測し, 嗜銀細胞の面よりみて各疾患の特徴性を検討した. すなわち, 大腸結核症においては病巣周辺では嗜銀細胞の増減はないが, 病巣内においては炎症の強さの程度に比例し嗜銀細胞の減少が認められた. 一方, 単純性潰瘍においては, 潰瘍の周辺に限局して著明な嗜銀細胞の増加が認められる. また, 潰瘍性大腸炎初除例においては, 粘膜の破壊の認められない軽度炎症部位, また, 潰瘍性大腸炎生検標本においては, 活動期初期, 慢性期に採取された生検標本において, 明らかな嗜銀細胞の増加が認められた. その嗜銀細胞は, 炎症の強さの程度に従い減少するが, 粘膜破壊の強い重症炎症部位においてさえも, 対照基準値とほぼ同じ値を示した. 一方, クローン病においては, 腸結核症と同じ嗜銀細胞分布を示した. 以上のように, 嗜銀細胞の面よりみて各疾患に特徴性をとらえる事ができ, その結果は各疾患の間の診断の補助の一つとなりうるものと思われる.
  • 岩垂 正矩, 遠藤 和嘉子
    1979 年25 巻1 号 p. 36-43
    発行日: 1979/03/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    過剰Vitamin A (V. A) あるいは5-fluorouracil (5-FU) を動物に投与すると, 種々の奇形が誘発されることが報告されている. 今回, われわれは, Sparague-Dawley系ラットの器官形成期の妊娠母体にV. A 50,000IU/body (ip), あるいは5FU 50rng/kg (P. o) を投与し, 外表奇形, および骨格奇形を有する胎仔を観察した. 特に, V. A投与では, 前肢・頭頂骨・肋骨・胸骨核などに集中する奇形が認められた. 一方, ニワトリ胎仔胸骨核軟骨細胞の初代培養を行ない, 培養細胞系でのV. A, および5FUの作用を検討した. 細胞培養後 (3×104 Cells/plate) 2日目の薬物添加では, 5FUの10-6M濃度ではコンドロイチン硫酸産生量に若干の抑制がみられた以外, 特に細胞増殖に影響することはなかった. しかし, V. Aでは, 1IU/mlの濃度で細胞増殖の抑制がみられ, かつ, 細胞は線維芽細胞様の形態に変化することが確認された.
  • 菰田 二一
    1979 年25 巻1 号 p. 44-59
    発行日: 1979/03/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    アルカリ性ホスファターゼisoenzymeの構造と機能の相関性については, いくつかの研究室でなされている. この研究は, 酵素を糖分解酵素およびタンパク分解酵素で消化したときの変化を観察し, 各isoenzymeの糖組成と処理酵素の物理化学的性質, 酵素活性, 各種レクチンや血液型抗血清との親和性, 酵素の糖鎖の代謝回転と関係を調べたものである. 1. 成人小腸酵素は僅かのシアル酸しか持たないが胎児小腸酵素は明らかにシアロ糖タンパクであった. また, その他の糖組成も両者で異なっていた. しかしながら, 成人肝臓と胎児小腸酵素標品の糖組成は似ていた. 2. シアリダーゼ処理肝臓酵素のKm値は小腸酵素のKm値に近づく. しかしながらlog Km値のpH依存性は両者で明らかに異なっていた. 3. 脱シアロ肝臓酵素の耐熱性や, タンパク分解酵素による消化の結果は, 0.5%SDS存在下で, 未処理肝臓酵素よりも不安定となった. また未処理および脱シアロ肝臓酵素のヘリックス含量はそれぞれ39.0%ならびに30.8%, 見かけの分子量は175,000および168,000と計算された. 4. α-マンノシダーゼ, exo-N-アセチルD-グルコサミダーゼ, およびendo-N-アセチル-D-グルコサミニダーゼD処理をした小腸酵素の活性は減小した. このうちα-マンノシダーゼ'処理をした酵素活性が最も著明に減少し, 同時にその至適Mg濃度は40mMから5-10mMに変化した. 5. コンカナバリンAは酵素活性を二相性に変化させた. 最初の賦活域は0-0.02μMの, つぎの阻害域はそれ以上の濃いコンカナバリンAで生ずる. またHill係数は賦活域で0.5, 阻害域で1.0と計算された. 電気泳動法によるレクチンと酵素の相互作用の結果から, 本酵素のもつ糖鎖は分泌型糖タンパクと似たものと思われた. 6. パパイン処理酵素は, 疎水性アミノ酸と糖含量の多いペプタイドを含んでいた. 7. 成人小腸酵素は血液型物質を含む糖鎖をもっているものと思われた. 8. 本酵素の半減期は, 肝臓標品では125時間, 小腸標品では7.5時間であった. 脱シアル酸により前者の半減期は22-25時間に短縮された. しかし, これ以上他の糖分解酵素で糖部分を処理しても, 逆に未処理の肝臓酵素の半減期に近づいた. 後者ではシアル酸とガラクトースもしくはシアル酸とフコースを除去した場合, その半減期が短縮され, 約1.2時間となった.
  • 杉田 麟也
    1979 年25 巻1 号 p. 60-65
    発行日: 1979/03/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    急性扁桃炎26例, 慢性扁桃炎23例の細菌叢を研究した. また, 扁桃摘出術患者15名の扁桃表面および扁桃内の細菌について検討した. 結果は以下のごとくである. (1) β溶連菌は急性扁桃炎症例では全分離株中の50%を占めた. しかし, 慢性扁桃炎ではわずか16%を占めただけであった. (2) 扁桃内外の細菌を比較すると, 統計学的に著明な差はなかった. これらの細菌は, 黄色ブ菌, β溶連菌, H, influenzae, および, αおよびγ Streptococcus, Neisseria, H. parainfluenzaeおよびVeillonellaである. (3) この研究で, 扁桃の細菌を知りたいとき, 咽頭培養は非常に有益であると結論した.
症例報告
  • 平岩 隆男, 徳永 光雄, 小出 敏夫, 片山 仁
    1979 年25 巻1 号 p. 66-74
    発行日: 1979/03/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    超選択的血管造影は, 楢林の実質造影に始まったといってよい. 産婦人科領域に関して, 毛利らは子宮動脈の解剖学的見地より特殊なカテーテルを創製し, 子宮動脈の超選択的造影の成功率を高め, この領域の診断率を向上させた. 順天堂大学放射線科においても, 現有の技術を基礎に, 自作のカテーテルを用いて子宮動脈の超選択的造影を行なっている. 昭和51年9月より53年8月までの2年間に実施した産婦人科領域の血管造影は57例で, このうち子宮動脈を超選択的に造影したものは26例である. 従来の骨盤動脈造影では, 複雑な骨盤腔内の血管分布の分析に難を感じていたが, 子宮動脈を超選択的に造影することにより, 子宮および附属器に分布する血管の分析が容易になった. また, 腫瘍性病変の主栄養血管の同定や病的血管の分析を確実なものとし, 手術のアプローチにおおいに貢献しているものと考える. なお, 合併症はこれまで経験していない. 本稿では, 子宮動脈の超選択的造影法を紹介し, 症例を供覧した. 非侵襲的なCT検査が開発され, 診断アプローチにも少なからず影響を与えているが, 血管造影を完全に省略できるまでには至っていない. しかし, 侵襲的な血管造影には当然, より精密な所見の描出が要求されるようになることは必至である. 今後, さらに症例を重ねて本造影の臨床的な価値を検討するつもりである.
てがみ
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