順天堂医学
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33 巻, 3 号
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目次
Contents
特集 胆道(含胆嚢)癌の診断と治療
  • 吉川 達也, 江口 礼紀, 今泉 俊秀, 羽生 富士夫
    1987 年33 巻3 号 p. 325-333
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    教室で1968年1月から1986年12月までに経験した胆道癌症例は660例で, 切除例は330例, 切除率50%である. 胆道癌の部位別切除率は乳頭部癌の94%を筆頭に, 下部胆管癌・中部胆管癌の順に比較的良く切除されているが, 胆嚢癌・胆管癌では40%前後の, 低い切除率であった. 胆道癌切除例の生存率は, 5生率でみると乳頭部癌が最も良好で, 下部胆管癌・胆嚢癌・肝門部胆管癌・中部胆管癌の順に, それぞれ50%・45%・25%・11%・5%であった. 胆道癌は各部位により, 進展様式・手術術式・再発様式・治療成績など, 異なった問題があるので, 各部位別に1, 2の問題点について述べた. 乳頭部癌では, 14番リンパ節の十分な郭清, 胆管癌ではsurgical marginを陰性にすること, 胆嚢癌ではこれに加え広範リンパ節郭清のための努力が必要で, 縮小手術を云々する時期ではないことを強調した.
  • -CTの有用性と限界について-
    住 幸治, 玉本 文彦, 片山 仁
    1987 年33 巻3 号 p. 334-342
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    順天堂浦安病院放射線科にて, 開院以来約3年間で経験した症例を胆嚢小隆起性病変・胆嚢癌・胆管癌の三つに分けてその画像診断, 特にCTの有用性と限界について検討した. 胆嚢小隆起性病変については, CTは超音波検査に比して描出困難な症例が多く, スクリーニング検査としては不適と思われた. 胆嚢癌については, 特に壁肥厚を伴う場合において限局性・びまん性にかかわらず良悪性の鑑別が難しい場合があり, 更に血管造影など, 他の画像診断法を加えて総合的に診断する必要がある. 胆管癌については, 肝内胆管癌では他の肝原発性腫瘍との鑑別が時にむずかしく, 肝外胆管癌においては, CT上の腫瘍描出は困難な場合が多く, 胆管拡張などの間接所見によらなければならないことが多かった. 乳頭部癌においては, 十二指腸内に突出する腫瘍を描出できる場合があり, これは三日月サインと呼ばれ特徴的な所見と思われる.
  • 須山 正文, 有山 襄, 小川 薫, 猪狩 遺功, 長岩 治郎, 藤井 大吾
    1987 年33 巻3 号 p. 343-347
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    最近15年間に病理組織学的に確診した胆道癌は136例であった, そのうち切除例は胆嚢癌36例. 胆管癌33例であった. 切除例で各種画像診断の診断能, および深達度別の生存率を比較した. 画像診断では拾いあげ診断はUS 74%・CT 60%でUSがすぐれ, 質的診断は血管造影が86%とすぐれていた. したがって, 胆道癌の診断はpick upにUSを用い, 質的診断に血管造影を行えば良いと考えられた. また, 切除不能胆道癌にPTBEと抗癌剤の局注を施行し, 胆嚢癌および胆管癌の1年生存率は, それぞれ33%・21%と他の治療法に比べ延命効果が認められた. 切除不能胆道癌の治療にPTBEや抗癌剤の局注療法は有効であると思われた.
  • -超音波像と組織像との比較から-
    飯島 敏彦, 南部 勝司, 木所 昭夫, 八木 義弘, 石 和久
    1987 年33 巻3 号 p. 348-354
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    腹部超音波検査の普及により胆のう内隆起性病変の同定は, 比較的容易となった. しかし, その質的診断についてはまだ困難である. 本稿では, 胆のう内隆起性病変の組織学的分類にしたがって超音波像を比較呈示した. 胆のう切除例218例中, 隆起性病変は18例 (8.3%) であった. 胆のう癌は4例あったが, 術前診断が可能であったものは1例のみであった. また, いずれもstage 1あったが, 浸潤がpmにとどまるものは1例にすぎなかった. 現状では, 早期胆のう癌の術前診断はきわめて困難であり, 隆起性病変の取り扱いが問題である. 超音波像の隆起性病変の取り扱いをまとめると, (1) ポリープの大きさは10mmが目安でそれ以上, 特に多発性, 茎の太いもの (2) 胆石合併の隆起性病変, あるいは高齢で再三の発作をくり返す (3) 限極性の壁肥厚例で無症状などの所見は, 早期胆のう癌を示唆するものとして積極的な切除が望ましい.
  • --早期胆嚢癌, 胆嚢癌組織発生に関する病理学上の問題点--
    和田 了, 平井 周, 北村 成大, 桑原 紀之, 福田 芳郎
    1987 年33 巻3 号 p. 355-362
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    術前診断が困難な表面型の癌のうち, 特に小さな拡がりにとどまった胆嚢癌3例を報告した. いずれも胆石症で手術され, 形どおりの病理学的検索により偶然に見出され, 追加全割標本を作製した症例である. 症例1は10×15mm大, 症例2は3×5mm大, 5×5mm大であり, 3癌巣共に粘膜内に限局する高分化型腺癌であった. 症例3は2×2mm大の低分化型腺癌でありながら, すでに筋層に浸潤していた. これらに文献的考察もふまえた上で, 早期癌の定義, 胆嚢癌の組織発生に関する考察を行った. 1. われわれは, 癌が筋層内に浸潤していない場合, および粘膜上皮の基底膜を破らずに, 単にR-A洞にそった進展にとどまった場合のみを早期癌とするべきであると考えた. 2. 胆嚢癌の組織発生には, 少なくとも多種類の形があることを推察し, さらに, de novo癌の存在を指摘した.
原著
  • 福島 文典
    1987 年33 巻3 号 p. 363-372
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    回盲部切除後に発生する種々の機能障害は, いまだ病態の解明が不十分であるが, 近年回盲部切除後の腸管運動の変化, さらに下痢の発生に胆汁酸の作用が関与するといわれている. この病態を解明する目的で, 回盲部切除犬を用いてforce transducer・X線撮影により腸管運動の変化を観察し, 同時に糞便中・血清中の胆汁酸を測定した. 回盲部切除により大腸運動は亢進し, 腸管内容の通過時間の短縮を認めた. 一方, 大腸内の総胆汁酸・DCA・CDCAは増加し, これが大腸粘膜に作用し大腸運動亢進の一因となると思われた. 回盲部切除による括約機能の廃絶と胆汁酸の大腸内増加は, 大腸運動の亢進, ひいては下痢発生と密接に関係していることが示唆された.
  • 八巻 悟郎
    1987 年33 巻3 号 p. 373-383
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    診断の, 基礎となる病理学的事項を検討した. 隆起型は軽微な隆起 (高さ0.02cm) はep, 軽度の隆起 (大きさ3.0cm前後, 高さ0.1-0.3cm) はmm, はっきりした隆起 (大きさ3.0cm前後, 高さ0.1-1.2cm) はsmであった. 純粋な平坦型はepであった. 陥凹型は軽微な陥凹 (深さ0.01-0.02cm) はep, 軽度の陥凹 (深さ0.03-0.05cm) はmm, はっきりした陥凹 (深さ0. lcm) はsmであった. また隆起の中央に陥凹をもつものはsmであった. ルーチンX線検査のひろい上げ診断の成績は, 隆起型は1.0cm以上は指摘したが, 1.0cm未満は見逃した. 陥凹型はsmの見逃しはなかったが, mm, epのひろい上げにはなお一層努力しなければならない. また, 発見能の限界は肉眼形態を問わず1.0cmであった. 診断を向上させるためには, X線と内視鏡で併用検査することが必要である.
  • -ホルター心電図検査法による検討-
    南塚 只雄
    1987 年33 巻3 号 p. 384-396
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    ホルター心電図検査法は, 不整脈・虚血性心疾患において, その有用性が認められており, 特に心筋梗塞患者における心室性期外収縮 (PVC) の出現頻度・発現様式が重要視されている. 一方, 慢性心筋梗塞患者の睡眠中の洞調律の態度の不整脈におよぼす影響が, 臨床的にも検討されるようになり, その発生に自律神経系の関与が注目されるようになったが, どの程度関与しているかについては不明な点が多い. そこで, 陳旧性心筋梗塞患者93例に対してホルター心電図検査を施行し, 夜間心拍数のトレンドパターンを検討し, 洞調律の態度と重症不整脈の発症や病態との関連性について検討した. 心拍数のトレンドグラム上, 心拍数についてはほとんど変化を示さないflat typeと, 一過性に心拍数の増加を示すspike typeの二つに分類することができた. それぞれ, 23例・70例であった. 年齢については, flat typeの症例 (平均年齢69歳) はspike typeの症例 (平均年齢59歳) と比べてより高齢者に多かった (P<0.01). 臨床所見と不整脈との関係については, 心不全の既往のある症例, 重症冠状動脈病変の症例, 左心機能の低下した症例 (LVEF<50%) において重症不整脈を認め, 心室性頻拍は心室瘤のある症例に多く認めた. 臨床所見とtype分類との検討では, これらの重篤な不整脈を認めた症例に着目すると, いずれにおいてもflat typeよりもspike typeの症例を多く認めた. 不整脈とtype分類との検討ではflat typeの症例は上室性期外収縮, ならびにPVCをほとんど認めなかったが, spike typeの症例では70例中46例 (66%) において, より重篤な心室性不整脈を認めた (P<0.01). 不整脈の発生において自律神経系の関与も示唆され, 心筋梗塞患者の慢性期の管理上, 臨床的背景について検討すると同時に洞調律の態度も検討しておくことの有用性が示唆された.
  • 碓井 芳樹
    1987 年33 巻3 号 p. 397-405
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    1.2回以上のX線検査で, 経過をみた潰瘍性大腸炎73例に延べ323回 (2-14回) のX線所見を詳細に検討したところ, 文献上, 記載をみない虚血性病変像を73例中4例 (5.5%) に認めた. 4例は全例が再燃緩解型で, 全大腸炎型3例・左側大腸炎型1例であった. 2. 虚血性病変像を認めた潰瘍性大腸炎10例 (自験例4例と千葉県がんセンター例6例) の検討の結果, 虚血性病変像を認めた潰瘍性大腸炎は, 若年層で女性に多く認め, 罹患範囲はS状結腸から横行結腸にかけて多く認めた. その像は虚血性大腸炎の一過性と同様に, 早期に消褪するものと潰瘍性大腸炎の再燃で, 分からなくなるものとがあった. また, その後の経過で, 潰瘍性大腸炎が重症化した例が4例あった. 3. 虚血性病変像, 特に拇指圧痕像をとらえるには, 脾弯曲部の充満像が二重造影とともに必要である.
  • I.視東前野の性的二型核と生殖機能
    伊藤 哲
    1987 年33 巻3 号 p. 406-412
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    内側視束前野に濃染する神経群 (視束前野の性的二型核: sexually dimorphic nucleus ofthe preoptic area SDN-POA) の体積は, 胎生期のテストステロンプロピオネート (testosterone propionate: TP) 投与に影響されることがわかっている. 妊娠ラットにTP4mgを妊娠15日から22日まで連続投与し, 一方, 妊娠17日もしくは, 妊娠21日にTP4mを1回投与した. 雌の出生仔を生後90日目に屠殺し, SDN-POAの体積を測定した. SDN-POAの増大に対するTPの影響は, 妊娠17日にTPを投与した群がもっとも顕著で, 妊娠21日にTPを投与した群では明らかな効果は見られなかった. これらの結果は胎生期のTP連続投与がSDN-POA増大のための必須条件ではなく, SDN-POAがアンドロゲンに対して, もっとも感受性の高い臨界期 (critical period) をもつことを示唆する. 妊娠15日から22日までTPを投与した群11例のうちの4例は無排卵であったが, TP投与群のほとんどは卵巣機能は正常であった. さらに, 胎生期にTPを投与された雌は, 性行動において雄性化や脱雌性化は示さなかった. これらの雌は正常の雌と同程度のロードーシス反応を示し, マウント行動は極く一部にのみ見られた. これらの結果は, SDN-POAの体積そのものが, ゴナドトロピンの周期的分泌の調節や性行動の発現とは直接の関連をもたない可能性を示す.
  • II.内側視東前核の体積変化
    伊藤 哲
    1987 年33 巻3 号 p. 413-417
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    視束前野の前腹側脳室周囲灰白層 (rostroventral periventricular gray of the preoptic area), およびその近部に性的二型性を示す, 濃染される内側視束前核 (medial preoptic nucleus: MPN) が認められ, その神経核では, 雌の方が雄に比べて大きいことが知られている. 本実験では, MPNの体積が周生期のテストステロンプロピオネート (testosterone propionate: TP) 投与の影響を受けるかどうかについて調べた. 妊娠ラットにTP4mgを妊娠17日目, もしくは21日目に一回投与した. また, TP投与を行わなかった妊娠ラットの出生仔の雌に, 出生日から生後7日目までTP40μgを連続投与し, 一方, 雄には出生日に去勢を行った. 対照として正常ラットの雄と雌を含めそれぞれ90日齢に屠殺した. MPNの体積は, 正常の雄に比べ正常の雌の方が有意に大きく約2.2倍であった. 周生期のTP投与に対する影響は, 出生日から生後7日目までTPを投与した群に最も顕著で, 正常の雄と同程度の大きさに減少した. これは新生仔期早期のアンドロゲン環境が, MPNの発達に大きな影響を持つことをうかがわせる. また, 去勢した雄のMPNの体積は, 正常の雌の体積ほどには大きくならなかった. このことは去勢以前の内因性アンドロゲンの作用が, MPNの発達に何らかの影響をおよぼすことを示唆する.
報告
  • 岡田 滋子, 井上 令一
    1987 年33 巻3 号 p. 418-423
    発行日: 1987/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    医学部6年生75名 (平均年齢24.4歳) を対象に脳波検査を行い, 正常55 (73.3%). 境界16 (21.3%). 異常4 (5.3%) の結果を得た. 基礎律動をJung, 越野らの方法に準じて分類すると, α型39 (52.0%) ・不規則α型29 (38.7%) ・slowα混入型3 (4.0%). β型3 (4.0%) ・不定型脳波1 (1.3%) であった. 学生が卒業後選択した科は, α型;内科系20・外科系19, 不規則α型;内科系11・外科系16・その他2, slowα混入型;内科系1・外科系2, β型;内科系1・外科系2, 不定型脳波;内科系1であり, 不規則α型に外科系選択の傾向があるが, 基礎律動と選択した科との間に有意の相関は認めなかった. 科の選択の動機についてアンケートを送り, 回答率;α型79.5%・他型29.4%と有意の差 (P<0.05) を認めた. 以上の結果をもとに, 脳波基礎律動と行動パターンの関連について考察を行った.
抄録
てがみ
編集後記
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