順天堂医学
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33 巻, 4 号
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目次
Contents
特集 心疾患における最新の診断と治療
  • 稲垣 義明
    1987 年 33 巻 4 号 p. 459-478
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    循環器領域における1HによるMRIの現況を, 形態診断・組織性状診断・心機能診断・血流診断について, 自験例を中心に述べるとともに, 将来の見通しについても言及した. とくに, 組織性状については, 心筋梗塞を対象として, 梗塞部と非梗塞部の信号強度比の経過による推移を, 血流診断については, 実験的検討を基礎に, 血流画像から解離性大動脈瘤のエントリー部分が診断しうることを強調した.
  • 町井 潔
    1987 年 33 巻 4 号 p. 479-494
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    カラードップラー心エコー図の最近の進歩と臨床応用について解説した. 本法は通常の断層心エコー図に重ねて, 心臓の任意の断面の血流速度分布図を実時間に動画として表示するもので, 心臓超音波検査の信頼性と領域を飛躍的に高めた. 特に従来の心エコー図で表示が困難な逆流性弁膜症, 左右短絡のある先天性心疾患にその威力が証明されているが, さらに肥大型心筋症の狭窄部位や, 虚血性心疾患の左室内血流分布・心室中隔破裂・冠動脈血流・大動脈解離の診断など, あらゆる心疾患に広く応用されている. また本法と連続波ドップラー法と組合わせて, 狭窄の圧較差の計測・肺動脈圧の推定を行うなど, 従来の心カテーテル検査のすべての情報を無侵襲で, より簡単に得られるようになった. 類似の情報は高速CTやMRIでも得られるが, 本法は比較的に安価な装置で, bedsideで誰でも容易に施行できる点で優れており, 今後長く臨床心臓病学の分野で役立つと思われる. 将来の進歩に関しては, より速い血流のartefactのない記録・血流量の表示・より安価・小型で, 診察机の上における程度の装置の開発, 冠動脈血流診断の実用化などが期待される.
  • -心筋血流画像法の現状と将来展望-
    村田 啓
    1987 年 33 巻 4 号 p. 495-504
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患の診療において, PTCAやACバイパス術などの積極的治療がさかんに行われるようになり, 虚血部位の判定や心筋のviabilityの評価をする上で, 心筋血流画像法の果たす役割はますます重要になってきている. 現在, 日常臨床の場で, 広く普及しているのがタリウムを用いる方法であるが, その需要はさらに増えつつある. タリウム法の原理・断層画像の判定法・定量解析, およびその表示法・検査の適応・診断率などについて述べ, その意義を強調した. さらに, これからの新しい核医学検査法として, 注目されているテクネチウム標識の心筋血流トレーサーと, ポジトロン標識のN-13アンモニアおよびO-15水による心筋血流の検査法にふれ, その将来を展望した.
  • 山口 洋
    1987 年 33 巻 4 号 p. 505-509
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患の治療は, 近年冠動脈造影 (CAG) による確定診断が可能になって画期的進歩をとげた. ACバイパス術の普及と冠血管拡張術 (PTCA) や冠血栓溶解術 (PTCR=ICT) への発展がそれである. これら侵襲的治療は, 患者の生命の短期的救済には有用だが, 長期予後には食事療法と薬物治療を含む内科治療が大切である. そして, 上記侵襲的治療を適時質良く遂行するためには内科外科協調のチーム医療が必要不可欠である.
  • -順天堂大学に於ける経験を中心にして-
    細田 泰之
    1987 年 33 巻 4 号 p. 510-516
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    1984年1月より1987年7月までの3年6カ月間に順天堂大学において施行されたACバイパス手術は465例であり, その手術死亡率は0.9%と低率であつた. 近年, 循環器内科によつて行われるPTCA (Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty) の増加に伴い, 手術症例は重症病変を有するものが多くなっており, 手術手技にも細心の注意・工夫が成績向上のために必要となっている. 我々の経験した手術成績と膨大な経験量を誇る米国Clevel and Clinicのそれと対比してみた. 最近, ACバイパス術は非常に進歩し, 安全, 確実な術式になったとはいえ, 術周期心筋梗塞・中枢神経障害等の合併症, あるいは同種血輸血による合併症等を更に少なくして, より魅力あるものとしなければならない.
原著
  • 丸山 俊秀
    1987 年 33 巻 4 号 p. 517-527
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    手術例が減少し病理組織所見との対比が出来ない現状で, 変貌しているといわれる胃潰瘍の特徴を知るため, 二重造影で質的診断できる胃体部後壁潰瘍を対象にその臨床的特徴を調べ, また臨床で初めてみる潰瘍が治癒しやすいかどうか, 再発しやすいかどうかをX線学的に検討し, 次の結果をえた. 1. 胃体部後壁潰瘍の頻度, 発症時期・自覚症状・大きさ・部位・形の年代別特徴を調べてみると, 従来からいわれている高齢者胃潰瘍の特徴は, 50歳代から始まり60歳以上で顕著になっている. 2. 短期経過例でみると, 1cm未満の潰瘍と浅い紡錘形の潰瘍が治癒しやすく, 不正円形潰瘍, 深浅のある潰瘍底, 周堤の一部の隆起-強い硬化, 非中心性の中断粘膜ひだをもつ潰瘍は治癒しにくかった. 3.1cm以上の潰瘍の縮小の仕方は求心性縮小と偏在性縮小に分けられ, 求心性縮小を示すものは治癒しやすく, 偏在性縮小を示すものは治癒しにくかった. 初回X線像と縮小の仕方を合わせて考えれば, 潰瘍の治癒の予測はより確かなものになる. 4. 再発しやすい潰瘍, 再発潰瘍の特徴を調べてみると, 3cm以上の潰瘍, 胃体上部潰瘍, 周堤の一部の隆起-強い硬化や深浅のある潰瘍底をもつ潰瘍が再発しやすく, また, これらの潰瘍底・潰瘍縁の所見のある潰瘍は, 再発潰瘍のうちの一群とも考えられ, 再発潰瘍は再び再発しやすいという結果であった. 5. これら潰瘍底・潰瘍縁の所見をもとにX線学的に検討してみると, 日常の診療でみる胃潰瘍の中には, 治癒が遷延するもの10%, 治癒遷延の可能性の高いもの約25%が含まれ, 初診時にすでに再発潰瘍が含まれる割合は約14%から35%と推定された.
  • -とくに早期診断を目的として-
    細井 董三
    1987 年 33 巻 4 号 p. 528-536
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    Linitis plastica型胃癌の早期診断を目的とし, 病理組織学的ならびにX線学的検討より次のような結論をえた. 1. 手術標本を病理組織学的に検索したLinitis plastica型胃癌40例の分析から, 胃底腺領域に発生するものの原発巣は, ひだ集中像を伴わないIIc+III様の未分化癌で, 大きさは, 25mm以下, 陥凹はU1-II以上であり, 腺境界領域に発生するものの原発巣は, 集中像を伴わないIIc様の未分化癌ではあるが大きさは50mm以上, 陥凹はU1-Iが多い. したがって, この原発巣の特徴をより小さな病変のうちに探し出すことが早期診断につながるものと推定された. 2. 過去のX線像のretrospectiveな検討より, 完成されたLinitis plastica型胃癌が完成される2年から3年前に, 約70%の原発巣が指摘可能であった. 以上のことから, X線学的に早期診断の可能性が十分にあり, その時期のものは深達度がpmからssと推定された. 以上の検討からLinitis plastica型胃癌の, 発育過程におけるpm癌のX線学的所見を確立し, より早期の診断への手掛かりとすることができた.
  • 中野 由美子
    1987 年 33 巻 4 号 p. 537-542
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    卵巣の片側摘出によって起こる代償性卵巣肥大 (OCH) に, 中隔および視束前野がどのような影響を与えているかを調べた. これらの部位を破壊し, 同時に左側卵巣を摘出し, 重量を記録した. 2週間後に屠殺し, 残存卵巣重量を測定し, 代償性卵巣肥大率 (OCH%) を計算した. この結果, 中隔内側部破壊群のOCH%は片側卵巣を摘出し, 脳の破壊を行わなかった対照群に比し有意に増加し, 視束前野背側部破壊群では反対に有意に低下した. これらのことより, 代償性卵巣肥大に中隔内側部は抑制的な影響力をもち, 反対に視索前野背側部は促進的な影響力をもつことが明らかになった. また, 免疫組織化学法により正中隆起のLH-RHの染色性を検討した結果では, これらの部位の破壊によるLH-RHニューロンの, 正中隆起での終末への直接的な影響は認められず, 中隔内側部と視束前野背側部破壊によって, LH-RHニューロンが減少した可能性は少ないと思われる.
  • 秡川 正嗣
    1987 年 33 巻 4 号 p. 543-552
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    大腸二重造影法によって, 13年間にわたり経時的に経過を追求した潰瘍性大腸炎60例のX線像を検討することにより, 発症から長期にわたる本症の病態を系統的に明らかにし, さらにX線像と病型, および予後との関係を明らかにする目的で研究を行い, 次の結論をえた. 1. 潰瘍の有無・潰瘍の大きさ・形・縦走・下掘れの要素を基準にして, 高度・中等度・軽度に分類した. 2. 高度例・中等度例・軽度例の経過像は, それぞれ特徴的である. 発症時の潰瘍を中心とする形態的変化が以後の経過像を方向ずける. 3. 高度例では, 手術適応となる率の13例中8例と非常に高く, 5年から10年以上経過すると, 大部分が再発緩解型から慢性持続型になる. 中等度例では8例中1例, 軽度例では33例中2例が手術適応となったが, その率は低い. 再発緩解型から慢性持続型になる強い傾向はみられない. 高度例の予後は悪く, 中等度例・軽度例の予後は良い.
  • -とくに体部, 噴門部潰瘍について-
    鎗田 正
    1987 年 33 巻 4 号 p. 553-562
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    1968年10月より1979年12月までの間に順天堂大学消化器内科で検査し, 胃切除を施行した線状潰瘍71例74病変の, 臨床的事項・検査所見・病理学的所見を検討した. 特に, 体部・噴門部の線状潰瘍30例32病変の, X線検査所見上の変形の解析を行った. 非綿状潰瘍切除例に比較すると, 線状潰瘍例の病悩期間は平均6.9年と長く, 切除理由には難治・再発, 吐・下血が多かった. 線状潰瘍例中でも, 5年以上の病悩期間のある症例の潰瘍は, 病悩期間3-6カ月の症例より潰瘍の長さが有意に長かった. 経過観察例では, 55例中13例 (23.6%) が無症状で潰瘍が悪化した. 同じく13例に症状の再燃があり, 12例に潰瘍の再燃を認めた. 経過検査は2-4カ月ごとに行うべきであろう. 癌合併・併存率は, 線状・非線状とも約24%であった. 二重造影による体部・噴門部の線状溝描出率は, 初回X線検査では75.0%, 術前精密検査では100%であった. 体部・噴門部線状潰瘍による胃変形の種類と強さは, 潰瘍と小弯との関係と長さにより異なる. 小弯と交わる線状潰瘍で長さ30-35mmでは, 小弯に軽微な変形が出没する. 35-45mmでは小弯の弱い変形が恒存する. 42mm以上で大弯への影響が現われ, 大弯変形が出没する. 45mm以上で小弯にU字型変形が恒存し, 病変の92.9%で大弯の弯入も恒存し, 全体変形としてB型を呈する. B型を呈する病変では, 潰瘍の長さと切除胃の横巾の比は0.33より大であった. 小弯と交わらない線状潰瘍では, 弯側から10mm以内では変形が強く恒存し, 10-20mmでは変形が動く. 変形を利用すると, 体部・噴門部線状潰瘍のX線正診率は術前で12.5%改善し, 見直しで96.9%である. 以上により, 内視鏡検査を超える正診率の改善をもたらした.
症例報告
  • 伊藤 匡, 渡辺 敏也
    1987 年 33 巻 4 号 p. 563-568
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    筆者らはここで, 全生活史健忘の一症例について報告する. 患者は81歳の男性で, 病前には家族との葛藤状況の存在と, 老人特有の抑うつ状態が先行していたことが考えられる. 数日間の失踪ののちに, 低容量性ショックによる昏睡状態で発見された. 病院に搬入され, 意識が回復したのちにも全生涯を追想できず, 全生活史健忘を呈した. 以後記憶を回復したのちにも健忘を装い続け, 数カ月後に家族の捜査により身元が判明した. 患者が高齢であること, 病前の特有な状況の存在, 詐病を呈したことなどが興味深く思われた. 以下若干の考察も加える.
  • 南 雅之, 塩沢 克史, 上原 直樹, 林田 康男, 飯田 昇, 清水 一夫
    1987 年 33 巻 4 号 p. 569-572
    発行日: 1987/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    われわれは食道静脈瘤硬化療法後に, 急性心膜炎の発症を呈した一例を経験したので報告する. 症例は58歳の男性で, 食道静脈瘤硬化療法後3カ月後に発熱し, 次いで胸部絞拒感を訴え, 胸部X線で心拡大, 心エコーで心膜液貯溜が認められ入院した. 自覚症状はまもなく消失したが, X線・エコー像は変化なく, 心膜穿刺によって排液し改善を見た. 一般に食道静脈瘤に対する硬化療法の合併症としては, 嚥下時のつかえ感・熱発・胸痛, まれなものでは, ショック・出血・肺硬塞などがあるが, 急性心膜炎を呈した例は稀である. 本例の場合, 急性心膜炎の原因としては, 特発性心膜炎が考えられる. 硬化療法との因果関係は明確ではないが, 硬化剤がアジュバントとして作用したか, または, 血行動態の変化によるという可能性が考えられ, 興味深い症例と思われた.
抄録
てがみ
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