順天堂医学
Online ISSN : 2188-2134
Print ISSN : 0022-6769
ISSN-L : 0022-6769
46 巻, 4 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
Contents
目次
特集 マイクロディセクション法を利用した疾患の遺伝子研究
  • 藤井 博昭
    2001 年46 巻4 号 p. 394-407
    発行日: 2001/05/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    マイクロディセクション法は, 直接病理組織切片上より腫瘍細胞など特定の細胞集団を取り分けて, 遺伝子解析に利用する方法である. 微小細胞集団のもつ不均一な遺伝子変化や正常部の細胞集団により隠蔽されていた遺伝子変化が解析可能になるという利点がある. ヘテロ接合性消失 (loss of heterozygosity;LOH) は癌抑制遺伝子の機能消失と密接に関係しており, 腫瘍に特徴的なLOHが知られている. また, 腫瘍発生・進展に伴い, LOHの蓄積・進展が認められる. 本稿では, 筆者の自検例を中心に, マイクロディセクションの方法・利点・応用・LOHの原理・LOHの検出解析方法を概説する. それらの方法を駆使することにより, ヒト腫瘍クローンの発生進展に伴っての詳細な分子病理学的解析が可能となる. 乳癌の非浸潤性乳管内癌から浸潤癌に至る過程, また複雑な組織型を示す腫瘍の解析例として, 混合型肝癌・女性生殖器癌肉腫, さらに特殊な発育進展様式を示す表面型大腸癌の遺伝子解析の結果を紹介する.
  • -TSC1およびTSC2遺伝子解析-
    瀬山 邦明
    2001 年46 巻4 号 p. 408-415
    発行日: 2001/05/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    肺リンパ脈管筋腫症 (pulmonary lymphangioleiomyomatosis;LAM) は妊娠可能年齢の女性に発症する疾患で, 肺・リンパ節・腎臓などの複数臓器に平滑筋細胞の過誤腫性増殖を認める疾患である. 常染色体優性遺伝性疾患である結節性硬化症 (tuberous sclerosis complex;TSC) の合併肺病変として認められる (以下TSC-LAM) が, LAM単独でも発生する (以下sporadic LAM). TSCは癌抑制遺伝子として機能するTSC遺伝子 (TSC1あるいはTSC2) の異常 (germline mutation) により発症するが, sporadic LAMの発生にもTSC遺伝子異常が関与することが明らかになりつつある. TSC-LAMではTSCに合併する他の過誤腫性病変同様に, TSC遺伝子のgermline mutationに引き続いてsomatic mutationが生じてLAMが発生する. 一方, 大部分のsporadic LAMではTSC-LAMと異なりgermline mutationをもたないが, 2回のsomatic mutationによりTSC遺伝子が完全に不活化されLAMが発生する. しかし, sporadic LAMの中には遺伝学的にはTSCでありながらTSCに特徴的な他の過誤腫性病変を認めずLAMのみを発症する不全型も存在する. 肺・リンパ節・腎臓などの複数臓器に認められるLAM細胞は同一の遺伝子異常をもつクローン性増殖であることが示唆されている.
  • 野口 雅之
    2001 年46 巻4 号 p. 416-422
    発行日: 2001/05/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍の診断に染色体の欠失や特定の遺伝子異常所見を用いる際は正確に腫瘍細胞のみを解析することが重要である. つまり悪性度の指標を正確に求めるのであれば, 解析したい部位に存在する腫瘍細胞を正しく採取して, その遺伝子異常を解析することが求められるからである. この目的を可能にするような組織マイクロダイセクション法の技術が実用化されつつある. レーザー光を利用した組織マイクロダイセクション法を中心に特定の細胞群を採取する方法論とこれを利用した分子病理学について解説した. 具体例として組織マイクロダイセクション法を利用した遺伝子診断の例を4つあげた. (1) 再発肺癌の遺伝子診断を細胞診材料を用いて行った. 胸水細胞診材料中の異型細胞におけるp53遺伝子やras遺伝子の点突然変異をPCR-SSCP法で解析することによって再発をより早期に発見できることを示した. (2) 臓器に複数の癌病巣が存在するとき, その起源が多中心性発生か転移性かを明確に鑑別することは, その臓器癌の発癌過程を理解し, 組織発生を解明するために重要である. 前立腺癌を例にとって組織マイクロダイセクション法を利用した解析を示した. (3) 卵巣内膜性嚢胞と内膜癌や明細胞癌との関係をPTEN遺伝子領域の染色体欠失と点突然変異を解析することによって検討した. その結果PTEN遺伝子の不活化が卵巣内膜癌や明細胞癌の発癌のごく初期に起こっていることを示し, 卵巣内膜症性嚢胞からこれらの癌へ進展する連続的な多段階発癌機構が存在することを示した. (4) 消化管リンパ腫の遺伝子診断 (ミクロの遺伝子診断の限界) を示した. リンパ濾胞の芽中心をマイクロダイセクション法にて解析すると個々の芽中心について平均2.4から2.5個の再構成パンドが認められることを示した. この結果は胃生検や大腸の生検でMALT typeのリンパ腫を診断する際には注意が必要であることを示している.
総説
  • -現状と展望-
    瀬戸口 靖弘
    2001 年46 巻4 号 p. 423-442
    発行日: 2001/05/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    遺伝子治療とは, 既存の治療法では有効性が期待できない疾病に対して遺伝子自身もしくは遺伝子を導入した細胞を投与することで致死的あるいは難治性疾患により, 著しく低下した生活の質を改善させる治療法である. 10年前米国において遺伝子治療が開始され, これまで約3000人の患者さんへ臨床試験が実施されてきた. 大部分の遺伝子治療が当初の期待どおりの結果は生み出さなかったが, 最近の遺伝子導入法の改良により極めて良好な臨床成果が得られるようになった疾患もでてきている. また, -遺伝子治療は, 細胞治療や幹細胞由来の臓器再生への応用へも発展してきている.
原著
  • 細田 誠弥
    2001 年46 巻4 号 p. 443-452
    発行日: 2001/05/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 担癌状態では, 末梢血好中球が増加することがあり, その意義については議論がある. そこで本研究では, 担癌状態の好中球機能について実験的に検討した. 方法: 8週齢・体重200-230gのSD系雄性ラットの腹腔に, Yoshida AH-130細胞を移植することで担癌状態とした後, 1日目・4日目・8日目に採血するとともに腹水を回収し, 末梢血白血球数 (好中球数) ・末梢血好中球機能・末梢血中および腹水中のサイトカインレベルの変動を検討した. 結果: 癌の進行に伴い, 末梢血好中球が増加し, 貪食能, 活性酸素産生能が有意に亢進する一方で, 遊走能は著明に低下した. また, 腹水中だけではなく, 末梢血中のTNF-α・IL8濃度も担癌初期から上昇し, それに呼応するように, 好中球のMac-1発現レベルの増強と, L-selectinの発現レベルの低下が観察された. 結論: 担癌状態では, 末梢血中のサイトカインレベルが上昇し, 好中球の接着分子発現が変化し, 貪食能, 活性酸素産生能が亢進する一方, 遊走能は低下していることがわかった.
報告
  • 直居 豊, 笹井 啓資, 飯塚 有応, 趙 成済, 伊藤 佳菜, 赤松 将之, 渡辺 太志, 前原 忠行, 菱井 誠人, 新井 一, 佐藤 ...
    2001 年46 巻4 号 p. 453-457
    発行日: 2001/05/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    順天堂医院では, 新本館の開院に伴いリニアックによるラジオサージェリーが導入され, 1994年末から治療を開始した. 2000年の11月までに治療総患者数は215例を数え, 良好な治療成績が得られている. 今回われわれは当院で稼動しているリニアックによるラジオサージェリーシステムの紹介と, 現在までの治療実績, 治療成績を紹介した. また, 今後のラジオサージェリーの展望と応用について当院での現状と共に紹介した.
抄録
順天堂医学原著論文投稿ガイドライン
順天堂医学投稿規程
編集後記
feedback
Top