更年期症状に伴って生じるとされる日常生活の支障について, その実態を明らかにし, 支障を軽減するための生活指導のあり方を検討するため, 今回は生活行動に生じる支障の実態, 因子構造および関連要因を分析した.
更年期外来を受診し, 更年期症状を有し, 他の疾患をもたない女性129人を対象とした.
まず予備調査として更年期外来受診者に半構成的面接法にて日常生活に生じた支障を聴取した・その結果をもとに質問紙を作成し, 本調査を行った. 本調査は自己記入式質問紙法で調査内容は年齢, 職業, 同居家族, 日常生活の支障および更年期症状 (SMI) であった.
その結果, 次のことが明らかになった. (1) 更年期症状の強さ (軽症・中等・重症) と全ての生活行動に生じる支障との間に有意な関連があり, 軽症群の生活行動に生じる支障は軽く, 重症群になるにつれて強くなっていた. (2) 生活行動に生じる支障の因子分析により, 『外出行動のつらさ』, 『家事に対する負担感』, 『家事・仕事の処理能力の低下』の3因子が抽出された. (3) 『外出行動のつらさ』と有意な関連のあった変数は, 〈疲れやすい〉, 〈寝つきが悪い等〉, 〈汗をかきやすい〉, 〈頭痛. めまい等〉および〈拡大家族〉であった. (4) 『家事に対する負担感』と有意な関連のあった変数は, 〈くよくよ・憂うつ〉, 〈汗をかきやすい〉および〈疲れやすい〉であった. (5) 『家事・仕事の処理能力の低下』と有意な関連のあった変数は, 〈疲れやすい〉, 〈くよくよ・憂うつ〉, 〈汗をかきやすい〉, 〈三世代家族〉および〈自営業〉であった.
以上の結果から, 生活行動に生じる支障を軽減するためには, 適度な運動や外出を楽しむ工夫, 家事を効率よく意欲的に行う工夫, 仕事や家庭での役割をゆとりをもって遂行していくための生活指導の重要性が示唆された.
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