順天堂医学
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58 巻, 5 号
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目次
Contents
第30回都民公開講座《なぜ「漢方」は現代医療に用いられているのか?》
  • 舟串 直子
    2012 年 58 巻 5 号 p. 383-388
    発行日: 2012/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    漢方とは2,000年以上前の漢の国の方剤である. 日本には西暦500年ごろ伝来されたといわれており, その後独自に発展し, 日本の伝統医学となった. 当時は現在のような血液検査も画像診断もない時代であり, 診察も四診すなわち望診, 聞診, 問診, 切診のみで治療を行っていた. 望診とは視診, 舌診のことであり, 聞診は聴診, 臭診, そして問診は通常私たちが質問する現病歴既往歴のことである. 切診は腹診, 脈診, 背診などでの診断であり西洋医学の診断とは異なる. 診断して病名に基づいて処方を行う西洋医学とは異なり, 漢方は同じ風邪でも一人ひとりの症状にあわせて処方は異なる. また診断名がつかない病態でも症状に対して処方できる. われわれが臨床で診断に苦慮するのと対照的で漢方の考えからであれば診断で悩む必要がない. 現代において求められている医学はより副作用や薬の効果なども遺伝レベルで考慮された一人ひとりにあわせたオーダーメイド医療であり, それは高度な技術により実現化されつつある. ここでの病気のとらえ方としては臓器別, 疾患別ではない. 全身を個としてとらえる漢方の考え方が活かされる時代になってきているのではないだろうか. 漢方薬は生薬を組み合わせ相互作用で相乗効果や抑制効果を生み出している. そしてある状態に対して使うことで個体の恒常性を保つ方向へと導くように設計されている. この条件がいわゆる証である. 証は陰陽, 虚実の4パターンに大きくわけられ, それぞれに呼応する病態に対して使う方剤が決定される. 今回大学院の研究テーマとしてアトピー性皮膚炎モデルマウスに漢方薬を投与して効果を検証する実験を行い漢方を勉強する機会をいただいた. 重症のアトピー性皮膚炎の患者の中には漢方治療を希望する患者も多く, 標準的なステロイド治療では難治の症例で次のステップの治療が求められている. 今後さらにエビデンスを集積していくことが肝要と考える.
  • 須藤 一, 小川 尊資
    2012 年 58 巻 5 号 p. 389-396
    発行日: 2012/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    アトピー性皮膚炎は「瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患で患者の多くはアトピー素因を持つ」と定義されています. アトピー性皮膚炎の病態には体質や環境の変化, バリア機能の異常, 免疫・アレルギーの異常, 神経・精神的な因子が考えられていますが, その本態は依然明らかにされていません. 90年代には, 一部マスコミの影響によりアトピー性皮膚炎の治療の現場に混乱をきたしましたが, その後ガイドラインが策定され, 現在ではステロイド外用薬を中心とした治療がその標準療法として普及しました. 漢方治療はその現症のみならず体質を改善することにより効果を現すため, アトピー性皮膚炎のような体質性の難治性疾患にも有効性が高いと考えられています.
  • 内藤 俊夫
    2012 年 58 巻 5 号 p. 397-402
    発行日: 2012/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    感冒は患者が外来を受診する理由で最も多く, その診療に要する医療資源は莫大な量である. インフルエンザは世界的な大流行を繰り返し, 多くの患者の命を奪っている. インフルエンザに対してはワクチンを用いた適切な予防が重要であるが, 本邦では必ずしも徹底されていない. 感冒・インフルエンザ患者に対する抗菌薬の乱用は, 耐性菌・副作用・医療費において大変な問題である. また, 世界規模でオセルタミビル (タミフル®) 耐性株が出現しているほか, オセルタミビルの治療効果を疑問視する発表も相次いでいる. これらのことから, 感冒・インフルエンザの治療における漢方薬の使用が注目されている. 西洋薬と違い漢方薬では, 急性期のみならず亜急性期・慢性期の症状改善にも有効であることが特徴である. 近年, 漢方薬を用いた臨床試験の報告も増えている. われわれはインフルエンザ患者に対する麻黄湯のランダム化比較試験を行ったが, これによると麻黄湯ではオセルタミビルなどの抗ウイルス薬と同等の効果が得られた. また, 漢方薬の中にはサイトカインの調節に役立つものがあり, インフルエンザ肺炎やインフルエンザ脳症の治療への活用が期待される.
  • 光畑 裕正
    2012 年 58 巻 5 号 p. 403-408
    発行日: 2012/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    慢性疼痛は複雑な病態を呈し, 治療に難渋することがしばしば見受けられる. 西洋医学的治療で鎮痛が得られない症例で漢方薬が有効なことがある. 抑肝散は抗アロディニア作用があり, 神経障害性疼痛を含む慢性痛に効果がある. 抑肝散は絞扼性神経損傷ラットモデルで抗アロディニア作用を示し, その機序の一つはグルタミン酸トランスポーター活性化によりグルタミン酸濃度を低下させることを筆者らは明らかにした. また慢性痛は冷えを伴うことが多く, 当帰芍薬散, 苓姜朮甘湯, 当帰四逆加呉茱萸生姜湯, 真武湯, 八味地黄丸など冷えを改善する方剤が効果を示す. また慢性痛では気の異常 (気鬱, 気逆, 気虚) を伴うことが多く, 半夏厚朴湯や四逆散, 柴胡疏肝湯など気剤が著効することがある. 慢性疼痛治療の一つの選択肢として漢方は有用である.
原著
  • YUKI YONEDA, KAN KAJIMOTO, KATSTUMI MIYAUCHI, TAIRA YAMAMOTO, HIROTAKA ...
    2012 年 58 巻 5 号 p. 409-415
    発行日: 2012/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    Objective: Analyses based on the results of various clinical studies have shown a gender difference in the significance of lifestyle and risk factors that cause progression of atherosclerosis. However, there have been few investigations of gender differences in secondary prevention of the most severe form of atherosclerosis, which follows coronary revascularization in diabetes patients with multivessel coronary artery disease. Methods: the subjects were 493 diabetic patients (394 males and 99 females) with multivessel disease who underwent coronary artery revascularization at our hospital between 2002 and 2008. Death from all causes, cardiac death, and major adverse cardiac and cerebrovascular events (MACCE) were compared between men and women. Kaplan-Meier survival analysis was performed with univariate analysis of each endpoint. The multivariate Cox proportional hazard model was then used to calculate the hazard ratio. Results: The mean age of the women was 70 years, significantly higher than the 64 years for men. During a mean follow-up period of 2.6 years, no gender differences were seen in all-cause deaths, cardiac deaths, or MACCE on multivariate analysis. Conclusions: This study demonstrated that there were no gender differences related to long-term outcome at any of the end points in secondary prevention of severe coronary artery disease in diabetes patients.
  • 嶋田 晶江, 山本 平, 松下 訓, 稲葉 博隆, 桑木 賢次, 森田 照正, 土肥 静之, 天野 篤
    2012 年 58 巻 5 号 p. 416-421
    発行日: 2012/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    目的: 透析患者の増加に伴い, 透析症例に対する開心術が増加している. また, 透析導入後の遠隔予後の改善に伴い, 大動脈弁狭窄症と冠動脈に対する複合手術が必要となる症例が増加している. 近年, 透析患者に対する冠動脈バイパス術では心拍動下冠動脈バイパス術の普及や周術期管理の改善により手術リスクが軽減したが, 複合手術における手術ならびに遠隔期成績の検討はなされておらず, 現況に見合った手術適応ならびにリスクの評価が急務となっている. 今回われわれは, 冠動脈バイパス術を施行した慢性透析患者のうち冠動脈バイパス術を単独で施行した症例と, 大動脈弁狭窄合併症例に対して一期的合併手術を行った症例の術後合併症および予後を比較することにより, 複合手術の妥当性を検討した. 対象・方法: 2005年1月から2009年12月までの5年間に当院にて冠動脈バイパス術を施行された慢性透析症例89例を対象とした. 単独冠動脈バイパス術を施行した64例 (冠動脈バイパス術単独施行群) と冠動脈バイパス術に大動脈弁手術を同時施行した18例 (大動脈弁手術同時施行群) に分け, 患者背景, 周術期成績ならびに中期成績を後ろ向きに比較検討した. 結果: 術前の状況を比較すると, 高血圧, 糖尿病, 脳血管疾患は両群間に有意差は認めなかった. 脂質代謝異常の合併頻度は冠動脈バイパス術単独施行群が高率であった. 周術期合併症は脳合併症, 呼吸不全, 心房細動, 創部感染の発生に両群に有意差は認めなかった. 在院死亡は冠動脈バイパス術単独施行群2例, 大動脈弁手術同時施行群1例であった. 累積5年生存率, 累積5年心臓関連死回避率はともに両群間に有意差はなかった. 考察: 透析症例において, 大動脈弁狭窄を合併した虚血性心疾患に対して一期的複合手術は単独バイパス術に比べて在院死亡・周術期合併症や5年累積心臓関連死回避率において有意差はなく, 透析患者における大動脈弁狭窄症の進行の早さや, 再手術のリスクを考慮すると積極的な一期的手術の施行も十分に可能で有用である可能性が示唆された.
  • KIICHI SUGIMOTO, RINA TAKAHASHI, SHUN ISHIYAMA, MASAKI HATA, HIROHIKO ...
    2012 年 58 巻 5 号 p. 422-430
    発行日: 2012/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    Objective: It is well known that anti-cancer drugs generate reactive oxygen species and lipoperoxides in cancer patients, and that these free radicals can give rise to adverse events. It has been reported that free radical effects might be attenuated by antioxidants. Recent reports have indicated that Protein-bound polysaccharide K (PSK) exhibits antioxidant effects in addition to its anti-tumor effects. However, there have been few reports investigating whether the antioxidant effects induced by PSK can actually alleviate the adverse events of anti-cancer drugs. In an attempt to alleviate the adverse events and improve completion of oral anti-cancer drugs, we performed a randomized, controlled trial of oral UFT/LV plus PSK as postoperative adjuvant chemotherapy for stage II and III colorectal cancer. Materials: Fifty patients who had undergone curative resection of high-risk stage II or stage III adenocarcinoma of the colon and rectum between May 2008 and May 2010 were enrolled in this study. Methods: Patients were randomly assigned to the UFT/LV treatment (PSK (-) ) and the UFT/LV plus PSK treatment (PSK (+) ) groups at a 1:1 ratio. The PSK (-) group received UFT (300 mg/m2/day) and LV (75 mg/day), starting 4-8 weeks after surgery and continuing for 6 months or until the diagnosis of tumor recurrence. The PSK (+) group received PSK (3.0g/day) every day in addition to the UFT/LV treatment. Patient backgrounds, adverse events, completion of oral administration, laboratory test, stress indices, such as Reactive Oxygen Metabolites Test (d-ROMs Test) and salivary chromogranin A, and NK cell population were analyzed. Results: Nine patients (36.0%) and 11 patients (44.0%) had overall adverse events in the PSK (-) and PSK (+) groups, respectively. There was no significant difference in the incidence of adverse events between the PSK (-) and PSK (+) groups. Twenty-two patients (88.0%) and 23 patients (92.0%) completed oral administration of anti-cancer drugs in the PSK (-) and PSK (+) groups, respectively. There was no significant difference in completion of oral administration between the two groups. In laboratory tests, no significant differences were observed between the two groups. There was no significant difference in the d-ROMs Test between the two groups. Similarly, no significant difference was observed in the salivary chromogranin A. The NK cell population in the PSK (+) group was significantly higher than that in the PSK (-) group (p = 0.03). Conclusions: There were no significant differences in the incidence of adverse events between the PSK (-) and PSK (+) groups. In addition, completion of oral administration was high in both groups, and therefore no effects of PSK to alleviate adverse events and improve completion of oral administration of anti-cancer drugs were recognized. In the future, it will be necessary to investigate whether or not PSK can reduce adverse events and improve the completion of oral administration of anticancer drugs when PSK is combined with other regimens with a higher incidence of adverse events or a lower completion rate.
  • 冨木 裕一, 檀原 高, 岡田 隆夫, 西塚 雅子, 建部 一夫, 鈴木 勉, 清水 俊明
    2012 年 58 巻 5 号 p. 431-435
    発行日: 2012/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    目的: 臨床実習を経験した後の学生の成績変化を, 本学における共用試験 (Computer Based Test: CBTとObjective Structured Clinical Examination: OSCE) と卒業試験の成績から比較検討した. 対象: 対象学年は, 2002年から2006年に順天堂大学医学部に入学し, 共用試験と卒業試験を受験した462名 (男子学生308名, 女子学生154名) である. 方法: 1) 医学部4年生で行われる共用試験 (CBTとOSCE) の成績と5年生の臨床実習を主体とした成績および卒業試験の成績順位について, 2) CBTの順位を4ランクに分け, 各ランクの成績と卒業試験の順位について, それぞれの関連を検討した. 結果: 卒業試験の成績順位は, CBTの成績順位, 5年生の成績順位と相関し, 相関係数は, ともに0.61 (p<0.01) であった. CBTで成績上位1-25番の125名のうち76名 (60.8%) の学生は, 卒業試験でも成績上位25番以内に位置していたが, CBT成績76番以下の86名のうち, 半分の43名 (50.0%) は, 卒業試験でも成績76番以下であった. CBTと比較して, 卒業試験の正解率は全体として7.4%上昇したが, 正解率が上がったのはCBTの成績上位の学生であり, CBTの成績下位の学生の正解率は逆に低下していた. 結論: 卒業試験の成績は, 医学部4年生後半に行われるCBTの成績と相関が認められた. 臨床実習を経て, 卒業試験の正解率は全体として上昇する. しかし, CBTで成績下位の学生の順位は卒業試験では伸びず, 正解率も低下していた. CBTの成績下位の学生に対する教育指導が今後の課題である.
報告
症例報告
  • 吉田 範敏, 渡野辺 郁雄, 丸山 俊朗, 井原 厚, 渡邉 心, 塚田 暁, 清水 秀穂
    2012 年 58 巻 5 号 p. 441-444
    発行日: 2012/10/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    症例は63歳, 男性. 右鼠径部の疼痛を主訴に来院. 腹部CT検査で骨盤腔内の低吸収域と盲腸下端に線状の高吸収域を認めた. 魚骨等の異物を疑い, 手術施行. 虫垂より魚骨が穿孔し後腹膜に膿瘍を形成していた. 本邦の虫垂異物は, 魚骨が原因となることが多い. 今回CTで魚骨は疑われたが, 術前診断とまでは至らなかった. 術前に診断することは非常に困難であるが, 魚骨による虫垂穿孔も考え, 注意深い術前評価が必要であると思われた.
症例に学ぶ
抄録
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編集後記
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