順天堂医学
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35 巻, 1 号
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目次
Contents
特集 局所所見からみた全身病態の解析
  • 種田 明生
    1989 年35 巻1 号 p. 1-11
    発行日: 1989/05/30
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    内臓病変の皮膚表現という問題は重要であるが, 実際の臨床の場で多彩な皮膚症状の中からこれを鑑別することはなかなか難しいことと思われる. しかし, 内臓病変の皮膚表現というものをある程度把握することができたならば, 日常の診察において, 潜在する内臓病変の早期発見につながることも少なくない. このため, 本稿では特に問題となる内臓癌・糖尿病における皮膚表現を始めとして, 消化器疾患, 肺・腎臓・循環器疾患, 神経系疾患, 栄養障害, 代謝障害, 内分泌障害, 更に妊娠, 病巣感染といったものとの関連のもとで, 皮膚病変より推察されることが多い疾患の内, 特に主要と思われるもの, 看過できないものを選び, その鑑別・病態, そして実際に皮膚症状の臨床に触れた. 内臓癌の項では高頻度に潜在が考えられるもの (黒色表皮腫・acquired hypertrichosis lanuginosa・匍行性環状紅斑), 一応, 潜在を考えるもの (環状紅斑・帯状疱疹・皮膚筋炎・ボーエン病・後天性魚鱗癬・紅皮症・悪性腫瘍先天異常症候群) といったものにつき述べた. 消化器疾患では, Peutz Jegher症候群・壊疽性膿皮症・Cronkhite Canada症候群といったものが皮膚所見より発見されることがよくあり, また病巣感染・代謝異常症・神経系疾患なども皮膚所見からの発見がしばしばある. 臨床写真を最後に一括して整理してあるので, これを参考にして頂きたい.
  • 金井 淳
    1989 年35 巻1 号 p. 12-22
    発行日: 1989/05/30
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    眼と身体にまつわる諺がいくつか見られるように, 全身疾患と眼病変とは密接な関係がある. 特に眼底や水晶体に病変がみられると視力障害の原因ともなりうる. 近年増加しつつある循環器系の疾患や糖尿病では眼病変を生じ重篤な視力障害をもたらすため, その治療にあたっては, 内科医を始め他科の医師との密接な連携プレーが必要である. 眼底に病変を生じる全身性疾患は比較的良く知られているが, 前眼部に病変を来たす全身性疾患は, 他科の医師でも容易に観察することが出来る. 著者は前眼部に病変が見られる全身性疾患を中心に解説する.
  • 市川 銀一郎, 安藤 一郎, 上原 紀夫, 渡辺 勲
    1989 年35 巻1 号 p. 23-33
    発行日: 1989/05/30
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科領域にも全身性疾患の原因となる病変や, 全身性疾患の部分症としての疾患が多数ある. しかし, これらが特異な「局所所見」を呈するとは限らない. 例えば, 高血圧・糖尿病・腎炎, その他多数の全身性疾患などに伴う難聴・耳鳴・めまいなどは症状としては著明であり諸検査で特徴ある所見を呈するが, 局所所見で云々することは不可能である場合が多い. 今回は局所所見からみた全身病態に関する特集であるため, 比較的局所所見に特徴があり, 全身性疾患と関係のある諸疾患について概説する.
  • 井上 幸雄
    1989 年35 巻1 号 p. 34-45
    発行日: 1989/05/30
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    臨床的に骨・関節病変を見るためには, X線像が最も手軽で情報量が多い. 整形外科領域で全身性疾患に伴う骨・関節疾患の代表なものとして骨軟化症, 膠原病の代表として慢性関節リウマチ・全身性エリテマトーデス, 炎症性疾患として骨・関節結核などについて概説する. この他に, 内分泌疾患で骨変化と密接な関係がある副甲状腺機能亢進症, さらに下垂体腫瘍時の末端巨大症や大腿骨頭上り症など悪性腫瘍と骨病変, 特に癌の骨転移についても概説する.
  • --発疹は小児疾患の重要な診断的糸口である--
    山城 雄一郎
    1989 年35 巻1 号 p. 46-53
    発行日: 1989/05/30
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    小児の診療において, 発疹は重要な診断的糸口になりうる. 発疹は感染性疾患に伴って出現することが多いが, 発疹の出現機序は, 病原因子の皮膚への直接接種, 病原微生物の血行性播種など数種に分類できる. 感染性発疹の正確な診断のためには, 病歴の注意深い聴取は当然であるが, 発疹の性状や特徴をよく捕らえ, ある疾患特有の病徴の発見に努めるなど, いくつかのポイントがある. 診断の助けになると思われる発疹の性状別分類を示したが, 発疹は必ずしも疾患特有性を示さず, 同一の疾患でも, 病期や病勢によって異なる性状を呈することがあることを考慮する必要がある.
  • --内科の立場から : 膠原病を中心として--
    橋本 博史
    1989 年35 巻1 号 p. 54-63
    発行日: 1989/05/30
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    全身性疾患にみられる局所所見の重要性はいうまでもない. それは早期診断の手がかりを与えるだけではなく, 時に多臓器障害を示唆し, さらに予後と密接に関係することがあるからである. 局所所見から早期診断に結びつく内科的全身性疾患は数多くあげられる. 目につき易い局所所見は, 皮膚・眼・耳・鼻・口腔・関節などの病変であるが, 膠原病を例にとると皮膚症状では, 紅斑・結節・腫瘤・脱毛・レイノー現象・青色皮斑・皮膚硬化などがあげられ, これらはいくつかの疾患に共通して認められる. ここでは膠原病にみられる局所所見を呈示し解説する. さらに, 膠原病の局所所見は他臓器障害の存在を示唆し, 生命予後と関連することがある. その背景には, 抗核抗体を中心とする免疫異常が存在する. この点に関して自験SLEにおける局所病変と全身病態の解析結果について述べる.
原著
  • 石川 隆
    1989 年35 巻1 号 p. 64-71
    発行日: 1989/05/30
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    正常対照C57BLマウスと網膜変性C3Hマウス (新生児-20週齢) の網膜の凍結乾燥切片 (14μm) を調整し, 全層構造を均一に含む標品と各層構造の標品 (13-60ng乾燥重量) を切り出して高感度水晶糸バランスで秤量した. NADサイクリング (酵素反応を利用する増幅反応) を用いた新しいGABAトランスアミナーゼ (GABA-T) の微量定量分析法を開発し, 正常および変性網膜内のGABA-Tの分布を明らかにした. (1) 新しい微量測定法は, 従来の方法より高感度で単一細胞の分析に応用できる. (2) 正常網膜では, GABA-T活性は出生時より20週齢までに4倍に増加した. 変性網膜では, 光受容細胞が変性脱落する14日齢までは活性は正常網膜より低く, 続いて6週齢まで活性は増加し, その後20週齢までに対照の70%に減少した. (3) 6週齢の正常網膜内では, GABA-T活性は神経節細胞層で最も高く, 内網状層でも高い活性を示した. また外網状層と内顆粒層にもかなりの活性が認められた. (4) 6週齢の変性網膜では内網状層外側で対照よりも低い活性ピークが見られ, 内顆粒層内側に対照内顆粒層の4倍の活性が認められるが, 神経節細胞層は対照の70%であった. 外網状層・外顆粒層・桿錐体層は消失していた. 変性網膜における全体的なGABA-T活性の低下はGABAの破壊を防ぎ, 変性過程に反応して生成されるGABAの作用を支持するために有利であると思われた.
  • 粕谷 秀樹
    1989 年35 巻1 号 p. 72-87
    発行日: 1989/05/30
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    Doxorubicin (adriamycin, 以下ADR) の心毒性の特質を明らかにする目的で, ラットを用いて, 成体心・培養心筋・胎仔心の3者にADR心筋病変を作成し形態学的に観察した. (1) 成体ラットにADRを0.2-3.0mg/kg/wk静注し, 1-8週目に心を摘出し観察した. 光顕的に左心室内層の心筋の空胞変性, 中層の心筋融解および線維症が, 電顕的に筋原線維の粗鬆化, ミトコンドリアの変性, sarcotubular system (SR) の拡大が特徴的で, ヒトの拡張型心筋症と類似点を有していた. (2) 幼若ラット培養心筋の4日目にADR 2.5μg/mlを24時間培養液中に加え, 6日目に心筋細胞 (C) と非心筋細胞 (N) を分別し無添加群と比較した. ADR群のCはNに比し有意に減少し, 電顕的には心筋細胞の核の変化 (segregation, margination) が強く, SRの拡大を認め, ADRは非心筋細胞に比し心筋細胞により強い毒性を示すと考えられた. (3) 妊娠ラットにADR 1.0-2.0mg/kg/dayを3-4日間腹腔内投与し, 妊娠17日目に胎仔心を拡張状態で停止させて固定し, 実体顕微鏡下で観察した. ADR投与胎仔心の23%に心・大血管奇形を認めた. その種類としては, 総動脈幹遺残を中心とした大血管の異常と心室中隔欠損が高率にみられた. ADRは成体心・培養心筋に対する障害作用のみならず, 催奇形性としての心毒性を有することが判明した.
  • 前野 秀夫
    1989 年35 巻1 号 p. 88-96
    発行日: 1989/05/30
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    喫煙の生体への影響を, 補体系に対する影響という面から検討した. 検討項目は, 喫煙前後の補体活性, 高齢者での喫煙者・非喫煙者・および断煙者の補体の測定, in vitroでのタバコタールの補体活性に及ぼす影響である. 急性喫煙後10分でACH50値の有意な (P<0.01) 低下を認めたが, CH50値C3, C4には変動が認められなかった. 高齢者のACH50値は, 喫煙者・断煙者・非喫煙者共に若年者に比べて低値を示したが, 喫煙者でより低い (P<0.01) 傾向が認められた. 一方, 高齢者のC3aは, 若年者に比べて高値を示し, 且つ喫煙者でより高い傾向が認められた. 1nvitroでのタバコタールはヒト血清のCH50値・ACH50値を共に低下させたが, ACH50値の低下はCH50値の場合と比べ, より低濃度のタール量で観察された. 以上の成績から, 喫煙はAlternative pathwayを活性化させ, 高齢の長期慢性喫煙者では, 血中ACH50値の低下という形でその影響が刻印されていることが示唆された.
  • 大畠 敏保
    1989 年35 巻1 号 p. 97-105
    発行日: 1989/05/30
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    肝硬変症患者にみられる血小板減少症の原因を検索する目的で, in vitroにおける患者骨髄巨核球系前駆細胞 (colony forming unit-megakaryocyte, CFU-meg) 由来の巨核球形成と, それにおよぼす患者末梢血単核球培養上清の影響について脾摘前後で検討した. その結果, 肝硬変患者では巨核球系前駆細胞は十分保たれていること, 肝硬変患者末梢血リンパ球から得られた培養上清中の, 巨核球コロニー刺激因子活性が低下していること, そしてその低下に脾臓は関与しないことがわかった.
  • リンパ増殖症との関連性について
    松本 清司, 坂本 善郎, 広瀬 幸子
    1989 年35 巻1 号 p. 106-116
    発行日: 1989/05/30
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    自己免疫疾患モデル動物の一系であるMRL/lprマウスは, 抗DNA抗体や抗Sm抗体など多彩な自己抗体の産生を伴う全身性エリテマトーデス (SLE) を自然発症する. このマウスにみられる大きな特徴は, このような自己免疫疾患の発症に随伴して, 生後2-3カ月頃より全身に著明なリンパ節腫脹が現れることである. このリンパ増殖症の発現は常染色体劣性のlpr遺伝子の働きによるもので, 増殖する細胞は, CD4 (L3T4) 分子とCD8 (Ly-2) 分子のいずれをも持たないユニークなTリンパ球 (lpr細胞) であることが明らかとなっている. 今回, われわれはこのMRL/lprマウスに出現する骨髄リンパ系の異常を調べる目的で, このマウス系の末梢血・骨髄, および各リンパ組織の加齢変化を検討した. その結果, MRL/lprマウスの末梢血中では, 好中球および単球が2カ月齢より増加しはじめ, 加齢に伴いいちじるしく増加することを発見した. このうち好中球の増加は骨髄中にもいちじるしく, 末梢好中球の増加は, 骨髄における増殖亢進を反映するものと考えられた. また, 6カ月齢では骨髄の形質細胞が増加した. 一方, 各臓器におけるlpr細胞の出現時期を調べたところ, この細胞は2カ月齢ごろにまずリンパ節や脾臓に出現し, その2カ月後に, 胸腺や血中・肺などに現れることがわかった. しかし, 骨髄にはいずれの時期にもこの細胞は出現しなかった. このように骨髄の好中球増殖と, リンパ増殖症とは異なる組織に発症する病態ではあるが, 時期的に同時に起こる現象であることから, 両病態の発症機構に何らかの液性因子を介した関連性のあることがうかがわれた. 1つの可能性はMRL/lprマウスの末梢血や骨髄における好中球増多に, 増殖するリンパ球由来の顆粒球増殖因子が関与していることであり, この点を検討するために, 穎粒球増殖因子の1つであるG-CSFを, BALB/cとMRL/nマウスに投与してみた. その結果, いずれの系統でも好中球の増殖がみられ, その程度は6カ月齢のMRL/lprマウスに相当するものであった. しかし, これらのマウスにはMRL/lprマウスにみられるような単球と形質細胞の増加, ならびに高免疫グロブリン血症は出現しなかった. これらの結果をもとに, MRL/lprマウスの顆粒球増多症に関連する可能性のある, 種々のサイトカインについて考按を加えた.
抄録
てがみ
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編集後記
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