目的: 妊娠高血圧症候群の原因の一つに胎盤形成不全が知られている. 妊娠初期の絨毛細胞によるらせん動脈リモデリング障害の結果, 胎盤形成不全が起こることが知られているが, その原因は明らかではない. 今回, 妊娠高血圧症候群の病態解明を目的とした顕微鏡下で容易に可視化できる
in vitroらせん動脈リモデリング評価系を作成したので報告する.
方法と結果: デザインされたパターンに沿って細胞播種, 転写が可能なガラス基板 (PEG基板) を光リソグラフィー法で作成し本研究に使用した. 血管内皮細胞が3列に並ぶ幅のパターンで細胞接着領域がデザインされたガラス基板に正常ヒト臍帯静脈内皮細胞 (HUVEC) を播種した. HUVECを接着させた基板を細胞外マトリックスであるマトリゲル
®に接触させて24時間後に基板を取り去ることにより, 血管様構造物がマトリゲル
®に転写された. HUVECと絨毛細胞の置換を観察するため, 不死化絨毛細胞 (TCL1;trophoblast cell line) をHUVECによる血管様構造物が培養されたマトリゲル
®上に播種した. TCL1細胞はHUVECで形成された血管様構造物によるライン上に遊走し, HUVECとの置換が観察された.
考察: 顕微鏡下で容易に可視化できる
in vitroらせん動脈リモデリング評価系を作成することができた. 本評価系では内皮細胞から成る血管様構造物に対して絨毛細胞の遊走, 置換が容易に観察することが可能となり,
in vivoに近い状態での病態の解明に貢献できると考えられる.
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